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Immorality of target 09<月刊少女野崎くん・堀みこ・R-18>

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若い時に付き合っていて、堀先輩の結婚を機に別れたけど、十数年ぶりに久々に再会したという流れの堀みこ。

ラブラブモードでの温泉旅行話、御子柴Side。嵐の前の静けさ。

初出:2015/04/19 同人誌収録:2015/06/14(Immorality of target。掲載分に多少の修正等あり)

文字数:13423文字 裏話知りたい場合はこちら

 

「おまえ、再来週の金曜日って休み取れるか?」

「は?」

 

堀先輩と再会してから、かれこれ一年近くが過ぎていた。

いつもと変わらない平日の夜。

セックスが終わって、堀先輩が帰り支度をしてる最中に、唐突にそんなことを言った。

 

「まぁ……多分、申請出したら通ると思いますが……どうしたんすか?」

 

今、うちの会社は繁忙期でもないし、有給の残りにも余裕がある。

特に休みの申請を出しても突っぱねられることはないだろうけど。

 

「俺、再来週の木、金曜って京都に出張入ったんだよな。で、金曜の午前中で仕事終わるから、休み取れるなら向こうで午後に落ち合って小旅行しねぇか。日曜の夜にこっち戻ってくるようにしてさ」

「…………大丈夫なんすか、それ」

 

俺としては嬉しいけど、奥さんにバレたらどう考えてもヤバいことになりそうだ。

 

「女房には京都に住んでいる友人のとこ寄りたいから、出張がてらに泊まってくるって、もう言ってある」

「……先輩」

 

俺に予定を訊く前に既に泊まるつもりだったらしい。

……ってことは、先輩のことだから宿の予約とかもとっくに済ませていそうな予感がする。

結構、用意周到だからなぁ、先輩。

 

「偶には二人で温泉でも入って、のんびりしてくんのもいいだろ。嫌か?」

「そんなわけねぇでしょう。俺は勿論嬉しいからいいですけど……ホントにそれで大丈夫だっていうんなら」

 

本当に先輩が奥さんや息子さんへの対処が大丈夫だったら、先輩と丸二日以上一緒に過ごせるなんて願ったり叶ったりだ。

何せ、再会したあの日以来、先輩が泊っていくようなことだってないんだし。

旅行自体も楽しみだけど、やっぱり先輩と一緒に長い時間過ごせるっていうのが楽しみで、早くも心が再来週の金曜日に飛び始めていた。

 

***

 

約束の金曜日。

前日から京都に入っている先輩が、仕事が終わり次第、駅まで迎えに来てくれるというので、待ち合わせした場所で先輩を待っていると、後ろから肩をぽんと叩かれた。

 

「待たせたな」

「あ、いや、まだそんな待ってなかったから大丈……」

 

言いかけた言葉は、先輩を見て続かなくなった。

トレンチコートを羽織ったスーツ姿のままではあるけど、ネクタイと眼鏡は外してあるし、髪も下ろしている。

普段、俺の家の中、さらに言うならベッドの上ではよく見る姿だけど、外でこういう姿になってるのって見ないから、少しどきりとする。

 

「……外でその格好って珍しいっすね」

「ま、仕事は終わったからな。まずはコインロッカーに荷物預けてから、そのまま昼飯行こうぜ。さっき、お好み焼きの美味い店聞いてきた。おまえがそれで良ければ、行ってみねぇか?」

「行きます!」

 

基本的に先輩がオススメしてくる店に、外れは少ないっていうのは経験則で知っている。

なんで、素直に先輩の誘いに乗った。

 

***

 

予想通り美味かった昼飯のお好み焼きを食いながら、旅行の話になる。

先輩は京都を訪れたのは何回目からしいけど、俺は京都に来るのは中学の修学旅行以来だ。

いや、場所の点を除いても旅をする機会がそんなにない。

俺のいる部署はそもそもあまり出張がないからだ。

あっても、日帰りできる範囲での場所だから、こういう風に出張にかこつけて旅行するようなことってホントないんだよなぁ。

かと言って、自主的に休暇を使って旅行しようって思う性質でもねぇし。

 

「俺、旅行すんの自体、かなり久し振りですよ」

「おまえ、趣味が基本インドアだもんなぁ。何年振りだよ」

「えーと…………あ」

 

記憶を辿っていって、思い出してしまった。

 

「うん?」

「……昔、先輩と付き合ってた時、東北に桜見に行ったことあるじゃないっすか。あの時以来です」

 

金曜の夜に移動して、土日で何カ所か桜の名所を見て回った。

特に桜のトンネルを、期間限定で運行しているスロープカーでくぐっていける所なんかは綺麗で、今でも目に焼き付いている光景だ。

あれから、十五年以上経つんだな。

 

