夏コミ原稿あるから、短めにふらっと……と思って書き始めたはずだった(過去形)、御子柴女体化による堀みこ♀。
考えれば考えるほどシリーズものの方向になったので、とりあえずプロトタイプという形で冒頭の一部だけ出しときます。
夏コミ後にでも、改めてゆっくり形にしようかと。
女体化は沼だった……。女体化苦手な方はご注意下さい。
朝、いつものように起きたら、身体の感覚がどうにも妙だった。
目に映る自分の部屋はいつも通りのはずなのに、直感が何かおかしいって告げている。
単に寝ぼけてるせいってのでもなさそうだし、体調が悪いっていうのともちょっと違う。
けど、この正体不明の感覚が何から来ているものなのか、どうも分からない。
「……? 何だ、こ……」
身体を起こしたところで、ケツの下に違和感を覚えて、反射的に布団を剥いだ。
身体を少し除けると、シーツが血らしきもので、赤く染まっていてぎょっとする。
ちょっと待て。
ついに話に聞いた痔にでもなったのか、これ!?
先輩とセックスする時に使っているんだから、有り得ない話じゃない。
とりあえず、現状の確認と下着とパジャマをまず着替えようと一緒に脱いだら……あるべきものがなくなっていて、固まってしまう。
自分の目が信じられずに、思わず手を伸ばして、探してみても結果は同じ。
長年慣れ親しんできたモノが跡形もなく消えていた。
人間、本当に驚くと禄に声も出ないってマジだ。
「なん……だよ、これ」
まさかと思って胸元も触ってみると、こっちは馴染みのない柔らかい感触が手のひらに当たって、さらにビビる。
「え」
そのまま跳ね起きて、全身を映せる鏡の前に立ち、パジャマのボタンを外して前を広げる。
丸みを帯びた身体の線、平べったかったはずの胸はデカくはないけど、それなりの大きさの胸がついている。
いや、ついているっていう表現もおかしいのか、この場合?
これじゃ、まるで女になっちまったみたいじゃねぇか。
まだ夢を見てるのかと思ったが、じわじわと痛み始めた腹が、どうやら夢じゃないらしいと告げている。
待て、もしかして血が出てるのって、まさか……いや、でも。
生まれてから十六年とちょっと。
間違いなく男として、これまでの人生を送ってきたはずなのに、一体何がどうしてこうなった!?
いきなり自分の身に起きた非日常の出来事に、混乱で頭の中がぐるぐるする。
出来るものなら、本当に夢であって欲しい。
いくら、堀先輩とのセックスで受け身になってるのが俺だからって、まさかそれで女になるっていうバカな話もねぇだろう。
けど、他に心当たりらしき心当たりなんて――。
「実琴ー。起きてるの? 母さんももう仕事行くわよ、ちゃんと起きてご飯食べてから学校行きなさいね」
そんなタイミングで、部屋の外から母親が俺に呼びかける声が聞こえたことで、我に返った。
そうだ、今はゆっくり考えているような時間はない。
「あ……ああ! 起きてるから大丈夫!! 行ってらっしゃい!!」
うちの親は二人とも働いているし、俺よりも家を出るのが早い。
この異変に気付かれずに済みそうなのは幸いだ。
それも一時のことでしかないだろうけど。
「…………どうすんだよ、これ」
つい、鏡に映っている姿を見ながら、鹿島よりもありそうだよな、これ――なんて思ってしまった辺り、多分、動揺を通り越して頭がどうにかなっていたんだろう。
この状態で一人家にいるのも、心細かったって言うのも正直ある。
病院に行くべきなんだろうとも考えたけど、自分でも経緯をどう説明して良いのか分かんねぇし、一人で行くのもこれまた心細い。
特殊な症例だからと、騒がれたりする可能性があったりするんじゃねぇかと考え始めてしまうと、余計行く気がなくなる。
結局、胸をどうにか布で覆うようにし、ぱっと見変化が分かりにくいようになったところで、そのまま学校に行ってしまった。
***
とはいえ、学校に着いたら着いたで、この身体の状態が人にバレたらまずいっていうのもあって、何となく一日中人を避けてしまう形になった。
