お絵かき会でのテーマ、女装とネコ(一緒に出たのではなく、残り時間的に二つのテーマを組み合わせた結果だったはず、確か)に沿って書いた話です。
30分クオリティだったものをちょっとだけ加筆しました。
というか、多分お絵かき会絡みで書いた話、いくつか上げてない……。
見つけ次第上げていきたいところです。
(どれも30~1時間以内で書いてるので短い話ですが)
初出:2020/02/23(加筆修正は2020/07/12)
文字数:1193文字
鬼龍に衣装の試作品を着て欲しいと言われ、了承は確かにした、が。
「……なぜ、女物の服なのか聞いていいか」
衣装なら何でもいいとは言っていないし、ましてや女物の服だとは聞いてもいない。
渡されて広げた衣装は猫耳がついたヘッドドレスとしっぽがついたメイド服だった。
いくら、過去に学院祭の劇でドレスを着たことがあるとはいえ、俺には女装の趣味はないし、何らかの理由があるならまだしも、理由もなしに着るのはさすがに抵抗がある。
「単純に俺が見てみたかったからってのはダメか? 旦那、顔立ちが綺麗だから前から見てみてぇと思ってたんだよな。女の子の服も機会あらば作りてぇんだけど、妹は嫌がるし、あんずの嬢ちゃんも自分の服を作る時間があるならそれを休む時間にあててくださいって良い顔しねぇしよ」
「当たり前だ。俺もあんずに同意する。既に作ってしまっている段階で手遅れだがな」
俺の服にしたのは改めて採寸する必要がないからだろう。
元々、紅月の衣装を手がけているのは鬼龍だし、定期的にサイズの確認の為に採寸している。
着心地についても鬼龍が手懸けている時点で悪いものではないのもわかっている。わかってはいるが。
「しかし……」
「いつだったか、俺の頼みは基本的に断らねぇって言ったよな? 蓮巳」
「…………今、この流れでそれを言うか、貴様。文句を言うとも言ったはずだがな」
軽く睨み付けたが、どこ吹く風だ。
断るのは容易いが、これを作るのに掛かった材料費は自腹だろうし、ただでさえ仕事用の衣装作りで忙しいことの多いこいつの息抜きの一つになったのかと思うと気が引けた。
「…………貴様がこの衣装に費やした手間を無駄にするのは忍びない。次に作る時は事前に確認してからにしろ。一度だけ着てやる」
「ってことは確認したら別の衣装も作らせてくれるのか?」
「まだ作り足りないのか」
「そりゃそうだろ。せっかく綺麗な顔してんだ。色んな服を着せてみてぇに決まってる」
「……似合う保証はない。後悔しても知らんぞ」
つい溜め息まじりに返してしまったが、鬼龍は嬉しそうに笑ってそりゃねぇよとさらに白い靴下も渡してきた。
***
スカートというのはどうにも落ち着かない。
「着方はこれで合ってるか」
「問題ねぇよ。うし、やっぱり似合うな。色も黒で正解だった。写真撮ってもいいか?」
「顔は写すな。いたたまれない」
「んなこたねぇよ。メイクもして仕上げてぇくらいだ。……やってみていいか? あと、おまえの髪の色に合わせたウイッグもあるんだが」
ウイッグまでわざわざ買ったのかと思うと、呆れて少しの間声が出なかった。
「……もう好きにしろ。写真を表に出すことだけはするな。神崎に見せるのもダメだ」
「誰にも見せねぇよ。こんな旦那は俺一人が知ってりゃ十分だ」
鬼龍が俺の耳元で囁くように告げた言葉に、物好きめとだけ返して、鏡台の前に腰掛けた。
タグ:あんスタ, 紅敬, サイトのみ, 500~3000文字, 蓮巳視点