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ビール<エリオスライジングヒーローズ・キスブラ>

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2020/11/8に開催されたキスブラ版ワンドロ・ワンライ第1回でのお題『ビール』を使って書いた話です。
※pixivUP時にブラッド視点追加しました。

初出:2020/11/08 ※ブラッド視点は2020/11/30

文字数:4343文字

 

[Keith's Side]

「抹茶……ビール?」

昔から、日本文化に興味があったブラッドに付き合って、何度か日本食やら、日本の飲み物なんかを口にしたことはあったから、抹茶は一応知っていた。
ちゃんとした作法まではわからねぇが、初めて飲んだ時に濃厚さを含んだ苦みは悪くねぇなと思った記憶がある。
あと、何だっけ。天ぷらとかいう揚げ物を食ったときも、抹茶塩ってのが出て来た気はする。
そのままだと粉末状だけど、溶かせば飲み物なんだし、カクテルと思えばまぁありなのかもしれねぇが、味がどうにもピンとこねぇ。

「ああ。日本にある飲食店でそれを出す店があると聞いて、以前から気になってはいたんだが、少し前にその店が個人でも作れるようにレシピを公開してな。ならば、一度試してみようと」
「そういうことか、なるほど」

ブラッドは元々ビールは飲むけど、積極的ってわけじゃなく、人といるときに付き合いで飲むことが大半だ。
多分、味がそれほど好みじゃねぇんだろうなって思ってたけど、抹茶入りっていうのに興味を持ったか。
珍しく、こいつの方から少し飲みたいなんて言ってきたから、どうしたのかと思ったら。

「シェーカーとグラス、あとボウルを借りるぞ。ビールと氷はまだあるな?」
「おう。オレが切らすはずねぇだろ」

ビールは常にストックしてあるし、氷も余程家を空けることがない限りはある。ウエストセクターのメンターとして就任して以降、タワーの方が生活の拠点になってはいるが、こっちにも時々帰ってきてはいるから、氷を切らすことはない。
オレの返事を確認してから、ブラッドがキッチンに向かった。
とっくにオレの家のどこに何があるかなんて把握済みのヤツは、迷うことなく棚から必要なものを取りだしていく。
冷凍庫からも氷を取りだし、ボウルにそれと水を注いだ後、空のグラスも入れて冷やす。
冷やしている間に、ブラッドが自分で持ってきていた抹茶の缶を開け、シェーカーの中に抹茶と水、氷を入れて振り出した。
しばらく、キッチンから心地良く音が響いていたが、やがて振るのをやめて、冷やしていた二つのグラスを取りだし、そこにシェーカーの中身を均等に分けた。
そして、冷蔵庫からビールを二缶取り出し、グラスに一缶ずつ中身を静かに注いでいく。
注ぎ終わったところで、ブラッドがグラスを持って、リビングまで戻ってきた。

「へぇ……ぱっと見はビールって感じがしねぇな、これ」

抹茶の緑が強く主張され、泡がなければ緑茶って感じだ。

「そうだな。俺は画像で事前に確認していたから、色はわかっていたが、こうして直接みると、ビールと言われなければわからんな」
「ま、どんな味か確認してみようぜ。それじゃ、乾杯……っと」

カチン、とグラスを合わせてから、一口含んでみる。

「お」
「……なるほど、苦みが少しまろやかになるな。抹茶自体も少し苦いものだからどんな感じになるのかと思えば」
「これはこれでイケるな。へぇ」

思っていたよりも爽やかな飲み口だったのもあって、気付けばグラスの中身が尽きようとしていた。

「少し飲むスピードを考えろ。もう一杯くらいなら作るが、それ以上は俺は飲まんぞ」
「ええ……いいじゃねぇかよ。明日オフなんだしさ。……あ、その抹茶ってまだ次の一杯作っても、中身に余裕あるか?」
「? これで開けたばかりだから余裕はあると思うが……」
「じゃ、お前がそれ飲み終わるまでに、ちょっとつまみ作るわ。…………お、あったあった」

キッチンに向かい、日持ちするからと買っておいたじゃがいもが傷んでいないのを確認して、くし形に切り分けていく。
ちょっと水にさらしておいて、その間に鍋と油、小麦粉を用意する。

