> Novel > Novel<月刊少女野崎くん・堀みこ> > Immorality of target<月刊少女野崎くん・堀みこ・R-18> > Immorality of target 19<月刊少女野崎くん・堀みこ・R-18>

Immorality of target 19<月刊少女野崎くん・堀みこ・R-18>

いいね送信フォーム (0)

若い時に付き合っていて、堀先輩の結婚を機に別れたけど、十数年ぶりに久々に再会したという流れの堀みこ。

離婚話が片付いての久々のいちゃいちゃ。(堀Side)

初出:2015/06/03 同人誌収録:2015/06/14(Immorality of target。掲載分に多少の修正等あり)

文字数:11724文字 裏話知りたい場合はこちら

 

早く離婚話に片をつけたかった俺としては、理由はどうあれ、弥生が折れてくれたのは助かった。

 

――政弥の言うように、元に戻る見込みがないのなら、早く終わらせてしまった方があの子の為にいいのでしょう。

――弥生。

――貴方や御子柴さんの為じゃないわ。政弥の為、そして私自身の為よ。

 

離婚に伴う様々な手続きや、公正証書の作成は面倒だったが、これが終われば気兼ねなく実琴と一緒に過ごしていけるという楽しみを原動力にしてこなせた。

流石に離婚届くらいは二人で提出しに行こうと決めて、土曜日の午後に二人で役所に向かった。

弥生のスーツ姿は政弥の入学式や卒業式等でも見かけていたはずだが、別れるという意識があるからなのか、結婚前のまだこいつが仕事していた頃を思い出す。

既に離婚届は全ての項目を記載済みだったから、本当に役所の窓口に提出するだけで、十数年の結婚生活はあっけなく終わった。

肩の荷が下りた気分で、ほっとしたのも束の間。

 

「……随分、晴れ晴れとした顔をするのね」

 

弥生が溜め息交じりに呟いたのには、流石に良心が咎めた。

つい、顔に出してしまっていたらしい。

 

「悪い」

「いいわよ。今更取り繕わなくても。……ゴールデンウィークに引っ越しって形でいいのね?」

 

引っ越しと言っても、家財や家電は全部弥生に譲り渡すから、俺が持っていくのは服や手放したくない本やCD等でそんなに多くはない。

が、仕事の引き継ぎもあるから、やはりゴールデンウィークに入るまでは引っ越し作業にほとんど手をつけられそうになかった。

 

「ああ。悪いがもう数日荷物を置かせて貰う。あとこれ。金に換えるなり、取っておくなり好きにしろ」

 

もうずっと嵌めていなかった結婚指輪を弥生に渡す。

弥生の方も、今日は指輪をしていなかった。

弥生は少し躊躇っていたようだが、結局そのまま指輪を受け取り、ハンカチに包んで、ハンドバッグの中に入れる。

 

「……分かったわ。政弥に渡しても?」

「ああ、構わねぇよ。そういえば、政弥は名字このままにするって?」

「ええ。宮元の名字より堀の名字の方が響きが好きだからって。高校在学途中で変更するのも面倒だからっていう理由もあるんでしょうけど」

 

弥生が複雑そうな表情で言ったところを見ると、政弥の意思を尊重しているものの、あまり納得はしていなさそうだ。

一緒に暮らす母子で名字が違うのも居心地悪いだろうしな。

勿論、堀の名字にすることを決めたのは政弥だから、俺がどうこう思うのも筋違いなんだろうが、それでも何となく申し訳ない気分にはなった。

最初、政弥との面会も月に一度となっていたが、最終的には政弥が会いたいときに会うという形になったし、母親の弥生としては、離婚の原因になった父親の方に、息子が肩入れするような状態になるのは内心不満があるだろう。

 

「……悪い」

「やめて。そこで謝られても困るわ。…………その、向こうの怪我の状態はどうなの?」

「もう抜糸は済んでるし、傷は塞がっている。痕を出来るだけ残さないようにする為に当面テープはつけてるけどな」

「……そう」

 

