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雨の日の、<あんさんぶるスターズ!・紅敬>

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維新ライブの少し前。紅敬は(こっそり)付き合っている前提。

6/14の湿気吹っ飛ばすキャンペーンでのつむぎのコメントが元ネタ。

こりゃ、つむぎくんに傘貸した蓮巳はその後鬼龍くんと相合い傘で帰ったなと思ったら、TwitterのTLでもそんな感じだったので、みんな考えることは一緒だよね!と勢いのまま形にしましたw
あんステフェスのチケットご用意されますようにの祈願も含みつつ!
書けば当たる……といいなぁ。
※追記:この時のあんステフェスのチケットは無事ご用意されました。

初出:2018/06/15 

文字数:1980文字

 

あまり人がいない放課後の図書室で、青葉に頼んで集めて貰った新撰組についての資料に目を通していたら、不意に青葉の困りましたねと呟く声が耳に届いた。

「どうした?」
「今日って天気予報は雨じゃなかったですよね?」
「確か、雨ではなかったな。……ああ、降ってきたのか」

朝の天気予報では、梅雨の晴れ間で一日良い天気が続くと言っていた気がするが、どうやら予報は少し外れたらしい。
授業が終わったタイミングではまだ青空が広がっていたはずだったが、いつの間にかすっかり空は暗くなっていた。瞬く間に雨音も響き始め、結構な降りになったのが窓の外を見るまでもなく分かる。

「今日、傘持ってこなかったんですよねぇ。帰るまでに止んでくれるといいんですが」
「予報は確かに雨にはなっていなかったとはいえ今は梅雨時だ。折りたたみ傘くらい持ち歩け。……俺の置き傘を貸してやるから、それを使って帰るといい」
「いいんですか?」
「構わん。俺は他にも傘があるから遠慮は無用だ」

ロッカーに常時置いてある折りたたみ傘以外にも、持ち歩いている折りたたみ傘もある。
俺が帰る分にも問題はない。

「ありがとうございます。敬人くんは用意がいいですね。俺も今度からは置き傘しておきます」
「そうしておけ。今、ロッカーから持ってくる。この様子ではしばらく止みそうにもないしな」

忘れないうちに貸す傘を持ってきておこうと、早速ロッカーへと向かった。

***

すっかり日も暮れたが、雨は相変わらず勢いを保ったままに降っていて止む気配はない。
青葉が帰ったところで資料の読み込みは切り上げたものの、その後生徒会室で少し仕事を片付けていて遅くなったせいか、校内は大分静かで玄関にも他に人はいない。雨音だけが響いている。
俺ももう少し早めに帰るべきだっただろうかと思いながら、鞄にしまっていた傘を開いたところでつい手が止まった。

「……しまった」

そういえば先日風の強い日に使ったときに、風の勢いに負けて傘の骨が折れてしまっていたことを思い出す。
無理矢理使えないことはないが、傘のさしかたに気をつけないと折れた部分が頭に刺さってしまいかねない。
よくよく見れば傘の生地にも折れたときの衝撃からか小さな穴が開いている。
俺としたことが迂闊だった。処分するつもりでまた鞄にしまいこんでいたとは。
いや、こちらの傘を青葉に貸さずに済んだのは幸いだったと言えよう。
生徒会室に戻れば忘れ物として届いている傘が数本あるが、他人の傘を勝手に使うわけにもいかない。
多少は濡れてしまうかもしれんが、折れた傘でもないよりはましだ。
玄関を出ようとした寸前。

「旦那? まだ残っていたのかよ」

背後から馴染んだ声に呼びかけられ、少し驚きながら振り向いた。

「鬼龍。そういう貴様こそまだ校内にいたのか」

今日は紅月の練習日ではないし、双方部活の活動日でもない。
俺は何だかんだ生徒会の仕事で遅くなる日も多いが、予定の入っていない日は夕飯の支度等家のことをやっている鬼龍がこの時間まで残っていることが意外だ。

「おう。部活がねぇ日のうちにちょっと武道場に置いてある裁縫道具を整頓しようと思っていたんだが、途中で衣装のアイディアが浮かんだもんだから、つい仮縫いまですすめちまってたらこの時間になっちまった。まぁ、今日は妹が友だちの家に遊びに行ってて、父ちゃんが仕事帰りに迎えに行くってことになってるから、俺が慌てて帰る必要もねぇしいいんだけどよ。……ん? 蓮巳、その傘壊れてねぇか?」
「ああ。うっかり先日の強風で壊れていたのを忘れていたんだ。置き傘にしていた方は人に貸してしまったから、こっちでどうにか帰る」
「それで? 見栄えも悪ぃけど、何より折れた状態で使うってな危ねぇだろ。……俺の傘に入っていかねぇか? ついでにそのままうちに寄って夕飯一緒に食ってくれると嬉しいんだけどよ。一人で飯食うのも味気ねぇし。飯食ったら家にある傘貸して、駅まで送ってやるから」

遅くなるとはいえ、父ちゃんも妹も帰ってくるから泊まっていけとは言い難いけどよ。と続いた言葉が少し残念そうに聞こえたのは気のせいではないだろう。
いや、少し残念なのは俺もだ。
鬼龍と付き合っているとはいえ周囲にそれを言っていない以上、必要以上に――特に学外で二人きりになるのは少しばかり気が咎めてしまうが、こうして理由が出来ればそれはなくなる。
いや、寧ろ理由さえあるのなら躊躇う必要はない。
折れた傘を畳んで鞄の底にしまいこんだところで、鬼龍が隣に来て自分の傘を広げ、俺の方にも軽く傾けた。

「――入れて貰えるか。家には遅くなると連絡をいれる」
「おう。濡れねぇように出来るだけこっち寄っとけ」
「おまえもな。窮屈で申し訳ないが」
「……望むところだ」

雨音に紛れるような小さい囁きには俺もそうだなとだけ返し、近くなった体温を心地良く感じながら二人で帰路についた。

 

 

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