「マジかよ。あれ、かなり前の話じゃねぇか。鹿島とは旅行行ったりはしてないのか?」

「日帰りできるような近場なら、そこそこ行きますけど、あいつ忙しい上に、下手に泊まりなんかになったら、週刊誌に載ったりしかねないじゃないっすか」

「……だったな。そういや、おまえ一度鹿島といるとこ撮られたよな」

 

十年くらい前、二十代の終わり辺りだったか。

俺の方は顔は載らなかったけど、鹿島と一緒に居るところを撮られたことがあった。

先輩もどうやらそれを知っていたらしい。

鹿島が直ぐに高校時代からの親友だときっぱり言ってくれたので、そう長いこと騒がれずには済んだけれども。

 

「しばらく、どこから聞いたんだかスカウトが何人か来ましたよ……。あれは正直うんざりでした」

「おまえ、イケメンだからなぁ。堂々としてりゃ、テレビ映えしそうだし」

「勘弁して下さいよ。そういうのに俺が向いてないの、先輩よく知ってるじゃないっすか」

「度胸さえあれば、そっち方面の仕事も出来そうなのに勿体ねぇよな。

ま、おかげでこうやっておまえとゆっくり旅を楽しんだり出来るから、俺としては良かったけど」

 

そう言えば、先輩とこんなゆっくり話をするのも、久々に再会した日以来かも知れない。

どうしても、普段は会っていてもそんなに時間に余裕ねぇから、食事する位はしても、後はセックスばっかりになっちまうし。

セックスはセックスで終わったら、先輩は自宅に帰っちまうから、その後ピロートークって流れにもならない。

勿論、だからと言ってセックスが嫌ってわけでもねぇし、寧ろしたいから文句もあるわけじゃねぇんだけど。

……いいよなぁ、こういうの。

普通の恋人同士の時間の過ごし方みてぇだ。

先輩と一緒に過ごしていくことに何の疑問も持たず、ただ楽しかったあの頃を思い出す。

 

「……何だ」

「ん? 何がっすか?」

「何か、おまえ笑ってるから」

「楽しいからですって。旅行久し振りだって言ったじゃないっすか」

 

さらに言うなら、旅行そのものよりは先輩と二人でいられるのが楽しいっていうのが正直なとこだけど。

大体、そうやって言ってくる先輩にしてからが、機嫌良さそうに笑ってる。

俺と同じような感覚でいるってのは、きっとうぬぼれじゃないはずだ。

 

「……そっか」

 

先輩が俺の髪を撫でながら、言うのも止めない。

普段なら、外で髪なんか触られたりなんかしたら、何処で誰に見られてるか分かったもんじゃないから、慌てて止めるとこだけど、知り合いのいない土地っていうところに開放感があったからなのか、止める気にはなれなかった。

 

「一服したら、少し観光しようぜ。おまえ、何処か行きたいとこあるか?」

「紅葉綺麗なとこ見たいっすね。今、こっち丁度シーズンでしょ?」

「そうだな。タイミングもいいし、行ってみるか。今のうちに煙草吸っとけ。主な観光名所は大抵禁煙だぞ」

「そんなん、分かってますって。喫煙者はどんどん肩身狭くなりますよね」

「だなぁ。まぁ、かといって煙草止められる気もしねぇから、仕方ねぇけど」

 

先輩の指が俺の耳をさりげなく一撫でして離れていき、触れられた場所がほんのり熱を持った気がした。

 

***

 

「……先輩」

「あ? 何だ?」

「ここ、一泊幾らぐらいするんすか?」

 

いくつか観光名所を回って、夜に差し掛かった頃に先輩が予約していた宿を訪れたけど、思わず、宿の部屋に着いて、部屋に案内してくれた仲居さんがいなくなった時点でそう聞いてしまった。

昔、先輩と一緒に旅行した時はまだ若かったのもあったけど、こんないい宿じゃなかった。

駅前からタクシーで移動してかれこれ三十分ほど。

静かな佇まいの茅葺の宿は品が良さそうで、門構えからして高そうだって思ったけど、見事に和洋折衷な宿の内部はどこもかしこも綺麗で風流を感じられたし、部屋の中には露天風呂なんてものまでついていた。

安く見積もっても三万じゃ済まねぇ気がする。

……確か、ここ二日連続で泊まるって言ってなかったか?

