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カジノ&『…。(3点リーダー)』<エリオスライジングヒーローズ・キスブラ>

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2020/11/22に開催されたキスブラ版ワンドロ・ワンライ第3回でのお題『カジノ』&『…。(3点リーダー)』を使って書いた話です。
どっちの視点も+10分くらいかかってます。

初出:2020/11/22 ※ブラッド視点は2020/11/30

文字数:5162文字

 

[Keith's Side]

――カジノで通用するような腕ではないと言ったはずだが。
――やってみなきゃわかんねぇだろ。調査ついでに試してみようぜ。

オレがジュニアやアキラと一緒に、ウエストセクターのカジノ『ベラージュ』に潜入調査をしてから二ヶ月。
その件については諸々の後始末も含め、とっくに片がついているが、念の為に他のカジノの状況も確認したいとの協力要請があった。
当初は『ベラージュ』についての噂の真偽を確認することが目的だったが、予定よりも色々な件を明るみに出来たということからそうなったらしい。
ただし、今回は潜入調査と言っても、前の時みたいにスタッフとして潜り込むんじゃなく、カジノに訪れた客という形だ。
ヒーローが潜入調査でスタッフとして入り込み、『ベラージュ』の後ろ暗い件があぶり出されたってのは、近郊のカジノで噂になってしまっているから、同じ手段をとることを避けたのと、他のカジノは少なくとも現時点ではどこも表向きさしたる問題はなさそうだってことで、客として訪れたってわけだ。
前は他の諸々でタワーを離れられなかったブラッドも少しは手が空くようになったし、それならと調査ついでに、ブラッドがカジノでどこまで通用するか見てみたかった。
さすがにブラッドは理由もあって当初渋っていたが、結局は調査自体は必要だからと、今日はこうしてオレと二人でカジノを訪れたってわけだ。
さすがに、オレも少し前まで『ベラージュ』でディーラーなんてやっていたから、今回は用心の為に髪型を変え、メッシュを入れた上で、モノクルなんてもんをかけている。
そして、ブラッドはジェイほどじゃねぇとはいえ、ヒーローの中では知名度が高いからと、やはりちょっと変装していた。
ただ、普段はオフの日にしか使わねぇ眼鏡をかけて、髪型も少し変えているとはいえ、イケメン面って時点で目立つし、カジノの喧騒に紛れて女性客の黄色い声も聞こえてきたから、多分何人かには正体が気付かれてる。
まぁ、それならそれで調査じゃなくオフで遊びに来たって、しらを切り通せば良い話だ。
少なくとも遊びに来たって部分はオレの方なら説得力もあるし、逆に人目につきやすいブラッドがわざわざ調査しているとも思われねぇって意味では悪くもない。

「……今のところ、不審な点はなさそうだな」

ブラッドが声を潜めて話し掛けてきたから、こっちも声のトーンを落とす。

「ま、ぱっと見でわかるようなやり方もそうねぇだろうしな。『ベラージュ』の件で、後ろ暗いところがあるカジノなら余計警戒もするだろうし。少なくとも、店内に入って目につく範囲ではイカサマしている様子もねぇ」
「……ならば、やはり直接ゲームに関わってみるのが一番か」
「期待してるぜ、ブラッド」

まだ気が進まないらしいブラッドが微かな溜め息混じりで、期待はやめておけ、と呟いた。

***

ブラッドの手札が見えると、オレの表情の変化から相手に気取られかねない、と言われ、少し離れたところでブラッドがポーカーをやってるのを眺める。
最初、場慣れしていないどこかの金持ちが遊びに来たと思われたのか、見習いディーラーが相手をしていたが、途中でディーラーが変わった。
カードの捌き方から察するに、今相手してるディーラーは結構な手練れなんじゃねぇかと思うが、ブラッドはまだ負けてない。

「……やっぱりカジノで十分通用するんじゃねぇかよ、アイツ」

一回、調査も何も関係ねぇ時にやる気になんねぇかな、なんて思っていたら、場がざわついた。
少し意識を逸らしていたタイミングでブラッドが負けたようだが、どうも負け方がわざとらしかったようで、ディーラーが納得してない――そんな感じだ。
ちらっとオレの方を見たブラッドに、やれやれと思いながら近寄っていく。

「おい。負けたんなら帰ろうぜ。そろそろタイムリミットだろ?」
「ああ。聞いてのとおりだ。そろそろ時間も迫っているので失礼する」
「あんた……今、わざと負けただろう? 何のつもりだ」
「何も。ただ、こちらが経験不足だっただけのことだ。――行くぞ」
「おう」

