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Phantasmagoria Ver.0.5<あんさんぶるスターズ!・紅敬・R-18>

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2017/09/10に開催された龍ノ敬華(brilliant days 10)で発行した同人誌『Phantasmagoria』の準備号として、2017年5月4日に開催された、SUPER brilliant days 2017で発行したものです。

原稿を発掘したので、既に完全版を先にWeb再録してますが、こちらもせっかくなのでサイトのみ載せてみます。

完全版との違いはエロシーンくらい(だったはず)ですが、よろしければ読み比べてみてください。
完全版はこちら

※ズ!!発表前の話なので、現在の設定とは色々と食い違う点がございます。

初出:2017/05/04 

文字数:11372文字 

 

「旦那。俺、来年の四月から夢ノ咲の講師になることにした」
「何?」
「夢ノ咲で来年度からスタイリスト科を新設するって話らしく、衣装の講師として来てくれねぇかってさ。せっかくだから話を受けた」

鬼龍の口からそんな話が出たのは、冬に差し掛かろうという時期。仕事の後に待ち合わせて、一緒に外で夕食をとっていたタイミングでだった。
鍋の美味い居酒屋を教えて貰ったからと、鬼龍に連れてきて貰ったこの店は個室で飲めるようになっていて、鍋をつつきつつ、程良く酔いも回ってきたところで出た話がそれだ。
夢ノ咲卒業後、鬼龍は服飾の専門学校へと進み、在学中から夢ノ咲時代の伝手を利用してアイドル達の衣装を作っていたが、専門学校卒業後もそのまま仕事にしている。
今は夢ノ咲出身アイドルのライブ衣装のみならず、舞台衣装やドラマの衣装等幅広く手懸けていた。
そして、俺の方はといえば、夢ノ咲卒業後はアイドルというよりもプロデュース業に近いことに少し関わる一方、宗教学科のある大学に進学し、僧侶の資格をとった。
実家の寺は兄が継ぐとはいえ、そこそこ大きい寺だから人手が必要になることもあるし、僧侶の位としては最低限のものでも、資格を持っていると何かと融通が利く。ただ、現状それを生業にするつもりはないから、どうしても手が足りなくなるような盆や正月あたりに少し手伝うくらいに留まっている。
夢ノ咲在学中から付き合うようになった鬼龍とは、時々こうして会って、一人暮らしを始めた俺の家に泊まったり、鬼龍の家に家族がいないときに泊まったり、時には二人で旅行なんかもして、堂々と付き合っているとは言えないまでも、それなりに恋人らしい時間を過ごしていた。
鬼龍が講師になると決めたこと自体驚いたが、それよりも驚いたのは。

「そうか。……奇遇だな。俺にも夢ノ咲学院の講師にどうかという話が来ている。俺の方は主にプロデュース科の講師として、だが」

俺にも同じタイミングで夢ノ咲学院から講師の話が来ていたことだった。

「はぁ!? ……マジかよ。旦那もか」
「ああ。返事はまだしていないが話を受けるつもりでいた。夢ノ咲はかつてアイドルをやっていた者が後進に指導するため、講師につくというのはままあることだしな」
「俺らの時代でも何人かいたもんな。もしかして、俺達の世代で他にも声を掛けられているやつ、いるんじゃねぇか?」
「可能性は十分考えられるな」

夢ノ咲現役時代にはスーパーアイドルと謳われた、佐賀美先生や椚先生を始め、俺達が夢ノ咲の生徒だった頃も、講師の何割かは夢ノ咲出身のアイドルだった。かつてアイドルを経験した先生方だからこそ、芸能界を渡っていくノウハウや立ち振る舞い等、実用的に生かせることを教えてくれるのも夢ノ咲の武器だ。
完全に関わりのない仕事についているならともかく、アイドルと多少なりとも繋がりのある仕事をやっている以上、いずれ、講師の話が来る可能性はあるのだろうとどこかで思っていた。
こんな風に鬼龍と同じタイミングで母校から声が掛かるという点は完全に予想外だったが。