 

「さぁな。まぁ、俺もこういうとこ泊まるのは初めてだけど」

「ちょっ……! 金出しますから、幾らか教えて下さいって!」

 

今回の宿は先輩が出すから、俺は金払わなくていい、なんて事前に言われたけど、これは流石にはいそうですか、ありがとうございますと流せるレベルの宿じゃない。

 

「いらねぇよ。数年分の誕生日祝いとでも思っとけ」

「いやいやいや、そんな訳いかねぇでしょ!?」

「いいんだよ」

 

強引に押し切るつもりなのか、一向に値段を口にしようとしない。

スマホでひっそり調べるかとネットに繋いだところで、先輩に手にしたスマホを奪われた。

 

「ちょっと、先輩! 勝手に人のスマホ取らないで下さいよ!」

「おまえが調べようとするからだろ。……いいから、今回は大人しく受け取っておけっての」

「いくら何でも気が引けますよ! どう考えたって高いじゃないっすか、この宿」

 

一緒に旅して、時間を過ごせるのは嬉しいけど、必要以上にサービスされたい訳ではない。

裏に何かあるんじゃねぇのって怖くなるぐらいだ。

 

「なら、今日明日、外で移動する時の交通費とか昼飯代とかはおまえが出せ。それならいいだろ?」

「う……まぁ」

 

絶対、交通費や食費でチャラになるような値段じゃないんだろうけど、それ以上畳みかけるのもかえって大人げない気がして、仕方ないから引き下がった。

せめて、昼飯は少し贅沢にすることにしよう。

 

「分かりました。じゃ、その辺りは俺出しますんで。だから、スマホ返して下さい」

「俺と一緒にいるんだし、しばらくいらねぇだろ、これ」

「はぁ!? ちょっと、仕事のメールとか来る可能性だってあるんすけど!」

 

先輩が取り上げたのは俺との連絡用のスマホじゃない。

元々、俺が持っていたプライベート兼仕事で使っているスマホだ。

仮に見られたからって疚しいこともねぇけど、いくら何でも無茶苦茶だろう。

有給中って言ったって、仕事のメールが全く入らないとは限らない。

必要な仕事は片付けてきているし、緊急性があるようなものは早々来ねぇだろうとは思うけど。

 

「宿の値段調べたりしねぇか?」

「しませんって!」

「……じゃ、明日返してやる。どうせ、おまえ夜に仕事のメール入ることなんかほとんどねぇだろ。普段、俺と会ってる時、メールチェックしてんの見たことねぇし」

「あ、それは、いや、その」

 

そんな些細なことに気付いていたのかと、思わず返す言葉に詰まる。

確かにその通りではあるんだけどさ。

 

「少しの間くらい、余計なこと考えんなよ。俺のことだけ考えてりゃいいだろ」

「…………何すか、その極論」

 

ぼやきながらも、顔を近づけて来た先輩の意図を汲んで目を閉じたら、唇に温かい柔らかなものが触れた。

……結局、俺先輩に弱いんだよな。

誤魔化された気はするけど、大人しくスマホは諦めておいた。

 

***

 

「……凄ぇ。宿も豪勢なら、飯も豪勢だ」

「偶には悪くねぇ贅沢だろ」

 

大浴場の温泉と、部屋にある露天風呂とは温泉の質が違うってことで、夕食前に大浴場に行き、部屋に戻ったところで夕食が準備されていたけど、本当に幾らするんだろう。

二度とこんなレベルの宿に泊ることないんじゃねぇのって位だ。

どういうつもりだよ、先輩。

別れ話の前振りとかそんなんじゃねぇよなって疑いたくなるレベルなんだけど、これ。

牛のたたきは肉が蕩けるかってくらい軟らかくて滅茶苦茶美味かったし、松茸の土瓶蒸しも品の良い味付けで……とにかく、出てくる料理という料理は何もかも美味かった。

加えて、上げ膳据え膳の贅沢っぷりと言ったら。

食後には日本酒が運ばれてきて、微かに良い香りが漂った。

俺は余り日本酒は飲まないから銘柄には詳しくないけど、先輩はどうなんだろう。

 

「おまえ、日本酒はいけるか?」

「ああ、まぁ、ちょっとなら」

「ちょっといけるなら十分だ。どのみち、そんなに飲ませねぇよ。おまえ、下手に飲み過ぎると後々面倒くさいし」

「う」

 

……そうなんだよな。

アルコールが入りすぎるとイキにくくなる癖に、セックスはしたくなる性質なんだよなぁ、俺。

昔、これで何度か先輩にぼやかれたんだっけ。

 

「あ、俺注ぎます」

「ああ」

 

先輩が俺のぐい飲みに注いでくれたところで、先輩からとっくりを受け取り、今度は先輩のぐい飲みに注ぐ。

濁りのない澄んだ酒から、ふわりと優しい香りがした。

 

「先輩、これ飲んだことあるんすか?」

「いや。美味いって聞いたことはあるけど、飲むのは初めてだな。ま、飲んでみようぜ」

 

