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Happy Birthday&After Party<花帰葬・黒親子>

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黒鷹が誕生日不明なので、じゃあ玄冬と一緒に祝おう!という主旨の元に、2005年・2006年の玄冬誕生日前後に『K&K Birthday Party』という企画サイトを運営していて、そこのWeb拍手で使っていた話の加筆修正版。

初出:2005/05/14

文字数:1438文字

 

「なぁ、そういえばお前の誕生日っていつなんだ?」

あれは玄冬が幾つの時だっただろうか。
隠し切れない渋い顔で、それでも私の作ったケーキを文句一つ言わずに、食べてくれた君はそんなことを言ってきた。

「うーん……実は私もよくわからないんだよ」
「……わからない?」
「ほら、もう私は君より大分長く生きているからね。忘れてしまったな」

厳密にはこの箱庭と時間の流れの違うところで私は創られたから、説明するのが難しい、というのが正しいだろうか。
どちらにしろ、私はあまり誕生日というのに執着がなかったし、興味もなかった。
玄冬には私が出来る限りのことをしてやりたいし、共に過ごせる時間が貴いもので、生まれてきてくれたことに感謝をしているからこうして祝っているけど、だからと言って自分が祝って欲しいと思ったことは無い。

「……不公平だな」
「うん?」
「俺はちゃんと祝ってもらってるのに、お前は祝ってないなんて。……うん、決めた」
「何をだい?」
「来年から俺の誕生日とお前の誕生日を一緒の日ってことにして、お互いに祝おう」
「私はさして興味もないんだけどねぇ」
「……俺が嫌なんだ」

憮然とした顔は怒ってるというよりは、傷ついてるようにも見えた。

「だってお前が、俺を……」

***

「……ふふ」

かちん、とテーブル越しに合わせたグラスの心地よい音につい笑みが零れる。

「? 何笑っているんだ? 黒鷹」
「いや、君とこうして一緒に誕生日を祝うのは何回目だったかなと、懐かしく思ってね」
「……いつだったか、お前が作ってくれたケーキは酷いものだったな」
「それでも君は残さず食べてくれたじゃないか」
「あの時は腹を下すことの無い自分の体質に心底感謝した」
「酷いなぁ。私は食べなくてもいいよって言ったじゃないか」
「そう言われて、わかったなんて言えるか。……必死に材料と格闘しながら作っていた過程を見てたのに」

いつしかケーキは玄冬が作った美味しいものに変わり、ジュースを飲み交わす代わりに、アルコールを飲み交わすようになるほどに月日の経った今でも。
あの時に玄冬が言った言葉は鮮明に覚えている。

――お前が俺がいて良かったって、こうして祝ってくれるなら、俺もお前を祝いたい。
――俺だって、お前がいて良かったって思っているんだから。

「ん! 美味しいね、このワインは。いい仕上がりじゃないか」
「……飲みすぎるなよ」
「せっかくの祝いの日に固いことは言いっこなしだ」

年に一度の楽しみは存分に味わわないとだよ、玄冬。

***

「すー……」
「……やっぱりな。こうなるだろうとは思っていた」

一通り、台所の後片付けを済ませた後、居間に行って見るとテーブルの上には空いた酒瓶。ソファには酔いつぶれた黒鷹の姿。
予想通り過ぎて、苦笑を零すほかにない。
祝い事をやりたがる割には、片付けとかは結局いつも俺の役目だ。
……わかっていても、見逃してしまうのはやっぱり気分が高揚しているからだろう。
自分が『玄冬』だと知った直後。どうしても誕生日を祝う気になれなかったのを、再び楽しめるようになったのは、こいつがいてくれたからに他ならない。
俺がいてくれてよかったと言ってくれる。そして、俺もお前がいてくれてよかったと思う。
お互いがそれぞれ相手の存在に感謝するという日だと思えばこそ、年に一度のこの日を素直に祝うことができる。

「……有り難う」

黒鷹の身体にブランケットだけ掛けて、部屋の灯りを落とした。
願わくば、来年の今日もまたこうして過ごせることを。

 

珍しく成人した玄冬との健全親子話。前半は黒鷹視点で、後半が玄冬視点。
黒鷹が公式で誕生日不詳なので、纏めて祝おう!の主旨がそのまま反映された内容です。

 

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