「そうか……旦那もか。だったら、ちょうどいい。妹が大学進学で家を出ることになったし、俺もこの機に家を出ようと思ってた。夢ノ咲学院の近くで手頃な物件探して一緒に住まねぇか? 今、おまえが住んでいる家の契約更新を考えてもタイミングいいだろ」
「鬼龍」
「今はこうして都合つけられた時に会うって形だけど、職場が旦那と一緒になるなら、俺達が一緒に住んでもそう不自然じゃねぇ。大体、夢ノ咲近辺はちぃと家賃も高いしな」

こつ、と掘りごたつの下で鬼龍が爪先で、俺の爪先を軽く突いてきた。

「……それにやっぱりもっと長い時間一緒にいてぇよ。離れて住んでるからって気持ちが離れるなんてことはねぇけど、時々凄ぇ寂しくなることがある」

ストレートに口にされた寂しいの一言が胸を突く。

「蓮巳はそんなことねぇか?」
「あるに決まっているだろう」

反射的に鬼龍の手を取り、部屋の周囲に人の気配がないのを確認してから指を絡めた。
こいつが俺の家に泊まっていった翌朝、見送った後は決まって切なくなる。数分前までは鬼龍がいた空間に自分一人になってしまうと、普段は一人で過ごしているはずの場所がやけに空虚に思えてならない。次に鬼龍と会うまでは大抵少し日にちが空いてしまうということもあるが、そんな一人になった部屋でつい溜め息が零れてしまったのは一度や二度じゃなかった。
今日だって、夕食はこうして一緒に出来たが、明朝早くから出張があるため鬼龍は泊まることが出来ない。泊まれない事情は分かるし、だからと言って拗ねるようなこともないが、もっと長い時間一緒に過ごしたいのは俺も一緒だ。寧ろ、年々その想いは募るばかりと言ってもいい。
学生の頃はクラスも部活も違うとはいえ、紅月という繋がりがあったし、何だかんだ顔を合わせる機会も多かったが、この歳になるとそうはいかない。
だが、一緒に住むのであれば、この先どんなに忙しくなったとしても相手の寝顔くらいは見られるだろうし、何かあったとしてもお互いにフォローも出来る。
何より、好いた相手と共に暮らせる幸せを、想像するだけでも心が温かくなる。男同士である俺達に結婚という形で関係に区切りをつけることは出来ないが、だからこそ一緒に生活していくという選択は、一つの大きな区切りになるとも言えるだろう。

「だったら、同居に異存はねぇってことでいいか?」
「ああ、問題ない。ならば、年明け辺りから住む場所を探すとするか」
「……へへ」

鬼龍が俺と手を絡めたまま、テーブル越しに向かい合わせになっていた状態から、直ぐ隣へと移ってくる。それこそ、唇が触れるまで数センチという距離まで。
長い付き合いだ。何をするつもりでこいつが移動したのかくらいは分かる。

「……個室とはいえ、外だぞ」
「人が来そうになったら、ちゃんと離れるからよ」
「ん……」

嬉しそうに細められた目に結局負けた。顔が熱く感じるのは多分酒のせいだけでもないだろう。
先程まで食べていた鍋の出汁と酒の匂いが入り混じった口付けを交わしながら、絡めていた指に力を籠めた。

***

実家の寺の都合による例年通りの慌ただしい正月を過ごした数日後、俺達は二人で住むための部屋探しを開始した。
夢ノ咲学院周辺の相場を確認し、双方の住まいについての希望を出し合って、候補を絞りながら探して早半月、中々これという物件には巡り会えていない。