先輩にすすめられるままに、ぐい飲みに口をつけ、一口喉に流し込む。

 

「……美味ぇ」

「ああ、これは美味いな。凄ぇ飲みやすい」

 

先輩の言うとおり、口当たりが良くて飲みやすい酒は、かなり俺の好みに合っている。

今まで飲んだ日本酒の中で一番好きかも知れない。

つい、小鉢に入った肴にも手を出さないままに、ぐい飲みの中身を飲み干し、とっくりに手を伸ばそうとしたら、先輩に手を止められた。

 

「ダメだ。それ以上飲むな」

「えええ、一杯だけとか酷くないっすか!? 生殺しですって、これじゃ」

「それ以上飲まれると、生殺しにされるのはこっちだっつうの。……後でちゃんと続き飲ませてやるから」

 

先輩の手が浴衣の襟元から、するりと忍び込んできて、俺の鎖骨を撫でていく。

そのまま、胸の方まで滑り落ちていった手は、乳首を掠めていって、つい小さく声を上げてしまった。

俺の様子に、先輩が愉快そうな笑みを浮かべる。

 

「温泉効果か。いつもより肌触りいいな、おまえ」

「お互い様ですって。先輩の肌も触ってて気持ち良……ん」

 

俺が先輩の首筋に触れたところで、先輩に背を抱かれて、唇にキスされ、既に敷いてあった布団に誘導された。

アルコールの香りが漂う口付けに酔って、吐息が少し乱れていく。

食欲が満たされたら性欲かよって思わなくもねぇけど、俺もしたいことには違いない。

 

「……浴衣着たままって、やったことねぇよな、そういえば」

「そりゃ、浴衣着る機会自体がそんなないですし」

 

こうやって旅行に来た時に着るか、夏の祭りとかに着るかぐらいだけど、祭りはそもそもここ数年行ってない。

行っても会社帰りにふらっと寄るくらいだったし、何だかんだで浴衣着て祭り行ったのなんて、学生時代まで遡っちまう。

 

「じゃ、せっかくだからこのままやってみるか」

「あ……」

 

浴衣の上に羽織っていた、茶羽織だけ脱がされたところで、先輩の手が俺の浴衣の裾を割って入ってきた。

内股を探り始めた手のひらが熱い。

 

「ふ……」

「下着脱がしていいよな?」

「……ダメって言ったところで止めるつもりもねぇ癖に」

「何か言ったか」

「何でもないっす」

 

多分、聞こえてはいるんだろうけど、流すつもりなんだろうな。

下着を引きずり下ろされたのに続いて、浴衣も襟元から広げられ、右肩が露出されたところで、軽く歯を立てられた。

痛みよりは快感の方が先立って、つい足が突っ張る。

そこをすかさず広げられて、俺の足の間に先輩の身体が収まる形になる。

 

「ん……」

 

勃ちかけていたちんちんが、先輩に触られたことで完全に臨戦態勢だ。

衣擦れの音がしたかと思うと、先輩のちんちんも俺のちんちんに触れた。

先輩の先っぽが俺の裏筋に沿っていくように辿っていって、当たってる部分から気持ち良さが広がっていく。

 

「うあ、せん、ぱ……」

「ん……」

 

先輩の先走りが俺の裏筋を濡らしていきながら、俺の口元に手をもってきて、舐めろと言わんばかりに指を差し出す。

意図を悟って、先輩の指に舌を這わせるけど、目に映る光景が妙にやらしい。

指が引かれて、先輩が俺の膝を軽く手のひらで叩く。

 

「腰、少し上げて、足を俺の太股の上に乗せろ」

「んっ……あ、あ、そ……こっ……!」

 

腰を上げた途端に、さっき俺が舐めた先輩の指が後孔に触れた。

孔の周囲を焦らすように指先で突かれて、声を上げてしまったところで、場所を思い出す。

歯を食いしばったところで、先輩が小さく笑った。

 

「多少声上げたって聞こえねぇよ。他の部屋と離れてんの、さっき大浴場行ったとき確認したじゃねぇか」

「や、でも……人通りかからねぇとも限んねぇ、し」

「通んねぇよ。……日本酒載せた膳、引き取るのは明日の朝だ。声上げたって、俺しか聞こえねぇっての……っ」

「ああ、あ!」

 

いつの間にか潤滑剤も手元に置いていたらしく、小さな水音に続いて指が浅めの位置に入って来る。

慣らすためだって分かってるけど、奥には入れないで手前のところだけで指を動かされているのがじれったい。

深いところに熱い熱を埋めて欲しい。

 

