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ハンテン<エリオスライジングヒーローズ・キスブラ>

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2020/12/13に開催されたキスブラ版ワンドロ・ワンライ第6回でのお題『ハンテン』を使って書いた話です。
ハンテンよりはこたつの話になりましたw ブラッド視点はワンライ+10分くらい。

初出:2020/12/13 ※ブラッド視点は2020/12/14

文字数:4650文字

 

[Keith's Side]

ブラッドが今日はオフだから、本来は昨日が締め切りだった報告書は明日提出すればいいか、なんて思っていたところ、当のブラッドからサウスの研修チーム部屋まで報告書を持ってこいって連絡が入った。
だったら、昼休みのタイミングで先に報告書を提出しとくかと、サウスの研修チーム部屋に行ったら、数日ここを訪れていなかった間に、見慣れない物が共有スペースの中央に置いてあった。
最初、低めのテーブルかと思ったが、脚があるはずの部分には布団が覆い被さっていて、見えないようになっている。
朧気に記憶に引っかかるが、名称が出て来ない。何ていうんだっけ、これ。
多分、ブラッドに教えて貰った日本の暖房器具だったと思うんだが――。
そう考えていたところで、キッチンの方にいたブラッドがオレのところまで来た。

「ああ、来たのか。ちょうど昼飯にポトフを作っていたところだが、お前も食っていくか?」
「お、食う食う。今日寒いから外出るの億劫だし、昼飯どうしようかと思ってたんだよな。こんな日だとタワー内にある店は絶対混むしさ。で、これ何だっけ? 前に教えて貰った気がするけど、名前出て来ねぇんだよな」
「『こたつ』だ。日本の暖房器具の」
「あ、それだ。お前が48手やってみたいとか言ったときに、日本人の小柄な体格ならともかく、オレたちの体格だと使っても試すのはキツそうだってなったやつな」

日本の性技書?に、48手っていうやつがあって、その中にこのこたつってのを使うのがあったんだよな。
こうして実際に見てみると、オレたちじゃ難しそうだってのは間違ってなかったなと思う。テーブルの脚の低さを考えると、オレたち二人分の足を入れて、かつ動くとなるとスペースに余裕がなさ過ぎる。

「……他に言うことはないのか。昼から出す話題でもないだろう」
「思い出しちまったんだから仕方ねぇだろ。他のヤツラもいねぇんだからそんくらい見逃してくれって。結局買ったのかよ」
「単純に暖房器具としてな。もう少しで出来るから、こたつに入って待ってろ。それと今のうちに報告書にミスがないか確認しておけ。寒ければ、そこに置いてあるハンテンを着るといい」
「ハンテン? これも日本のか?」

こたつのテーブルに乗っかっている、ぱっと見ちっちゃな布団っぽく見えるやつは着るものだったらしい。

「ああ。日本の室内での防寒着だ。アキラに教わって取り寄せた物をオスカーにもやったが、以来この部屋にいる時はずっと着ているな」
「あー、オスカー寒がりだもんなぁ。お、こりゃ確かに暖かいわ」

ハンテンってやつに袖を通し、靴を脱いで足をこたつの中につっこむと全身がポカポカと温まってくる。

「うわー、こりゃいいな……ここから出たくなくなりそうだ。お前、この状態で仕事していて嫌になんねぇ?」

テーブルの上には他にもブラッドが使っていただろうノートパソコンやタブレット、数枚の書類が置かれていて、昼飯作るまでは仕事してたんだろうってのは想像ついた。

「適度に温度の調節はしている。あと、俺が休みの日に仕事をしていた原因の一端は貴様にもあるのだが」
「おっと、悪ぃ。報告書にミスがないか確認、な」

下手に小言が続かねぇよう、報告書を取りだして内容をチェックする。大丈夫なはず、だ。多分。

「確認したぜ、大丈夫なはずだ。これ、ここの書類の上に乗っけて大丈夫か?」
「ああ。それでいい。ポトフが出来たから、自分の分は自分で持って……あ、こら」

多分自分用にブラッドが手にしていた、ポトフとパンの入った皿をサイコキネシスでここまで運び、ついでにもう1セット分もサイコキネシスで運んだ。
呆れた顔でブラッドがフォークとスプーンだけ二人分手にしてこっちに来る。

