当時、Web拍手用に書いた話。朝のちょっとした一幕。
初出:2003年頃
文字数:697文字 裏話は特になし。
さっきまで近くにあったはずの体温を探ろうとしたけど届かない。
やけに静かな空間に違和感を覚えて、目を開けたらいなかった。
「あれ……? 喬志?」
名前を呼んでみても答えは返ってこない。
帰った? いや、今日は夕方までは予定は入ってなかったはず。
何か急に仕事でも入っちゃったかな。せっかくおれは一日オフなのに。
ちょっと残念な気分でベッドを降りたら、玄関のドアが締まる音。
「喬志?」
「んぁ? あぁおきたの。オハヨー」
「……どうしたの、それ」
喬志が持っていたのは、何か色々入ってる買い物袋。
何か、喬志のイメージと釣り合わなくて、ちょっと変な感じ。
「あんたオフだしー。俺も夕方までは開いてるしー。たまにはー、何か作ろっかなって……ちょっと。何よ、その顔」
「え? 何かついてる?」
「すんごい緩みきった顔。今にも溶けそう」
「えー。だって嬉しいもの。……緩んでいてもいい男でしょ?」
「ホントのいい男なら自分でゆわな……ん……」
余計なことは言わせないように、口で口を塞ぐ。
せっかく可愛いこと言ってくれてるのに、もったいないからね。
口を離した途端、軽く睨まれちゃったのくらいはご愛嬌。
「朝ご飯作ってくれるんだ?」
「……そ、思ったんだけど……やめようかしら」
「じゃあ、おれは喬志が食べたいなぁ」
そういうと、盛大なため息が帰ってきた。
時間限られてるんだから、有効に使いたいでしょ?
「……ばーか」
「ダメ?」
「いーけど、俺今日撮影だから、跡つけないでね」
「……努力するよ」
おれの為に朝食を作ろうとしてくれた喬志を思って、理性が飛ばなければの話だけどね。