48 2016/12/30(コミックマーケット91二日目)発行
ジャンル:月刊少女野崎くん・堀鹿(R-18)
仕様:新書判・104P・800円・完全書き下ろし
大学生で既に付き合っている前提の堀鹿が夏休みを使って48手制覇にチャレンジしようという話で短編連作になっています。
話の主軸が48手なのに、コンセプトのせいかどうもエロというかアホな方向にw
体位によって文章量のばらつきがあったり、アホエロコメディが笑って許せる方でお願いします。
表紙&挿絵は山野さちさんに描いて頂きました。
四十八手チャレンジ九日目『そろそろ道具も~寄り添い+炬燵がかり』
四十八手チャレンジ十六日目『乗り物繋がり?~立ち花菱+宝船+流鏑馬』
「去年も思ったけど、大学生の夏休みって色々なことにチャレンジするチャンスですよねぇ」
「まぁ、こんな長い休みなんて、社会人になったらまず無理だもんな。定年退職後とかなら可能だろうけど、チャレンジする気力と体力がなさそうだ」
夏休み前の大学の講義がひとまず終了となったその日。堀先輩と私は先輩の家で、先輩が持ってきた旅行パンフ等を眺めていた。
旅行が趣味の一つだっていう先輩は、せっかくの長い夏休みだからどこかに行ってみないかと誘ってくれたのだ。流石に学生の身分で、あまり金額に余裕がないこともあって、私たちが行ける場所となると大分限られてはいるけども。
「鹿島。夏休み、どっか行きたいところあるか?」
「うーん、あんまり遠いところだと現実問題キツイですよね」
「まぁ、金銭的にな。交通費や宿泊費までならどうにかなっても、肝心の現地で遊ぶ分がどうにもなぁ。日にちは余裕があるのに、金がないってのが学生のツライとこだよなぁ」
先輩も私もバイトはしているんだけど、演劇研究会の公演が近くなったりすると、バイトに出られる日数がどうしても減ったりするから、バイト代は雀の涙だ。
この大学を選んだ理由の一つは演劇研究会にあるし、学生の本分は勉強だってことを考えても、そこら辺は仕方がないと割り切ってはいるつもりだけど、こういうところでちょっと残念だなとは思う。
「だったら、比較的近郊で一泊か二泊して楽しむってのが無難な線ですか?」
「そうだなぁ。ああ、今更だけど、おまえ泊まりで旅行って大丈夫か?」
「やだなぁ、先輩。それこそ今更ですって。今だって、先輩の家によく泊まりに来てるじゃないですか。それでダメだって言われると思います?」
海外とかならともかく、国内、それも近場なら多分うちの親は二つ返事で了承してくれる。相手が先輩とだと告げてもそうだろう。
「それもそうか。おまえ、信用されてんなぁ」
「先輩が信用されてるんですよ。付き合い始めの頃、律儀に家に挨拶に来てくれたじゃないですか」
「ああ。そりゃ、一言言っておかないと思ったからな」
先輩と男女として付き合うようになった直後に、先輩はちゃんとうちの家族に挨拶しに来てくれたのだ。
あれが良かったのか、うちの家族には結構先輩の評判は上々だったりする。私との付き合いに関して、誠実に向き合ってくれる人だって認識されているらしい。
先輩も私も、大学からは実家から出て一人暮らしだから、お互いの家に泊まったりしたところで、言わなきゃ家族には分からない。それをわざわざ一言告げてくれたっていうのが、かえって良かったようだ。
「あとは旅行もいいですけど、どっちかの家でのんびりだらだらと過ごして行くだけってのもいいですねぇ。で、今回使わなかったお金を次の機会に回して、その時にちょっと贅沢する、みたいな」
今でも、お互いの家をそこそこ行き来してるし、一、二泊くらいならよくするけど、どちらかの家に数日住むような感じでも、ちょっとした夫婦感覚が楽しめて良いかも知れない。
「……なるほど。そりゃ一理ある。今回のんびり過ごして、金貯めて別の機会に改めて旅行っていうのはありだな。まぁ、そうなるとDVD借りてきて家で見たり、二人で料理作ったりか。なんだ、普段とあんま変わんねぇな」
「えー、良いじゃないですか。どっちかの家でしばらくのんびり過ごすってのがポイントなんですよ! 講義もないし、今日は帰らなきゃダメってならないのが最高じゃないですか」
「けど、普段ともうちょっとこう違うのも何かやりたいよなぁ。うーん……あ」
「何か思いつきました?」