「うーむ、やはり3DKから3LDKで借りるとなると家賃が響くな」

一部屋、衣装用の作業部屋が欲しいという鬼龍の申し出で、それぞれの個室と衣装部屋を考慮し、3DK、もしくは3LDKの部屋を探していたが、どうにも家賃の予算と釣り合わない。
元々やっていた仕事もこの先請け負うことはあるだろうが、夢ノ咲学院講師の仕事に慣れるまでの間は並行してやるのは厳しいだろうし、それに関しては恐らく鬼龍も俺と似たり寄ったりだろう。
となると、先々はともかく、当面は収入面に余裕があるとは言い難い。
今の条件を妥協すれば見つかりそうだが、それはもう少し探してどうにもならなくなってからにしたいところだ。
今日は二人揃って休みだったから、鬼龍と一緒に俺の家でパソコンからインターネット上に掲載されている賃貸情報を色々見ていたが、お茶を淹れてきてくれた鬼龍が横からマグカップを差し出しながら口を挟んできた。

「それなんだけどよ、旦那」
「うん?」
「それぞれの個室を作らねぇ形にして、一部屋を旦那と俺の作業専用の部屋にしちまうってのはまずいか? で、もう一部屋は寝室兼クローゼットにして、広めの2DKや2LDKで部屋探すのはどうだ」
「確かにそれなら家賃は安くなるだろうが……同じ寝室にしたら、うかつに人を呼べなくなるぞ」

俺達が恋仲にあるという関係性を知っている人間は限られてくる。特に双方の家族は知らない。今一人暮らしをしている俺の家に出入りするのは、鬼龍を除けば家族の割合がやはり高くなる。同居人がいるというのを考慮したら今までに比べて来ることは少なくなるかも知れないが、もしもということもある。気掛かりな点はそこだ。

「ベッドは二つ入れる形で構わねぇよ。欲を言えば一つにしたいけどな。学校の寮なんかじゃ二人以上の部屋だと寝るのは布団並べるなり、二段ベッドなりになるんだし、寝室を同じにした位じゃ早々怪しまれねぇだろ」
「学生時代と同じように考えるな。……とはいえ、一理あるか。ふむ」

それぞれに違う作業を同じ部屋でやっていても、然程気にならないのは既に分かっている。
鬼龍にしろ、俺にしろ、作業に集中しだすと黙々と取り組み周囲の環境は気にならなくなる性質だから、その点は問題ない。
となると、あとはスペースの広さや寝室の問題だが、双方、実家もあることだし、自分の荷物全てを運び込む必要もさしあたってはない。寝室が一緒な点も、自分たちが寝る分には差し支えない。鬼龍の提案も悪くはないように思えた。
今の俺たちはもうアイドルではないのだし、夢ノ咲時代ほど恋愛関係が露呈することを恐れなくても大丈夫だろう。
双方講師で、かつ男同士という時点でおおっぴらにしにくいことに違いはないが、俺たちが一緒に住むのはいずれ分かる話だし、そこはわざわざ隠す必要もない。

「……寝室に人を一切入れないようにするのなら、2DKか2LDKにして、ベッドを一つにしても構わん」
「旦那」
「ベッドを二つ置くとなるとどうしても場所を余分に取る。作業部屋に一通りの衣装を置くなら、日常生活での服は寝室のクローゼットを使わないと場所がない。ならば、場所には少しでも余裕があった方がいい」
「いいのかよ」

提案した当の本人が驚いている。自分で口にした癖に、俺が了承したのが予想外だったと言わんばかりの表情だ。

「リビングが広めのところを選べば人は招けるだろう。衣装部屋も寝室も仕事絡みのものを置いてあるからと、お互いの家族も含めて人を入れないようにして、リビングにだけ人を通すようにすれば、勘ぐられるようなことも……おい、何を笑っている?」

ベッドが一つでいい理由を述べていたら、先程まで驚いた表情をしていた鬼龍がニヤニヤしながら俺を見ていた。

「四の五の理由を並べなくても、一緒に寝たいから、ベッドは一つでいいって言やぁいいのによ」
「……理由として否定はしないが、それだけでもないんだぞ。分かっているのか、貴様」
「分かってるって。……楽しみだな。蓮巳と一緒に住めるの」

