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Immorality of target 05<月刊少女野崎くん・堀みこ・R-18>

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若い時に付き合っていて、堀先輩の結婚を機に別れたけど、十数年ぶりに久々に再会したという流れの堀みこ。

久々の再会からの週明け、堀Side。後半は鹿島くんと堀先輩の飲み会。

初出:2015/03/11 同人誌収録:2015/06/14(Immorality of target。掲載分に多少の修正等あり)

文字数:11411文字 裏話知りたい場合はこちら

 

「というわけで、この件については次回に改めて――」

 

月曜日の午後。

今回は御子柴の会社の会議室を利用して、プロジェクトの会合を開いている。

統括の俺が中心になって、プロジェクトの説明や進行状況をチームメンバーに伝えていると、御子柴からの視線を感じる。

……分かりやすいヤツだよなぁ、あいつも。

この前の会合の時なんて、極力俺の方に視線向けないようにしてたってのに、今日はかなり露骨に俺を見てる。

いや、そう思うのは俺も何だかんだで御子柴の方を見てるからかも知れない。

昔からそうだが、あいつ根本的に誤魔化すっていうのが得意じゃねぇんだよなぁ。

そんなところも可愛いとは思うが、流石に早々周囲に気取られるわけにもいかねぇし、今夜会うときにちょっと一言言わねぇと。

 

「では、次の議題に移ります。デザインについては――御子柴さんがメインで担当に当たると伺いましたが」

「あ、はい。弊社の方のチームでまず検討して、三種類にまで絞ってはいるのですが――」

 

とはいえ、昔だったらこんな風にいきなり話を振ったら、きっと御子柴はあたふたしていただろうというのを考えると、やっぱり感慨深いものがあった。

俺の知らなかった十数年、こいつはどんな風に日々を過ごしていたんだろうか。

この目で確認出来なかったことが、この上なく残念に思えた。

 

***

 

会合が終わった後、直帰するようにしてあったから、御子柴の会社の近くにあったラーメン屋で飯を食った後、電車で移動して予約してあったホテルに入った。

ラブホなんだが、休憩でも予約出来るし、男同士でも泊まれるし、何よりあまりラブホというイメージに繋がらない作りのホテルだから、御子柴もそんなに気にせずに済むだろうと選んだ場所だ。

予想通り、御子柴がほっとした様子で部屋の中を確認している。

本当に分かりやすいよなぁ。

この分かりやすさが可愛くもあるけど、それだけじゃマズい面もある。

 

「おまえ、会合の最中に俺を見過ぎだろ。俺が統括って立場だから、ある程度までなら見られてても、そんな違和感まではねぇけど」

 

なんで、そんな風に指摘すると、ある程度の自覚はあったのか、御子柴の方もちょっとたじろいだ。

 

「そっ、そんなに見てはいな……かったと思うんす、けど」

「ま、今のうちにちょっと軌道修正しとけ。会合の最中はともかく、他の時にまでその癖出たらマズいだろ」

 

会合を中心に進めているのは俺だから、会合の最中なら俺ばかり見ていても、然程違和感はないだろうけど、それが他の場面で出るとちょっと面倒だ。

何より、こいつ自身が割りと人目を引く容姿だから、気をつけないと他人から察知されないとも限らない。

 

「すんません、気をつけます。何か、先輩の眼鏡姿につい目が行っちゃって。眼鏡似合いますよね、先輩」

「そうか? おまえの方が絶対似合うだろ。イケメンなんだし。ちょっといいか?」

「え、あ」

 

まだかけたままだった眼鏡を外して、御子柴にかけさせてみる。

予想通り、眼鏡をかけた姿も似合っていた。

昔、何度かこいつの顔に精液ぶっかけたことはあったが、眼鏡かけた状態でかけてみても映えるだろうな、なんてつい考えてしまった思考は、御子柴の言葉で引き戻される。

 