弥生の方から実琴側に慰謝料を請求するような話も出たが、弥生が実琴に怪我させたことによる慰謝料と治療費との兼ね合いで、そっちは相殺された形になった。

話し合いの末に、夫婦の貯金も慰謝料等を差し引いても、ある程度手元に残ってくれている。

義父、いや義父だった人の働きかけだ。

正直助かったと思う一方、弥生と結婚していた間、随分良くしてくれていたのも事実だから、その点は申し訳ないの一言に尽きる。

その辺りも弥生からしたら面白くないんだろうけどな。

 

「…………怪我をさせたのは申し訳ないと思っているけど、それでも貴方たちにお幸せにとは言えないわ。感情ではまだ納得出来ないもの。気持ち悪いっていうのが正直なところだし」

「だろうな。……無理もないのは分かっている。ただ、実琴にはこれ以上関わらないでくれ。あいつが悪いんじゃない」

「関わらないわよ。……自分が惨めになるだけだから」

 

弥生が自嘲するような笑みを浮かべて、歩いていた足を止めた。

 

「もっと早く気付くべきだったんだわ。貴方の目が私を見ていなかったってことに。貴方は最初から御子柴さんしか見てなかったのね」

「弥生」

「すっかり騙された。プロの役者さんを数多く知ってる鹿島さんが絶賛する演技力を持つ貴方ですもの。私相手じゃさぞ張り合いもなかったことでしょうね」

 

言葉に含まれる棘がちくちくと刺してくるが、どれも反論のしようがない。

言われていることは、どれも本当のことだ。

弥生の怒りは当然のものだという理解も出来る。

 

「何よ。言い返しもしないの」

「返しようもねぇからな。……どうせ、最後だ。言いたいことあるなら、全部言っていけ」

「……そういうところが狡いわよね、貴方って。もういいわ。言う気も失せた」

 

再び歩き出した弥生と並んで、そのまま駅へと向かう。

役所がある扇町の駅は東霧野と桜谷のほぼ中間地点で、電車に乗るときはお互い逆方向になる。

もう、俺の帰る場所は実琴の家がある桜谷になるからだ。

電車が来るまでの間、気まずい無言が続いたが、東霧野方面への電車が来ることを知らせるアナウンスがホームに響いた時に、弥生に話し掛けた。

 

「弥生」

「何?」

「…………政弥を生んでくれたことは感謝している。この十数年の結婚生活もだ。おまえはよくやってくれた。ありがとう」

 

一瞬、弥生の表情が強張った。

多分、俺に礼を言われることを予想していなかったんだろう。

 

「……本当に狡い人。最後の最後でそんなことを言うなんて」

「分かってる。……次は、狡いヤツには引っかからねぇように気をつけとけ」

「そうさせて貰うわ。……じゃ、さようなら」

「ああ」

 

涙を見せなかったのは、弥生のプライドだったんだろう。

少し前まで妻だった女は颯爽と電車に乗り込み、去って行った。

 

***

 

すっかり歩き慣れた桜谷の駅から実琴の家への道だが、離婚したことで後ろめたさが無くなったからなのか、どことなく足取りが軽くなった気がする。

家に近づくにつれ、口元に笑みが浮かんでしまうのも抑えられない。

正式に引っ越してくるのはゴールデンウィークに入ってからになるが、今日から俺の家と言えるのはここだ。

実琴の家であり、俺の家でもある。

玄関の鍵を開けて部屋の中に入ると、ちょうど音で俺の帰宅が分かったらしい実琴が玄関に来たところだった。

 

「お帰り、政行さん」

「おう、ただいま。……ようやく、終わった」

「ん……」

 

実琴の頭の後ろに手を回すと、キスを待つ為に実琴が瞼を閉じた。

こういう仕草がイチイチ可愛いんだよなぁ、こいつ。

唇を重ねて、しばし柔らかい感触を楽しんでから唇を離そうとしたら、実琴の方からまだ離さないと言わんばかりに吸い付いてきた。

こいつがそんな風にしてくるのも珍しい。

……そういや、しばらくセックスしてなかったから、深いキスしてなかったなと、舌を実琴の唇の隙間から入れた。

実琴の方も舌を絡めて来たから、遠慮無く口の中を探り始める。

やっぱり、ディープキスをするとやらしい気分になるな。

キスで収まらなくなる。

実琴の頭に回していた手でそのまま髪を撫で、首筋の方にも指を滑らせると、触れてる実琴の舌が震えて、微かな喘ぎが聞こえた。

 