「せ……んぱっ……中、奥……っ」

「指じゃ足りねぇって?」

「指じゃダメなのは、先輩、だって一緒……だろ……っ!?」

 

先輩のちんちんだって、ガチガチになってるのはさっき触れ合わせた時に確認済みだし、駄目押しのように手を伸ばして、先輩の股間に触る。

すっかり熱をもった固いちんちんが、俺の指と触れ合った時にびくりと震えた。

 

「……ま、そりゃそうだ。力抜け。もういいよな?」

 

頷くと指が中から抜かれて、すかさず先輩のモノが其処に触れる。

力を抜いたと同時に、先輩がゆっくりと挿入してきた。

 

「あ、は……あ、うあっ……!」

 

じわじわと熱が少しずつ深い部分までも犯していく感覚に、息を吐きながらやり過ごす。

 

「やっぱ、一杯で止めといて正解だな。ちゃんと勃ってるし、中も適度に柔らかくて熱いしで丁度いい」

「ん、あ、せん、ぱ……」

 

キスしようと先輩の顔に寄せた唇は、触れ合う直前で先輩の指に止められた。

 

「…………政行」

「え」

 

防がれたキスと唐突に告げられた先輩の名前。

そこに含まれた意味をイマイチ理解しきれずに戸惑う。

 

「いい加減、付き合いも長いんだし、今更、俺の下の名前を知らないわけでもねぇだろ。俺がおまえの先輩だったのは、それこそ二十年も前の話だぞ」

「ん!」

 

少し強めにちんちんを握られて、つい手の届く場所にあった、先輩の手の甲に爪を立てるように掴まってしまう。

 

「何、すか、いきな……りっ」

「いきなりでもねぇよ。……俺は時々、おまえの名前呼んでんのに、おまえはいつまで経っても先輩だし、敬語も抜けきらねぇし」

「なっ……だ……って、今更呼びずら……んっ、やあっ、ああ!!」

 

中を抉るように突き上げられたかと思えば、絶妙なタイミングで動きが止まる。

息を整えつつ先輩を見上げると、思いの外、先輩が汗を掻いていた。

……何だ、これ。何か……先輩に余裕がないように見えるのは気のせいか?

 

「じゃ、ずっとそうやって、俺のこと名前で呼ばねぇつもりかよ」

「え、あ、いや、それは――」

「実琴」

 

真っ直ぐに俺を見てくる目はいつになく真剣だ。

セックス中にこんな目するのも珍しい気がする。

 

「名前言えよ。減るもんでもねぇだろ」

「……それは、そうです、けど」

 

改まって促されるのも、かえって言いにくい。

ただ、先輩は確かに昔から時々下の名前呼んでくれはするんだよな。

それを口にするタイミングは、よりにもよってそこで呼ぶのかよと狡く感じる時もあるけど。

…………でも、俺は先輩に名前を呼ばれるのはやっぱり嬉しかったりする。

何だかんだで、下の名前呼んでくれるような相手って、他は親ぐらいだし。

ああ、それ考えたら、やっぱり先輩の方だって名前呼ばれたいよな。

どうしてだか、今の今まで想像もしてなかった。

けど、流石に呼び捨てには抵抗あるから……さん付け、かな。

意を決したものの、つい小さくなってしまった声で言ってみる。

 

「……政行、さん」

「…………聞こえねぇよ。もう一度」

 

……何か、凄ぇ恥ずかしいことしてる気分だ。

一種の羞恥プレイなんじゃねぇの、これって。

でも、言わないと先輩は動いてくれる気がなさそうだ。

結局、もどかしさもあって、聞こえるように再度名前を呼んだ。

 

「政行さ……あっ、ああ、ちょ、待っ……うあ!」

 

中でさっきよりも押し広げられた感覚が、快感をより強いものにする。

目一杯内側を埋められたようなそれに、衝撃を受け止め切れなくて、抑えられない声が派手に上がる。

 

「ちょ、なん……で、そんな、大きく、してんす、か」

「あ? そんなの、嬉しいからに決まってん、だろっ……!」

「ん、あ、やっ、ああ、そこ……あ!!」

 

繋がった場所からの衝撃に変化があった。

強く深く、奥へと貫かれて、勝手に背が弓なりに反ってしまう。

先輩は動く為に、俺のモノから手を離したのに、腹の奥深くからの快感がガツンと来た。

何かが普段と違う。

 

「ちょ……っと、待っ……動かな……んん!」

「……何だ、どうした」

「ひあっ!」

 

俺の耳に軽く歯を立てたと思ったら、次には舐めて。

それがまた快感を煽り立てていく。

いつもよりも強い感覚は、普段とは違うけど、妙な懐かしさもある。

こんな深いとこから得体の知れない快感が来るのは久々だ。

ドライオーガズム――昔、先輩と付き合っていた時に、何度か経験がある。

 

――何か、射精しないでイケると、女がイッた時の快感に近くて、普段の何倍も気持ち良いらしいぞ?