「……あれ、これ度入ってますよね?」

「入ってる。キツくはないけどな。見やすいか?」

「あんま違和感ないし、思っていたより見やすい……かも」

「そうか。……なら、おまえも多分老眼始まってるぞ」

「え」

 

御子柴が予想もしてなかったって表情で固まっている。

俺としては、あんまりこれが老眼鏡だってことは言いたくなかったが、御子柴もどうやら老眼が始まっていたようだと思うと悪い気がしないのが不思議だ。

イケメンも歳には勝てない部分があったか。

 

「マジすか。老眼って聞くと何かショックなんですけど」

「早いヤツだと、三十代前半でなってたりするらしいぞ。俺はここ一年くらいだけどな」

「うわ……じゃ、他人事じゃねぇってことっすか。そんな年齢なんすね」

「一度、眼科行ってみろよ。おまえも眼鏡作ったらどうだ? 老眼鏡云々は置いといても、やっぱり眼鏡似合ってるし。流石、イケメンは何でもハマるな」

 

元々、御子柴の伏せた目が色っぽいとは思っていたが、眼鏡を通すとさらに色気が増してそそられる。

御子柴にかけさせていた眼鏡を外してキスをしたら、即座に目を閉じて受け入れたのが可愛い。

基本的に素直なんだよな、こいつ。

外した眼鏡はベッドサイドにあったテーブルに置いて、御子柴の髪を触る。

この前抱いた時にも、白髪がまだないのは確認していたが、柔らかくて触り心地が良い。

 

「ん……」

 

ただ触れ合わせていただけの唇を軽く開いて、御子柴の口の中に舌を突っ込む。

ごく当たり前のように絡めてきた舌が堪んねぇ。

御子柴をこんな反応させるようにしたのは、俺なんだよなぁ。

視線を下に向けると、今のキスで勃ったってのも分かる。

そのくせに。

 

「……金曜日散々やったのに、今日もするんすか」

 

こんなことを言ってくるのが、無性におかしい。

 

「ホテルに入った時点で何を今更って感じだな。したくねぇのかよ」

「や、そういうわけじゃないすけど。元気っすね、先輩」

「おまえの方が俺よりちょっと若いのに、何言ってんだか」

「……っ」

 

ま、俺も先日までいい加減枯れてきたもんだって思ってたけどな。

相手が御子柴だと不思議な位、セックスしたくなる。

十数年会えてなかった分を、身体重ねることで少しでも埋めたいっていうのもあるんだろうが、とにかく触れていたい。

御子柴のネクタイを解いて、シャツのボタンも外し、露出された襟元の肌を吸った。

見えない場所なら痕を残しても文句は言わねぇだろう。

そう踏んでいた通り、御子柴から抑止の声は上がらなかった。

 

「あとな」

「ん?」

「必ずしも、会った時に出来る時間の余裕があるとも限んねぇって思えば、機会あらばしたくなるだろ、そりゃ」

「……あ、んっ!!」

 

流石にこの前みたいに、御子柴とホテルに泊まるっていう手段は何度も使えない。

会合の終了する時間によっては、帰宅までの時間に余裕がなくなる可能性だって、この先ないとも限らない。

だったら、セックス出来る時間がある時にはチャンスを逃したくない。

こんな風に御子柴も反応してくれてるならなおさらだ。

スラックスの上の膨らみから形を確認するように触ると、御子柴があられもない声を上げる。

ああ、いいよなぁ、この声。

俺しか知らない声だって思うとどうしようもないくらい興奮する。

 

「今日は俺がおまえの服脱がす。俺、服脱がせていく時におまえの表情変わっていくの見るの好きなんだよな。久々に見たい」

「う……」

 

言いながら、スラックスのファスナーを下ろすと、早くも御子柴が喉を鳴らして、目元を染める。

その顔に、俺の方も興奮が高まるのを感じながら、下着ごしに御子柴のモノに触れた。

 

