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ご当地グルメ紅敬(スパカツ)

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※夢ノ咲卒業後も紅月として活動し、紅敬は同棲もしているという前提。
年齢は二十代後半を想定して書いています。
※ご当地グルメ紅敬企画とタイミング合わずに書きかけてそのまま放置。
ただ、企画元的にも今更出しにくさもあるので、どうしたものか。

 

台所から聞こえてくる物音で目が覚めた。
まだベッドから出たくない気分とのし掛かる気怠さをどうにか押しやって、ベッドサイドに寄せてあるチェストに手を伸ばし、置いてあった眼鏡を取って掛け、そのまま直ぐ横に置いてあったスマホで時間を確認すると、時間は午前十一時を回ったところ。
想定以上に遅い時間だった現実を受け止めるのにしばし掛かったが、時間を再確認し慌てて身体を起こす。
いくら、久々の休みとはいえど、まさかこんな時間まで自分が眠ってしまっていたとは思わなかった。
ただ、寝坊の理由として心当たりは十分過ぎるほどにある。

紅月は先月末まで、全国をライブツアーで回っていた。
それに伴う後処理やら、ライブ映像等の確認やらでようやく落ち着いたのが昨日。
忙しさが一番の原因だったが、ツアー、そして後処理が一段落するまでは、と性的な接触は控えめにしていたのだが、今日、明日が完全にオフということで昨晩は箍が外れたようにお互いに貪りあった。
意識が沈む前にカーテンの隙間から朝日が覗いていたぐらいだから、眠りについたのは確かに遅かった。
寝坊はそのせいだ。正当化するわけではないが、久し振りの休日なのだしこういうこともあるだろう。
台所の物音は鬼龍が朝食、いやもう時間的に昼食というべきだろうか。
その用意をしているのだろう。
俺も簡単に身支度を調え、台所に向かったところ、直ぐに俺に気付いた鬼龍が声を掛けてきた。

「おう、おはようさん、旦那。身体大丈夫か?」
「ああ、おはよう。大丈夫だ。ん? これから作るところということは、おまえも起きてからそんなに経ってないのか」

鬼龍は冷蔵庫からいくつか食材をとりだしているところで、まだ調理そのものは手付かずだった。
それなら、俺も一緒に作れる。

「俺も起きたのはついさっきだ。ちょうどいい。起きて来たなら、旦那も作るの手伝ってくれ」
「無論そのつもりだ。ん? 随分と色々出しているな。一体何を作るつもりだ?」

食材もだが、調理器具もテーブルに色々と並べられている。
パスタとそれ用の鍋はともかく、揚げ物の準備もしているあたり、俺が知っているレシピからのものではなさそうだ。

「ツアーで北海道行ったときに食ったスパカツ作ってみようと思ってよ。昨日、散々動いた分の回復にも良さそうだし」
「あれか。かえって胃がもたれそうだが……ああ、でも自分たちで作るなら量も調整出来るか」

今回のツアーは紅月にとっては過去最大規模のもので、全部で20近くの都市を回った。
当然、それまでのツアーで訪れたことのない都市もいくつか含まれる。
北海道は道東の主要都市、釧路もその一つだ。
前日入りして、駅周辺に多いという居酒屋をすすめられたものの、翌日にライブを控えている状態であまり飲む気にもなれず、ならばと地元の老舗洋食店を紹介され、そこで食べたのがスパカツだった。

――すぱかつ? すうぱあなさいずのかつということであろうか?
――いや、スパカツのスパはスーパーじゃなくて、スパゲッティのスパらしい。ボリュームが結構あるという話だ。
――スパゲッティの上にカツが乗っかってるらしいな。で、さらにミートソースがたっぷり掛かってる。でもって、ポイントは鉄板の上にそれらが乗ってるってとこにあるみたいだぜ。

(中略)

「料理の構成としちゃオーソドックスなもんの組み合わせだったから、それっぽいのを作りやすいんじゃねぇかってな。ただ、問題がある。皿がなぁ……」
「うん? 鉄板を使ったステーキ皿なら一応あるだろう?」
「ああ、それは分かってる。ただ、コンロが足りねぇんだよ。カツを揚げる、ソースを作る、パスタを茹でる、まではともかく、鉄板を温めるまでは足りねぇんだよな」
「あ」

このマンションのコンロは三口だ。
普段ならそれで十分な数だが、確かに全て出来たてでやろうと思うと足りなくなる。
構成はシンプルだが、なるほど。手間は予想以上に掛かりそうだ。
鬼龍が作りたくなったのも休みの日だからというのもあるだろう。

「ならば、大雑把になってしまうがステーキ皿代わりにホットプレートを使うのはどうだ? パスタが茹で上がる少し前から電源を入れておいて温め、出来たものを投入していけば熱々の状態で楽しめるんじゃないか」
「なるほどな。二人で食うんだしそんでもいいか。蓮巳、パスタとミートソース作り任せていいか?」
「ああ。揚げ物は集中した方が無難だろう。ミートソースはいつものレシピでいいのか?」

うちで使っているミートソースは鬼龍が元々実家にいた頃に使っていたレシピをそのまま流用していた。
料理本に載っていたレシピで、作る時は何度か使えるように大量に作っている。
ツアーで家を空けがちだったのもあって、今はミートソースのストックもない。

「んー、いつものウスターソースをとんかつソースに変更してみてくれねぇか? あと、おろし生姜とデミグラスソースもちょっと足す。多分その方が近い味になりそうだ」
「ということは、味見してデミグラスの量を調整する感じか」
「おう、それで頼む」

パスタを茹でるための湯を深鍋で沸かしながら、ミートソースの準備も始める。
鬼龍の家のレシピだったが、俺も何度か作ったことはあるから、もう作り方は頭の中に入っている。
問題は味の調整だ。

(以下略。いつか完成させたいとは思っている)

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