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君の名は<花帰葬・灰文>

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文官着任から数ヶ月。

ゲーム中で彼の名前が出て来ない理由。

初出:2006/11/05 同人誌収録:2006/11/05(白銀の地に落ちるは柔らかな日差し)

文字数:853文字 

 

「文官、ちょっとこれを……」
「ああ、文官。丁度良いところに。この書類何だが……」
「少々、よろしいですかな文官殿」
「あ、文官のお兄ちゃんだ。こんにちは!」

***

「……というわけで。最近、すっかり自分の名前を呼ばれる機会が少なくなってしまいましてね。時々、自分でも自分の名前を忘れそうになりますよ。……何を笑っておいでですか、灰名様」

ある日の昼下がり。
執務室にいるのは灰名様と私のみ。
こうして二人でお茶をするのは、何時の間にか休憩する時のお決まりのパターンとなってしまっている。
私が王立アカデミーを卒業し、城に上がり始めてから数ヶ月。
最初に灰名様が私を文官だ、と皆に紹介した所為で、気付けば自分の名前をそのまま呼んで下さる方がいなくなっていた。
特に難しい名前でも変わった名前でもないのに。
役職として間違っている訳では勿論無いのだが、何となく複雑に思ってしまう。

「ふふふ……いや、済まない。つい、おかしくて。皆、素直だな。紹介した時の呼称、そのままで呼んでしまっているとはね」
「何処のどなたの所為だと思っていらっしゃるんですか」
「いいじゃないか。私は時々君をちゃんと名前で呼ぶだろう?」
「……本当に時々、ですけどね」

しかも、他の誰かがいるところでは絶対に名前で呼ばない。
二人きりの時に呼ばれたところで周りにそれが浸透するはずもない。
こうなるともう他の方々には本名を覚えて頂いているのかどうかも怪しいところだ。

「私一人では不服かい?」
「……返答に困る問いかけは止めて頂けませんか」
「何だ、それは寂しいな」
「誤解なさらないでください。不服じゃないから困っているんじゃないですか」

数ヶ月前までは確かに日常的に呼ばれていた名前は、今ではこの方くらいしか呼ばない。
だから、困るのだ。
ただのありふれている名前が特別な意味を含んでいるかの様に聞こえてしまうから、それが嬉しいと思ってしまっている事に困ってしまっている。

そう、呟いたら灰名様は肯定も否定もせずに微笑んだ。
まるで全てのものに優しく降り注ぐ、穏やかな日差しの如くに。

 

2006/11/05発行の個人誌『白銀の地に落ちるは柔らかな日差し』書き下ろし分。
文官の本名が結局ゲーム内で明かされない理由の一つを勝手に妄想w

灰文はプラスディスクでハマったのですが、エロ厨の私が珍しく健全な話しか書かない希有なカプですw
灰名様が既婚者ってこともあるけど、ちゅーの一つもしないって本当に稀。
さらに言うなら、かつて『世界は黒玄で出来ている』というタイトルのメルマガを出していたくらいに、私の中の花帰葬は基本が黒玄で成り立っているので、黒親子どちらも一切出て来ないという意味でも他にないという。
たまにはブロマンスもいいですよね!

灰文はまだ文官が王立アカデミーの学生で、灰名様と初めて会った時の話とかネタがあるので機会あらば書きたいです。

 

タグ:花帰葬灰文500~3000文字文官視点同人誌収録済2006年