***

 

――この前、俺がされるだけだったんで、こっちからも口でさせて下さいよ。

 

一通り、御子柴の服を脱がせたところで、そう請われた。

 

「……っ、ん……」

 

ベッドに腰掛けた状態で御子柴に委ねているが、口でされるのは随分と久し振りだからなのか、結構追い上げられる。

単純に身体への刺激でくるのは勿論だが、見下ろしたときの御子柴の顔が、やたら色っぽいし、赤い舌がちろちろと動くさまを見るだけでも昂ぶるんだよな。

御子柴の髪を撫でることで意識を逸らそうとするも、どうにも御子柴の動きから目が離せない。

 

「先輩にしちゃ、そんな反応すんの珍しいっすね。勿論、こっちは嬉しいっすけど」

 

つい、乱れてしまう呼吸のせいか、御子柴がそんなことを言いながら、俺のモノの先っぽに吸い付くようなキスをする。

それがまた身体の奥に響くような快感で、つい歯を噛みしめる。

 

「……レスだってのもあるけどな。女房、口でしたがんねぇヤツだから。フェラ専用のゴムあるの知ってるか? アレ使っても片手で数えるくらいしかされてねぇ」

 

女房は口でするのもされるのも好きじゃない。

無理させる気もねぇけど、それで物足りなさを感じてもいたってのが正直なとこだ。

御子柴は俺が教え込んだこともあるけど、久々だってのにツボを押さえた動きをする。

 

「……ってことは、奥さんは直接口でやったことないってことっすか」

「そうなる、な」

「…………へぇ」

 

そう答えた瞬間、御子柴の口元が微かに笑って――ぞくっとするほどの色気を帯びた顔になった。

ちらりと見上げた目が淫蕩な光を帯びている。

造形整っているから、こんな表情されると妙な凄みがあるんだよな。

そんな顔しながら玉を舐めて、音を立てて裏筋を舐めてくるもんだから、たまったもんじゃない。

唾液が滴って、幹から袋へと伝っていく。

さっきよりも熱の籠もった愛撫に胸が高鳴る。

……やっぱり、女房が口でやったことないってのが嬉しかったりするのか。

いや、そりゃそうだよな。

俺だって、この前のセックスで、御子柴が結局俺以外は知らないままだって聞いて嬉しかったし、無茶苦茶興奮したし。

淫らな表情と仕草は、目眩がしそうなくらいの快感をもたらしてくる。

こっちも口でしてやりたい。

髪を触っていた手を耳に這わせて、縁を弄る。

 

「っ、御子柴。ベッドの上に来て横になれ。おまえにもしてやる」

「いいっす。先輩にあんま動かれると、俺が動けなくな……うわっ」

「来いっつってんだろ」

 

寧ろ、御子柴にこれ以上動かれたくないからこそだ。

御子柴の腕を引っ張って、強引にベッドの上に移動させ、横になったところで御子柴の身体を押さえ、シックスナインの体勢になる。

先走りの溢れている先っぽに舌を絡めると、御子柴の身体がびくりと震えた。

 

「んっ!!」

 

震えた腰は押さえつけて、先っぽを緩く咥えたり、鈴口を舌先で突くと、御子柴の手がシーツを掴んだのが視界の端で見えた。

御子柴の方は俺のモノを口でする余裕はあまりないらしく、軽く指や舌が触れてくるだけだ。

このぐらいなら、やり過ごせる。

 

「ちょ……っと、先輩、待っ……う、あ」

「さっきまでの勢いはどうしたよ?」

 

俺の方は逆にさっきよりも余裕が出来たから、ここぞとばかりに攻めていく。

口の中で固さを増したのが分かって、つい笑ってしまいそうになった。

 

「だ、から、動けなくなる……って、言った、のに……っ!!」

「聞いたけど、動けなくなるまでが早いな」

「ひ……! あっああ、せん、ぱ、あっ……!」

 