店のあちこちから視線を感じながら、ブラッドと二人で店を出る。
ある程度、店から離れたところで足を止めた。

「お前ね……負けるなら負けるで、もう少し違和感もたれねぇようにしとけよ。ただでさえ目立ってたのに」
「調査は問題なく終わったし、これ以上続けていても、いたずらに時間を費やすだけだと思ったから切り上げただけだ。既に俺たちがヒーローだと気付いてる層もいたようだしな」
「オレたちっていうか、お前な」
「…………お前も含まれていた。騒がれていたのはヒーローだからというより、今日の装いのせいかもしれんが」
「は? 装い?」

今日着ているやつはブラッドが一通り揃えてきたやつだ。
まぁ、自分で変装用の服を選ぶのも面倒だったから、全部コイツに任せちまったんだけど。

「何か、問題になるようなとこあったか?」
「……問題はない。ただ――」
「ただ?」
「…………いや、何でもない」
「いや、なんだよ。それ、何でもなくねぇだろ? 言えよ」

言い掛けて黙り込み、また歩きだそうとしたブラッドに先回りして問い質すと、珍しくブラッドがオレから目を逸らした。

「………………恋人を着飾るのは楽しくとも、いざ、それで他人に騒がれるとそうでもなかったというのを実感しただけだ」
「……は? 待て、今の――」
「帰るぞ。ここからならお前の家が近い。着替えてからタワーに戻ろう」
「…………嫉妬?したの? お前が??」

騒がれたのが面白くなかったって? 嘘だろ、おい。
さっさと歩き出したブラッドの後を追うと、ヤツの耳だけが赤い。
だったら、家についたら改めて問い質してやろうと決めて、家への道を歩いていった。

[Brad' Side]

キースたちが特別任務として『ベラージュ』に潜入調査してから、早二ヶ月。
当時の調査が想定以上の効果を上げたということから、他のカジノの状況も確認したいということで、改めて協力要請があった。
ただ、今回の場合は『ベラージュ』の時とは違い、具体的な噂があるわけではないということから、比較的軽度の調査方法を取ることになった。カジノに客として訪れ、不審な点がないかをチェックするというのがそれだ。
それで、キースに再び話を持ちかけたところ、キースが俺と組んで調査したいと言い出した。
前回の調査前夜、キースの練習に付き合ってポーカーをやった際に俺が全勝だったことから、カジノで実際にどうなるか見てみたいのだと。

――カジノで通用するような腕ではないと言ったはずだが。
――やってみなきゃわかんねぇだろ。調査ついでに試してみようぜ。

どちらがついでのつもりかとは思ったが、調査そのものは避けられないし、キースと二人で取り組むなら、万が一その場で何か起きたとしても、対応がしやすいのも確かだったから、結局二人でカジノに訪れた。
『ベラージュ』でディーラーをやっていたキースは念の為に軽く変装させた。
キースは変装するのを面倒がったが、もしものことがある。
それに変装を言い訳に、普段はキースがしないような格好をさせられたのは正直楽しかった。

――ええ……わざわざ変装すんのかよ。めんどくさ……。
――文句を言うな。一定期間『ベラージュ』でディーラーをやっていたのだから、顔を知られていないとも限らないんだ。服や小物は貸すから大人しく着ろ。

キースとの体格が大きく変わらないことはこういう時に便利だ。
もっとも、モノクルなんかは自分が掛けるためというよりは、いつかキースが掛けるところを見てみたいと買ってあったものだが。
髪をオールバックにさせ、青のメッシュを入れ、カラーレンズのモノクルを掛けさせると、思っていた以上にイメージが変わった。
キースが普段ならまず着ないだろうインバネスコートもよく似合っている。

――オレ一人にめんどくさい変装させるなら、お前もしろよな。つうか、お前の方が変装しといた方がいいぞ、絶対。
――絶対ということもないだろう。……まぁ、別に構わんが。

キースがそう言うから、俺もヒーローとして活動している時とは少しイメージが変わるようにしたが、なるほど、女性客の声から察するに俺たちがヒーローであることに気付いている者もいるようだ。
ならば、長居するのは避けた方が無難か。
一通り目につく範囲では特に気になった点はない。

「……今のところ、不審な点はなさそうだな」
「ま、ぱっと見でわかるようなやり方もそうねぇだろうしな。『ベラージュ』の件で、後ろ暗いところがあるカジノなら余計警戒もするだろうし。少なくとも、店内に入って目につく範囲ではイカサマしている様子もねぇ」
「……ならば、やはり直接ゲームに関わってみるのが一番か」
「期待してるぜ、ブラッド」
「期待はやめておけ。お前やジェイを相手にするときとは訳が違う」

