STAMP OUTアンソロジーに寄稿した話です。
お風呂プレイ再び。せっかくなので、潜望鏡フェラをやりたかっ(略)
初出:2005年
文字数:4687文字
「久川さん、どこか痒い所ありませんか?」
風呂場で久川さんの髪を洗いながら、そう尋ねてみた。
久川さんと一緒にこのマンションで暮らすようになってからは、俺たちは一緒に風呂に入っている。
右腕の自由が利かない久川さんは一人では色々不便そうだったし、ここの風呂は結構広くスペースが取られていて、大の男二人が入っても不都合は無いように出来ていたからだ。
それでも最初のうちこそ、抱き合うようになった間柄ということで正直照れもあったが、最近は大分慣れた。
「ん~。そうだなぁ……ああ、もっと下」
「ここら辺ですか?」
洗っていた場所を少し下げて、耳に近い部分を擦るが、久川さんはうんとは言わない。
「いや、もっと」
「えっと……この辺り?」
もう場所は首筋近い。
尋ねる前にも、十分洗ったつもりでいたけれでも、まだ物足りなかったんだろうか?
「や、もっともっと。ずっーと下。でもって、手は前に」
……ようやくここにきて、久川さんの言わんとしている意図が掴めた。
身体の中心で久川さん自身がしっかりと反り返っている。
思わず顔が火照ってしまったのを自覚してしまった。
「……あの。俺、今洗ってるの髪なんですけど」
動揺を悟られなければいい、と思いながらも俺の声は少しぎこちなく擦れてしまった。
「いいじゃねぇか。減るものでもねぇし。やってくれないのか?」
「髪が終わったら、ちゃんとやりますから」
そんな風に甘えるような声音で言われて、拒めるわけなんかない。
「髪、流しますよ」
「おう」
シャワーで髪の泡を洗い流し、身体の方も一通り流す。
そうしてから軽く跪いて、腕を前に回し、そっと久川さんの中心に指を伸ばした。
熱を帯びたそれが触れた瞬間にぴくりと震える。
そっと握って上下に擦ると、やがて久川さんの呼吸が少しずつ乱れてくる。 零れ始めた先走りの雫は確かに感じてくれている証拠。
他の何でもなく、俺の手で。それが嬉しい。
「……昌行」
「はい?」
「湯に入らねぇか?」
「え?」
最後までしようと思っていたから、久川さんの言葉は少し意外なものに感じた。
「……気持ちよくありませんでした?」
「そうじゃねぇよ。ここちょっと冷えるだろ。どうせなら温まりながらの方がいいと思ってな」
「あ、そういうことですか」
「ま、のぼせちまわないように湯をある程度抜くけどな」
のぼせるかも知れないところまでやるつもりですかとつっこみかけてやめた。
そのくらいの想像がついていなかったかと言えば嘘になる。
だって、風呂に入ってそのまま何もせずに出るという方が少ないくらいなのだから。
久川さんが湯船に浸かって、湯を抜き、腰ぐらいまで浸かる程度の水量になった所で俺も浸かる。
なるほど、自分で思っていた以上に身体は冷えていたらしい。 温かい湯が心地良かった。
向かい合わせになる形で屈んで、久川さんに触れようとしたら、頭上から微かな笑い声が聞こえる。
「……何、笑っているんですか」
「いや、いい眺めだなと思って」
「あまりじろじろ見ないで下さい」
「そいつは無理な相談だな……っん」
どうも、久川さんにばかり余裕があるように見えるのが癪で、水面から半分ほど覗いた久川さんのモノに唐突に顔を寄せ、舌を絡めた。
じわりと口の中で雫の味が広がる。
塩気があるようにも思える一方で、蜂蜜のような甘さも感じるから不思議だ。
久川さんの言葉は途切れたきり。
余裕を崩せたのに内心で笑って、水面から出た部分を包むように咥えた。
「…………っ」
モノに舌を絡ませると、久川さんが歯を噛み締めて、声を殺した。
こういうのは征服欲とでも言うんだろうか?