孔の方にも指を伸ばすと、切なさそうな声が上がる。

そろそろ慣らし始めて大丈夫だろうと、先日も使った使い切りの潤滑剤を出して、御子柴の中に指を挿れる。

この前みたいなキツさはなさそうなことに、少し安心する。

一晩セックスしたことで、身体の方も感覚取り戻したか。

 

「…………っ、あ、はっ……」

「挿れても大丈夫そうか?」

「多分、大丈夫、です……」

「後ろから挿れる。うつ伏せになって、腰少し上げろ」

 

それでも、念の為に挿れるのに比較的楽な体勢を選ぶ。

御子柴のモノから口を離して身体を起こすと、御子柴が俺の言ったとおりの体勢になったから、片手で御子柴の腰を支えつつ、もう一方の手を自分のモノに添えて、無理のないように御子柴の中に挿入を始めた。

 

「ふ……っ、あ、く……んんっ」

「…………はっ」

 

この前みたいなキツい締め付けはなく、根元まですんなりと挿れられた。

御子柴の中に全部収めたところで、背中に被さって肌を重ねると、温かいと小さな呟きが聞こえる。

無理はさせてないようで些かほっとした。

 

「キツくねぇか?」

「ん……平気です」

「動くぞ」

「ん……っ」

 

御子柴の背中に一度キスしてから、身体を起こし、ゆっくりと動き始める。

動きに合わせて、御子柴の背が微かに震えるのが見えて、様子を見ながら動き方を変えていった。

流石に、今週始まったばかりで先日みたいに三回ヤるなんて真似は無謀だろうから、一回に時間を掛けるつもりで強い刺激は与えないようにする。

そうして、ゆっくりと動いていると御子柴が何かを掴もうとしたのか、手を伸ばしたのが見えた。

 

「ちょっ……と、待った、せんぱ……っ」

「ん?」

「週の頭から、中に、出されるのは……っ、身体の方が、キツい……んで、ゴム使って貰いたい、んですけど、も」

「後始末だったら、やってるだろ?」

「そ……いう、問題じゃ、なく、て……っ! も、若くねぇから、中に出すと、ダメージ残る……んですっ……って、あ、ああ!!」

 

ダメージとは言ってくれる。

まぁ、実際セックスした後に尾を引くのは、受け入れる側の御子柴だってのは分かっているが、ダメージって言われ方をされるのは少し面白くない。

さっきよりも強い動きにして突き上げると、こいつの腰を支えている俺の腕に、御子柴が手を伸ばして触れてきた。

多分、動くなって意思表示なんだろうけど、それは汲んでやらない。

代わりに、御子柴の耳元で低く囁く。

 

「ダメージなんて言われると、余計残してやりたくなるよなぁ」

 

離れていても、俺を忘れられないように。

俺と交わった痕跡が何日も残っているようにしてしまいたい。

御子柴が掴んでいる俺の腕に軽く爪を立ててくるも、希望に応じてやる気はない。

 

「大体、中に出されるのがキツいなら、挿れる前に言……ああ、そうだ。俺も着けるのあんま好きじゃねぇけど、おまえもゴムだと感覚おかしいっつってあんま好きじゃなかったよな」

「ん!!」

「……っと」

 

言った途端に強い締め付けが来て、思わず声を上げる。

 

――何か……違和感っていうか、ゴムが擦れるのか、少し痛い……ような感じなんすよね。

 

昔、初めてセックスしてから、数ヶ月経ったくらいの頃に気まぐれにゴムを使ってみた時だったか。

ずっと、生で中に出してヤッてたけど、御子柴が腹が下しやすくてしんどいと言ってきたから、それならって使ってみようってことになったんだよな。

結局、言ってきた当の本人が、その後ゴムを使うのに乗り気じゃなかったし、こっちとしても感覚がやっぱり鈍るしで、ほとんど使わなくなった。

それに――。

 