鬼龍が背中側から俺の肩に腕を回して、抱きしめてくる。伝わってくる体温の心地良さに、それ以上反論するのも幼稚に思えて、回された腕に、俺も自分の手を重ねた。

***

「クローゼット、結構広いな」
「ああ。これなら二人分の衣類を収納するには問題ねぇ。向こうの部屋にもクローゼットついているし、衣装の方もほぼ収納出来そうだ」

2LDKで部屋を探すようにしてから、数件目で見つけた物件が二人揃って気になり、次の休みに内覧に訪れた。当初内覧を予定していた物件は入れ違いで契約が決まってしまったとのことだったが、近い条件の物件をと不動産会社が案内してくれた物件が、殊の外良かった。
夢ノ咲学院から徒歩三分、築浅のマンション。二部屋とも備え付けのクローゼットが広いし、リビングも日が差し込んで明るい印象だ。
風呂とトイレも別になっていたし、特に狭くもない。システムキッチンも使いやすそうな作りで、マンションの入口はオートロック。
頭の中で何となく家具や家電を配置して、生活のイメージを試みたが、中々良さそうに思える。巡り合わせとはこういうことだろう。

「鬼龍。どう思う」
「俺はここ気に入ったぜ。てめぇはどうだ?」
「俺もだ。ならば、ここに決めるとするか」

意見一致。早速、契約することに決め、二月半ばを目処に引っ越しすることにした。

***

俺の場合は一人暮らしを始めるときに、始めて引っ越しを経験したが、あの時とはまた違う楽しさがある。
引っ越しに関しての手続きや、買い物が一つずつ終わっていく度に、鬼龍と一緒に暮らす事への実感が強くなっていった。少し事情が異なるとは言え、新婚生活とはこんなものかも知れないと思ったりもした。
特にベッドを選んだときは、ただでさえ、男二人でベッドを選んでいるという状況が傍目から奇異に映らぬよう、自分では表情には出さずにいたつもりだったが、選んでいる最中に顔が緩んでいると鬼龍に一度連れ出される羽目になった程だ。もっとも、顔が緩んでいたのはやつもだったので、お互い様と言ったところだ。
そうして、引っ越し当日の今日。朝からひたすら新居を片付けていて、少し身体を解そうと背筋を伸ばしたところで、声が掛かった。

「旦那。寝室片付いたか?」

開け放していた扉から鬼龍がひょいと顔を出したのを機に、手元に置いてあったスマホで時間を確認してみたところ、とうに夕食の予定時間を過ぎていた。
片付けに集中していて時間に気付かなかったが、先程までは鬼龍が片付けていた隣室からも物音は聞こえていたから、鬼龍も時間に気付いたばかりなんだろう。

「少なくとも、今夜寝るに困らない程度にはな。すまんな、作業部屋の片付けを全部任せてしまって。そっちの方が大変だっただろう」

鬼龍は衣装の量が多いからと作業部屋の片付けを一手に引き受けてくれていたため、俺の方は寝室とリビングを中心に片付けていた。
ベッドは数日前に購入して、既に部屋へと入れてあったし、シーツや枕カバーを付けたあとは、ほとんど備え付けのクローゼットの整頓だった。
鬼龍の衣類も一緒に整頓していたが、日常の衣類は俺の方より心持ち少ないくらいだ。
ただ、夢ノ咲学院で教えるときに役に立つかも知れないと、過去に鬼龍が手懸けた衣装で手元に残っている分は全て持ってきていたから、作業部屋に置く分は相当な量になっている。俺が紅月で着ていた衣装も一通り置いて欲しいと言われ、その分も含めるとかなりあったはずだ。

「大したことじゃねぇよ。ああ、一段落ついたなら、ちょっとパソコンデスクや本棚の配置に問題ねぇか見て貰ってもいいか?」

一応、事前に部屋の間取り図を元に、家具や家電の配置は決めてあったから、そう問題はないはずだが、律儀に確認を求めてくる辺りがこいつらしい。

「分かった、今行く。こっちも後で構わないから、服の収納が問題ないか見てくれ」
「旦那の仕事なら間違いねぇって思ってるよ。きっちりやってくれるのなんざ、十年前から知っている」
「それはお互い様だ。夕食はどうする? 今から何か作るとなると遅くなってしまいそうだが……」