「――政行さん」

「ん?」

「俺、今滅茶苦茶セックスしたい」

 

熱っぽい吐息混じりに言われた言葉に、どきりとする。

実琴から誘って来るようなら、怪我は問題ねぇんだろう。

流石に、ここ数日はどうしても怪我に障っちまうかと気になってしまい、実琴には手を出さずにいたが、こんな色っぽい顔で誘われた日には我慢出来る訳もない。

今日は土曜だし、明日の予定は入れてなかった。

ようやく離婚も成立したんだし、久し振りにじっくり抱き合うのもいい。

 

「……そりゃ、奇遇だな。俺もだ」

 

腰を押しつけたら、実琴の方も予想通りモノがガチガチになってた。

もう、全身触って、舐めて、快感で喘がせたい。

 

「覚悟しとけ。多分、俺手加減してやれねぇから」

「……うん」

 

腰を触れ合わせた状態で、もう一度実琴と唇を重ねる。

キスした瞬間、スラックス越しに実琴のちんちんがびくりと反応した。

何とか残っている僅かな理性を総動員させて、寝室へと促した。

 

***

 

実琴の傷が塞がるまでは、髪が洗いにくそうだってのもあって、風呂に一緒に入って髪を洗ってやったりしてたし、背中流すついでに軽く触れたり、キスしたりなんてのもしてたけど、それらはあくまで軽いスキンシップだ。

その都度、興奮するようなものじゃなかったが、やっぱりセックスって目的を持って改めて触るとなると、変わってくる。

感じさせる為にあちこち触りたいし、キスもしたくなるから、衝動のままに実琴の隅々にキスしていく。

まだ、テープを貼っている傷の部分は避けつつも、額やら、耳やら、頬やら顔の色んな場所に軽くキスした後は、首筋や肩へと移動する。

そっちは、多少痕が残ってしまうくらいに心持ち強めに肌を吸った。

口付ける毎に艶を含んだ吐息と喘ぎが聞こえて、どんどん興奮が高まっていく。

が、胸元から腹へと唇を滑らせたところで、実琴が一度ストップをかけてきた。

 

「待っ……た、俺も触り、たい。体勢、変えていい……か?」

 

実琴も俺の身体に手を伸ばして触れてくれてたが、視線が俺のモノに注がれていた。

それで何となく、意図は察せられた。

 

「体勢? ……ああ、これでいいか?」

「ん……」

 

俺から身体をずらして横向きのシックスナインの体勢に持っていくと、実琴が小さく頷いて、俺のモノにキスして来た。

広がった快感にこっちも負けじと実琴のモノを触り始める。

目の前のちんちんは相変わらず整った形してて、付け根の部分に唇を添わせて、袋を指で弄っていった。

形も好きだけど、妙に触り心地いいんだよなぁ、こいつの。

長めに楽しみたいから、本当に弱い先っぽには敢えて手は出さずに、付け根付近や内股を中心に触っていく。

それでも、実琴の方は早くも動けなくなってきているみたいだった。

 

「ん、あ、も、少し弱く……っ」

「諦めろ。手加減してやれねぇって言ったろ」

「ひ、あ、やっ、ああ!!」

 

俺の腰に回されている手に力が入って、実琴が堪えているのが伝わる。

時々舌や唇が軽く俺のモノに触れてくるけど、それ以上動く余裕はなさそうだ。

ホント、可愛いよなぁ。

実琴の内股につけたキスマークを見ながら、ついニヤニヤしてしまう。

 

「ほら、口が動いてねぇぞ。いっそ、一回イカしてやろうか?」

「や……だ、まだ、イクの勿体……ねぇっ……!」

「……どうせ、一回じゃ終わらねぇのになぁ」

「んっ!!」

 