――女が中に出される時もこうなんかな。

 

いつだったかの行為の後、それを言った時の御子柴は半分寝ぼけていたんだと思う。

とろんとした目で独り言のように呟いたところに、どういうことだと聞いてみたら、可愛い答えが返ってきた。

 

――深いとこまで、侵食されるっていうか、先輩に染められるって感じするんすよね……他に誰も入って来ないようなところにくる、から……

 

そのまま、御子柴は眠りに落ちたのを考えても、本人はそんなのを言ったことは覚えていないかも知れない。

が、俺に染められるって言葉で胸が一杯になって、眠った御子柴につい何度もキスをした。

恐らく、当時の感覚は今も変わっていないだろう。

腰を支えていた手を前に回して、御子柴の腹を優しく撫でてやると、息を飲んだ音が聞こえた。

 

「おまえ、何だかんだで中に出されるの好きだろ?」

「や……ちょ……っと、腹触り、ながら……言わないで、くださ……っ!」

 

やはり、俺の言葉に否定してこない。

寧ろ、中がびくびく震えて、心地良い締め付けがくる。

こんな反応されたら、興奮しないわけがない。

今更、こいつ相手にゴムなんか使えるか。

 

「最初に言わなかった時点でおまえが悪い。せめて、後始末は丁寧にしてやるって」

「ん、あ、そういう、問題、じゃっ……ああ!」

 

切ない声が煽っていくのに、我慢出来ない。

速い律動に切り替えて、腹を触っていた手で御子柴のモノを握ってやると、びくりと身体が大きく跳ねた。

 

「うあ、あっ、ダメっ……あああ!」

「っ!」

 

俺が御子柴の中に出したと同時に、御子柴も出したから精液で手が濡れた。

……凄ぇな。

この前も同じタイミングでイッたと思ったら、今日もかよ。

身体の奥まで突き抜けていった快感に、こっちも呼吸が乱れて言葉が出ない。

どんだけ、身体の波長合ってるんだか。

イク時のタイミングがずれてたって、気持ち良さは十分にあるが、同時にイケた時の気持ち良さは堪らない。

繋がった部分が溶けそうで、後はどうにでもなれって感じすんだよな。

後から思い返すだけでも滅茶苦茶気持ち良いし、気分がいい。

土曜日なんかは、疲れも確かにあったけど、共に感じていたのは、心身共に久々に満たされた思いだった。

こいつもそうだったんじゃねぇのかな。

 

「……御子柴」

「ん……?」

 

ようやく、ちょっと呼吸が整ったところで御子柴に声を掛ける。

 

「おまえ、土曜日はずっと俺のこと思い出したりしてたのか?」

「っ!」

 

御子柴の中が返事をするかのように震えた。

ただでさえイッたばかりで熱くなっている中が、気持ち良く蠢く。

この前も終わった後は一応後始末はしていたものの、合計三回中に出したし、今の流れからすると土曜日は相当身体にきていたってことじゃねぇのかな。

御子柴の肩にキスを落とすと、微かな喘ぎが聞こえて、身体が小さく跳ねたのに、再び興奮が頭をもたげ始める。

……ああ、ホント堪んねぇな。

こんなに気持ち良かったっけ、こいつとのセックス。

 

「……悪い。もう一度したくなった」

「っ! だから、今日は週の頭だって……うあ……あ!」

「おまえが煽ってん、だろ……っ」

 

俺の挙動で御子柴がダイレクトに反応してるのを感じて、抑えられる訳がない。

今度は顔を見ながらしようと、抜けないように気をつけながら、御子柴の身体をひっくり返す。

動揺を隠せない表情にも、さらに興奮を煽られていくだけだ。

再び、御子柴の弱い部分を擦っていくと、御子柴のモノもまた固さを取り戻す。

この様子なら、続けても大丈夫そうだと、遠慮無しに擦り上げる。

 