「……フライドポテトか」
「おう。前に天ぷら食ったときに抹茶塩あったろ? なら、揚げ物ってことでポテトに合わせても美味いんじゃねぇかなって思って」
「そういうことか」

昔、色んなバイトやった中で、フライドポテトの作り方も覚えたから、こうしてたまに作ることがある。
手っ取り早いのは冷凍されてるのを揚げりゃいいんだけど、結局こっちの方が美味いんだよなぁ。
俺がそうやって準備している間に、飲み終わったらしいブラッドがオレが置きっぱなしにしていたグラスも一緒に持ってきた。

「二杯目を作ろう」
「ああ、そっちは任せた。他に何か食う? つっても、そんなに直ぐ用意出来るもんねぇけど」
「ポテトで十分だ。これも使うんじゃないのか」
「おっと、サンキュ。忘れてた」

塩を出し忘れていたことに気付いたブラッドが渡してくれたのを受け取り、小皿に塩と抹茶を入れて軽く混ぜる。
ポテトを揚げていってると、横でブラッドが少し笑った気配がした。

「……久し振りにお前が何か作ってるところを見た気がする」
「まぁ、普段はめんどくさくてやらねぇからなぁ。ルーキーの頃が一番まともに料理してたっけ」
「当時は料理当番を割り振っていたからな。……お前が作る料理は美味かったから、お前が当番の時は少し楽しみだった」
「お前ね……そういうのは当時言えよ。つうか、事前に言ってくれりゃ、ちょっと作るくらいするっての。よし、出来たから揚げたて食いながら、二杯目飲もうぜ」
「ああ」

抹茶ビールの三杯目を作る気になるように、少しだけ塩加減を調整したポテトを出し、二杯目の乾杯をした。

[Brad's Side]

アルコールは嗜むが、ビールは特に好む方ではない。
人と飲む時に合わせて注文するくらいで、自分で購入することはほとんどないと言っていい。
が、それを知った時は一度飲んでみたいと思っていたから、公開されたレシピを見た瞬間、ビールを好んで飲むキースなら付き合ってくれるだろうと話を持ちかけた。

「抹茶……ビール?」
「ああ。日本にある飲食店でそれを出す店があると聞いて、以前から気になってはいたんだが、少し前にその店が個人でも作れるようにレシピを公開してな。ならば、一度試してみようと」
「そういうことか、なるほど」

キースには何度か日本食を食べるのに付き合って貰ったことがあるから、抹茶がどんなものかは知っている。
ミルクと砂糖を加えて甘くした抹茶ラテは好まなかったが、何も加えない抹茶については好感触だった覚えがある。今日も特に異論はなさそうだった。

「シェーカーとグラス、あとボウルを借りるぞ。ビールと氷はまだあるな?」
「おう。オレが切らすはずねぇだろ」

そうだろうとは思っていたが、念の為だ。
ウエストセクターのメンターになってからはこちらの家にいることは少ないが、キースが住み始めてから数年経っているから、物が置いてある場所は大体わかる。
キッチンで必要な物を片っ端から取り出し、準備していく。
冷凍庫にある氷を取りだし、ボウルに、空のグラスも入れて冷やす。
冷やしている間に、持ってきた抹茶の缶を開け、シェーカーの中に抹茶と水、氷を入れて振った。
氷が鳴らす音が小さくなったところでやめ、冷やした二つのグラスを取りだし、シェーカーの中身を均等に分ける。
冷蔵庫からビールを取り出し、グラスに一缶分ずつ中身を注いだら、鮮やかだった緑がビールの色でやや黄色味を帯び、キースの目と近い色に変わった。
リビングに持っていって、グラスの一つをキースに渡すと、興味ありげにグラスを眺めている。

「へぇ……ぱっと見はビールって感じがしねぇな、これ」
「そうだな。俺は画像で事前に確認していたから、色はわかっていたが、こうして直接みると、ビールと言われなければわからんな」
「ま、どんな味か確認してみようぜ。それじゃ、乾杯……っと」