体育の授業がなかった日なのは幸いだが、特に堀先輩にバレたら、絶対ヤバいことになるのは予想がつく。
あの人なら絶対面白がって、色々試しかねない。
だから、なるべく顔を合わせないように逃げていたってのに、妙な部分で勘の鋭い先輩は、誤魔化されてはくれなかったらしい。
普段よりかなり疲れた一日を過ごし、自宅に戻ると家の前に先輩が待っていた。
「よう」
「せ……んぱい。何で、ここに」
「何でって、おまえが俺を避けてるからだろ。分かんねぇと思うのかよ。……御子柴」
「はい?」
「声どうした? 喉の調子でも悪いのか?」
いや、でもその割りには声が嗄れてるっていうのとも違うよな、寧ろ少し高く澄んだ声になった。と続ける先輩に、初めて、自分の声までもが変わっていたことに気付いた。
そういや、鹿島も喉の調子おかしい?って聞いてきてたよな。
あれはこういう意味だったのかよ。
うかつだった。
くそ、なんか人の視線が訝しげに感じたのはこれか。
体型隠すのに精一杯で、声は正直意識してなかった。
けど、調子が悪いと思ってくれたのなら幸いだ。
それを理由に帰って貰おうと、言い訳にさせて貰うことにする。
「そうです、ちょっと体調悪いんで、早々と今日は寝ることにしますから、せっかく来たとこ悪いけど、先輩も帰ってくださ……」
そそくさと家の中に入って、玄関の扉を閉めようとしたところで、先輩の足が隙間に滑り込んできて、それ以上閉められなくなった。
……っとに、どこの悪徳業者のやり方だよ!
「体調悪いんだったらしばらくついていてやるよ。おまえんとこ、今日も夜遅くまで親いねぇんだろ?」
「いません……っけど、一人で大丈夫、ですか、ら……!」
どうにか玄関の扉を閉めようとするも、先輩の力には叶わず、少しの押し問答の挙げ句に結局扉は開いてしまった。
先輩がさっと家の中に入り込んできて、俺のシャツの襟元を掴みかけて……そのまま首筋を撫でていくように触れてきた。
「う……」
「……何かおかしいんだよな、おまえ。妙に身体の線に違和感があるっていうか、雰囲気がいつもと違うって言うか。何、隠してる?」
先輩は『演じること』についてはスペシャリストと言っていい。
鹿島がよく口にしているのもあるが、俺も鹿島と一緒に帰ろうとしたり、先輩に呼ばれて演劇部の部室に訪れた際の、稽古での状態を見ている限りでは、素人目にもやはり先輩の演技は、他の演劇部員と比べると格が違うっていうのは分かる。
……だから、こういうことにも誤魔化されてはくれないんだろうけども。
「隠して、なんか」
「嘘つけ。ここ来る途中で鹿島とも一緒になったけど、鹿島も今日のおまえの様子がおかしいっつってたぞ」
「…………く」
これ以上、言い逃れるのも無理か。
先輩の手が俺の喉元を辿っていって、鎖骨に触れようとしたところで、その手を掴んで止めた。
触られて確認されるよりは、自分の口から言った方がまだマシだ。
「……その、状態言っても驚いたり、気味悪がったりしませんか?」
「はぁ? 何だそりゃ、分かんねぇよ。確認してみないことには何とも言えねぇ」
「ですよね……」
そりゃそうだろうって、俺だって予想つくけど、それでも、むやみやたらに驚かれたり、気味悪がられたりすると、こっちのショックもデカそうだから躊躇っちまう。
何となく、目を逸らしてしまっていると、先輩が溜め息を吐いたのが伝わった。
「…………驚かない保証は出来ねぇが、気味悪がったりはしねぇよ。それじゃダメか?」
「先輩」
「御子柴。一体どうしたってんだ、今日のおまえホントにおかしいぞ?」
「……部屋行きましょう。玄関先じゃアレなんで」
俺の方もいい加減諦めがついたというか、腹を括った。
少なくとも黙っていたところで、状況は進展しない。
自室まで先輩を招いて、事情を説明することに決めた。
***
「俺の身体、女になったみたいなんですよね」
「は?」
驚いたというよりは、訳が分からないというように先輩が戸惑いの表情を浮かべている。
そりゃそうだよな。普通に生きてて、いきなり性別が変わりました、なんて言われたところで、早々納得出来るもんじゃねぇだろう。