一回どころか、明日の予定もないし、ドライでイケそうだけどな。

実琴のケツを撫でていくと、ジム通いの効果か再会当時より何となく引き締まった気がする。

ケツだけじゃなく、腹や足も。

それでいて、中は以前より熟れて柔らかくなってんだよな。

緩いってんじゃなく、締め付け具合が絶妙だ。

口の動きは止めないままに、手を下半身のあちこちに這わせてやると、実琴の身体が小さく震えて反応を返す。

 

「……ちょ……っと、いつまで、焦らす、んだよ……っ」

「何だよ。久々だから、あんまり早く先に進めてもって思ったのに。おまえだって、まだイクの勿体ないって言ったろ」

「ん!! あ、うあ!!」

 

自分の発言が矛盾してるのに気付いてないんだろうか。

それだけ夢中になってると思えば、嬉しさもひとしおだ。

実琴の先っぽにキスして、そのまま半ばくらいまで口の中に収める。

泳いだ足を押さえて、音をわざと鳴らしながら銜え込んだモノを愛撫してやると、押さえ込んでいる足がもどかしそうに震えた。

 

「や、も、先……っ」

「中、触って大丈夫そうか?」

「ああっ……、だから、早……く」

「あ、ちょっと待て。そういえば、買ってきてたのがあるんだった」

 

どうせ、一緒に住み始めるんだしと、先日購入しておいたボトルタイプの潤滑剤がある。

一度、ベッドから降りて、それを入れてあったボストンバッグの中から取り出した。

ベッドに戻る途中で、実琴が手にしてる潤滑剤を見て、呆れ顔でぼやいた。

 

「……準備良すぎんだろ」

 

否定はしない。

 

「どうせ、しばらくガンガン使うことになるだろ。なら、こっちの方がコストかからなくていい。流石に家に置いとけなかったから、場所取らない使い切りのにしてたけどな」

 

ボトルの蓋を開け、逆さにし、自分の手のひらに潤滑剤を落とす。

 

「ガンガン使うってのが前提にある……っ、辺り」

 

そして、指にも潤滑剤をまぶすと、実琴の中に指を突っ込んだ。

キツさがなかったのを幸いに、挿れて早々指を派手に掻き回す。

動かす度に淫らな水音がぐちゃぐちゃと響くのは気分が良い。

水音の合間に実琴の乱れた呼吸も聞こえてくるから尚更だ。

 

「……っと、まだ話、してんの、に……っ!」

「悪い。正直言うと、俺もあんまり待ってやれるほどの余裕はねぇ。おまえ、凄ぇ誘ってる顔してるし」

「は、あ……っ、まさゆ、きさ……!」

 

頬を染めて、潤んだ目でこっちを見てる実琴は扇情的の一言に尽きる。

弱い場所を重点的に指先で擦ってやると、指を挿れている場所がひくひくと震える。

締め付けるというよりは柔らかく絡みついてくる感覚は、挿れた時に滅茶苦茶気持ち良さそうだと容易く想像出来る。

 

「酒飲んでねぇよな? 何か今日ここの吸い付きよさそうだし、柔らかい」

「飲んで……ねぇよ……っ、も、いい、から……来て、くれ……って!」

 

掠れた声で腕を掴まれて、そんな風に請われて。

何処の誰が我慢出来るだろう。

思わず、ごくりと喉を鳴らしてしまった。

 

「――その台詞は反則だぞ、おまえ」

 

実琴の中から指を引いて、代わりにいきり立ってるモノを宛がう。

宛がったタイミングでそこが吸い付くように動いて、実琴も喉を鳴らしたのが聞こえた。

ヤベぇ、これあんまりもたなさそうだ。

 

「んっ! んん!!」

「く、あ……っ」

 

足を抱えて、深い場所まで一気に突き入れただけで、快感がピークを迎える。

ヤバいと思った瞬間には遅く、纏わり付いてきた熱がもたらす心地良さに堪えきれなかった。

まだ、イケるだろうけど、一突きでイクってどんだけ溜まってたんだよと思ったが、どうやら実琴も同じタイミングでイッていたらしい。

お互いの腹に実琴の出した精液が付着していた。

実琴もその事に気付いたようで、表情を崩した。

 