お互いのグラスを合わせてから、一口含んでみる。
舌にのった味はほぼビールだったが、喉を通り過ぎていった辺りでふわりと抹茶の香りと後味がした。

「お」
「……なるほど、苦みが少しまろやかになるな。抹茶自体も少し苦いものだからどんな感じになるのかと思えば」
「これはこれでイケるな。へぇ」

試した価値はあったようだ。キースも満更でもないらしい。
だが、飲みやすさのせいか、キースのグラスの中身が一気になくなりつつあった。

「少し飲むスピードを考えろ。もう一杯くらいなら作るが、それ以上は俺は飲まんぞ」
「ええ……いいじゃねぇかよ。明日オフなんだしさ。……あ、その抹茶ってまだ次の一杯作っても、中身に余裕あるか?」
「? これで開けたばかりだから余裕はあると思うが……」

キースの意図がイマイチ読めずにいると、ヤツがソファから立ち上がった。

「じゃ、お前がそれ飲み終わるまでに、ちょっとつまみ作るわ。…………お、あったあった」

キッチンに向かったキースがじゃがいもを取り出し、切ってから水にさらし、何やらごそごそとやり始める。
油を鍋に注いだ時点で何を作ろうとしているのかが分かった。

「……フライドポテトか」
「おう。前に天ぷら食ったときに抹茶塩あったろ? なら、揚げ物ってことでポテトに合わせても美味いんじゃねぇかなって思って」
「そういうことか」

それで抹茶の量を聞いてきたのか。
確かに美味そうだ。
俺も自分の分を飲み終わったところで、キースの分のグラスも合わせてキッチンへと運ぶ。

「二杯目を作ろう」
「ああ、そっちは任せた。他に何か食う? つっても、そんなに直ぐ用意出来るもんねぇけど」
「ポテトで十分だ。これも使うんじゃないのか」
「おっと、サンキュ。忘れてた」

棚に置いたままになっていた塩をキースに渡して、俺も再び抹茶ビールを作る。
キースは気に入った銘柄のビールを二、三種類常備しているから、先程とは違う銘柄のビールで作ってみようと冷蔵庫から取り出す。
シェーカーを振りながら、ちらりと横目でキースを見ると、ルーキー時代の光景が脳裏に過る。
あの頃はチームメイトで料理当番を順番に回していたが、キースはバイトで飲食もいくらか経験したのもあってか、手際が良かった。
今も昔に比べて料理をする機会は少なくなっているだろうに、手順を迷う様子はない。

「……久し振りにお前が何か作ってるところを見た気がする」
「まぁ、普段はめんどくさくてやらねぇからなぁ。ルーキーの頃が一番まともに料理してたっけ」
「当時は料理当番を割り振っていたからな。……お前が作る料理は美味かったから、お前が当番の時は少し楽しみだった」

サングリアなんかは時折作るし、相伴にあずかることもあるが、食べるものとなると久し振りではないだろうか。
たまにここに泊まった翌朝なんかも、大抵はオフの日だからとキースの方が起きるのが遅くなり、結果俺の方が朝食を用意することがほとんどだ。

「お前ね……そういうのは当時言えよ。つうか、事前に言ってくれりゃ、ちょっと作るくらいするっての。よし、出来たから揚げたて食いながら、二杯目飲もうぜ」
「ああ」

言えば作ってくれるのであれば、今度は何かリクエストしてみようと思いながら、二度目の乾杯をした。

 

お題が『ビール』『プレゼント』『匂わせ』だったので、『ビール』を選択して書きました。
(ホントはプレゼントも混ぜるつもりだったけど、1時間で書ける話に出来なさそうだったので、『ビール』のみにした)
せっかくだったので、初回くらいは参加したいなと!
ネタ出しの段階で使うビールを流氷ドラフトにするか抹茶ビールにするか迷いましたが、ブラッドの日本文化への興味は抹茶の方がらしいかなとそっちに。
サイトに持ってくるとき、誤字に気付いたのでしれっと修正しましたw
なお、テキストライブ使って書いてみたので、興味があればアーカイブからどうぞ。
一時間でこんな感じで進んだというのが、確認出来ます。

 

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