「それに、今週はもうプロジェクトの会合がねぇし、な……っ」

「ふ……あ、やっ、だか、らっ……て!」

 

言葉はかろうじて止めようとしているものの、御子柴の足は俺の腰に絡んで来ている。

意識しているのか、無意識なのか。

どっちにしても可愛いやつだ。

 

「せん、ぱ、い……っ!」

 

呼ばれたのには、強い突き上げで返す。

言葉にならない、断続的な悲鳴が耳から離れなくなっていく様に、もっとと意識の何処かが欲求する。

もっと欲しい。御子柴の隅々まで貪りたい。

見下ろしている顔はあまりにも扇情的だ。

ふいに、俺の手に御子柴の手が触れてきたから、その手に指を細かく絡めていく。

御子柴も笑いながら指を絡め返してきた上に、腰も動き出したのが嬉しい。

求められているというのが伝わるのは、本当に堪らない。

 

「あ、あ、ヤベ……イキそ……っ!」

「イケよ、多分、タイミング合う、から……っ!」

 

もう、それは予感じゃなくて確信だ。

 

「ひあ! あっ、あ、やっ……あああ!!」

「んっ!!」

 

お互いの絡めた指に力が入る。

案の定、ばっちりタイミングが合ってイッた。

その瞬間の気持ち良さと言ったら。

 

「…………ヤベぇ、溶けそ……」

 

御子柴に何もかも持っていかれそうなのが、嬉しくもあり、怖くもあるが、混じり合って一つになれたって感覚が強すぎて、誘惑に抗えそうにない。

有り得ないけど、このまま繋がった部分が溶けたりしたら、どうなるのか何て考える。

家に帰らずに、一晩中我を忘れて抱き合っていたい。

それは無理だと分かっているから、せめてキスすることで気を紛らわそうとしたが、濡れた熱い唇はいつまでも吸っていたい欲求に駆られる。

…………まだしばらくは、御子柴と身体を離すことを考えたくなかった。

 

***

 

「じゃ、先に帰るな」

「お疲れ様です、部長!」

 

自分の仕事は一通り済ませたところで、帰り支度をし、まだ残っている部署の面々に一声掛けて退室する。

上司がいつまでも残ってると、部下の方が帰るに帰れないから、必要な仕事が終わったら、さっさと帰るのも上司の役割だ。

どうせ、しばらくはプロジェクト絡みで帰るのが遅くなる日があるんだし、下手に怪しまれないように帰れる時には素直に帰っておかないとな。

先週の金曜日は泊まりにしちまったことだし。

本音を言えば、特別予定のない平日なら、御子柴の顔を見に行きたいとこではあるが、今は顔を見たらそれだけで済ませられる自信もあまりない。

エレベーターで一階まで降りて、出ようとしたところで、ふと残業に備えての夕食を買いに行っていたらしい社員の会話がすれ違いざまに耳に届いた。

 

「何か、凄い綺麗だったよな-、今の女!」

「そうそう、知的美人って感じ! 足もすらっと綺麗でさー。でも、どっかで見たことあるような感じじゃね?」

「何だろ、芸能人とかでいそうではあるよなぁ」

「俺も見たことありそうな気したなぁ。……何だろ、アナウンサーであんなのいなかったっけか?」

 

そんな会話内容に、ついプライベートの方のスマホを確認する。

もしやと思った相手からのメールは入っていない。

が、何となく『今の女』というのはそいつを指しているような気がする。

心当たりがあるといえばあるし、確か今日から休みに入ると、朝のニュースで他のキャスターが言っていた。

少しだけ身構えて会社のビルを出ると、予想していた通りの相手が少し先の通りでスマホを手に何やら操作していたのが見えた。

ウイッグと眼鏡で普段と装いは違っていても、あのイケメン面はそんなので隠しきれるようなものじゃないから、どっちにしろ人目は引く。

ここにいるってことは、俺に用なんだろう。

そいつのいる方向に向かって歩くと、直ぐに俺に気付いたらしく、スマホから顔を上げた。

 

