若い時に付き合っていて、堀先輩の結婚を機に別れたけど、十数年ぶりに久々に再会したという流れの堀みこ。
本編終了後、定年退職したぐらいに歳を取ってる二人の話。
2015/04/05のワンライで書いた話です。
パカップルしてる熟年カップル大好きです!
ワンライ後に御子柴視点も追加。
初出:2015/04/05 同人誌収録:2015/06/14(Immorality of target。掲載分に多少の修正等あり)
文字数:3470文字 裏話知りたい場合はこちら。
[堀Side]
「あー……っと、ダメ、だったんだよな」
ソファに並んで座って、二人でレンタルしてきた映画のDVDを見ていた最中。
実琴が胸ポケットに手を突っ込みかけたところで溜め息を吐いて、手を引っ込める。
長年の習慣で煙草を吸おうとしたんだろうけど、残念ながら先日ついにドクターストップが掛かった。
俺たちもいい加減歳だし、健康を考えてもそうするのが無難だろうと、それを機に俺の方も一緒に煙草を吸うのを止めたから、今はこの家に煙草は一本もない。
俺の方としては煙草を止めてしんどかったのは最初の方だけで、後は自分でも意外な位にすんなり止められたが、実琴はまだ吸いたくなることがあるようだ。
「くそ……どうも慣れねぇなぁ。凄ぇ手持ち無沙汰っていうか、口寂しいっていうか」
「往生際悪いぞ、実琴。飴でも舐めて我慢しろよ」
禁煙したのを機に、ここ数年ほとんど口にしなかった飴を買うようになった。
最初は煙草を吸いたくなる気分を紛らわせる為だったが、色んな味の飴を試しているうちに、いつの間にか煙草を吸えないことがそんなに気にならなくなった。
流石に食い過ぎにならないようには気をつけているが、実琴の方は飴だけでは気が紛れないらしい。
こいつの方が俺よりも甘いものは好きだったと思うんだがな。
「政行さん、煙草止めても意外に平気そうだよな。……俺より政行さんの方が煙草吸ってる本数は多かったはずなのに」
なのに、煙草でドクターストップかかるのが俺の方ってどういうことだよ、とぼやく実琴に苦笑いだ。
飴の袋を差し出しても、実琴は手にしなかった。
「俺も一緒に煙草止めたのに不満かよ。……実琴」
「何……ん……っ!」
飴の袋から一つ取り出して口に含むと、そのまま実琴の唇に自分の唇を重ねて、唇の隙間からその飴を強引に突っ込んで、舌で転がす。
歯に時々当たることでコツコツと音を立てつつも、飴は少しずつ溶けていく。
飴を口の中に突っ込んだ瞬間こそ戸惑っていた実琴だが、飴を口の中で転がしているうちに俺の背に手を回して、大人しくされるがままになっている。
こういう素直なところ、可愛いよなぁこいつ。
飴が完全に溶けて無くなるまで唇は離さないつもりで、飴を転がすついでにと実琴の口の中をあちこち舌で探る。
口の中からはほとんど消えつつある煙草の味だが、完全に味がしなくなるまでは意外に時間がかかるものなんだと、こういう時に実感する。
まぁ、吸い始めてから……四十年以上か?
それだけの期間吸い続けていたから、無理もないのかも知れねぇけど。
ようやく、飴がごく小さな欠片になり、それをつい実琴が飲み込んで、喉が動いたのを確認したところで唇を離す。
開いた目はすっかり潤んでいて、目元と今し方まで触れていた唇が見事に赤く染まっている。
「口寂しくなくなったか?」
「……口寂しくはなくなったけど、その、別の意味というか、別の場所が寂しくなったっていうか」
「分かりやすくていいな、おまえ」
スウェット素材のルームウェアが、実琴の身体の変化を如実に伝えている。
膨らみ始めた部分に手を重ねると、実琴の方も俺の股間に手を伸ばしてきた。
「勃たせてんのは、政行さんも一緒だろ。……DVD、返却明日じゃなくて良かったよな。っとにもう」
実琴が手元にあったリモコンを取って、既に話の流れが分からなくなってしまっているDVDを停止させた。
「まったくだな。安心しろよ。上の口の代わりに、下の口が寂しくなった分はちゃんと今から糖分補給してやっから」
「……政行さん。そのオヤジギャグ止めとこうぜ。いくら俺でも萎えるぞ」
「そう言って、本当に萎えたこともない癖によく言うよな」
「…………く、あ」
ルームウェアの中に直接手を入れて握ると、早くも滲み出ていた先走りで指が濡れる。
もう一度唇にキスすると、飴の甘さを残した舌が絡みついて来て、続きはベッドで、と呟いた。
[御子柴Side]
「あー……っと、ダメ、だったんだよな」
借りてきた映画のDVDを政行さんと見ながら、つい煙草に手を伸ばそうとして、吸えなくなったのを思い出した。