先輩が何か思いついたみたいだったから水を向けてみると、ニヤリと口元だけが笑った。
……何だろう。上手く言えないけど、胸が妙にざわついた。ちょっと嫌な予感がする。
「鹿島。おまえ、四十八手って分かるか」
「……お相撲のじゃなくて、夜の意味合いで、ですよね。細かくどんなのがあるかまでは知りませんけど、そういうのがあるっていうくらいは、一応」
しばらく前に、先輩とは恋人同士と言える関係になったし、年相応と言っていいのか分からないけど、身体の関係もある。セックスに慣れたとまでは言えないけど、その手の話を交わすことへの抵抗は薄くなっていた。
けど、どうしてこの流れでいきなり四十八手の話になったのかが頭の中で繋がらない。
「せっかくだから、この夏休みで制覇してみるか。四十八手」
「……はぁ!?」
「いや、ちょっと気になってたんだよな。でも、少し調べてみたら、凄ぇ無茶苦茶な体位とかあるから、普段やるのは負担になっちまうかなぁって思ってたんだが、のんびり過ごすなら、多少負担になったとしても次の日を気にせず一日休めるだろ? ちょうどいいじゃねぇか。普段とも違うことにもなるし
「ちょうどいいって……」
思わず、間抜けな返事になってしまったのは、誰も責められないと思う。何がちょうどなんだろう。
夏休みの自由研究、大人バージョン……?と一瞬思ったのは口にはしないでおいた。
「さて、何から試してみるか」
しばらく先輩の家に泊まる準備をしてきた夏休み初日。
私たちは早速、二人で四十八手について調べていた。
机の上には先輩のノートパソコンと数冊の本。
ノートパソコンのブラウザでは四十八手に関する情報が掲載されているサイトを数カ所開きつつ、いくつかの図書館から借りてきた、これまた四十八手に関する本を二人で読んでいる。
私はインターネットで適当に検索して、四十八手の情報が掲載されているサイトを見ていけば十分だろうって思っていたけど、先輩の家に訪れてみたら、先輩は本も色々と借りてきていた。
私が泊まる準備をしていた間に借りてきたようだけど、これが演劇での資料集めに匹敵するような量で、いくら何でも気合い入りすぎじゃないですかと、内心軽く引いたのは内緒だ。
そりゃ、私も最終的には先輩の提案に乗ったからクチには出せないけど。
本を軽く確認していくと、市の図書館所蔵の本だけじゃなく、大学所蔵の本まであったことに、少なからず驚いた。
「大学の図書館にもあるんですね……こういうの」
資料といえばそうかもしれないけど、大学だと真面目な目的で借りる人より、邪な目的で借りる人が多そうな本ってイメージだから、よく図書館に入れたなぁっていうのが本音。
「そりゃあるだろ」
「借りるとき恥ずかしくありませんでした?」
「は? 大学にあるってことは借りても差し支えねぇってことだろ。人によっちゃ、江戸の性風俗で論文書いたりするやつだっているだろうし、何を恥ずかしがる必要があるんだ」
「いや、そうかも知れませんけど」
先輩、結構こういうところしれっとしてるんだよねぇ。
平然とした顔には動揺している様子も窺えない。
――堀ちゃん先輩って割りとむっつりっていうか、しれっとした顔して凄ぇことやりそうだよな、あの人。
いつだったか、私たちが付き合い始めたことを知った結月が、そんな言葉を口にしていたのを思い出す。
それとも、男の人ってみんなこんなところあったりするんだろうか。私は先輩としか性的な関係を持ったことがないから、他の男の人がどうかは分からないけど。
相変わらず黙々と読みつつ、時々何かをノートに書いている先輩を横目に、私も手元にある本の図を眺める。
四十八手というからには四十八パターンあるのは勿論分かってはいたんだけど、何というか、こう、この格好でいたすにはかなり無茶があるんじゃ?と思ってしまうような体位も意外にある。
気持ち良さとか感じる以前の問題というか、何を思ってこういうのを試したんだろう。やっぱり性に対しての好奇心なのかな。
体位というより、もうストレッチにしか見えないようなものをみると、最初にチャレンジした人はよくやったなぁと妙な方向で感心する。
逆にやりやすそうというか、改めてやるまでもなくやったことあったよね、これっていう体位もあった。
「しかし、江戸時代にはこういうもんが既に存在してたって考えると凄ぇよなぁ」
