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東雲色の空<月刊少女野崎くん・堀みこ>

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若い時に付き合っていて、堀先輩の結婚を機に別れたけど、十数年ぶりに久々に再会したという流れの堀みこ。

本編終了後、定年退職したぐらいに歳を取ってる二人の話。

2015/04/24のワンライで書いた話です。

SNSUP時に御子柴視点追加。

初出:2015/04/24

文字数:3642文字 裏話知りたい場合はこちら

 

[堀Side]

 

「あー……まだ、こんな時間かよ」

 

俺が窓辺に立って、カーテンの隙間から明け方の空を眺めつつ、コーヒーを飲んでいると背後で実琴の声が聞こえた。

 

「悪い、起こしたか」

「いや、政行さんのせいじゃねぇよ。くそ、歳取ると朝早くなるってマジだったんだなー……昔より、絶対眠り浅くなった気がする」

 

ベッドから身体を起こした実琴が、溜め息を吐く。

 

「まぁ、特に今日予定が入ってるわけでもないし、いいんじゃねぇの?」

「そうなんだけどさ。こう、勿体ないような気がするっていうか」

 

実琴も俺も、定年退職してから数年経っている。

予定を入れてない日なら、特に何時に起きようと問題はない。

 

「早起きは三文の徳って言うだろ。俺は嫌じゃねぇけどな。おまえもコーヒー飲むか?」

「ん、自分で淹れる。お湯沸かしたばかりだろ? まだ残ってるよな?」

「ああ」

 

実琴はそのままキッチンに向かい、コーヒーを淹れているらしい物音が耳に届いた。

音から察するに、多分ドリップパック使ってるな。

定年退職したてで時間が出来た頃には、手挽きミル使って、コーヒーを豆から挽いて淹れるなんてやってたこともあるが、最近はお互い面倒になってしまったのもあって、すっかりドリップパックばっかりだ。

歳を重ねると色々億劫になってしまうんだなと実感する。

ややあって、マグカップにコーヒーを淹れた実琴が寝室に戻ってきた。

 

「あ、今日晴れそうだな。凄ぇ綺麗な空」

「布団干すのに良さそうだよな。朝飯食った後にでもやるか」

 

俺の隣に立って、実琴も一緒に窓から外を眺める。

 

「このグラデーションの空綺麗だよなぁ。オレンジの部分なんかは特に」

「日本語での色の名前だと『東雲色』って言ったかな、確か。……おまえの今の髪を日に透かした時の色合いと似てるな」

 

歳も歳だから、お互い大分白髪が増えた。

隣の実琴の髪に手を伸ばして、そっと撫でる。

触り心地はやっぱり昔に比べて少し変わったような気はするが、色合い自体は今の方が好きかも知れない。

二人で一緒に過ごして、歳を重ねて、髪の色が変わるのを見てきたからだろうか。

 

「そ、そうか? 何か、そう聞くといいな。色の名前と重ねて、ロマンチックっていうか」

「ああ、若い時だったら乳首の色がこんなだったかな、おまえ」

「………………一気にロマンがなくなったな」

 

げんなりした表情の実琴に、思わず笑いが零れた。

 

「悪ぃ、つい」

「悪ぃなんて、思ってねぇ癖に」

 

空になったマグカップをサイドテーブルに置くと、実琴の方もマグカップをサイドテーブルに置いた。

実琴の方はまだ半分くらいコーヒーが残ってるにも関わらず、だ。

――阿吽の呼吸というか、何となくお互いがお互いの意図を悟って動くのが増えた気がする。

髪に触れてた手を、頭の後ろに回すと実琴が目を閉じたから、唇を重ね合わせた。

コーヒーの味がするキスをしばし楽しんでから唇を離す。

 

「……政行さん、朝立ちしてた頃はせっかく勃ってるんだしって、手を出してきてたけど、しなくなっても結局は手を出すよな」

「何だよ。ちゃっかり反応しといて、人のせいだけみたいに言うんじゃねぇよ」

「そりゃ、キスされたら、その条件反射っていうか、何というか」

「俺、マグカップ置け、まで言ってねぇぞ?」

「う……」

 

腰を引き寄せると固くなり始めたモノがパジャマ越しに当たる。

まぁ、そこはお互い様ってやつだが。

 

「布団干す前にちょっとベッドで楽しむか。夜が完全に明けるまでもまだあるしな」

「……ん」

 

実琴の髪を梳きながら、しばし、俺一人だけの東雲色を存分に楽しむことに決めた。

 

[御子柴Side]

 

「あー……まだ、こんな時間かよ」

 

何となく冷えると思って目を覚ましたら、部屋はまだ暗い。

カーテンの隙間から少し光は差しているけど、この様子じゃまだ早朝だろうと、枕元のスマホを見たら予想通り、まだ四時台だった。

 

「悪い、起こしたか」

「いや、政行さんのせいじゃねぇよ。くそ、歳取ると朝早くなるってマジだったんだなー……昔より、絶対眠り浅くなった気がする」

 