俺の動作一つで久川さんの様子が変わっていくことに本能的な満足感、みたいなものを感じてたまらなくなる。
もっと与える刺激を強くしようと口を窄めて、軽く上下させた瞬間。
久川さんの指が俺の双丘を割って中に入り込んで来た。
集中していた所為か、何時の間に久川さんの手がそっちに回っていたのかが全く気付かなかった。
「な……ちょ……久川さ……!」
「気持ちよくなるなら一緒に。……な?」
「あ、ダメ……です」
「自分はやっておいて、そりゃねぇだろ」
「や、だって……俺が動けなくなる」
実際、中で動き始めた指に口が動かせなくなり、久川さんを解放してしまう。
それをいいことに久川さんの指はどんどん荒れ狂うように中で動く。
弱い場所に触れられて、思わず久川さんの太股に縋るような形になってしまう。
「……は……っ……久川……さ……」
「湯の熱さで身体が温まった所為か、大分ほぐれてるな。来い、昌行。……俺の上に座るように。自分で挿れられるか?」
「……って……まさか、向かい合った状態で?」
「おう」
「……う」
久川さんと俺が繋がる瞬間を露な格好で見られる。
よくベッドの上でやる体勢よりもずっと露骨な繋がり方。
その事は酷く羞恥心を煽った。何度も触れ合って今更、と思われるだろうけども。
それこそ見られていない場所も、触れられていない場所もこの身体の何処にもないことなんてわかっている。
それでも、自分で導いて繋がり合う。
想像するだけで消えたくなった。
動けないでいると、久川さんの笑う気配が伝わった。
「……しゃあねぇなぁ。背中。こっちに向けろ」
「え……」
「見えなきゃ、まだましだろ? 後ろから抱いてやるよ。俺のを触りながら、腰落とせ」
「……すみま……せん」
この人の求めるように応じられない自分が情けない。
でも久川さんは気にするなと言うように、俺の髪をくしゃりと撫でた。
「いいってことよ。……慌てる必要なんかねぇ。ゆっくり色々やれるようになればいい。これはこれで楽しみ方もあるからな。……ほら」
「はい……」
身体を起こし、久川さんに背を向けて。
言われた通りに後ろ手に手を伸ばし、久川さんの身体を探る。
直ぐに指先に触れた熱い塊を掴んで、自分の双丘の間にあてがった。
息を詰め、力を抜いてそのまま腰を落とす。
「……っ」
「んっ……」
僅かな湯と一緒に久川さんが俺の中に入ってきた。
湯の熱さよりも、久川さんの方がもっと熱くて一瞬だけ中を焼くような錯覚が襲う。
実際はそんなに温度としては熱いわけではないだろうけども。
身体を繋ぐ瞬間の違和感は、幾度と無く抱き合ってきていてもどうしても抜けない。
それでも久川さんを根元まで収めて、吐息を零すと少しずつ熱が馴染むように伝わってきた。
繋げた場所に感じる脈動に浸っていると久川さんの腕が腰に回される。
「久川……さ……んんっ…!」
後ろ側から耳にキスされて、首筋にキスされて、肩にキスされて。
微妙な甘い刺激がもどかしくて、つい呼吸が途切れ途切れになった。
その上、腰に回された手はさりげなく俺のモノに触れている。
だけど、そっちもそれ以上刺激を与えてはこない。
あくまで覆うように触れているだけだ。
気持ちよくないわけじゃないけど……どうにも物足りない。
「あ……んぁ……」
軽く腰を揺らすと、じわりと快感が漣のように押し寄せてくる。
派手な水音は身体を動かすことによって生じている湯の跳ねる音だとわかっているのに、酷く淫猥に耳に響いた。
前に触れている久川さんの掌に擦り付けるような感じになってしまっている、というのも有ったかもしれない。
「イイか?」
「ん……聞かないでくださ……」
一旦走り出した衝動は収まらなくなる。
腰の動きが止まらない俺を、久川さんはどう思っているだろう。
表情が見えないから読めなかった。
「……可愛いな、昌行」
「……や……ちょ……待っ……!」
久川さんまで腰を動かし始めて焦る。
背中や太股で感じる久川さんの体温が心なしか上がっているように感じられた。
果たして、浸かっている湯の所為なのか、行為によってのものなのか。
