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叶わぬ恋なら(プロトタイプ01)<月刊少女野崎くん・堀みこ>

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2015/02/20のワンライから『叶わぬ恋なら』。
後にこれを鹿島Sideで改めたのが『Immorality of target -before-』になります。
本編の十数年前のやりとり。
※pixivでは『Immorality of target another02』
pixivではImmorality of target another01に収録してあります。

初出:2015/02/20 

文字数:1505文字 


「……ホントにいいの?」
「ああ。そうした方がお互いの為だろ、きっと」

堀先輩が結婚することを俺に告げた日、俺はそのまま鹿島の家に行って一晩泣き明かした。
いきなり行ったにも関わらず、鹿島はちゃんと俺の話を聞いてくれて、慰めてくれた。
こういう時には親友の存在が切に有り難い。
そうして、泣き明かして多少なりともすっきりした今日、行動するなら今しかないと、使っていた携帯の契約を解約し、引っ越しの為に不動産屋に飛び込んだ。
どうせ、この先一緒に過ごしていくことが出来ないのなら、この機会に堀先輩との関わりを全て断ちきって、終わらせてしまいたい。
今日が休みだった鹿島も俺に付き合ってくれたから、鹿島には直ぐに新しい方の携帯の番号やメアドを伝えられたのは幸いだ。
鹿島の連絡先さえ把握しておけば、後は仲の良い友人には大体連絡をつけていける。
パソコン側のメアドは帰宅してから変更していくとして、次は家だ。
幸い、今の住まいよりもう少し会社に近い場所に理想的な物件を見つけられたから、直ぐにその場で契約し、その傍らで鹿島が引っ越し業者に連絡して、引っ越しについても契約を終えた。
明日には業者が家に来て、引っ越しも終わるはずだ。
とりあえず、今日やれることは一通り済ませたところで、鹿島の家に一度戻った。

「あ、鹿島。新しい携帯だけど、堀先輩には――」
「言わないよ。最初から言うつもりもないから安心して」

大体それやったら、今、色々やってきた意味がないじゃんって苦笑した鹿島に、それもそうかと納得する。
何だかんだで一気に動いたから、俺も頭ん中が整頓出来てねぇみたいだ。

「……悪いな」
「もうちょっと話し合ってからでも、良かったんじゃないかとは思うけどね。でも、御子柴がこんなに素早く行動していくなんて、よっぽどなんだろうって思うし」

確かに、自分でもこんなに直ぐに行動出来るなんて思ってなかったから、鹿島の言葉ももっともだと思う。

「…………嫉妬って怖いよな」
「御子柴?」
「相手の性格は勿論、顔も名前も知らないのにさ。女ってだけで当たり前のように先輩の妻ってポジションを確保出来るんだなって思っちまった」
「……御子柴」
「そんな感情抱えてなんて、やっていけねぇよ、俺」

そんな暗いドロドロした感情が自分の中にあったことが嫌だし、先輩の前でそれを出さないような自信も無い。
そんな自分に愛想尽かしたくなる前に、きっぱりと別れてしまった方が絶対にいい。

「鹿島」
「ん?」
「迷惑かけて悪い。……多分、俺と連絡取れなくなったの先輩が知ったら、真っ先におまえの方に教えろって連絡入ると思う」

俺たちが親友同士なのを堀先輩は知ってるし、そもそも鹿島と堀先輩だって仲は良い。
板挟みにさせちまうのが分かっているだけに、申し訳ない。

「いいよ。それは予想の範疇だから。そういうのは気にしないで」

どうせ、叶うことのない関係だ。
結婚するような相手に、それでもいいから一緒にいて欲しいなんて言えないし、言いたくない。
別れることを決めたのは正しいって思っている。
けど。

「ごめん」
「ん?」

今の自分の顔を見られないように、鹿島の肩にこつんと額をぶつけるように寄りかかった。

「……俺、まだ時々は泣くかも知んねぇ」
「…………いいよ。きっと泣いちゃった方が楽になるんだろうし。ああ、でも外よりは家で泣いてくれた方が私としては助かるかなー。外だと私が泣かせたって思われそうだから」

そんな軽口で返してくれる鹿島の存在に救われる。
今はまだ何処かで先輩に会ったとしても、幸せになって欲しいなんて言えない狭量さだけど、いつかは笑ってそんなこともあったなんて言える日が来ればいい。
どうせ、叶わぬ恋なのだから。