冷えるって思ったのは、政行さんが隣に居なかったのもあるんだろうけど、それだけで目が覚めるなんてのは、俺が歳を取ったからだ。

でも、政行さんも目が覚めてたってことは、やっぱり政行さんも眠り浅くなってんだろうな。

老人の朝は早い……なんて切ない言葉の意味を実感する。

 

「まぁ、特に今日予定が入ってるわけでもないし、いいんじゃねぇの?」

「そうなんだけどさ。こう、勿体ないような気がするっていうか」

 

会社勤めしてた時には、予定のない休みの日なんて、いつまでも惰眠を貪っていられるとワクワクしたのに、いざ、会社に縛られなくなったら、惰眠を貪るどころか、通勤してた時より早くに目が覚めるなんていうのは何となく損をしてる気分だ。

 

「早起きは三文の徳って言うだろ。俺は嫌じゃねぇけどな。おまえもコーヒー飲むか?」

「ん、自分で淹れる。お湯沸かしたばかりだろ? まだ残ってるよな?」

「ああ」

 

身体を起こして、キッチンに向かうと電気ケトルの中に、まだ残っていたお湯を確認しながら、コーヒー用のマグカップとドリップパックを取り出す。

定年退職した直後あたりなんかは、時間が出来たこともあって、コーヒー豆を買ってきて手挽きミルで挽いたコーヒーを淹れるなんてこともやったが、もう面倒になってしまって最近はこればっかり使っている。

いい加減、残ってるコーヒー豆、処分しねぇとなぁ。

賞味期限ダメになったやつって、下駄箱とかの消臭に使えるとか何とか聞いたことあったっけ。

コーヒーを淹れると、マグカップを持って寝室に戻る。

カーテンの隙間から見える空が綺麗なグラデーションを描いていた。

 

「あ、今日晴れそうだな。凄ぇ綺麗な空」

「布団干すのに良さそうだよな。朝飯食った後にでもやるか」

 

政行さんの隣に立って、俺も一緒に窓から外を眺める。

まだ、あまり外を歩いている人も居ないような時間だから、静かな感じが落ち着く。

 

「このグラデーションの空綺麗だよなぁ。オレンジの部分なんかは特に」

「日本語での色の名前だと『東雲色』って言ったかな、確か。……おまえの今の髪を日に透かした時の色合いと似てるな」

 

政行さんが俺の髪にそっと触れてきた。

ああ、なるほどな。

白髪が増えたことで歳食ったのを実感はするけど、そんな風に言われると悪くない。

 

「そ、そうか? 何か、そう聞くといいな。色の名前と重ねて、ロマンチックっていうか」

 

政行さんの髪こそ、もっと太陽に近い部分の色に似てるな、なんて思っていたら。

 

「ああ、若い時だったら乳首の色がこんなだったかな、おまえ」

「………………一気にロマンがなくなったな」

 

よりにもよって、な発言内容に言いそびれた。

そりゃ、昔に比べて乳首に限らず、あちこちくすんだ色にはなったとは思うけど、何もこの話の流れで持ち出すこたねぇだろうに。

 

「悪ぃ、つい」

「悪ぃなんて、思ってねぇ癖に」

 

笑って言う悪ぃに説得力なんて皆無だ。

政行さんが空になったマグカップをことんとテーブルに置いたから、俺も飲みかけのコーヒーが入ったマグカップをその隣に置く。

――何となく、キスするつもりなんだろうなって分かるのは何でだろう。

一緒に暮らすようになって二十年以上経ってるからだろうか。

予想通りに政行さんが俺の髪に触れていた手を、後頭部に回してきたから、目を閉じる。

重ねられた唇からはコーヒーの味がした。

流石に、煙草をやめて大分経ったからか、もう煙草の味はしない。

でも、今のキスの味も勿論嫌いじゃない。

昔に比べて、唇の感触が変わってもいるけど、それを気にしてなのか優しく触れるのも伝わるし、なんて考えていたら身体の芯が熱を持ち始めちまった。

朝立ちもしなくなってきたってのに、少し長いキスなんかしたら、すぐこれだ。

唇を離して目を開けると、嬉しそうな顔をした政行さんと視線が合う。

 

「……政行さん、朝立ちしてた頃はせっかく勃ってるんだしって、手を出してきてたけど、しなくなっても結局は手を出すよな」

「何だよ。ちゃっかり反応しといて、人のせいだけみたいに言うんじゃねぇよ」

「そりゃ、キスされたら、その条件反射っていうか、何というか」

 

唇以外の場所にも、キスされるのを思い出すのも原因の一端なんだろうけれども。

 

「俺、マグカップ置け、まで言ってねぇぞ?」

「う……」

 

態度で言ってたようなもんじゃねぇかとは口にはしない。

さらに突っ込まれるのが目に見えている。

触れ合わせた腰で、政行さんのモノも固くなってるのが伝わった。

若い時みたいな激しく求めたくなるような衝動はなくても、やっぱり触りたくなるし、触って欲しくなるんだよな。

 

「布団干す前にちょっとベッドで楽しむか。夜が完全に明けるまでもまだあるしな」

「……ん」

 

髪を撫でられながら、どうせ後で布団干して、洗濯するなら、多少汚しても気にしなくていいな、と考えながら、もう一度キスする為に目を閉じた。

 

 

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