「……何だ、イッたの政行さんも一緒……かよ」

「うるせぇ」

 

実琴の耳元に口を寄せて、呟きながら俺の方もつい笑いが零れる。

ホント、こいつとの相性バッチリだよなぁ。

 

「どうせ、まだ終わらせるつもりねぇしな。続けるぞ」

「んっ……うあ、そ……こっ」

 

実琴の足を肩に乗せるように抱えて、さらに深い繋がりにする。

俺の腹に実琴の性器が触れて、動く都度に擦られるからか、イッたばかりにも関わらず、再び固さを取り戻し始めている。

それを言ったら、俺の方も萎えることなく続けてしまってるけども。

せっかく、潤滑剤に余裕があるから、もう少し塗りたくってやることにする。

潤滑剤のボトルを取って、再び手のひらの上に適量出す。

 

「どうせ潤滑剤の量あるから、今日はこっちにも使ってやるよ」

「ちょっ……待てって、そ……っ!! ふ……!」

 

潤滑剤で濡れた手で、さっき実琴が出した精液も一緒に混ぜるようにしながら、実琴のモノと袋を触っていく。

隅々まで塗ってやるつもりで、鈴口、カリ、幹と滑らせ、そのまま袋や蟻の門渡りまで指を伸ばす。

それでもまだ残っていた潤滑剤は乳首に塗った。

歳の割りにまだ薄い色を保っている乳首に潤滑剤を塗ると、見た目も濡れて光っている様が妙に卑猥に目に映る。

そうして、塗り終わったところで実琴の右手に俺の左手を重ね合わせ、指を絡めると、俺よりも少しだけ長くて細い指が、直ぐに応じて絡みついた。

弥生との結婚指輪を外してからそこそこ経ったからか、もう指輪をしていた跡はうっすらと残っているだけだ。

弥生と別れようと思ってからは、指輪は枷のように感じていた存在だったが、実琴となら、もう一度揃いの指輪を作っておきたい気もする。

俺が指輪をしたいというよりは、実琴につけさせたい。

そうしたら幾ばくかの虫除けになるから、こいつにちょっかい出そうなんてヤツも減るだろう。

惚れた欲目もあるかも知れないが、こいつ日々色気が増してるからな。

今だって、気持ち良さそうにしながら、笑ってる顔と言ったら堪んねぇの一言だ。

ああ、そういえば。

 

「実琴」

「……うん?」

「さっきから、おまえずっと笑ってるな」

「そう……か? ……だったら、そりゃ嬉しいからだな」

 

俺の腰に実琴が足を巻き付けるようにしながら、もう一方の手も俺の指と絡め合う。

絡み合った指に力が入ったから、俺の方でもそれに応じるように力を入れたら、また実琴が顔を綻ばせた。

――これだけ、実琴が無邪気に嬉しそうな顔してんのは再会してからだと、初めて見たかも知れねぇ。

笑っていても、ずっとどこか陰りがあるような感じだった。

つくづく、こいつに我慢させて来たんだなと申し訳ない気分だ。

 

「……ごめんな。本当に酷いことしてきたよな、俺」

「謝んなよ。……分かってて政行さんに応じてたのも俺なんだしさ。一緒に背負いたいって言っただろ? 今一緒に居られるから、いい……っ、んんっ!!」

 

動くと実琴が顔を仰け反らせた。乱れた髪が跳ね、汗が飛び散る。

その様子に、不意に古い記憶が蘇った。

 

――いや……だ。せっかく、全部挿れられたんだから……今日は、このまま……っ。

 

何度かの試行錯誤の果てに、ようやく実琴の中に全部モノを収められた時。

挿れられはしたものの、随分苦しそうだったから、途中で抜くかと尋ねたら実琴がそれを拒んだ。

そういや、あの時に初めて可愛いヤツだって思った気がする。

縋り付いて来た腕に求められている実感が湧いて、離れられなくなったんだよなぁ。

もう、二十年近くも経つのか。

それだけの年数が経っていたってのに、ようやく、本当の意味で実琴と通じ合った気がする。

すっかり、俺に馴染んだ身体は、俺の挙動一つ一つに容易く反応するようになった。

当時、散々痛がっていたのに、今や、快感を貪るために自分でも動く実琴が愛しい。

そんな風に懐かしいことを思い出していたら、動いてた腰が急にぴたりと止まって、悲鳴と共に実琴の背筋が派手に撓った。

 