 

そうやって、先輩が言ってきて、初めてそれでイカされたのはいつだったっけ。

普段のセックスで射精するのだって、十分に気持ち良いけど、アレは本当にヤバいくらいに気持ち良すぎて――その分、身体の方の感覚がついていかない。

身体の隅々を突き抜けて、先輩に何もかも持って行かれてしまいそうなアレは嫌だなんて言わないけど、後々まで尾を引きすぎて怖い。

先輩と再会してからは、一度もなかったのに。

だけど、多分、これはあの前兆だ。

ちんちん触られはしたけど、今日は口でされたわけでもないし、特に尿道刺激されたりなんてこともされてねぇのに。

普段と特別違う事なんて、そんなないはずなのに、どうして――。

 

「怖……っ、何か、く……ああ、やっ!!」

「…………ドライイキ出来そう、なのか?」

 

どうやら、先輩も普段と俺の様子が違うことに気付いたらしい。

そして、予想通りというか、やっぱりというか。

それに気付いたところで、加減してくれるような人じゃない。

容赦無く、肉と肉をぶつけながら、強く突き上げてくる。

 

「何が、怖いことなんて、あるんだ、よっ」

「やだ、抑えられ、な……っ」

「っ……いいだろ、それ、で……っ!」

 

動く先輩を止めたくても、既に手にも足にも力が入らない。

 

「ああ、あああ!! ダメ、動かな……っ」

「無茶、言うんじゃねぇ……よ!」

「ひっ! あ、せん、ああ」

 

中で暴れる先輩が与えてくる刺激が良すぎて怖い。

身体中がいつもより熱くて、震えが収まらねぇ。

久々に底が全然見えない快感は、このまま死んでもおかしくないんじゃねぇかって気さえする。

 

「や、あ、ほん、と、怖……怖ぇって……! 動かな…………あっ、ああ、ひあ!」

「断る。……大体、何が怖いってんだよ。俺、おまえの一番近くに居て、抱いてんだろ、が」

 

どうなったって構わねぇよって、耳元で囁いたのが聞こえる。

 

「全部、曝け出せよ。受け止めて、やる、から……っ」

 

先輩の指も俺の手首に爪を立てるように掴んできて、もう限界だった。

 

「あ、あ、ああっ、い、あ、ああああ!!」

「実琴……っ!」

 

切羽詰まった先輩の声を聞いた刹那――そこで世界がホワイトアウトした。

 

***

 

「……気がついたか」

 

額を拭った冷たいタオルの感触に目を開けると、少し顔を曇らせた先輩と視線が合った。

 

「え……あ、俺……」

「ちょっとの間気失ってた。寝てる間に軽く後始末はしといたけど、身体平気か?」

 

言われてみれば、身体が何となくさっぱりしてる。

中も違和感はまだ残っているけど、出されただろう精液は掻き出されているのは感覚で分かる。

さっきまで散々乱れていた浴衣もちゃんと整えられていた。

下着こそ履いてないままだったが、少しおっかなびっくりで身体を起こしてみる。

まだ横になっていたい気怠さはあっても、痛みはどこにもなかった。

とりあえず、今のところは、と付け加えておく必要はありそうだけど。

……後々、筋肉痛はがっつり来るだろうな。

明日、ちゃんと動けるかな、俺。

 

「……大丈夫っす」

 

俺の返事に、ようやく先輩も緊張が解けたらしく大きく息を吐いて、俺を抱き締めてくれた。

ごく、小さな呟きで良かったって聞こえて、先輩の背を軽く撫でる。

そりゃ、驚くよな。

身体を繋げてる相手が気を失っちゃ。

大体、状況は分かっちゃいたんだろうし、ドライで気を失うのも初めてじゃないけど、こんな風になったのってかなり久し振りだ。

 

「……久々じゃねぇの、ドライでイクなんて」

「俺もびっくりした。……尿道の方刺激してねぇのに」

「ま、相性合うってことなんだろ。普段と違う場所とシチュエーションだったしな。……実琴」

「ん……」

 

唇を重ねると、まださっきの余韻が残ってるのか、腹の奥が疼いた。

あー……やっぱり、ドライでイクと後々まで残るな。

まだしたいような感覚はあるけど、これ以上は絶対身体がもたないって直感が告げている。

若いかどうかってのは影響が大きい。

 

「せんぱ……」

「政行」

「……そんなに名前呼ばせたい……のかよ」

 

敬語になってしまいそうだったのを飲み込むと、先輩が俺の髪を撫でてきた。

 