「軽率に能力を使うなと何度言えば」
「他のヤツがいない時くらいいいだろ。ほらほら冷めねぇうちに食おうぜ」

流石に熱々のポトフを食いながらだと暑くなりそうだと、ハンテンを脱いでこれまた能力でソファに置く。

「…………お前がこたつとハンテンを使うようになったら、その能力との合わせ技でろくにこたつから出て来なくなりそうだな」
「いやー、ちょっとこの温かさは魅力的だろ。自宅用に買うのはありかもな」

ウエストの研修チーム部屋でも勿論いいんだが、あえて自宅と口にした意味をブラッドが気付くかどうか。
表情に変化はなかったが、僅かな沈黙の後に発した言葉は心なしか弾んでいるように聞こえた。

「……もし、本当にお前が自宅に置くつもりなら、三分の二は俺が出してもいい」
「半分で十分だっての。じゃ、買うかー。こたつの脚が長めのやつな」
「探してみよう」

これは意味が伝わったな。次、オフが重なるのっていつだっけ。
それまでにこたつを調達出来るといいなと思いながら、熱々のポトフを堪能した。

[Brad's Side]

「……アイツ、また報告書の提出をしていないな」

共有スペースについ先日置くようにしたこたつに入りながら、他セクターからの研修報告書を纏めていると、ウエストセクター分だけが見当たらなかった。
念の為に他の書類の間に紛れていないかを確認するが、やはり見当たらない。
キースがまだ提出していないということだろう。
今日はオフだが、少しだけ仕事を片付けておこうと、昨日が提出締め切りだった分を確認している。
恐らく、俺が休みであるのをいいことに提出を遅らせるつもりだろうと、キースに電話をする。
確か、今の時間はウエストセクターでトレーニングルームを使っていたはずだ。
数度のコールで、キースが電話に出た。

「はいよ」
「キース。貴様、昨日締め切りだった報告書を提出していないな? 今日は一日サウスの研修チーム部屋にいるから、休憩に入ったタイミングにでも置きに来い」
「ええ……お前、今日休みだから明日でいいかと思ったのに」
「今日のうちに出せ。いいな」
「ちっ……わかったよ。昼の休憩入った辺りにそっち行くわ」
「ああ」

キースとの電話を切り、時計で時間を確認する。
昼頃にキースが来るなら、二時間はこのまま他の仕事をすすめて、その後昼食を作ることにするか。
念の為にキースも食える量にしておこう。
食わなければ、残りを俺の夕食に回せばいいだけの話だ。
ウエストセクター以外の報告書を次々と確認し、過去の報告書と照らし合わせ、データを纏めていく。
黙々とこなしていると、予め仕掛けて置いたアラームが鳴り、昼が近いことを知らせる。
一旦、ノートパソコンを閉じ、軽くタブレットと書類と一緒に纏め、キッチンに向かった。
体が温まるようポトフでも作るか。
まだ料理に慣れていなかった頃、適度に野菜とウインナーを切って弱火で煮込むだけだから簡単だとキースが教えてくれたものだったな。
飲食でのバイト経験が豊富なキースはあれで結構色々なものを作れる。
ただ、元来面倒くさがりだから、ここ数年は積極的に料理しているところをあまり見なくなったが。
具材を切って、鍋で煮込み、その間に付け合わせのパンを軽くトーストしようとしたタイミングで、キースが共有スペースに入って来た。
少し予想より早いが、まぁまぁ良いタイミングだ。

「ああ、来たのか。ちょうど昼飯にポトフを作っていたところだが、お前も食っていくか?」
「お、食う食う。今日寒いから外出るの億劫だし、昼飯どうしようかと思ってたんだよな。こんな日だとタワー内にある店は絶対混むしさ。で、これ何だっけ? 前に教えて貰った気がするけど、名前出て来ねぇんだよな」

キースがこたつを指差して尋ねてくる。
そういえば、数日前にコイツが部屋に来たときにはまだ置いていなかったか。

「『こたつ』だ。日本の暖房器具の」
「あ、それだ。お前が48手やってみたいとか言ったときに、日本人の小柄な体格ならともかく、オレたちの体格だと使っても試すのはキツそうだってなったやつな」
「……他に言うことはないのか。昼から出す話題でもないだろう」

