昔、拍手に突っ込んでいた書きかけの灰文。
ほぼ会話文。高確率で放置しそう。
「また貴方は……供も連れずにお一人で」
「何だい、今更。君のところに来るのにはいつもこうじゃないか」
「数日お加減が優れなかったと伺っておりますよ。大丈夫なんですか?」
「誰に聞いたんだい……って、一人しかいないか。やれやれ、口止めしておくべきだったかな」
「銀朱隊長に非はありませんよ。時折上の空になってらした隊長を誘導尋問したのはこっちですから」
灰名様は誤魔化す術に長けていらっしゃるが、銀朱隊長はその手のことは不得手でおいでだ。
あの方が幼かった頃から存じ上げていることもあるけれど、もしかしたら、灰名様の事よりも隊長の事についての方が色々知っていることが多いのかも知れない。
誘導尋問を仕掛けると、ほぼ百発百中で引っ掛かってくださる。
ある意味色々とやりやすくはある。
「困るな。うちの息子を利用しないでくれるかい」
「利用とはまた人聞きの悪い。顔を曇らせていたら気になるのが当然でしょう。 で、お身体は大丈夫なんですか」
「心配いらないよ。大丈夫じゃなかったら、ここに来てはいない」
「本当にご無理なさらないで下さいね。さすがに私が灰名様の館にお伺いするわけには行かないんですから。詳細がわからない分、こっちは心配するんですよ」
「来てもいいのに」
「ご冗談を。一部の方々に知れたら面倒なことになるのぐらい、お解かりでしょう。私は楽しく仕事をしたいんですよ」