「やっと聞けたんだぞ。そりゃ、呼んで欲しいに決まってる。大体、おまえだって俺が名前呼んだら、締め付けてくんだろが」

「締め……や、だって、そりゃ、興奮……する、し」

「だろ? ……俺だって、そうなんだよ。好きな相手にならいくらだって名前呼ばれたいに決まってる」

 

好きな相手、と言葉にされて顔が熱くなる。

……いや、分かってはいたけど。

再会した時から、身体だけが目的じゃないってのは伝わってた。

でなきゃ、会いたいとも、触れたいとも思ったりしない。

まして、こんな風に旅行なんか一緒に来たりもしねぇ。

名前呼ばれるってのは、やっぱり特別な感じすんだよな。

 

「政行、さん」

「ん」

「政行さん……」

「おう。呼べ呼べ。……そして、とっとと慣れちまえ」

 

……くそ。狡ぃ。

そんな嬉しそうな顔してくるとか、反則だろ。

凄ぇこっちとしては気恥ずかしいのに。

 

「おまえのそういうとこ、ホント可愛くて好きだぜ、実琴」

「…………っ」

 

トドメとばかりにそんな言葉まで吐く。

ダメだ、どんどん顔が熱くなる。

顔を上げていられなくなって、先輩の肩に額を押しつけた。

 

「……何だよ、その反応」

「や、だって、あんまり、その……好き、なんて言ってくれねぇ、から」

「…………おまえだって、滅多に言わねぇだろ」

「言っ……言って…………あ」

「ねぇだろ?」

「ねぇ、かな……」

 

思い返したら、寧ろ俺の方が先輩に好きって言ってないような気がしてきた。

いや、あえて言わないようにしていた部分も正直ある。

……この人は俺一人のものじゃない。

いくら好きって言葉を重ねても、それを思うと何処かで気が咎めてしまう。

視界に入った先輩の浴衣を軽く掴むと、先輩に両方の頬を捉えられて、顔を上げさせられた。

 

「実琴」

「……何すか」

「俺のこと好きか?」

 

間髪入れずに頷いたが、先輩はそれで解放してくれなかった。

 

「だったら言葉にしろよ。……聞かせろよ」

「………………好き、です。けど」

「けど?」

「……や、やっぱり何でもね……んっ!」

 

再び重ねられた唇は、直ぐさま強く吸われ始める。

先輩の舌が口の中で動き出した途端、また下腹部に熱が集まり出す。

 

「う、あ、ちょ……っと、また……っ」

「悪ぃ。我慢出来る気がしねぇ」

「ふっ……」

 

遠慮無く局部を探り始めた手が、幹から袋、さらにその後ろ側もと、くまなく触っていく。

再度訪れてしまった衝動を抑え込める気は既にしない。

言いかけて中断した言葉が不満なんだろうって分かったけど。

 

「……っと、狡、ぃ」

「……知って、る……っ」

「あ、は、ああ!」

 

どうにか、一言不満を口にするので精一杯だった。

乾いていたはずの場所は、難なく先輩の指を飲み込める。

いや、指だけじゃなくて、きっと先輩自身も――。

 

「せん……ぱ……」

「政行だって言ってん、だろ、が」

「あ、ああっ、まさ、ゆ、あーっ!!」

 

抜かれた指の代わりに其処を再び埋めてきた熱は、焦がされそうな程に熱かった。

 

***

 

「せっかくの京都なのに、一日でかなり疲れたんすけど……」

 

勿論、疲れた理由は観光疲れではない。

かろうじて、朝食で起きられはしたものの、結局食った後はぐだぐだしてしまって、いざ観光に回ろうってなったのは昼過ぎからで、今はもう夕暮れ時だ。

紅葉狩りと神社の参拝を目的に昇っている石畳の階段は、殊の外身体に堪えている。

力を入れたくても、上手く入らない状態になってしまっている足腰がマジで辛い。

時間帯の所為か、然程人目につかないでいるのが幸いだ。

つい、先輩に遅れる形になってしまったが、数段先に昇っていた先輩が掴まれとばかりに手を差し出してくれたから、素直に甘えて手を借りる。

手すりと先輩の手に掴まることで、ようやく止まってしまいそうだった足が動く。

 

「おまえ、体力ねぇよな」

「せ……政行さんがありすぎなんだろ」

 

昨夜、俺がドライでイッたことを差し置いても、体力というか、精力というか、同世代のやつらを考えても、余裕があるように思える。

先輩だって、昨夜二回はイッてんのに。

どうなってんだよ、この人。

 

「おまえ、ちょっとジムで鍛えるとかしてみればいいんじゃねぇの。いつまでも腹出ないからって油断してると、そのうち一気に来るぞ」

「あー……考えときます」

 