「まぁ、何だかんだで本能に絡んだことっていうか、子孫繁栄に繋がることではありますからねぇ。大体、現存している世界最古の小説が源氏物語ですし」
文学史上、重要な位置にある源氏物語も、本来は中々に過激な話だ。
「先輩」
「ん?」
「本当に全部やるつもりなんですか? こういうのも?」
実践するには無茶がありそうというか、気持ち良さ云々とかけ離れてしまいそうな体位を示して聞いてみたけど、先輩はあっさりと頷いた。
「一度試す分にはいいんじゃねぇの。良ければ今後も取り入れればいいし、微妙だったらもうやらなきゃいい話だろ」
「あぁ、それもそうですね。ところで、先輩は何をさっきからメモしてるんです?」
「ん? ああ、四十八手とはいうけど、全部が交合中の技ってわけじゃなく、前戯に含まれるようなものもあるだろ? だから、やり方によっては組み合わせられるんじゃねぇかと思って」
「あー、なるほど」
確かに夏休みが長いとはいえ、一日につき試すのは一パターンという形にしてしまうと、それこそ毎日セックスするような勢いになってしまう。流石にそれはしんどいし、生理だってあるから、連日ぶっ続けて、なんて無理な話だ。だったら、組み合わせられるパターンは組み合わせてしまった方が絶対いい。それに。
「……この辺とかで最後までするのはしんどそうですもんね」
ちょうど開いていたページにあった、『流鏑馬』っていうのを指差しながら言うと、先輩も頷いた。
「ああ。首に紐つけたまま最後までって集中出来ねぇだろうし危ねぇから、途中でちょっと試すぐらいが無難だろ」
流鏑馬は名前の通り、流鏑馬に見立てた体位だ。騎乗位の一種になるんだけど、男性の首に紐をかけて、それを女性が引っ張る形で動くから、紐の素材を考えないと首を痛めてしまいそうだ。
「というか、流鏑馬以外にも、紐を使うようなのがありますね。えっと、流鏑馬、首引き恋慕、達磨返し、理非知らず……の四つかな? 体位によっては、一本じゃ足りないですね。安全そうな紐をまず用意しないとダメじゃないですか?」
「だなぁ。安全そうな紐っていうと、柔らかい素材のタオルとか、マフラー辺りか?」
「あ、バスローブのウエスト部分を括る紐なんてどうでしょう?」
「おまえ、バスローブ持ってんのかよ。言っとくけど俺は持ってねぇぞ」
「あ、ないです。親は持ってますけど、流石に……」
「借りるにしても、使う理由を言えねぇだろ」
「ですよね」
いいアイディアだと思ったけど、この為だけに自分用のバスローブ買うのも気が進まない。
「あと、炬燵使うのはどうします? この時期に炬燵は暑いですよね」
「炬燵布団使わない状態でやればいいんじゃねぇの。布団かけるだけでも暑そうだ」
先輩の家には小さめの炬燵がある。今は夏だから仕舞い込んであるけど、使うときに出せばいい。
「取りあえず、準備が必要な紐使うやつや、炬燵使うやつは後回しにして……と。あ、これなんか、ベッドに腰掛けてやれるからいいんじゃねぇか? で、そこからベッドの上に寝っ転がって撞木反りに続けるってどうだ?」
先輩が『手懸け』のページと撞木反りのページを続けて私に見せてくる。
手懸けはソファや椅子に腰掛けた状態で、男性が女性の後ろに回る形の座位になるけど、腰掛けるのがベッドなら、確かにそのまま横にもなりやすいし、撞木反りも男性が女性の後ろ、というか下って言う方が適切かな。
女性を身体の上に乗せた状態で動くから、確かに続けやすそうではある。
問題は、撞木反り自体が動きにくそうに思えるとこだけど、実際やってみたらまた違うかも知れない。
「いいんじゃないですか?」
「よし。なら、まずはこれから試してみるとするか。ほれ、ベッド行け」
「え、これからって、今早速ですか!? まだ真っ昼間ですよ!?」
「いいだろ、休みなんだし。昼間にするってのもこういう時じゃなきゃ中々出来ねぇし。夕食までもまだ時間あるからタイミングも悪くねぇだろうが」
「そうですけどー」
ちらっと見た先輩の股間は既に軽く迫り上がっている。先輩が夏の部屋着にしているスウェット素材のハーフパンツって状態が分かりやすいから困る。
「もうー、しょうがないなぁ」
諦めてTシャツを脱ぎ始めた私も私か、と頭の片隅で思いながら準備を始めた。
***
「ん……あ」
背中から伝わる先輩の体温が高い。先輩の腕は私の胸と腰に回されていて、身体を軽く支えてくれながらも、敏感な場所を指先で転がすように刺激してくれている。
