『雪花亭』で配布されていた『花帰葬好きさんに22のお題』よりNo19。
先に裏サイトで書いていた『萌えフレーズ100題』No59「監禁」及び、黒翼祭出展作「約束と後悔の残酷な方程式」でやったものの別ヴァージョン。
初出:2004/06/12
文字数:911文字
何度目の輪が巡ったのだろうか。
――これが済んで、次に俺が生まれたら、必ず殺してくれ
回数なぞ、とうに覚えていない。
それでも軋む心の痛みは訪れる。
――これから世界が続いて、俺が生まれる限り、俺を殺しつづけてくれ
また、私は慈しんで育ててきた我が子を取られてしまうのか。
この世界に。
――言っている意味は解るだろう。……お前にしか頼めないんだ
そんな時にだけ私に頼み事なんて、ずるいにもほどがある。
私が君に甘いのを知ってて言うのだから。
――お前に育てられて、花白に殺される人生なら、何度繰り返しても悪くないと思う
君がそうでも私はそうじゃない。
……憎くてたまらないよ、この世界が。
――だから、頼む。黒鷹
それでも、他ならぬ君の頼みだから。
ここは君がなにより愛した世界だから。
――俺はお前に育てられて良かったと思う
だから、約束を守るんだよ、玄冬。
これは私のエゴが招いたことでもあるから。
もう1つの方法を君に告げることができなかった、せめてもの報いに。
「……黒鷹? 泣いてるの? どっか痛いの?」
「……ああ、ごめんね。なんでもないんだよ、玄冬」
心配そうな幼い声に、引き戻される現実。
まだ、私の腕に収まってしまう小さなぬくもりを強く抱きしめる。
「ちょ……苦しいよ、黒鷹ぁ」
三年前から続いている戦は予想以上に激しくて。
瞬く間に命の器は満ちて、限界が訪れてしまった。
「……すまない……ごめんね……」
今回は十年と育てていなかったのに。
幼いこの子を殺させる世界が本当に憎い。
主よ、これは罰ですか?
甘い誘惑に負けて、もう一つの方法を告げられなかった私の咎ですか?
「黒鷹……」
小さな手が、何も知らないこの子が私の髪を撫でてくれる。
事情を知らないなりの精一杯に、せめてもの慰みのつもりだろう。
その様子にまた苦しく思う。この子は何も悪くないのに。
私が君に何度も会いたかったから、共に過ごせる時が欲しかったから、今を招いてしまったことを知ったら、君は何と言うだろうか?
最後の夜。
謝罪する資格さえ私にはないのだけど、せめて赦してくれたまえ。
何も知らずに死に逝く君を思って、ただ一晩だけ泣くことを。
――Lascia ch'io pianga――
黒鷹視点で展開されていますが、本編からの引用部分が多くて読み返すと色々未熟っぷりにあちゃー……な感じです。
カプ要素なしでの春告げの鳥話の最初がこれっぽい。
ラスト一文は「私を泣かせてください」の意のイタリア語。
大学時代にイタリア歌曲を歌う機会があって、その中の曲のタイトルの一つですが、花帰葬の曲にsorriso等イタリア語が含まれていたので、イタリア歌曲使えるなって持ってきた記憶。(安直)
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