2016年紅敬プチ『紅蓮夜想』でのペーパーラリー用に書いた話。スーツ着用な紅月。
既に付き合っている&夢ノ咲卒業後も紅月として活動しつつ、二人が同棲している前提。
初出:2016/09/04
文字数:1214文字 裏話知りたい場合はこちら。
「紅月にスーツ姿でのグラビア撮影の依頼が来るとはなぁ」
撮影スタジオでカメラマンの指示に応じて、それぞれにポーズを取りながら、ふと鬼龍が呟いた。
「普段が和装だからこそ、偶には見てみたいというリクエストがあったらしい」
「ふむ、ぎゃっぷ萌えというやつであろうか。お二方ともよく似合っておいでである!」
「ありがとうよ、てめぇも似合ってるぜ」
小声でそんな会話を交わしながら、撮影は滞りなく進んでいく。
鬼龍と神崎は黒のスーツに白いシャツ、ネクタイはそれぞれの髪の色に合わせている。
リーダーの俺だけ、スーツは白で、黒いシャツと、カラーリングを逆にしている。ネクタイはやはり髪の色に合わせた形だ。
三人とも裏地をワインレッドにした、細身のナポレオンコートを身に纏っているところが、通常のユニット衣装の羽織を連想させるからか、何となく紅月らしさはあるものの、やはり普段とは趣が異なる。
だが、偶にはこういうのも悪くない。
撮影の妨げにはならないよう、ちらりと鬼龍を見るとスーツのリクエストがあったのも頷ける。
上背があるから、スーツも丈の長いコートも良く似合っていた。
普段、あまり目にしない格好を見られるのは、中々楽しい。
「旦那。今回の衣装って、撮影が終わった後は事務所で買い取るんだったか?」
「ああ。スーツはオーダーメイドで作ってあるからな。シャツやネクタイも一緒に買い取るはずだ。コートは借り物だったはずだが」
「ってことは、家でも旦那がそれ着てんの見られるってことだな」
「まぁ、そうなるな」
どうしても撮影中だと、そっちに集中してしまうから、家で着たところをじっくり見たいのだろうかと思っていたら。
「白いスーツって何かエロいよな」
「きっ……」
すれ違いざまに耳元でやつが囁いた言葉には、思わず激昂しかけた。
その一言で、こいつが何を目論んでいるかを悟ってしまったからだ。
俺の方は、単純に鬼龍のスーツ姿は男前でいいと思っていただけだったのに、エロいとはどういうことだ。
「蓮巳さーん?」
「っと、すみません」
カメラマンに声を掛けられ、慌てて表情を引き締める。
まだ、仕事中だ。雑念は振り払わねば。
しかし、一言くらい文句を言うくらいはいいだろう。
「……貴様、後で覚えておけ」
そう、隙を縫って、鬼龍に告げたところ。
「こっちの台詞だ、そりゃ」
微かに熱の籠もった視線を返されて、二の句が継げなくなる。
「明日、午前中オフだったよな。今夜、早く寝られると思うなよ」
人に聞かれないような小声だとはいえ、仕事場でとんでもないことを言い出すものだ。
撮影中でなければ、小一時間は説教したものを。
……家に帰ったら、何をするつもりだろうと、まずは説教してからでなければ指一本触らせるものかと、こっそりと決意した。
なお、余談として、後日、カメラマンに撮影途中から色気が増したと言われて、それが鬼龍とそんな会話を交わした直後だったことに気付いた時に、内心冷や汗を掻いたのはここだけの話となる。
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