「後ろから抱くと触りやすいのがいいよなぁ。おまえの顔見にくいのが難点だけど」
「……っと、先輩は顔、好きです、ねっ……!」
「ん!」
少しだけ腰を浮かして、すかさず落とすと先輩の声が詰まった。が、一呼吸置いた後はお返しとばかりに、ベッドのスプリングを利用して、先輩に突き上げられる。
「あっ、あ!」
「女が上位になる体勢だからって、俺からリード取ろうたぁ、甘い」
「そん、なこ……うあ!」
あまり深い挿入になる体位じゃないけど、その分入り口近くにある敏感な場所を擦られるから堪らない。このままじゃ、先輩をイカせる前に私だけイってしまう。
「せん、ぱ……そろそ、ろ、体勢次のに、しません、か」
「……いいぜ。けど、一旦抜くのもなんだな。ちょっと腹に力入れとけ」
「はい……んんんっ!」
私がお腹に力を入れたのを確認した先輩が、中から抜けないように私の股間を掴むようにしながら、勢いをつけて全身をベッドの上に乗せる。
振動と敏感な場所に当たった指の衝撃につい派手な声を上げてしまう。
先輩も呼吸を乱して、少し身体が強張っていた。
ややあって、溜め息と共に先輩の身体から力が抜けたのが伝わる。
「あー……ヤベぇ。今のは危うく終わっちまうとこだった」
「終わっ……ても良かった気がします、けど」
「終わってたら、撞木反りやったことになんねぇだろ。初っ端からしくじるのもな。よし、そろそろ動くぞ」
「あ、はい」
ゆるゆると小さく動き始めた先輩に、私の方も少しだけ動くけど、これ女性上位って割りには、結構動くのがしんどいかもしれない。
堀先輩も私の身体を支えてはくれてるんだけど、自分の腕でも支えないと体勢をキープ出来ないし、大きくは動けない。
ただ、さっき体位を変えるときの衝撃が強かったのと、先輩のモノが当たる場所が弱い部分だから、小さな動きでも確実に快感が高められていった。
「ん、うっ」
「あー……しまった」
「何が、です、か。動……き痛かったですか」
ふと、背中側から舌打ち寸前みたいな先輩のぼやきが聞こえて、動き方がまずかったのかと心配になったけど。
「これ鏡に映してやればよかったな。おまえの家に行ったときに試せば良かった」
この先輩の家には全身を映す鏡がない。玄関に上半身が映る大きさの鏡はあるけど、部屋の備え付けで移動出来ないのだ。
そして、私の家には全身を映す鏡がある。実家から持ってきた鏡だし、当然ベッド近くへの移動は可能になっているけども。
「……私はその言葉を聞いて、今、試して良かったって思ったところです」
この体勢を鏡で見る気力は正直ない。先輩は絶対興奮するだろうって想像はつくけど、いたたまれなさすぎる。
「ま、まだ鏡に映して楽しめそうなもんもあるしな」
「も、そんなこと言っ……ん! あ、ちょっ、ダメっ」
先輩の指先が私のクリトリスを押しつぶすと同時に、中で強めに突き上げてきて。
「あ、あ、やああ!!」
「っ!!」
堪えきれずにお互いに達した。
脱力した身体を支えきれず、そのまま先輩の身体の上に体重を預ける。
……これであと四十六か、と先輩が呟いた言葉に、先は長いなぁと危うく溜め息を吐きそうになった。
四十八手チャレンジ九日目『そろそろ道具も~寄り添い+炬燵がかり』
「鹿島、そっち」
「はーいっと」
夏場だからと折りたたんでしまってあった炬燵を物置から鹿島と二人で運び出す。
今回のチャレンジはアレコレと技を組み合わせたりした結果、順調にこなせば二十四日間掛かるようになっている。
で、せっかくだから最初の十二日は俺の家で過ごしている間にこなし、後半の十二日は鹿島の家で過ごしている間にこなすことに決めてあった。
四十八手にチャレンジして今日で九日目。鹿島の家には炬燵がないから、炬燵を利用した技になる、『炬燵がかり』と『炬燵がくれ』は俺の家にいるうちにやろうって話になっていた。
部屋の中央に置いた炬燵は、流石に電源は入れないし、布団も使わない。でも、炬燵を利用しての技を試すには十分だ。
「で、今日はどっちを試します?」
「寄り添いやって、炬燵がかりってのはどうだ?」
「いいですよー。じゃ、早速」
「脱ぐとするか」
服を脱いで、軽く畳んで炬燵の傍に置いておく。炬燵の同じ場所に二人で入り込んで、素っ裸のままに軽く抱き合っていると、鹿島が小さく、あ、と声を漏らす。
「先輩。ふと思ったんですけど」
