対抗!夢ノ咲学院体育祭2で蓮巳が瀬名泉に貸した眼鏡絡みの短い紅敬。
初出:2016/09/16
文字数:1467文字 裏話知りたい場合はこちら。
遠くから黄色い声での声援が聞こえる。
大方、普段と違った眼鏡姿の瀬名をみた、普通科の女子から上がったものだろう。
瀬名に貸した眼鏡が戻ってくるまで、数分というところか。
俺は眼鏡がないと本当に視界を確認出来ないから、やつが戻ってくるまでは下手に身動きしない方がいいだろう。
ロッカーには予備の眼鏡を置いてあるが、この状態でロッカーまで辿り着くことは難しい。
例え、ここからロッカーまで二分と掛からずに行ける場所でもだ。
数分足留めを食ってしまうが、仕方ない。
借り物競走で貸した以上はどうしようもないが、他に人がいないのをいいことに、つい溜め息が口を吐いて出そうになった瞬間、馴染みのある気配が近づいて来た。
「鬼龍?」
「良く分かったな。まだ声掛ける前だったってのに」
微かな笑い声と共に、手に何か固いものが当たる。
これはもしや。
「てめぇが瀬名に眼鏡を貸したとこが見えたからな。眼鏡返して貰うまで身動き出来ねぇだろうと思って、ロッカーから持ってきた」
やはり、俺がロッカーに置いていた眼鏡を持ってきてくれたらしい。
数分とはいえ、やはり視界が確認出来ないと不安はあるから、ほっとしたというのが正直なところだ。
「ありがとう。助かった」
「おう」
ケースを手探りで開け、中の眼鏡を取り出して掛けるとようやくいつもの光景が視界に戻ってきた。
と、同時に意気消沈というか、がっかりしたような声が先程の歓声に混じって聞こえる。
「ん? 瀬名が順位を落としでもしたか?」
「あ? もしかして女の子たちが上げた声についてか? ありゃ、おまえが眼鏡掛けたからだ。旦那が眼鏡掛けてない状態って、普段ほとんど見られねぇからな。もうちょっと貴重な眼鏡なしの状態を見ていたかったってがっかりしたんだろ」
「俺に向けての声か、あれは」
借り物競走に出ているのは瀬名だし、眼鏡を貸した瞬間にも甲高い声が上がったから、今のもあいつに向けられた声だとばかり思っていた。
「いくらかはな。……だから、持ってきたんだ。あんまり蓮巳が眼鏡してねぇとこ、他人に見せたくねぇ」
言葉の後半はぼそぼそと俺にだけ聞こえるような小声で、そんなことを言う。
「俺だって、旦那が寝てるときじゃねぇとほとんど見ねぇからな。そんなん気軽に人に見せてたまるかよ」
「……度し難い」
含みを持たせた笑いに、つい眼鏡のない状態をこいつに見せている状況を思い出して、赤くなりそうな顔を隠すように眼鏡の位置を直す。
――鬼龍とセックスした後、大体先に寝てしまうのは俺だ。
寝るときには当然眼鏡は外しておく。
こいつが言っているのは、そのタイミングに他ならない。
妬いているのかと思うと嬉しく思う部分もあったが、今、この状況でそれを表に出すわけにはいかない。
学院内なのだし、何より体育祭で他の科の生徒達も数多くいる。
これ以上その話は続けるなと視線で告げると、察した鬼龍が肩をすくめた。
「ま、眼鏡は借り物競走の定番なんだし、他に誰か借りに来ても大丈夫なように、しばらく予備の眼鏡も手元に置いとけよ。じゃあ、また後でな」
そのまま立ち去ろうとした鬼龍の背中に、小声でちょっとしたフォローを入れる。
このくらいはいいだろう。
「……後で、好きなだけ見せてやる」
これだけ言っておけば、こいつなら分かってくれるはずだ。
案の定、鬼龍は俺の方を振り返って嬉しそうに笑った。
「おう。楽しみにしてるぜ」
そうして体育祭終了後、その好きなだけという言葉を楯に、しばらく眼鏡を返して貰えず、顔のあちこち、それこそ触れてない場所がないというくらいにキスを繰り返され、焦らされたことについては苦笑いするより他になかったのだった。
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