「ご無沙汰してます、先輩」

「……こんなとこで、何してんだ鹿島」

「先輩を待ってたんです。ちょっと話がしたいなーと思って。一時間くらいお時間大丈夫ですか?」

 

御子柴と再会して一週間。

そろそろ、こいつに話が通っていてもおかしくないとは思っていた。

相変わらず御子柴と鹿島は仲が良いらしい。

話ってのは、十中八九御子柴のことだろう。

 

「ああ。……隣の駅近くに個室のあるちょっといいバーがある。そっちでいいか、高給取り」

「やだなぁ、先輩こそ高給取りのくせに何言ってるんですか。落ち着いて話が出来そうなところならいいですよ」

「おまえ、目立つんだよ。個室のあるとこじゃないと、話も出来たもんじゃねぇからな」

 

言いつつ、女房に夕飯不要の旨をインスタントメッセージで送っておく。

今日は二時間くらいなら大丈夫だろう。

後で一応、鹿島に会っていたことだけ言っておくことにしよう。

女房が鹿島のファンなのが、こういうときは幸いだった。

 

***

 

「良いお店知ってますねー。流石、先輩」

「おまえほどじゃなさそうだけどな。おまえこそ、色々良い店知ってんだろ。今度商談に使えそうなところを教えろよ」

「いいですよー。私も教えて貰って良いですか? ……お店じゃなく、御子柴のことですけど」

 

店に入って早々、注文をするや否や、単刀直入に本題を切り出してきた。

まぁ、回りくどく聞かれるよりは分かりやすくていい。

 

「……御子柴がどうしたって?」

「先輩の会社と、御子柴の会社とでプロジェクトが始まって、それの統括が先輩だって聞きました。それで久々に先輩に会ったって」

「耳が早いな。あいつの会社、良い仕事するって評判だったからな、一緒に仕事してみたいと思っていた。久々に会ったけど、相変わらず御子柴はイケメンだな」

「御子柴は偶然だったって言ってたけど、偶然じゃないんでしょう?」

 

少し険しくなった表情でそう問いかけられる。

 

「……偶然でも、そうでなくても、おまえには関係ないことじゃねぇの、鹿島」

「やっぱり偶然じゃないんですね」

「…………何処かの誰かさんが、あいつの居場所については完全にシャットアウトしてくれたもんでな。知るなら自分で動くしかなかっただけのことだ」

 

勤務先だけは変わっていなかったのが幸いだ。

おかげで会うのにも不自然にはならない形で再会に持っていけたのだから。

 

「私の所為だって言うんですか」

「そんなつもりはねぇよ。元を正せば俺の所為だってのはちゃんと分かっている」

「…………分かっているのに、御子柴に手を出してしまえるんですね、先輩は。結婚しているくせに」

 

御子柴のことだ。

自分から口にしたっていうよりは、つい態度や言動で悟られたって形だろう。

元々、誤魔化しが得意なヤツじゃないし、相手が鹿島ならそれこそ誤魔化すことなんて出来ねぇはずだ。

 

「……双方合意の上だぞ。いい大人なんだし、考えた上での判断だ」

「合意だったらいいってものでもないでしょう。先輩は御子柴の性格知ってて、合意にさせるよう持っていってるんでしょうし」

 

酒も料理も美味い店なのに、いつもに比べて味がしないのは、抱えている背徳感の所為かも知れない。

御子柴との再会に漕ぎ着けたのも、再会した御子柴が俺を拒めないよう、事を運んでいったのは俺だ。

結婚している身でそれを実行した自分が卑怯なのは自覚している。

ただ、それでも。

 

