あんスタコミカライズ一巻で、蓮巳が眼鏡カシャカシャするとこ好きだなぁ……と言うわけで、眼鏡絡みで短い紅敬。
既に付き合っている前提で書いてます。
初出:2016/04/09
文字数:1347文字 裏話知りたい場合はこちら。
「ん? 旦那、さっきまでしてた眼鏡と今してるの違うやつか?」
学院でのユニット練習後、今日は俺の家の方に泊まって行くからと、一緒に並んで歩いて帰っていた最中に、ふと何となく横顔を見た時の違和感に気付いて聞いてみた。
「ああ。練習で激しく動いたせいなのか、眼鏡のネジが少し緩んでいたんでな。明日帰宅してから締め直そうと思って、とりあえずロッカーに置いてあった眼鏡に替えた。よく気付いたな」
「まぁ、何となくな」
以前、蓮巳が眼鏡を新調した時、神崎が同じデザインの眼鏡なのによく旦那の変化に気付いたと感心していたことがあったが、気付いたのは眼鏡そのものが理由じゃない。
そりゃ、眼鏡が新品の場合は眼鏡でも分かることはあるが、それ以前に蓮巳が態度なり仕草になり、どっかで表に出していることが多いからだ。
あえて気付いて欲しくて出してる場合もあるんだろうが、無意識の場合もあるらしい。
今日の場合は少し驚いた様子からして、多分後者なんだろう。
俺としても違和感があると思いはしたが、具体的に何が違うと言われると分からねぇぐらいだったしな。
「さっきの眼鏡、持ってきてるなら家でネジ締め直してやるよ。今してる眼鏡だって、後でネジ緩むかも知れねぇんだし、締め直しといた方がいいだろ」
「…………鬼龍。貴様、外で何を言い出す」
声を潜めた蓮巳が俺を睨みながらそんなことを言ってきたが。
「おいおい。俺、ネジ緩むかも、としか言ってねぇだろうが。今の会話だけじゃ端から聞いたって分かんねぇよ。というか、おまえ何考えたんだ?」
「く…………っ」
少し意地の悪い言い方で軽くつついてやると、頬を朱に染めて口籠もったのは蓮巳の方だった。
実際、蓮巳の考えただろう内容で間違いはねぇ。
さっきは練習による激しい動きで眼鏡のネジが緩んだらしいが、今度は別の激しい動き、つまりはセックスの際にネジが緩む可能性がある――と言外に匂わせたのを旦那は明確に読み取った。
俺も蓮巳が言葉にはしないちょっとした変化を分かるようになってきたが、一方でこいつも俺が口にはしない意図を読み取ったり、何となく通じていたりなんかする。
紅月に入れと勧誘された頃なんか、直接言葉にしなければ分からないだろうと、連日しつこく旦那が電話してきたことを思えば、お互い随分変わったものだ。
そんな風に思考が通じ合うようになった変化は、決して不快なものではなく、寧ろ気分がいい。
「……もういい。今日はこのまま帰る」
「悪かったって。ちょっとからかっただけだろ」
踵を返そうとした蓮巳の手首を掴んで止めると、蓮巳も本気で帰るつもりまではなかったようで、それ以上は足を進めなかった。
軽く溜め息を吐いた旦那に、手首を掴んでいる手をポンと叩かれたから、とりあえずは大人しく離してやる。
どうせ、後で手首と言わず、身体中のあちこちに触ることになるしな。
「本当に悪かったと思うなら、夕食のリクエストくらいは聞いてくれるんだろうな、鬼龍?」
「ああ。家に戻る前に、てめぇがこのまま一緒にスーパーに寄ってくれりゃな。お望み通りのもんを作ってやるよ」
「いいだろう」
一緒に夕飯の買い物するなんて夫婦みたいだな――とは口にしなかったが、蓮巳も俺が一緒に、と口にした瞬間に表情を綻ばせたから、きっと似たようなこと考えてんだろう。
今も目元が穏やかに笑みを湛えている。
ただ、お互いにそこについては口にすることはなく、スーパーまでの道を歩いて行った。
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