こたつを教えたのも、48手を教えたのも確かに俺だが、人に聞かせられない内容で思い出すのもどうなのか。

「思い出しちまったんだから仕方ねぇだろ。他のヤツラもいねぇんだからそんくらい見逃してくれって。結局買ったのかよ」
「単純に暖房器具としてな。もう少しで出来るから、こたつに入って待ってろ。それと今のうちに報告書にミスがないか確認しておけ。寒ければ、そこに置いてあるハンテンを着るといい」
「ハンテン? これも日本のか?」
「ああ。日本の室内での防寒着だ。アキラに教わって取り寄せた物をオスカーにもやったが、以来この部屋にいる時はずっと着ているな」

こたつを導入したのも、オスカーが寒がるからという理由も大きい。
余程気に入ったのか、最近は気付けば自室よりもこの共有スペースでこたつに入って過ごしていることも多いし、眠る前も心なしかこたつから出るのを名残惜しそうにしている。

「あー、オスカー寒がりだもんなぁ。お、こりゃ確かに暖かいわ」

キースが置いていたハンテンを着て、靴を脱いでからこたつの中に入る。
キースも寒がりというほどではなくとも、煙草で血行が滞ってることがあるのか、たまに指先や爪先が冷たい時があるから、こたつとハンテンによる効果は大きいのかも知れない。
あっという間にテーブルに頭を乗せて、気の抜けた緩んだ表情になる。

「うわー、こりゃいいな……ここから出たくなくなりそうだ。お前、この状態で仕事していて嫌になんねぇ?」
「適度に温度の調節はしている。あと、俺が休みの日に仕事をしていた原因の一端は貴様にもあるのだが」
「おっと、悪ぃ。報告書にミスがないか確認、な。……確認したぜ、大丈夫なはずだ。これ、ここの書類の上に乗っけて大丈夫か?」

キースが慌てて頭を起こし、持参していた報告書に目を通す。
キースの指先が示したのは、他セクターの研修報告書がある書類の場所だったから、頷いて了承の意をあらわす。

「ああ。それでいい。ポトフが出来たから、自分の分は自分で持って……あ、こら」

手にしていた、器によそったポトフとパンを並べた皿がふわりと宙に浮き、そのままこたつのテーブルまで移動したかと思うと、さらにキースの分として用意していた分も同じようにサイコキネシスによって移動された。
キースが移動させなかった、二人分のフォークとスプーンだけ持って、俺もこたつへと行き、キースに渡しながら忠告する。

「軽率に能力を使うなと何度言えば」
「他のヤツがいない時くらいいいだろ。ほらほら冷めねぇうちに食おうぜ」

キースがハンテンを脱ぎながら、そう促したが、その脱いだハンテンもまた能力でソファに落とされたのをみて、つい溜め息を吐いてしまう。

「…………お前がこたつとハンテンを使うようになったら、その能力との合わせ技でろくにこたつから出て来なくなりそうだな」
「いやー、ちょっとこの温かさは魅力的だろ。自宅用に買うのはありかもな」

ウエストセクターの研修チーム部屋ではなく、自宅と言ったのは恐らくこたつを見た時に口にした理由のせいか。
……当たり前だが、研修チーム部屋のこたつを使って、コイツといかがわしい真似をするつもりはない。
だが、キースの自宅とあれば話は変わってくる。

「……もし、本当にお前が自宅に置くつもりなら、三分の二は俺が出してもいい」
「半分で十分だっての。じゃ、買うかー。こたつの脚が長めのやつな」
「探してみよう」

確か、脚の長さを調節出来るタイプのこたつもあったはずだ。
二人で購入するなら、少し値段が上がってもキースも文句は言わないだろう。
今日の仕事を片付けたら、カタログで確認しようと決め、ポトフを口にした。

 

お題が『隙』『ハンテン』『燗酒』だったので、『ハンテン』を選択して書きました。
ただ、キャプションにも書きましたが半纏というより、こたつの話に。
(途中で気付いたけど、修正する余裕までなかったので通した)
書きかけのネタでキスブラが48手にチャレンジするというのがあるのですが、そっちでこたつ絡みの体位どうする?みたいなネタがあったので、つい絡めてしまいましたw
この後、何食わぬ顔でキースの自宅用のこたつを購入し、そっちでイチャイチャするパターンです。
ただ、180cm超えの男×2がこたつでイチャイチャするには、こたつの脚の高さあるやつじゃないと大変だと思うw

 

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