「何か胸は出て来てるし、その、下の方も」
「見せてみろ」
「や、ちょっ、先輩!」
間髪入れずに俺の服に伸ばして来た手に、今度は俺の方が戸惑う。
「何だよ。とっくに身体なんか全部見てんだろうが。そんな改めて戸惑うことかよ」
「だって、状態は全然違いますし! というか、何でさらっと順応してんすか!?」
「まぁ、言っちまえば所詮他人事だし」
ぐさりと容赦無く突き刺す言葉に溜め息を吐く間もなく、先輩が俺のシャツを脱がせて、Tシャツを脱がせる。
そして、巻いていた布を解いて、あっという間に上半身は何もつけてない状態になった。
マジマジと舐めるように見られるのが、どうにも居たたまれない。
「……っ」
「あー……こりゃ、予想以上にあんな、おっぱい。鹿島よりあんじゃねぇの、これ」
「うあっ」
朝の俺と似たような感想を口にしつつ、遠慮無しに伸ばして来た先輩の手が、俺の胸を揉んだ瞬間に、じんと甘い快感が湧き上がった。
げっ、何だこれ。
自分で軽く触った時にも気持ち良いとは思ったけど、これは――。
俺の反応から先輩も察したらしく、口元にニヤリと笑みを浮かべた。
「……へぇ、ちゃんと感じるのか」
「や、あ、ちょ……あ、何か、その動き、ヤバ……っ」
先輩の手が絶妙な動きに変わって、胸を撫でてくる。
下の方から上へ向かって指が泳ぐように蠢いていく。
乳首だけなら、男の身体でも感じていたというか、先輩に感じるようにさせられたけど、まだ乳首に触ってない状態でこれなら、乳首に触ったらどうなるのか。
けど、焦らそうとしてるのか先輩は乳首の方には触ってこない。
それでも、顔を寄せて、首筋に触れてきた唇の熱さは新たな快感をもたらした。
「せん、ぱ……」
「改めて見ると、首筋や腕も細くなってるし、肩も何か丸み帯びてるな。肌の質感も柔らかい。なるほど、『女』の身体だわ、これ」
「うあ!」
首筋に軽く歯が当てられて、背が仰け反りそうになった。
思わず、先輩の肩を強く掴んで爪を立ててしまう。
元々、触り方の力加減みたいのが上手い人だったけど、何か感じ方が違う。
ホント、どうなってんだよ、この身体。
「ん…………あ、ひ、あっ」
「やっぱり、こうして改めて触ると胸は勿論、乳首も男と女で違うよなぁ。感じ方、やっぱ違うか?」
「し……らね……っ」
手のひらで乳首をころころと転がすようにされて、腹の奥が熱くなる。
単純に胸の方も気持ち良いけど、腹の方にもくる。
男の時みたいに勃ったりするような感覚とは違うけど、別の種類の快感っていうか、こう……身体の芯の方に響いてくるっていうか。
けど、先輩の手がそのまま下まで降りて、スラックスにかかったところで慌てて止めた。
「ちょっと、待った!」
「何だよ、こっちだって今まで散々触ったし、舐めたし、突っ込んだだろが」
「や、だから、その時とは状況が違……」
「大して違わねぇよ。身体がちょっと違ってても、御子柴は御子柴だろ」
一瞬、その言葉が嬉しくて揺らぎそうになったが、それとはまた別の問題がある。
「……っ、いや、その、あのですね! えっと……下は、まずいっす。血、出てるんで」
「…………おい、それって」
「その、多分、ですけど。……生理ってやつ、なんじゃないか、と」
しばし、沈黙が続く。
流石の先輩も面食らったらしい。
気まずそうに頭を掻いた。
「……つまり、アレか。いきなり血が出て驚いてたら、身体が女になってたってことか」
「そういうことです。……俺、最初は痔になったのかと思いましたもん」
「そっちなら、心当たりあるもんな」
「さらっと言ってくれてますけど、その心当たりがあった場合の原因って先輩ですからね?」
最近でこそ、そんな痛い思いをすることはなくなったが、最初の頃はやっぱり痛かったし、ホント裂けてるんじゃねぇかと思ったことも一度や二度じゃない。
……まぁ、だからセックスするのをやめたとかそういうわけでもねぇんだけど。
※とりあえずはここまで。
紅敬♀とは違う方向なので、これもどうにか形にしたいのだけど……!