明日も休みだから、多少夕食の時間がずれても差し支えはないが、一日片付けに費やしていたせいか、これから夕食を作る気力は正直あまり残っていない。

「そうだな。引っ越し初日でまだ冷蔵庫の中も空っぽに近いから、ちょっと食いに出るか。で、帰りに商店街のスーパー寄って明日以降の食材買っとくってのでいいんじゃねぇ?」
「うむ、そうするか。とりあえず、着替えよう。流石にこの格好で外に出るには気が引ける」

片付けで大分ほこりっぽくなっていたし、随分汗も掻いているから、欲を言えばシャワーを浴びたいくらいだった。

「そうだな。俺も着替える。旦那、汗ふきシートみたいなのあるか?」
「ほら」
「ありがとよ」

自分で使うシートを先に取って、残りはケース毎鬼龍に手渡す。この手の日用品も二人で使う物なら、少なくとも家に置く分は共有でいいだろう。
その辺りも後で鬼龍と話そうと考えながら、着替えた。

***

夕食をとったのは、俺達が夢ノ咲現役時代からあった店だが、居酒屋だったため、未成年だった当時は入らずじまいで、今更ながらに初めて入ったのだが、店は中々の当たりだった。
美味い上に、値段も手頃。今後、仕事で帰りが遅くなった場合は、そこで食べるのも一つの手だと鬼龍と話しつつ、スーパーに買い物に寄って、家についたのは十時を回っていた。
それぞれが風呂に入って、缶ビールとグラス持参で寝室に行った時には十一時過ぎ。

「結局、遅くなってしまったな」
「仕方ねぇよ。明日も休みだし、多少寝坊してもいいだろ」
「それはそうだが」

ベッドに腰掛け、二つのグラスに缶ビールを注ぐ。どちらからともなく、グラスを手にし乾杯した。スーパーで買って来て、風呂に入っている間にしか冷やせなかったビールは少し生ぬるさもあったが、一日動いていたせいか十分美味い。

「改めて、今後ともよろしく頼む」
「おう、こちらこそ。そんな挨拶で切り出されると、まるで新婚初夜って感じだな」
「言い得て妙だな。……部屋を決めたり、家具を選んだりしているとき、新婚生活を始めるのはこんな感じに近いんだろうかと思ったりした」
「何だ、旦那もかよ。俺もそんな気分だったぜ」

手にしていた飲みかけのグラスを取り上げられ、ゴトリとテーブルにグラスが置かれる音を聞きながら、近付いた顔に察して目を閉じる。
重なった唇から薫るアルコールの匂いに、身体の奥でスイッチが入った。

「……ん、う」
「はっ……」

侵入してきた鬼龍の舌がゆっくりと口蓋を辿って、そのまま舌の付け根の辺りも撫でるように動かして行く。疼き始めた身体の芯の反応をさらに煽るように、唇も舌が撫でていった。こっちからも煽ってやろうと、軽く鬼龍の耳を手で塞いでから、わざと音を立てて唇に吸い付く。

「眠くねぇか、旦那」
「こんなことをして、眠いも何もあったものではないな。新婚初夜の気分なんだろう?」

既にスウェットの上からでも勃っているのが分かる鬼龍の股間に手を滑らせると、耳を甘噛みされた。反射的に上げそうになった声はどうにか堪えたが、俺も理性は限界に近い。

「ああ。これからはずっと家に帰ってきたら、旦那の顔見られるんだな」
「家どころか、職場でも見られる。夢ノ咲を卒業してからのこの数年を思えば夢のようだな」
「でも、夢じゃねぇ」
「そう、だ」