「っ!? うあ、ヤベ……っ、まさゆ、き、さっ……!!」

「……ホント、敏感になったよな、おまえ……っ」

「や、今、動かな、待っ……ひあっ!!」

 

昔はドライでイクのにも手間暇掛けてたのが、嘘のように感じてくれる。

ずっと、震えている実琴の中が気持ち良くて、止まれない。

繋がっている場所だけでなく、触れている場所全てが熱くなってくる。

色んなものが交じり合ったにおいが、妙に艶めかしく感じて、どんどん煽られていく。

実琴の断続的な悲鳴と、繋がった場所から零れる粘着質の水音、身体のぶつかる音が、耳だけでなく感覚の全部を刺激していった。

実琴を抱いているのは俺なのに、それでいて飲み込まれそうな感覚もある。

 

「待てと言われて、待てる……っ、状況かよ……!」

「ひ! あ、ああ、や、んんんっ!!」

 

汗の浮いた喉に口付けると、その刺激からか、また声が大きく上がる。

喘ぎ混じりにキスして、と聞こえたから、応じて唇を触れ合わせた。

唇も随分と熱を孕んでいて、気持ち良さに無我夢中で貪る。

快感からか、感情の高ぶりからか、いつの間にか実琴が涙をボロボロと零していた。

 

「離さ……ねぇ……っ」

 

『離さないで』じゃなく、『離さねぇ』って言葉。

泣き笑いの表情で掠れた声ではあったけど、言葉に含まれてたのは強い意志。

ああ、もう全部おまえにやる。

だから、おまえも全部俺にくれ。

二度と辛い思いで泣かせたりなんかしないから。

死ぬまでずっと傍にいる。

 

「……りゃ、こっちの台詞、だって、の……!」

「あ、ああ、うああ!!」

 

快感の頂点に向けて、激しく突くと肩に乗せていた実琴の足が滑り落ちる。

が、そのまま動き続けて――繋がった場所が一際強く締まったタイミングで、再び、実琴の中で達した。

実琴の身体が跳ねて、中に収めている俺のモノに吸い付くように蠢く。

実琴の瞼が落ちかけたところで、唇を重ねると柔らかい極上の笑顔を浮かべて――そのまま実琴が意識を失った。

 

「…………っと、可愛い」

 

まだ、実琴の中から抜ける気にもならなかったから、あと少しだけと実琴の上に乗ったまま目を閉じた。

 

***

 

気付いた時には、実琴の身体の上に覆い被さっていたままだった。

イッた後、激しい脱力感で少しだけ休んでから動こうなんて思っていたが、どうやら動けずにそのまま落ちていたらしい。

まだ、実琴と繋がったままだし、手も絡めたままだ。

流石にこんなんじゃ実琴が重いよなと考えるけど、触れている肌の温かさに離れる気になれなかった。

部屋の明るさから、まだ日は完全には沈んでないくらいの時間帯らしい。

セックスの期間が空いちまってたのと、離婚したことでの開放感でそれこそ、衝動のままに貪った。

肌を合わせて溶け合う熱が、ひたすら気持ち良くて限界まで求め合った感がある。

もう一度目を閉じると、さっきの実琴の様子が瞼の裏でちらつく。

離さねぇって言ってくれた言葉は、幸せな気分にさせてくれた。

俺が求めたのに応じるだけじゃなくて、こいつからも強く求めてくれたのが伝わる。

あれはきっと実琴が言いたくて言えなかっただろう本音だ。

ぶつけてくれたのが嬉しい。

ようやく、ここから始まるんだよな。

思えば十数年前、実琴が俺の前から居なくなってから、再会することを目的に仕事していたようなものだ。

結婚していた間も、弥生と政弥と日々過ごしていきながら、実琴のことを忘れることはなかった。

けど、それも当たり前だろう。

俺は自分でも気付かないうちに、意識の中心に常に実琴を置いていたのだから。

 