「いくらおまえが御子柴の親友で、俺の後輩でも、結局は俺たち二人の問題なんだがな。踏み込み過ぎだろ」

 

口を挟まれたくないってのも、正直なところだ。

 

「踏み込み過ぎなのは分かってます。……でも、私は大事な親友が泣くところを見たくないんです」

「……そんなに酷かったのか」

 

十数年前、連絡の取れなくなった御子柴について、鹿島に問いただした時、こいつにはキッパリと断られた。

以来、鹿島との間で話題には出さないようにしていたが、忘れたことはない。

鹿島が本気で怒っているっていうのが伝わったのは、あの時くらいだからだ。

 

「――後にも先にも、あんな御子柴を見たのはあの時だけです」

 

鹿島の声が心なしか冷ややかに聞こえた。

 

「先輩だって、御子柴が器用じゃないの知ってるじゃないですか。結婚しても関係持ちたいなんて、あいつがそれで平気なわけないでしょう」

「……だよなぁ」

 

多分、そこであいつが平然としていられるような人間だったら、俺は御子柴に執着なんてしてなかっただろう。

今だって、苦しい思いをさせているのは分かっている。

月曜日、御子柴とホテルに入る前に、隙を見て結婚指輪を外しておいたら、複雑そうな表情を浮かべていた。

恐らくは、外された状態が嬉しく思ったのと、申し訳なく思ったのとが入り交じっての感情だろうって予想が付く。

 

「だったら」

「それでも、他のヤツになんて渡したくねぇんだよ」

 

別れていた十数年の間。

結局、御子柴が他のヤツとは付き合わないままだった、なんて知ってしまった今となってはなおさらだ。

手放したくない。忘れられたくない。

あいつの中に、俺の存在を刻みつけておきたい。

二度と離れようなんて思わないように。

 

「独占欲にも程がありますよ、先輩」

「……そうだな」

「奥さんと別れるつもりがないなら、不毛な関係は止めといたらどうですか」

「…………んー……」

「……? 先輩?」

 

つい口を濁したが、鹿島は目敏くこっちの様子に気付いたらしい。

訝しげに首を傾げた。

 

「もしかして、うまくいってないんですか?」

「あー、いや。何でもねぇ。ちょっと色々思うところがあるってくらいだ」

 

世間体ってやつは面倒くさい。

が、それを結婚していない鹿島に言うのも気が引けた。

当時、何だかんだで最終的には結婚するのが無難だろうって決めて、行動したものの、今となっては色々後悔の種だなんて、それこそ自分勝手な意見だ。

結婚したことで自分の子どもを持てたことには感謝はしているし、一人息子は心底可愛いが、結婚せずに御子柴とあのまま付き合いを続けていたらどうだっただろうかと、この一週間思わない日はない。

確かにこの十数年、別れてしまったあいつにもう一度会いたくて、色々動いてきた。

家で待っている女房や子どもの為、ってのも皆無だったわけじゃないが、仕事の原動力はと言えば、御子柴の方だろう。

忘れられなかったし、忘れたくなかった。

何のことはない、不誠実なのは今に始まったことではなく、この十数年ずっとだったのだ。

身体の関係だけなら、ここ一週間の話だが、心の方は結婚前からずっとあいつに持って行かれてるままと言えた。

我ながら、酷い男だと思う。

 

「……鹿島」

「はい?」

「おまえは何があっても、御子柴の味方でいろよ」

「言われなくてもそのつもりですよ。……あー、もう! 私は生中もう一杯いっときますけど、先輩どうします?」

「俺はやめとく。というか、俺、家まではおまえ送っていけねぇからな。飲むなら程々にしとけ」

 

それ以上、鹿島は突っ込んで聞いてこなかった。

こいつとも付き合い長いから、悟られちまったかな。

琥珀色したビールの揺らぐ水面を見つめながら、自分の中での御子柴の存在の大きさに改めて気付いて、小さく溜め息を吐いた。

 

 

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