定年退職する少し前から、煙草控えるように言われてはいたんだけど、とうとうこの前体調崩して少し入院した時に、もう止めろって言われちまったんだよなぁ。
――俺も一緒に止めるから、もう煙草は完全に止めとけ。……俺はおまえに先立たれるのは絶対にごめんだからな。
政行さんに真剣な顔でそう言われて、流石に止めようと決意してどうにか吸わずに過ごしているものの、まだふとした瞬間に吸いたくなってしまう。
「くそ……どうも慣れねぇなぁ。凄ぇ手持ち無沙汰っていうか、口寂しいっていうか」
「往生際悪いぞ、実琴。飴でも舐めて我慢しろよ」
「政行さん、煙草止めても意外に平気そうだよな。……俺より政行さんの方が煙草吸ってる本数は多かったはずなのに。なのに、煙草でドクターストップかかるのが俺の方ってどういうことだよ」
政行さんが飴の袋を俺に差し出してくれたけど、何となく食う気にもなれなかった。
……狡いよなぁ。
政行さんは煙草を止める前は一日に一箱半くらい吸っていて、俺はほぼ一箱ってところだった。
なのに、政行さんは煙草を止めろとは言われずに、俺の方が止めろって言われるのも理不尽なものを感じる。
いやまぁ、一緒に止めてくれたけどさ。
一人で吸っても美味くないって。
その点、有り難かったけど、煙草吸えないのってやっぱりどうにもモヤモヤする。
「俺も一緒に煙草止めたのに不満かよ。……実琴」
「何……ん……っ!」
政行さんが飴を自分の口に放り込むと、俺にキスして来た。
唇の間から、政行さんが口に入れた飴が俺の口の中へと移動して、その飴と一緒に舌で口の中を探られていく。
飴の固い感触と舌の柔らかい感触が、口の中で混じり合って、妙な気持ち良さがある。
飴の甘さと、まだ微かに残る煙草の苦さに頭がくらくらした。
時々、歯と飴が当たって、小さな音を立てるのも興奮を煽る。
……キスなんて、とっくに数え切れないくらいにしている。
ただ唇に触れるだけの軽いキスから、口の中を満遍なく探られていくような深いキスも経験しているし、飲み物や食い物を口移しされた経験もあるってのに、まだ興奮する自分に驚く。
キスしてると政行さんに触りたくなったから、そのまま政行さんの背に手を回すと、微かに笑ったような気配がした。
多分、政行さんの思うつぼなんだろうなぁ、これ。
どうやら、飴がなくなるまではキスし続けるつもりらしい。
こっちからも舌を飴と政行さんの舌に絡めていくと、心なしか溶けるスピードが上がった気がする。
もう大分小さくなったなと思った時に、つい喉の奥に入って、そのまま飲み込んでしまった。
そこでようやく政行さんが唇を離してくれた。
離れた唇が少し寂しいなんて感じてしまうあたり、自分でもどうなのかと思う。
「口寂しくなくなったか?」
「……口寂しくはなくなったけど、その、別の意味というか、別の場所が寂しくなったっていうか」
「分かりやすくていいな、おまえ」
ずっとキスしていたのに、まだキスしたい。
唇だけじゃなくて、あちこち触れて欲しい。
そんな衝動が素直に身体に出てしまっていた。
救いは政行さんも同じように反応していたことか。
勃った部分に触られた手が布越しでも十分に熱い。
俺も政行さんのに触り返すと、政行さんが嬉しそうに笑った。
「勃たせてんのは、政行さんも一緒だろ。……DVD、返却明日じゃなくて良かったよな。っとにもう」
どうせ、今日はもう続きは見られないだろうと、大人しくDVDを停止させ、テレビを消す。
政行さんも特にそれについて異論は唱えなかった。
「まったくだな。安心しろよ。上の口の代わりに、下の口が寂しくなった分はちゃんと今から糖分補給してやっから」
「……政行さん。そのオヤジギャグ止めとこうぜ。いくら俺でも萎えるぞ」
補給するのは糖分じゃねぇだろと、喉元まで出かかったが、ツッコミどころはそこじゃねぇなって止めた。
俺までそのうちオヤジギャグに侵食されそうなのが、怖い。
「そう言って、本当に萎えたこともない癖によく言うよな」
「…………く、あ」
直接、服の中に手を突っ込まれて握られ、つい声が上がる。
……仕方ねぇだろ。萎えようにも感じる方が先立っちまうんだから。
ソファですると身体に堪えるようになってきたから、再び、唇が重ねられた時に、続きはベッドでと請うと分かってるって返されて。
ホント敵わねぇって思いながら、手が離れたところでソファから立ち上がった。
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