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他の誰も知らない色気(旧題:ハッシュタグネタで紅敬)<あんさんぶるスターズ!・紅敬>

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雑誌『Hash+Tag』収録のインタビューネタから。
蓮巳が無言になったのは、つい色々鬼龍くんのことを考えてしまったからだし、鬼龍くんは鬼龍くんで、蓮巳の色気は自分だけが知っていればいいと考えてのあの発言だという妄想の元に。

既に付き合っている前提で書いてます。

初出:2016/04/17(蓮巳視点は2017/10/14) 

文字数:3783文字 裏話知りたい場合はこちら

 

[鬼龍Side]

「ったく。旦那にしちゃ珍しいな、インタビューの最中に固まっちまうなんて」

雑誌のインタビューが終わり、帰宅している最中、神崎と別れて二人きりになった時点で、蓮巳にそう言ってみるとバツが悪そうな表情になった。
インタビューの内容については事前に知らされてなかったってのもあったが、ユニットの中で一番色気を感じる身体だと思うメンバーは?と問われて、蓮巳が少しの間放心状態になっちまい、上手く切り返せなかったのだ。
普段、メンバーの誰よりも率先して、ぽんぽんとインタビューに応じていくこいつにしちゃ中々ないことで、俺だけじゃなく記者も珍しがるような事態となった。

「すまん。フォローしてくれて助かった。礼を言う」
「礼を言われる程のことじゃねぇよ。てめぇが口噤んじまったのは俺のせいでもあるんだろうしな」

理由を察しちまったからこそ、俺はさっさと神崎の名前を出して、蓮巳も乗っかりやすいように話を仕向けた。
実際、神崎の身体はバランスの取れた筋肉がついていることに加えて、所作が綺麗なのも間違っちゃいないし、そこをライブで強調したいからこそ、紅月のユニット衣装では三人中一番露出させているっていう一面もある。
だから、あのインタビューでの回答で、変に記者に勘ぐられるようなことはなかったはずだと思っちゃいるが。

「…………そうと理解しているなら、外でそれ以上先程の話題を続けるのはよせ」

旦那の方はまだ色々思い出すことでもあるのか、それだけ言うと俺から目を逸らした。
心なしか少しだけ耳が紅い。
本当に何をどこまで思い出しているのやらだ。
そんな様子を見てたら、こっちまでどうしたって影響されちまう。
よせ、なんて口にする癖に、態度や仕草で煽っている自覚があるのか、ないのか。
俺の家まではもう目と鼻の先だ。
夕飯時だからか周囲には人もいない。
それを良いことに、蓮巳の手首を掴み、早足で家に向かう。
掴んだ手首も何となく体温がいつもより上がっている気がした。

「おい、鬼龍。手」
「ちょっとこのまま家に寄っていけ、蓮巳」
「寄る。寄るから、手を――」
「どうせ、あと数歩だろ」

確か、妹は今日は友達の家に行っていて、夕飯も先方でごちそうになるって話だったから、この時間ならまだ帰ってきていないはずだ。
父ちゃんもまだ仕事だろう。
玄関を開けて、確かに妹の靴がないのを確認したところで、玄関の扉を閉め、蓮巳の腰を抱いてキスした。

「んっ……!」

インタビュー先で出されたコーヒーの味が、微かに蓮巳の口の中に残っているなと考えながら、腰に回した手で蓮巳のシャツを引っ張り出して、裾から手を入れ、直接背中に触っていく。
背骨に沿わせるように、指の腹を使って撫でていくと、旦那の口の端から熱っぽい吐息が零れる。
堪らず、腰を寄せると蓮巳自身も反応し始めていた。

「き、さま……場所を」
「弁えてはいるつもりだぜ。そもそも、てめぇが動揺したから、こっちまで伝染したんじゃねぇか」

色の白い蓮巳は、照れたりして耳やら頬やらが紅くなると、その紅が白い肌に映えてとんでもなく色っぽくなる。
特に全身が興奮によってほんのり紅く染まっている様なんか、それこそこっちの理性がもたなくなるやつだ。
けど、そんな蓮巳の色気は他人が知る必要のないもので、俺一人が知ってさえいればいい。
多分、旦那が『色気を感じる身体』で俺を想像しただろうと同じく、俺も蓮巳を想像したが、言えるわけねぇし、言うつもりもない。
普段は背筋をピンとさせて、凛々しく佇んでいる蓮巳が、快感で背中に汗を浮かべて震わせ、目を潤ませながら切なく喘いでいるとこなんざ、誰かに想像させてやるのも癪だ。
そんな俺の意図を知ってか知らずか、蓮巳が軽く溜め息を吐くと、両手で俺の頬を包んで軽く額をこつんと合わせてくる。

「分かった。が、続きは部屋にしてくれ。貴様の家族が帰ってきたらと思うと気が気じゃない」
「……随分、今日は素直に応じてくれるんだな」

今日は平日で、明日も普通に学校がある。
ライブの相談とかで平日に顔つきあわせて話し合う為に、たまに蓮巳が泊まって行ったり、俺が蓮巳の家に泊まったりすることもないわけじゃねぇが、こんな風に触れたいからと、平日に誘ってそのまま応じてくれるなんてのはそうあることじゃない。

「…………俺とて、この状態では帰るに帰れん。鬼龍」
「うん?」
「貴様はどうか分からんが、俺は貴様の色気について、他人に言ってやる気などないからな」
「奇遇だな。俺も旦那の色気については全く同じ意見だ」

そんな蓮巳の言葉に、ああ、やっぱり何か通じてんだなと嬉しくなる。
互いの指を絡めながら、服の下で紅く染まり始めているだろう蓮巳の肌を想像し、部屋に向かう前にもう一度キスを交わした。

[蓮巳Side]

アイドルである以上、人に見られるということについては常に意識しているつもりだし、それについて問われることも想定内だ。
だが、今日のインタビューの内容は正直面食らってしまった。

――ご自分のユニットの中で、一番色気を感じる身体だと思うメンバーは誰ですか?

