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雨の匂い<月刊少女野崎くん・みこかし>

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社会人で同棲してる、ほんのり甘いみこかし。

雨の匂いがお題だけど、雨絡んだの最初の方だけだった。

2015/10/02のワンライで書いた話です。

初出:2015/10/02

文字数:1678文字 裏話知りたい場合はこちら

 

「何か、雨降ってきそうな匂いしない?」

「へ?」

 

ベランダに置いてあるプランターに水をやりに行っていた鹿島が、帰ってくるなりそんなことを言った。

窓越しに外を眺めてみると、確かに何となく暗いし、どんよりとした雲も見える。

けど、雨が降る匂いと言われても、そっちについてはよく分からなかった。

俺も窓を開けてみたけど、やっぱりイマイチ分からない。

何となく空気が湿っている感じがするってくらいだ。

 

「そうかあ? じゃ、今日傘持っていった方がいいのか。並ぶし、買い物して帰るしで、あんま荷物増やしたくねぇんだけどな」

「御子柴はちょっと嗅覚弱いよねぇ。まぁ、一般的に男性より女性の方が嗅覚鋭いとはいうから、そのせいかも知れないけど」

「俺が弱いってよりは、鹿島が敏感なんじゃねぇの」

 

言いつつ、ちょっとドキドキしてしまうのは、前にどこだかの大学の研究で性格に難がある人間は嗅覚が鈍い、なんて発表されていたっていうのを読んだ記憶があるからだ。

いや、俺は難ありってほどじゃ程じゃねぇって思ってるけど。

何だかんだで、鹿島と一緒に住むようになって三年。

トラブルらしいトラブルは今のとこねぇし、かつての親友で現恋人って関係の変化はあれど、仲良くやってきてると思うし。

 

「……御子柴」

「何だよ」

「別に、御子柴の性格に難があるなんて思ってないから、そんなびくびくしなくても」

「だっ、そんなこと思ってたわけじゃねぇよ! というか、何だよ、おまえ、エスパーかよ!!」

 

考えてたことを言い当てられて、つい後ずさりしてしまう。

鹿島はたまーに妙な鋭さっていうか、勘っていうか、そういうの発揮する気がするんだよな。

 

「先週の休みに一緒にお茶やコーヒー買いに行った時に、ちらっと聞こえたじゃない。だから、もしかしたらーって思っただけ。可愛いなぁ、御子柴」

「うるせぇよ」

 

言われて思い出した。

店で茶葉を選んでいる時に鹿島にどっちの香りが好き?って、香りを確認出来る茶葉のサンプルを差し出されたけど、正直よく分からなかったんだよな。

流石に、アップルティーとか、アールグレイとか、はっきりした香りがついているのは分かるけど、その時差し出されたのはダージリンで、物によっては違いが分かるのもあったけど、鹿島が最後に絞った二つの違いが俺には分からなかった。

結局、選ぶのは鹿島に任せて、レジで会計をしているときに、店内で女子高生と思しき女二人が大きい声で会話していたのが、それだ。

 

――何かさー、この前ネットで見たけど、性格に難ありのやつって嗅ぎわける能力が通常よりも低いんだってー。こういうお茶っ葉の微妙な香りの違いとかも分かんなさそうだよねー。

――マジで!? じゃ、私がシャンプー変えても全然気付かないような彼氏、ダメじゃん!

――あ、それないわー。というか、あんたの彼氏、実際難あるじゃん。

 

何となくそれが引っかかって、あとでネットで検索してみたけど、一応眉唾物じゃなく、研究結果として出ているっていうのを見ると、やっぱり何となく気になる。

鹿島が大抵のことはさらっとこなすようなチートっぷりを発揮するのは今に始まったことじゃないけど、こいつは俺の何がよくて一緒にいるのかって、時々思わなくはないからだ。

 

「気にしなくていいのに、気にしちゃうのが御子柴だよねぇ。大丈夫だって! 気にしてる時点で性格に難あり、なんてならないから」

「小心者で悪かったな」

「違うよ。あのね、分かりにくいかも知れないけど、私は御子柴のそういうところ好きだからね? そうじゃなきゃ、一緒にいたりしないよ」

 

鹿島が俺の傍にきて、ぽんぽんと背中をあやすように叩いてきた。

 

「あ、傘、邪魔なら持っていかなくてもいいよ。もし、雨降ったら、帰りに駅まで迎えにいくから」

「……おまえ、俺を甘やかしすぎじゃねぇの」

「好きな人は甘やかしたくなるもんでしょ。大体、御子柴だって甘えさせてくれるじゃない」

 

だから、私は御子柴じゃなきゃダメなんだよ、って鹿島が言い終わる前に、鹿島に腕を伸ばして抱き締めた。

鹿島じゃなきゃダメなのは、俺もだって小さく呟きながら。

 

 

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