「忘れられるわけなかったんだよなぁ……」

 

ふと、そんな自分の思考と重なった実琴の声が聞こえて、片方の手を外される感触に、つい反射的に手を伸ばして掴んだ。

実琴も目が覚めていたのか。

 

「……どうしたよ、どっか痛むのか?」

 

この体勢は多分、実琴の方には結構負担が掛かっているはずだ。

俺の体重はかなりこいつに預けている状態だから。

それでも出来れば、まだもう少し離れたくはないけれど。

 

「いや、大丈夫だ。こんな絡み合った状態で寝ることなんてなかったから、ちょっと違和感で目覚めちまっただけだって。流石に全身くっついてると熱いな」

 

大丈夫という言葉に安心しつつ、違和感っていう言葉には少し引っかかる。

不自然な体勢してるから、違和感があるのも無理はねぇって分かってはいたけど、少し面白くない。

 

「最近、セックスしてなかったしなぁ。けど、違和感って言うほどかよ。おまえ、俺しか知らねぇのに」

「仕方ねぇだろ。政行さんがうちに泊まるようになったのだって、割りと最近なんだし、抱き合って寝ててもパジャマやTシャツは着てたんだし。違和感って言葉がそんな気に入らねぇかよ」

「気に入らねぇ」

「……子どもみてぇだな」

 

笑いを含んだ声が聞こえて、実琴の手が俺の髪を撫でてくる。

 

「これからはずっと一緒に過ごしていけるんだから、時間経つにつれて違和感だってなくなっていくだろ。っていうか、この状態で完全に違和感無いところまでいったら、そっちの方が凄ぇよ。……だから、拗ねんなって」

 

理屈じゃそんなことは十分分かっているが、あの溶け合うような感触を知っているだけに、違和感って聞くと何となくモヤモヤする。

 

「拗ねてねぇよ」

「や。どう聞いても拗ねてるだろ、その口調。……理不尽だよなぁ。大体、政行さんは俺一人しか知らないってわけじゃねぇのに」

 

実琴の言葉にぎくりとさせられた。

……確かに、実琴は俺しか知らねぇけど、俺の方は違う。

やっぱり、そこら辺で複雑な感情があるんだろうか。

今更どうにもなんねぇことではあるけど。

 

「……そこ言われると返す言葉がない。悪ぃ」

「あ、いや、その。否定してるわけじゃねぇよ!? それで政弥くんだって生まれたんだし――」

「知ってる。――でも、俺はおまえが俺しか知らないってのが、聞いた時凄ぇ嬉しかったし、多分、他の誰かと関係持ってたりしたら、今頃死ぬほど嫉妬してただろうと思うから」

 

ただでさえ、再会するまでの十数年間をろくに知らねぇってことが悔しいのに、それで誰か関係持ってたなんて聞かされたら、嫉妬しない自信は全く無い。

そうじゃないって分かっているけど、いや、今は分かっているからこそだろうな。想像するだけでもキツい。

 

「過去のことだったとしてもかよ?」

「ああ。……身勝手だろ?」

「うん。…………今はそういうとこも引っくるめて好きだけど」

 

さらっと事も無げに告げられて、面食らった。

くそ、やっぱりこういうところいいな、こいつ。

そんな風に言われてしまったら、益々手放せなくなりそうだ。

 

「そういえばさ。……もしかして、俺と会うためにあのプロジェクト立ち上げたのか?」

 

そういや、こいつにはまだ言ってなかったっけ。

まだ抜けないように気をつけながら、少しだけ身体を起こして、実琴の顔を覗き込む。

 

「――仕事絡みで会ったんじゃ、おまえだって早々逃げられねぇだろ?」

 

十数年前、実琴は勤務先だけは変えなかった。

いや、実琴でなくとも、せっかく就いた仕事を色恋沙汰で瞬時に辞められるヤツなんて、そうは居ない。

 

「逃げられないのはともかくさ。……俺がもし結婚してたり、他に誰か相手が居た場合はどうするつもりだったんだよ」

「そん時は、どんな手を使ってでも奪うつもりだった」

 

