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フェイス第三話元ネタによるキスブラ<エリオスライジングヒーローズ・キスブラ>

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タイトル通り、フェイスの第三話を元ネタにしたフェイス視点によるキスブラ。

一番最初に手慣らしに書いてみた話。キースとフェイスの事故チュー有。

初出:2020/09/20(書いたのは8月半ば)

文字数:1603文字

 

ブラッドは昔から浮いた話の一つもない。
真面目が服を着て歩いているような兄は、常に冷静でどこから見ても隙がなく、幼い頃こそそんなブラッドが憧れだったけど、いつからか面と向かって話すだけで息が詰まるような相手になっていた。
特に俺もヒーローになってからというもの、口を開けばヒーローとしての心構えだの、責任感を持てだの、そんなことばかりだ。
全てをヒーローとしての立場に捧げているようで、プライベートなんてどこまで楽しめているのか。
そんな人生歩んでつまらなくならないのかな、なんて思っていた。
けど、こんな切欠で浮いた話が出てこない理由の一端を知るなんて思わなかった。

――ブラッド?

酔っ払ったキースが妙に甘ったるい響きでその名を俺に向けて呼んだかと思えば、肩を貸そうと近寄ったところでいきなり奪われた唇。
酒臭い舌がそのまま無遠慮に入って来て、口の中を弄り始めた時には流石に思考が吹っ飛んだ。
キスだって、それ以上のことだって経験はある。だからこそ分かってしまった。
悪ふざけとは違う。
口付けた相手が自分に応じてくれるという確信を持ってる動きだ、と認識した瞬間に我に返り、慌ててキースを引き剥がした。

――俺、ブラッドじゃないんだけど。
――おぉ、似てるからわからんかった……。

ない。色んな意味で有り得ない。
結局、その後連絡したブラッドが改めてキースを連れて帰ってくれたけど、何か顔に出てしまっていたのか、ブラッドが訝しんでいた。

――どうした? こいつに何か言われたか?
――いや、言われたっていうか……。

あんたの名前を呼んだ上にキスされたんだけど、どういうこと?と喉元まで出かかった言葉は結局飲み込んだ。
訊いたところで答えられても正直困る。
どう反応していいかわからない。

――こいつは飲み過ぎると記憶が飛ぶ。何を言ったかは知らんがまともに取り合わん方がいい。後でキースに聞いたところでまず覚えていない。
――え、何それ。性質悪い。……そんなまともに取り合わない方がいい相手を、忙しいあんたがわざわざ毎回迎えに来てあげるんだ? 優しいね。
――優しさではない。放置しておくとヒーロー全体の評判を落としかねないからだ。飲むのであれば節度を弁えろとは日頃から言っているんだが……。
――ああ、きかないわけね。

だろうね。どんなに酔い潰れても絶対迎えに来てくれる相手がいるなんてのが前提にあれば、そりゃ甘えちゃうでしょ。
多分、キースが酔い潰れるまで飲むのって、ブラッドにも原因あるんじゃないかな。
ブラッドに、いやキースにもその自覚はなさそうだけど。

――何なら、俺がキースを連れて帰ってもいいけど。ブラッドに連絡しろって言われたからしただけで、どうせ部屋は一緒なんだし。
――いや、いい。キースに頼まれたのは俺だ。車に乗せてさっさとタワーに戻る。
――そ。お疲れさま。じゃ、後はよろしく。
――フェイス。お前もあまり遅くならないうちに帰れ。
――はいはい。

心なしか、キースの身体を支えるブラッドの手に力が入ったのには気付かないふりでその場を離れた。
今夜、遊ぶ気はすっかり削がれてしまったけど、このまま帰る気にもなれない。
ブラッドが車で来てるってなら、ちょっと時間潰してから帰ろうかな。
それなら二人とは部屋で顔を合わせずに済みそうだし、おチビちゃんも寝てるはず。うん、決めた。そうしよう。

「それにしても……趣味悪すぎでしょ」

どっちが、じゃない。両方ともだ。
それとも、人は自分にないものを求めるとかああいうことなんだろうか。
いや、無理。理解出来ない。ていうかしたくない。
そもそも身内のそういう事情なんて知りたくなかった。
いつだったかトレーニングルームで見かけたブラッドやキースの身体が脳裏に浮かんだところで慌てて首を振る。

「やめやめ。もっと面白いこと考えよ」

とりあえず、まだ触れた感触が残っている唇の違和感を消すために、何か飲もうと開いてる店へと足を進めた。

 

最初に書いたキスブラ話で、フォロワーさんとの会話で思いついたネタです。
(フェイスと一緒にいた女の子たちの存在はスルーで!)
紅月オンラインオンリーが近かったので、そっちの原稿やるためにも、とりあえずキスブラ書きたい衝動をこれで収めとこうと思ったのに、収めきれずに腐れ縁の~を書いたのでした。
(そして、紅月オンラインオンリーで新作を出すのを諦めた……)

 

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