俺の身体を弄り始めた鬼龍の手に、興奮が増していく。お互い、相手の服に手を掛け、交互にそれぞれの服を脱がせて、全部脱いだところで、ベッドの上に身体を投げ出し、全身を絡ませるようにしながら、再び口付けを交わす。
お互いに申し合わせはしなかったが、夜のことを考えて、アルコールはやや控えめにしていたせいか、鬼龍のモノも俺のモノも十分な硬度を保っている。
じゃれ合いながら、肌の感触や体温を楽しんでいると、不意に鬼龍の手が俺のモノの先っぽを緩く扱いてきた。

「ふっ」
「もう先走り出て来てんな」
「俺だけじゃないだろう」
「っと」

鬼龍のモノを掴んで、先走りが滲み始めている鈴口に指先で刺激を与えると、やつの表情が悦楽に歪んだ。
鬼龍もだろうが、相手が自分の行動一つで表情を変えるのは何度見ても気分がいい。
爪先で軽く鬼龍の足の甲を突くと、俺の足も突き返される。
ベッドを購入する際にダブルにするか、クイーンサイズにするか迷った挙げ句、クイーンサイズにしたのだが、ベッドの広さが心地良くて正解だった。
大の大人二人がじゃれ合っていても、余裕がある。

「ローションやゴムはここか?」
「ああ」

鬼龍が枕元にある収納スペースを開けて、ローションボトルとゴムの箱を取り出す。

「何だ、ゴムも使うのか」

明日が休みだと、ゴム無しでしたがることも多いから、少し意外だ。
鬼龍と身体の関係を持ち始めた頃は、俺の身体に掛かる負担を考慮して、ゴム無しですることに消極的だった面もあったが、学生時代ほど頻繁に会えなくなったことから、翌日が休みの前夜、存分に睦み合うのが暗黙の了解のようになってからは、こんなタイミングでする場合はゴム無しのことも多くなっていた。

「真っ新なベッドシーツ、いきなり汚すのもどうかと思ってよ。久し振りだから一回で終われそうにねぇし、ナマだと早くイッちまいそうだし」
「セックスする時点で、どうしたって汚す可能性の方が高いがな。どうしても気になるなら、ベッドの下の引き出しに客用バスタオルを収納したから、使っても構わんが、多分途中で」
「……どうでもよくなっちまうだろうな」

行為に没頭すると最中はシーツの状態等に気が回らなくなるのは、この数年で実証済みだ。

「あー、蓮……」
「いいぞ、そのままで。俺も久し振りにそのままでしたい」
「悪ぃな。イッた後、続けても平気そうか?」
「ああ。俺も多分一度じゃ物足りん」

おまえが欲しい、と鬼龍の耳元で囁くように告げ、屹立しているモノをやつの腹に擦りつけるように動くと、鬼龍も俺の太股に固くなっている性器を触れさせてきた。

「旦那、煽るの上手くなったよな」
「何年の付き合いだと思っている。大体それを言うなら、貴様だって」
「まぁ、お互い様ってやつだ」
「っ!」

尻に手を回され、まだローションもつけていない指が、孔の周囲をそっと撫でていく。

「い……きなり後ろに触れる、のは」
「どうせ、風呂入ったときに多少準備してきてんだろ? 旦那、用意周到だもんな」
「う、るさ、い」

勝手に震えてしまう声に構わず、鬼龍がそのまま孔の周囲を撫でながら、少しずつ手の位置を前にずらし、玉や幹の方にも擽るような力加減で触ってくる。
滲み始めた先走りを指に絡めると、再び後孔の方に触れられた。俺も負けじと鬼龍のモノを握って、ゆるゆると扱き始めるが、どうにも分が悪い。

「ん、う」
「こういう時の蓮巳の声、たまんねぇなぁ。色艶が半端ねぇ」
「あ、あっ」

後孔に触れていなかった方の手で、いつの間にかローションを出していたらしく、ぬるついた手が尻の間を滑り始めた。
孔の表面だけは撫でていくが、中には指を挿れようとせず、焦らしていく。