言っても、もう実琴が離れていかない自信はあったから、正直に告げる。

 

「奪……」

「もう一度会えたら、今度こそ手放さねぇって思ってたからな」

 

再会した頃は、実琴に会いたかったのが、愛情からか、執着からかなのかも分からなかったが、今は実琴が好きだから手放せないって自覚している。

俺は自分で考えていたよりも、ずっとこいつに惹かれていた。

 

「……政行さん、俺のこと好き過ぎだろ」

「あ? 好きなんてとっくに通り越してるに決まってるだろ」

 

そこで一旦言葉を区切って、実琴の耳元で敢えて低く囁く。

 

「――愛してるレベルだからな」

「…………っ!?」

 

実琴の中がびくりと震えて、俺を締め付けてきた。

心なしか、体温も少し上がった気がする。

あー……こりゃ、もう我慢出来ねぇ。

 

「……スイッチ入ったな、実琴。今、中が俺に吸い付いてきた」

「……っ、先にスイッチ入ってたの、政行さん、だろ……っ!?」

 

先にどっちがなんて関係ない。

どうせ、明日予定を入れてるわけじゃないし、もう一度いいだろう。

まだ、精液と潤滑剤が中に残っているから、動くのにも差し支えがない。

 

「あ……あっ、ちょっ……政行、さ……!」

 

動く度に実琴が掠れた声を上げる。

繋がってる場所から響く音もいやらしい。

大分、日が沈んだせいか、部屋が暗くなって実琴の顔は見えにくくなってきたが、だからこそ部屋に響く声と音が、より情欲を煽っていく。

 

「……なぁ、実琴……っ」

「ん……っ? なん、だよ」

「流石に……っ、もう他を知ってるってのは、どうにも……なんねぇ、けど、おまえが最後……だか、ら……っ」

「ん、あ、政行……っ、さ……ああ!」

 

もう迷ったりしない。

こいつが傍にいてくれるのなら、それで十分だ。

 

「この先は……死ぬまでっ……おまえ、だけだから……っ! 実琴……!」

「……っ、あ、ん!! まさ、ゆきさ……耳……っ」

「ん?」 

 

耳を貸せって意味だと受け取ったから、実琴の口元に耳を寄せる。

 

「俺、も……っ、政行、さん、だけ……っ」

 

――愛し……てる。

 

「…………っ!!」

 

その一言で全身に震えが走った。

自分だって、今し方口にした言葉なのに、実琴から聞けただけで泣きたくなるほど嬉しい。

迫り上がった衝動には逆らわずに、実琴の中に再び熱を吐き出した。

呼吸を整えながら、何かが記憶の網に引っかかって、その正体をたぐり寄せてみる。

 

――………………好き、です。けど。

 

二人で温泉に行ったときに、好きという言葉に妙な含みをもたせていた実琴の発言が脳裏を掠める。

ああ、あれは、きっと『好きですけど、俺だけのものじゃない』って意味だったのかと、唐突に理解した。

 

「………………実琴」

 

あの時、含みを持たせた言葉の真意が分からず、どうにも癇に障ったが、ストレートに言えなかった哀しさはどれ程だっただろうか。

こいつはずっと分かりやすく、俺に好意を向けてくれていたのに、俺の方の立場を考えて、実琴は今みたいに言葉をストレートに口に出来なくなっていたのかも知れない。

 

「……ごめんな」

 

何度謝っても足りない。

寝息が聞こえ始めた、実琴の髪をそっと避けて、傷痕を覆っているテープの上からキスした。

実琴の身も心もこれ以上傷つけたりなんかしない。

 

「今度こそ、大事にするから」

 

これ以上道を踏み外したりせず、二人で寄り添って生きて行きたい。

きっと、実琴となら何があっても乗り越えていける。

暗がりと触れてる体温のせいか、俺にも眠気が襲ってきた。

どうせ、実琴もしばらくは目を覚まさないだろう。

少しだけ俺も眠ることにして、瞼を閉じた。

 

 

タグ:月刊少女野崎くん堀みこR-18pixivUP済pictBLandUP済horneUP済Immorality of target同人誌収録済10000~15000文字堀視点