インドア派には、正直楽しくないお誘いだ。

つい、先輩から目を逸らしながら言ったら、溜め息が聞こえた。

 

「考えとく、じゃなくて実行しろよ。……早朝同じジムに通うようにすれば、また会う口実が増えると思えば悪くもねぇだろ」

「それは……そう考えたら悪くねぇけど。政行さん」

「ん?」

「本当に大丈夫なのかよ?」

 

平日だって、短い時はホントに数分だけとはいえ、かなりの頻度で会ってる。

さらに今回の旅行に、朝のジム通いまで追加された日には、いい加減何かを感づかれてもおかしくないんじゃないだろうか。

それまでの生活との変化がありすぎる気がする。

先輩と一緒に居られる時間が多くなるのは、本当に嬉しい。

でも、勘ぐられて関係がダメになってしまった時を思うと怖い。

先輩が俺一人のものじゃないって分かっていても、俺は既にこの手を離すことが考えられずにいる。

ただでさえ、男同士ってのに加えて、先輩の方は妻子持ちだ。

人に堂々と言えないような関係なのに、それでも先輩を――政行さんを好きだって感情は抑えられない。

 

「……いい加減、バレちまった方が楽な気もしてるんだよな」

「…………今、なんて」

 

ぼそりと聞き逃せない不穏な言葉が聞こえた気がした。

 

「何でもねぇよ」

「待った! 何でもなくねぇだろ!? 言っとくけど! 俺、奥さんと別れて欲しいとか思ってねぇからな!?」

「……実琴」

「息子さん、今受験生じゃねぇか。奥さんのお父さんだって、会社の上司なんだろ? 万が一にもバレたらとんでもねぇことになるのは、政行さんの方が分かってんじゃねぇのかよ……」

 

そりゃ、本当に心の底から別れずにいて欲しいかなんて問われたら、断言までは出来ないのが本心だけど、実際現実的じゃない。

それこそ、先輩が今の会社で築き上げてきた全部を失うことになりかねない。

掴んだ手をぎゅっと強く握ると、先輩の方も俺の手を強く握り返してくる。

 

「……そうだな。分かってる。少なくとも『今』はマズいって、ちゃんと分かってるから、心配すんな」

 

さりげなく含まれた『今』って言葉に引っかかりはしたが、それを問い詰めたら取り返しのつかないことになりそうだったから、それ以上は何も言わなかった。

 

***

 

「あー……本気で帰りたくねぇ……」

 

結局、土曜日の夜も、金曜日の夜とあまり大差のない過ごし方をしてしまって、チェックアウトの時間を少し延長させて貰うハメになった。

流石にいい宿だけあって、全く態度は変わらなかったけれど、宿の人にどう思われたんだかを考えるのは少し怖い。

今、冷静に考えると、いい歳した男二人の過ごし方じゃねぇよなぁ。

せめて、昨夜露天風呂でついヤッちまっただけでも、バレてないことを本気で祈る。

どうにか状態を立て直して、今日はあまり身体に負担にならない程度の観光にとどめ、夕食をとってから新幹線に乗り込んだ。

旅行での疲労感や、明日は普通に仕事があるという憂鬱さもあるが、一緒に過ごした時間の楽しさに、この旅が終わってしまうことが堪らなく寂しく思えた。

一応、明日の夜もいつもの平日みたいに、先輩と会う約束はしてるんだけどな。

何で、こんなに名残惜しいんだか。

 

「同感だな。……実琴、ちょっと手貸せ」

「え、ちょ……」

 

手を取られて繋がれ、一瞬慌てるも、すぐに腰から下にブランケットが掛けられた。

ブランケットで手の部分を覆うようにすると、ぱっと見は手を繋いでいることなんて分からない。

新幹線での移動は二時間半弱。

……だったら、この位いいかな。いいよな。

あと、ちょっとだけ、先輩を独り占めしていても。

 

「政行さん」

「ん?」

「……旅行、凄ぇ楽しかった。ありがとう」

「俺もだ。……また何処か旅行しような」

「ん……」

 

きっと、しばらくは旅行するなんて難しいだろうけど、『また』って言葉がとても嬉しかった。

繋いだ手の指を絡めて、温もりを感じながら、疲労感に負けて目を閉じるとすぐに眠気が訪れる。

せっかく先輩と一緒にいるのに勿体ねぇ気はするけど、強烈な眠気にはどうしても勝てなかった。

途中で少し目覚めかけた時に、先輩の肩に寄りかかってしまっているのには気付いたけど、あえてそのままにして、新幹線が目的地に着いてしまうまではと再び目を閉じた。

 

 

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