最初、birdie関係のお題で使っていた話だったように思うのですが、お題が進められなさそうで単独で置くようにしちゃった話。
雅葉(この二人のカプ表記これで良いのかな? 柊葉?)のデート覗き見からの。
初出:2003年頃
文字数:1386文字
珍しい日もあるもんだ。
お互いが丸一日オフの今日、喬志が朝から植物園に行こうと誘ってきたことにも驚いた。
だけど、それ以上に驚いたのは、平日のせいなのか、他にまったく人がいないとはいえ、髪に触れたり、指を絡めてみたり、挙句に軽く耳に口付けを落としたりしても、何にも抵抗してこない。
普段なら外では勿論、二人きりの時でさえ、こんなにいちゃつかせてくれることなんてそうはないのに。
「ねぇ、喬志」
「ん~? なぁに~?」
「いったいどうしたの? めずらしいじゃな……」
「しっ! ちょっと声出さないで」
いきなり、手で口を塞がれて、木の影にぐいっと押しこまれて。
喬志が無言で指差した方を見ると……雅人と葉くんがいた。
そこそこ離れてるから、会話の内容は聞こえなかったけど、二人共随分と満ち足りた表情をしてる。
そういえば、今日は彼らもオフだったんだっけ。……まさか、これって。
「んふふ~。デート現場発見」
「……喬志。もしかして、あの2人がここにいるの知ってたね?」
「そうよ~。昨日~、帰る時によーちゃんがTELでこっそり柊さんと話していたのが聞こえちゃった~」
「それで、デバガメ? 趣味悪いなぁ」
いちゃつかせてくれたのは、二人を探してて、心ここにあらずだったから?
……それって、ちょっと傷つくな。
まぁ、気にならないといえば、嘘にはなるけど。
でも、折角の休日で二人きりだよ?
人のデート現場見て楽しむ前にいくらでもやることあるでしょう?
そう考えると何か悔しくて、喬志を後からぎゅっと抱きしめた。
振りほどけないほど、強く。
さすがにこれには抵抗してきた。
「ちょっと、何すんのよ~。こんなとこで何考えてんの!」
「声。そんなに上げたら、二人に気付かれるよ? 静かにして」
「……アンタがそんなことするからでしょうが! ……っ!」
潜めた声が余計に面白くない。
反応させたくて、耳に舌を這わせると抱きしめた身体がびくりと震えた。
「だって。折角のお休みなのに、喬志が俺の方みてくれないから」
「……拗ねてんの、きょーいち」
「当たり前じゃない。人のいちゃつきぶりを見るより、俺は喬志に触っていたいもの」
ややあって。
腕の中でため息をつくと、喬志はポンポンと俺の腕を叩いた。
「はいはい。俺が悪かったデス。おうちに帰りマショ」
「……ホントに反省してる?」
ちらっと覗き込んだ顔が、まだちょっと名残惜しそうなのは気のせい?
「しーてーまーす」
「……ほんとにぃ?」
抱いていた腕を解いて、正面から見ると青い瞳が真っ直ぐに俺を見ていて……ぐっとそれが近づいたかと思ったら、唇に柔らかい感触。
キスされたんだと気付いたのは瞳が遠ざかって、くるりと後を向いた後。
「え……」
「続きは帰ってからネ」
喬志がすたすたと歩いていくのを、しばらく呆然と眺めていた。
……まさか、まさか外でキス、してくれるなんて。予想外なのもいいところだ。
「ちょっと~。いつまでそうしてんのよ。置いてくわよ~」
「え……あ、ちょっと待ってよ、喬志」
喬志の後を追いながら、今日は意識がなくなるまで続きを楽しもうと決めた。
あの二人に負けないほど、満ち足りた顔をさせてあげるよ?
俺に火をつけたこと、後悔しても遅いからね。
俺の可愛い気まぐれな子猫ちゃん。
昼間は受に振り回されたり強く出られない攻が、夜になると逆転するの大好物です。
birdieのお題の一つだったと思うんですが、他のは書けないままに終わったので(そして、今となっては元のお題もわからない……)単独で置くようになった話。
喬志本人は無自覚だけど、かつて恭一のセフレだった柊さんが葉くんとデートするのがどんな感じかちょっと気になってた、というのもあるのかなと。
(本人は葉くんが幸せそうなので、そこからの好奇心と思ってる)
これのライターさんである、Studio May-beさんにそこそこ影響受けてるのもあって、久々にリプレイしたさはあるけど、もう20年前のゲームなんですね、これ……。
時が経つの早くて怖……。