俺の肩口に押し当てられた久川さんの頭。
擦れた声の熱っぽい囁きが聞こえた。
「……っ。やっぱり…………失敗したかも知れねぇ、な」
「何……がです、かっ……」
自分の声も擦れている。
徐々に早くなる律動に崩れ落ちそうになり。
「今のお前の顔……見られねぇのが残念だ……失敗……したっ」
「っ!」
その言葉にさらに興奮が煽られる。
ただ触れていただけの久川さんの手が動いて、俺のモノの先端に軽く指をめりこませる。
痺れる様な痛みにも近い、けど確かな快感がズキンと腰を射抜く。
まずい。もうそんなにもたない。
「久……川さ……っ」
「イキそう、か?」
「ん……! 一人じゃ……嫌、です」
イクなら一緒が良い。
この人にも感じてもらいたい。
俺の中でイって欲しい。
「心配するな。俺ももう、もたねぇ……よっ……ほら……!」
「ああ!」
一際深く貫かれて、閃光が脳裏でちらついた。
背筋を駆け上がっていった射精感に身を委ねて、ただ快感だけがある空白の瞬間に浸る。
我に返ると、俺の中でも熱いものが中を伝っていく感触がわかった。
ふと、視線を下に落とすと、湯に沈んでいく自分の精液。
それを眺めて、つい苦笑してしまった。
「……お湯、汚してしまいましたね」
「入浴剤だと思えばいいじゃねぇか」
「そんな無茶苦茶な」
気だるい心地良さの中で、顔を傾けて、久川さんと口付けを重ねた。
触れ合わせては離し、また重ねては離れて。
そんなことを繰り返し、ようやく感覚が戻ってきて動けるようになっても、久川さんの腕は俺を離さなかった。
だから俺は動かない右腕も取って、自分の身体に沿わせた。
「肩冷えてねぇか?」
「まだ身体が熱いくらいですよ。……久川さんは大丈夫ですか?」
「俺もまだ熱い。何とかのぼせずに済んだがな。もうしばらくこうしていてもいいか?」
「はい。俺もまだのぼせるまでは行かないですから」
湯の加減が良かったのか、のぼせるというよりは心地良い暖かさに眠くなってしまいそうだ。
「……寝てしまいそうですね」
「そうか? 俺は結構目が冴えてるがな。何ならもう一回このまま出来るぞ?」
「………………何でそんなに元気なんですか」
とても一回り年の違う人だとは思えない。
「そりゃお前、こんな可愛い反応するヤツ抱いてたら、何度でもしたくなるに決まってるだろう」
好きなヤツじゃなきゃ、ここまで抱きたいなんて思わねぇさ、と久川さんが呟く言葉につい照れてしまう。
「可愛いって大の男に使う言葉ですか……」
自分で聞いていても可愛げのない、そんな言葉を返しているというのに。
「そういう反応が可愛いっていうんだよ」
久川さんはそれにただ笑って、抱きしめてくれる腕の力が強くなる。
「昌行」
「何ですか?」
「年取って、お互いジーさんになっちまっても、勃つ限りはヤろうな」
この人なら、三十年、いや四十年立っても誘いをかけそうだというのが想像できて可笑しくなった。
この人には一生敵わないのかもしれない。
「その時に俺も大丈夫だったら、ですね」
「お前の方がずっと若いんだ。大丈夫に決まってる。なぁに、勃たぬなら勃たせて見せよう何とかって言うじゃねぇか」
「言いませんよ」
そうして二人で繋がったままで子どもみたいに笑いあっていた。
十年後も、二十年後も。
一緒に生きている限り、こうして過ごして行きたい、と思いながら。
冒頭にあるように潜望鏡フェラをやりたかった話ですw
裏話書くのに久々に読み返したけど、私本当に(色んな意味で)余裕のある攻と真面目な受の組み合わせ好きだなぁ。
久赤ルート以外だと久川さんってルート分岐の最初の方で死んでしまうのですが、ドラマCDのシューティストやBL雑誌に掲載された久赤話とか考えると、ライターさん割とここの組み合わせ好きだったんじゃないのかな、と思ったりします。
(推しカプゆえの盲目もあるとは思うけど)
久川さんはいつまでも絶倫であってほしいw
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