妙に楽しげなキースに釘を刺しながら、つい溜め息が零れた。

***

ジェイほどではなくとも、キースも表情はわかりやすい。
だから、俺の手札が見えないところまで離れて貰ってからポーカーを開始した。
最初はディーラーがまだ見習いだったらしく、ぎこちなかったのもあってわかりやすく、順調に勝ち続けられたが、途中でディーラーが変更されると、少し雲行きがあやしくなってきた。
集中しなければまずいと思ったが、つい場内の女性客の声を聞いてしまって、集中力が乱れる。

――ねぇ、今あそこでポーカーしてる人と、その連れっぽい人、ここで見るの初めてだけど、格好いいよね。
――待って、あれ、ブラッド・ビームスじゃない? 前までノースセクターに所属してた。でもって、あっちはキース・マックスでしょ?
――嘘、知ってるキース・マックスとイメージ全然違うけど!? え、あの格好凄くいい。声掛けたら握手くらいしてくれないかな。ブラッド・ビームスは市民にも笑いかけてくれるけど、キース・マックスってあんまりそういう話聞かないからダメかなぁ。

どうにも気が散る。あの格好は逆にキースを目立たせてしまったかもしれない。
――ゲームをしていても、カジノ側に怪しい点も見受けられないし、ここで引き上げても良さそうだ。
手札もあまり良くなかったし、このまま負けることにした。
が、それまでの勢いが失速するような形で負けたからか、ディーラーが不満げな表情を露わにした。
焦ってやりすぎたか。これは俺一人では埒があかんと、キースに合図を送る。
気付いたキースは直ぐに俺の方へ来た。

「おい。負けたんなら帰ろうぜ。そろそろタイムリミットだろ?」
「ああ。聞いてのとおりだ。時間も迫っているので失礼する」
「あんた……今、わざと負けただろう? 何のつもりだ」
「何も。ただ、こちらが経験不足だっただけのことだ。――行くぞ」
「おう」

――あーあ、声掛けそびれちゃった。
――タイミング悪かったね。また会えるといいんだけど。

フロアを後にしながら、聞こえてきた会話に少しだけホッとする。
もう、ここで彼女たちと会う機会はないだろう。
外まで追ってこないのは幸いだった。
しばらく歩くと、ふいにキースが立ち止まる。

「お前ね……負けるなら負けるで、もう少し違和感もたれねぇようにしとけよ。ただでさえ目立ってたのに」
「調査は問題なく終わったし、これ以上続けていても、いたずらに時間を費やすだけだと思ったから切り上げただけだ。既に俺たちがヒーローだと気付いてる層もいたようだしな」
「オレたちっていうか、お前な」
「…………お前も含まれていた。騒がれていたのはヒーローだからというより、今日の装いのせいかもしれんが」
「は? 装い? 何か、問題になるようなとこあったか?」
「……問題はない。ただ――」

キースの普段と違う装いが見られたのは気分が良かったし、楽しくもあったが――。

「ただ?」
「…………いや、何でもない」

そのせいで他人に騒がれたのは、調査の点を抜きにしてもあまり気分が良くなかったと、言葉にしてしまうのは躊躇われた。
あまりに幼い嫉妬のように思える。
だから、話を切ろうとしたが、キースの方はそれで納得しなかった。

「いや、なんだよ。それ、何でもなくねぇだろ? 言えよ」

言葉足りねぇんだよ、といつかのキースが言ったことが脳裏でよみがえる。
諦めて、なるべく手短に言葉を纏めた。

「………………恋人を着飾るのは楽しくとも、いざ、それで他人に騒がれるとそうでもなかったというのを実感しただけだ」
「……は? 待て、今の――」
「帰るぞ。ここからならお前の家が近い。着替えてからタワーに戻ろう」
「…………嫉妬?したの? お前が??」

戸惑いを隠せずにいるキースに益々いたたまれなくなる。
つい早足になってしまうが、これは家に着いたら追求されるだろう。
そういう部分を見逃してはくれないヤツだ。
家に着くまでにもう少し平静になれるようにと思いながら、キースの自宅へと足を進めた。

 

お題が『カジノ』『『…。』(3点リーダー)』『寿司』だったので、『カジノ』と『『…。』(3点リーダー)』を選択して書きました。
(寿司は私が食べられない人間なので最初から除外w)
『『…。』(3点リーダー)』でエロは早いうちに思い付いたのですが、それだけもなんだなぁと思っていたら、22時過ぎてネタが降ってきたのでちょっと時間オーバーで書きました。
キースにインバネスコート着せたのは私の趣味です。ブラッドは普通に着そうだけど、キースは自主的に選ばないと思う。
キスブラで『恋人』って単語、多分初めて使った。

 

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