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Tea for Two<月刊少女野崎くん・野堀>

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ホワイトデーの野堀。

※二人が大学生で付き合っている前提での話。

初出:2015/03/06

文字数:2151文字 裏話知りたい場合はこちら

 

「先輩。手作りのケーキ一緒に作ってみませんか」

「はぁ?」

 

野崎がそう言ってきたのは、ホワイトデーの数日前だった。

バレンタインデーもホワイトデーも、二人でそれぞれ相手に渡そうと決めて、俺はバレンタインデーには、美味いと評判になっている店のチョコレートを買ってこいつに渡したが、相変わらず女子力の高い野崎は、バレンタインデーはフォンダンショコラの手作りという手段で来た。

普段の料理が美味いことから、容易に想像はついていたが、その手作りのフォンダンショコラも凄く美味かった。

だから、ホワイトデーの分も密かに楽しみにしてはいたが、一緒に作ろうと言われたのは正直予想外だった。

 

「一緒に作るのか? 俺と? 何でまた」

「俺が先輩の手作りのものを食べてみたいからです」

「あー……そういうことか。でも、俺お菓子なんて流石に作った経験ねぇぞ。精々、ラーメンとかチャーハンぐらいで」

「だから、一緒に作ろうかと。それなら、手順も分かるでしょうし、俺も先輩の手作りのものを食べられますし」

 

野崎はご丁寧に数枚のレシピを用意してあったらしく、それを床の上に並べていく。

こういうところ、ホントまめだよなぁ、こいつ。

 

「なるほどなぁ……ホワイトデーって、クッキーとかキャンディーが定番だっけか、あれ?」

「良く言われてるのはその辺ですかね。でも、最近は特別どのお菓子がっていうのでもないような」

「だったら、とりあえずあまり失敗しなさそうな物にしときたい。おまえにわざわざマズいもん食わすのもアレだしな。ケーキって難しくねぇ?」

「炊飯器使ったケーキとか、失敗も少ないですし、意外に簡単ですよ」

「炊飯器!?」

 

炊飯器でケーキって作れるもんなのか。

ああ、でも高温になるし、温度調節とかわざわざ途中でしたりしなくて済むから、レシピに従って作れば良い感じになるのかな。

野崎が並べたレシピの中には、今言ったように炊飯器を使って作るものも幾つかあった。

目を通してみると、確かに思っていたよりは取っつきやすそうだった。

 

「へぇ……なるほどなぁ。こういう風に作れたりするもんなのか」

「どうです? やってみませんか?」

「いいぜ。で、いつ作る? ホワイトデーの前日に作って当日食うか? 前日だったら、泊まりでも構わねぇぞ」

「ぜひ、それで」

 

そうして、人生初のケーキ作りの段取りが決まった。

 

***

 

「……おまえ、ホント用意いいよな」

「お菓子作りといえば、エプロンを用意するのはお約束ですから。似合いますね、先輩」

 

ホワイトデーの前日。

既に野崎は材料や使う道具も一通り準備していたし、さらにはエプロンもしっかりと俺の分まで用意されていた。

よく、喫茶店とかでウェイターが着ているような、白いシャツに黒いベスト、腰から巻き付ける丈の長めのエプロン、さらには襟元に付ける蝶ネクタイまであった。

一通り着替え終わったら、案の定、俺と同じような格好をした野崎がデジカメを片手に待ち構えている。

 

「あ、ケーキ作りの前に写真撮らせて下さい」

「資料用かよ! おまえだって、同じ格好してるのに。……まぁ、いいけどな」

 

こういうこともいい加減慣れてはいるから、適度に正面や横向き、後ろ側からと次々撮っていくのを好きにさせる。

 

「ありがとうございます。じゃ、早速作り始めましょうか」

「おう」

 

先日、選んだレシピを前に二人で材料を切ったり、混ぜたりしていく。

今回選んだのはチーズケーキだが、砂糖って結構な量使うもんなんだなぁと驚いた。

 

「ケーキって、やっぱり砂糖がっつり使うんだなぁ」

「割りとどれもこんなもんですよ。最初はびっくりしますよね」

「カロリー高くなるわけだよな、これじゃ」

 

材料が均等に混じるように、様子を見ながら少しずつ混ぜていく。

一通り材料を混ぜ終わったところで、ボウルの中身を野崎に見せた。

 

「こんな感じで大丈夫そうか?」

「ええ、問題ないです。じゃ、炊飯器に入れましょう。あ、裏ごししながら入れますんで」

「了解っと」

 

言われた通りに、炊飯器に混ぜ終わった生地を、ざるを使って裏ごししながらゆっくり流し込む。

どうなるのかちょっと楽しみだ。

 

「じゃ、これでスイッチを入れてっと」

「あとは、しばらく待つだけですね。……待つのに、結構時間もかかりますし、先輩を先に頂いていいですか」

「……言うと思ったよ。これ着たままか?」

「はい、スラックスだけ脱いで貰えれば」

 

お互い、ウェイター風の格好をするって時点でちょっと予想もしていた。

正直、俺も野崎の格好が決まっていて、ついケーキを作りながら目がいっていたところもあったし。

多分、それはこいつも同じだったんだろう。

 

「いいぜ。ソファか? ベッドか?」

「このままキッチンで」

「げ。マジかよ」

 

体勢がキツくなりそうな予感だ。

野崎とは体格差あるから、ソファやベッドで身体支えられないってなると、結構キツくなるときあるんだけどな。

 

「コスプレは格好に合った場所でするのが興奮します。……ちゃんと先輩の身体は俺が支えますから」

「あー、もう分かった。好きにしろよ。ホワイトデーだしな」

 

あっさり許してしまうあたりが俺も甘い。

嬉しそうな顔をして抱き付いてきた野崎の頭を軽く撫でてやる。

出来上がったケーキを食うのは、きっと遅くなりそうな予感がした。

 

 

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