「きさ、ま」
「お互い様だって言っただろ? 俺だって、旦那をどうやったら煽れるかって分かってんだぜ」
「ん、んっ」

触れ方の加減が絶妙で、もっととねだりたくなる寸前くらいの感覚で留められる。これでもう少し強い刺激なら、指を挿入して欲しいと言ってしまうだろうが、この段階で言うのはまだ少し躊躇われる。
そして、恐らくそれを鬼龍は知っていて、俺が口にするのを待っている。だが、意のままになってしまうのも、些か癪だ。俺も手探りでローションのボトルを見つけ、少し手に垂らすと、それで鬼龍のモノを扱いていく。

「っと」
「分かって、いるのな、ら……っ、俺が、ただ煽られるだけで終わらないのも」
「ああ、分かっている、とも……っ」
「ふっ、あ、あ!」

孔に触れていた指先が一度引いたかと思うと、今度は指の関節を使って撫でられる。指先とは微妙に異なる感触はもどかしさを増幅させる。
そんなタイミングで耳を勢い良く舐められたから、つい鬼龍のモノを握りこんでいる手に力が入った。
鬼龍の喉が鳴ったのが聞こえる。手の中のモノも、心なしか容量を増した。

「蓮巳」
「……指を、中、に」
「おう」
「く、ふっ」

嬉しそうな返事と共に、ローションで濡れた指がそっと中へと滑り込んで来た。
ここ数年ですっかり覚えさせられた内側への刺激に、感覚が揺れる。
少しずつそこを広げるように掻き回されて、刺激に声が零れ、理性が失われていくのを自覚させられた。

「きりゅ、う」
「可愛いな、敬人」
「っ!!」
「お」

不意打ちで呼ばれた下の名に危うく達しそうになり、鬼龍の指を締め付けてしまった。
どうにか寸前で抑え込んで、呼吸を整えていると指が中から抜ける。

「悪ぃ、もうちょい焦らしたかったが、俺がもう限界だ。てめぇがローションつきで触ってくれたから、このまま突っ込むぞ」
「ああ、構わ、んっ」

俺が言い終わらないうちに、身体を起こされ、ああ、対面座位にするつもりかと認識している最中に、鬼龍が挿入してきた。
ぐじゅ、と粘着質な水音と一緒に、深い部分まで鬼龍が浸食していく感覚を馴染ませようと深呼吸していると、鬼龍の方も俺と呼吸を合わせるように息を吐いている。
汗で湿った鬼龍の髪を撫でつけながら、紅郎と呼びかけると俺の背に回された腕に力が入った。

「離さねぇ」

俺に聞かせるつもりだったのか、無意識だったのか。
そんな呟きが聞こえた直後、ベッドを使って身体を揺らされた。
激しくはないが、確実に迫り上げていく快感に身を委ねて、俺も鬼龍の身体にしがみつく。

「あっ、うあ、く、ろ」
「けい、と」
「あ、あ、ああっ!!」

限界に達したのはどちらが先だったのか。四肢の先まで駆け抜けていった絶頂感に姿勢を保っていられずに、鬼龍がベッドに仰向けに倒れ込んだ、その上に崩れ落ちるように倒れ込んだ。
掛けていたままの眼鏡が外れ、視界がほぼ白いシーツに埋め尽くされ、ああ、やはりシーツを汚すことについては考えられなかったなと、頭の片隅で思いながら目を閉じた。

***

※ここからは完全版で収録予定のエピソードの一部を。微妙な構成の仕方ですみません。

「んー……旦那、今日はこのネクタイなんかどうだ?」

そう言って鬼龍が取り出したのは、俺のネクタイではなく、鬼龍が所有していたネクタイだ。
確かに今俺が着ているワイシャツには合っているように思うが。

「いいのか? 貴様のネクタイだと分かったら、妙に勘ぐられそうだが」
「んなの、イチイチ見る方は覚えてねぇと思うぞ。特徴のあるネクタイならともかく、ストライプのネクタイなんざどこにでもあるんだしよ」
「ううむ……しかし」

鬼龍が日々教鞭を取っているのはスタイリスト科だ。生徒も身なりには気を配っているし、恐らくそれは人に対しても着こなしの着目度は高いと思われる。覚えている生徒は覚えているのではないだろうか。