色気を感じる身体と問われて、直ぐに浮かんだのは鬼龍だった。
だが、浮かんだ内容が内容だったが為に、口には出せずつい絶句する形になってしまったのは迂闊だ。
真っ先に脳裏に浮かんだのは、適度に筋肉のついた鬼龍の身体が、俺を組み敷いている時。
汗ばんだ肌や、通常よりも少し高くなる体温、艶めいて少し掠れた低い声。
それらに間違いなく『色気』は感じるものの、そのまま言えるわけもない。
鬼龍が助け船を出してくれたから、どうにか会話を繋げられたものの、多少不審がられただろう。
紅月は硬派を売りにしたユニットだから、その手の質問には慣れていなかった、と先方が解釈してくれていればいいのだが。

「ったく。旦那にしちゃ珍しいな、インタビューの最中に固まっちまうなんて」

帰り道で鬼龍がそう言ってきたのも当然だ。
実際、俺自身もインタビューの中で言葉に詰まったような記憶はこれまでにほとんどないのだから。

「すまん。フォローしてくれて助かった。礼を言う」
「礼を言われる程のことじゃねぇよ。てめぇが口噤んじまったのは俺のせいでもあるんだろうしな」

やはり、鬼龍は俺がインタビューに即答出来なかった理由は察していたらしく、心持ち声が小さくなった。

「…………そうと理解しているなら、外でそれ以上先程の話題を続けるのはよせ」

だが、その小さくなった声につい肌を重ねた時を思い出してしまって、鬼龍の顔がまともに見られない。
理性を総動員させて、どうにか気持ちを静めようとするも、余計に色々と思い出していく。
広い背中、簡単に人を担ぎ上げられるたくましい腕、割れた腹筋――いや、まずい。これ以上思い出すんじゃない。ここをどこだと思っている。
内心、そんな葛藤に苛まれていると、不意に鬼龍に手首を強く掴まれた。
離さないと言わんばかりの力に困惑する。

「おい、鬼龍。手」
「ちょっとこのまま家に寄っていけ、蓮巳」
「寄る。寄るから、手を――」
「どうせ、あと数歩だろ」

確かに、ここからは鬼龍の家まで直ぐだ。
家に寄る予定はなかったとはいえ、寄ったところで問題があるわけでもない。
いや、問題はある。
今の状況で二人きりになったら――欲を抑える自信が無い。
しかし、鬼龍の方も何か思うところがあったのか、家に入って、玄関の扉を閉めた瞬間に、俺の腰を引き寄せて唇を重ねてきた。

「んっ……!」

唇の柔らかな温かさに、思考も一緒に蕩けそうだ。
俺の背に潜り込んできた指が一撫でしていく都度、確実に理性を削っていく。
触れ合わせている腰でお互いの興奮を理解するも、ここは家の玄関だ。
恐らく、鬼龍は妹がいないことぐらいは確認したのだろうが、玄関の鍵を掛けた音はしていない。
いつ、誰が扉を開けても不思議はない。

「き、さま……場所を」
「弁えてはいるつもりだぜ。そもそも、てめぇが動揺したから、こっちまで伝染したんじゃねぇか」

既に情欲を灯らせた目が真っ直ぐに俺を見る。
ああ、これは食らい尽くすつもりだ。
明日のスケジュールを考えたのは一瞬。
鬼龍が家に寄っていけと言った時点で予想もしたし、期待もした。
ここまで興奮してしまったなら、一度存分に抱き合った方がすっきりするし、俺としても背に触れているこの指にもっと色んな場所を触られたいし、触りたい。
明日の日中は疲労で眠気を堪えることになるかも知れないが、それ以上に鬼龍が欲しい。
俺だけが知っているこいつの色気を存分に味わいたい。
自己管理よりも目の前の欲望を優先させる己の欲深さについ溜め息を吐きながら、両手で鬼龍の頬を包んで軽く額を合わせた。

「分かった。が、続きは部屋にしてくれ。貴様の家族が帰ってきたらと思うと気が気じゃない」
「……随分、今日は素直に応じてくれるんだな」

少しだけ意外そうな響きが言葉に混じる。
俺が平日セックスに応じることが比較的少ないからだろう。
今日の場合は俺が誘ったようなものなんだがな。

「…………俺とて、この状態では帰るに帰れん。鬼龍」
「うん?」
「貴様はどうか分からんが、俺は貴様の色気について、他人に言ってやる気などないからな」
「奇遇だな。俺も旦那の色気については全く同じ意見だ」

どちらからともなく絡めた指と思考の繋がりに嬉しく思う。
ようやく玄関の鍵を掛けた音に安心して、もう一度口付けを交わした。

 

 

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