お絵かき会で【食べ物】のテーマに沿って書いた話。
30分クオリティにちょっとだけ手を加えました。
紅敬が数年後、寮を出て同棲しているという前提です。
こういう日常のちょっとした話を書くのが好きです。
揚げ物って色々面倒ですよね。(同意を求めるな)
初出:2020/07/12
文字数:767文字
リビングのソファで本を読んでいたところ、キッチンにいる鬼龍がふいに話しかけてきた。
「旦那、今日は夕食までちょっと時間掛かるけどいいか?」
「構わんが……どうした?」
ちらりとキッチンに目をやれば、何を作るつもりなのか、色々な食材や道具を出していた。
「今日、時間に余裕あるから久々に天ぷらやろうと思ってよ」
「ああ、なるほど」
俺たちは健康管理の面も考えて、そこそこ自炊はしている方だと思うが、普段は忙しさからどうしても手間のかかるものは避ける傾向がある。
揚げ物の類なんかもその一つだ。
天ぷらなら具材をいくつか揃えたいし、何より揚げた後の油の処理も考えると、時間に余裕があるときでなければ中々選択しない。
また、揚げ物ならやはり揚げたてで食べたいというのも大きい。
そうなると、お互いが一緒に食べられるタイミングで、かつ作る時間や後片付けにも余裕が持てる時でなければ難しい。
実際、二人で住み始めてから天ぷらを作るなんてのはこれが初めてじゃないだろうか。
ならばと区切りのいいところで本に栞を挟み、俺もキッチンに向かう。
俺はまだ天ぷらを自分で作ったことがないし、鬼龍の作業を見て感覚を少しでも掴んで、いつか自分でも作れるようにしたい。
「ならば、俺も手伝おう。何をやればいい」
「おう、有り難ぇ。じゃ芋切るのやってくれ。俺はかき揚げの準備するからよ」
「かき揚げか。コツを知りたいから揚げるときは見ておきたい」
「いいぜ。多分、コツさえつかみゃ旦那の方が綺麗に作れそうだしな。俺も久し振りにやるから上手くいくか自信ねぇけど」
「そう言って上手くいかなかった試しもないと記憶しているがな」
鬼龍が料理で失敗したことはない。
もしかしたらあるのかも知れんが、少なくとも俺がそうだと思ったことはない。
出来上がりがどうなるかを楽しみにしながら、自分用のエプロンを手に取った。
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