「ま、俺のネクタイを旦那がしているってのいうのが、ちょっと良い気分になれるってのもあるんだけどよ」
「鬼龍」
「ワイシャツとかスーツだと、微妙にサイズ違うから気軽に交換って訳にもいかねぇけど、ネクタイだとサイズ関係ねぇからな。実は旦那が出張してたときに、旦那のネクタイ拝借したことがある」
「初めて聞いたぞ」
「そりゃ、初めて言ったからな」

***

「おう、旦那。次のコマ空いていたよな? ちょっと協力して貰えねぇか?」
「協力の内容にもよる。何だ?」

食堂で持参した弁当を鬼龍と向かい合わせになって食べていると、そんなことを言ってきた。

「紅月の衣装を着て、少しだけでいいから曲に合わせて動いて欲しい。動いた時の衣装の状態をうちの科のやつらに見せてぇ。俺も自分のやつを着るけど、旦那は立ち振る舞い綺麗だから、動いた時に参考にしやすいと思うんだよな」
「なるほど。そういうことならいいだろう。ならば、これを食べ終わったら衣装に着替えるか」
「それなんだけどよ。その、衣装を着付けするところも見せるってのはダメか?」
「生徒の前で、か?」

流石に即答は出来なかった。
あくまで授業の一環で他意はないと分かっているし、紅月で活動していた時にも毎回意識していたわけでもない。
だが、鬼龍に着付けられているところを人に見せるとなると、思考の片隅でどうしても別のことを意識してしまいそうな気がした。
鬼龍が少しだけ口籠もったのも、俺がどう思うかを恐らく察してのことだろう。だが、授業で必要だとなれば仕方あるまい。

「仕方ないな。今日の夕飯のリクエストくらいは聞いてくれるんだろうな?」
「お安い御用だ」
「紅月の曲は手元にあるか?」
「そこは大丈夫だ。旦那、まだ神崎が紅月に加入する前の曲の振り付けとか覚えているか?」
「誰に聞いている。貴様こそ忘れているのではないだろうな」
「忘れちゃいねぇよ。てめぇこそ誰に聞いてんだ」

あの時代の曲を使うのかと内心の動揺は押し殺した。二人でやるのなら、確かに神崎がいなかった頃の曲を選択するのは妥当だとも言えるが、何かが直感に引っかかる。
名前通り、鬼『龍』を『王』としたて上げるために、そして、紅月の実績を積み上げるために実施していた龍王戦。
ドリフェスの仕組みをまだ試行錯誤しているのだと傍目には見せかけつつ、紅月が暗躍していたあの頃。
――鬼から逃げようったって、背後には上品なふりした蛇が睨みをきかせてりゃ、刃向かうやつもいなくなるってもんだ。
いつかの憂いを含ませたような鬼龍の声が聞こえたような気がした。

 

To Be Continued

 

キャプションにも書きましたが、話を纏めきれずにとりあえずコピー本として準備号で出したものです。
(確か、この時前日の3日は野崎くんでサークル参加してたので、連日でのサークル参加してたのもあって、手が回らなかったという覚えが)(そして、今年(2023年)はついに同日別ジャンル参加してしまった)(当然手が回らなかった)
最初、ブリデ4で発行した『紅の憧憬』の対になる、『緑の渇望』を発行予定→いや、まだちょっと纏めきれない(主に四獣絡みのせいで)→ならば、ちょっと世界線の違う同棲話いっとこうと、書く話を決めたはいいものの、性癖の同棲話をさくっと短く纏められる訳もなかったというw
それにしても、歳を重ねて落ち着いた二人を書きたかったはずなのに、こんなん学内でやりとりしてたら、ラブだだ漏れじゃないんだろうかって二人になってしまったのは何故……w
(書き手の問題)

 

タグ:あんスタ紅敬R-18サイトのみWeb再録10000~15000文字蓮巳視点鬼龍視点ナマ挿入未来捏造同棲設定2017年発行