「ん?」
「昔の炬燵って、掘り炬燵ですよね? 江戸時代だと今みたいに電気炬燵じゃないし、それで炬燵使ってのプレイって結構……」
「……危ねぇな、考えてみると。それでも炬燵使ってやったって、執念にも似たもんがあるよな」
電気炬燵なのに加えて、最近のだとヒーター部分も薄いからまだしも、四十八手が出来ただろう、当時の炬燵事情で想像すると一歩間違うとしゃれにならない事態を引き起こしそうだ。
「そこまでして……あ、でも。江戸時代だと今みたいに核家族の形態じゃないですよね。部屋数も今より少ないけど、人数は多いって家も少なからずあったでしょうし」
「ああ。だったら、他の家族の目を盗んで夫婦がセックスするってなると……炬燵だと分かりにくいってのはあったかもな」
「スリルもあったかも知れませんね。見つかるかも知れないけど、こっそり……みたいな」
「少なくとも、訳分かんねぇ体位に比べれば、成立した理由は何となく納得いくよなぁ」
「ん……」
そんな風に会話を交わしながら、少しずつ与える刺激を強くしていく。
見つかるかも知れないけど、こっそり、というシチュエーションを想像しちまったのもあって、意外に興奮してきた。もしかしたら、鹿島もそうだったのかも知れない。
指を伸ばして触れた足の間が、結構潤んでいた。
「きっと、こんな風に素っ裸じゃなくて、上は着込んでて下だけ脱いでるとか、そんな状態だったんだろうな」
「です、ね。んっ、せんぱ……」
先っぽを鹿島の太股に沿わせて撫でる。滑らかで肌触りのいい感触に、つい呼吸を飲み込んだ。
「いっそ、今から上の服だけ着てみるか?」
「汗かき始めているのに嫌ですよ。冬場に改めてっていうならまだ考えますけど」
「そうだな。やってみて良かったら、炬燵使うシーズンにまたやってみるのもいいか」
「あっ」
鹿島の肩に軽く吸い付くと、びくんと身体が跳ねる。そろそろ大丈夫かと手探りで近くに置いといたゴムを取って、ちんちんに被せる。被せた状態で鹿島の足の間を撫でると、音が聞こえ始めた。
「いいか?」
「は、い」
そうして、二人で一旦炬燵から出て、俺が改めて炬燵に入って座ったところで、鹿島が俺の足の上に跨がる。
「あ、これ、あんまり派手に突き上げると太股が天板側にぶつかる、かも」
「結構、スペース狭いからな。そもそも、二人が同じ場所に足を突っ込む想定もしてねぇだろうし。気をつけるけど、おまえが天板に手をつきつつ、様子見て動くのを中心にした方が良さそうだ」
「はい。じゃ、挿れるのも私が」
「ああ」
鹿島の手が俺のモノを掴んで、自分の中へと導く。
体位としての騎乗位は特別好きって程でもねぇが、こうやって、俺のモノを持つ形で挿入するってところは結構好きだ。
ゴム越しでも十分に熱くなっている場所が、柔らかく先端から包んでいく。
「あ、ふ」
鹿島は炬燵にぶつからないよう、小さく身体を揺らすが、手を天板についているせいで、思っていたよりも音がキシキシと鳴る。
これ、絶対当時も家族を誤魔化したりとか出来なかっただろうな、なんて思いながら昂ぶっていく快感に身を任せた。
四十八手チャレンジ十六日目『乗り物繋がり?~立ち花菱+宝船+流鏑馬』
「今日は久々に三つこなすぞ。って、何だよその顔」
「いや、何か大変そうなものが混ざりそうだなって」
「まぁ、勢いがねぇとしんどいやつだと思うから、否定はしない」
「否定して欲しかったですね。いや、四十八手制覇するなら先にやるか後にやるかの違いでしかないですけど。で、今日は何をするつもりですか?」
四十八手は一種類だけにしてる時もあるが、大抵は続けて出来る組み合わせを何パターンか作ってある。
で、今日選んだのは。
「『立ち花菱』から『宝船』、でもって『流鏑馬』」
「船に馬ですか、どっちも図解見た時に大変そうだったような気がするんですが。あ、流鏑馬は紐使うやつですよね。ちょうど紐洗ったとこですし、柔軟剤増やしてみたので、前より少し当たりが柔らかいと思います」
「おまえ、気が利くなぁ」
「ふふふ、まだ紐を使うのだと流鏑馬と達磨返しが残ってますからね。より柔らかい感触になったら、また違うかなぁって思いまして!」
こういうとこ、鹿島もノッてるよなぁ。体位によってはげんなりした様子を見せることはあるけど、チャレンジをやめようとも言わねぇ。
「で、立ち花菱って、女性の腰の下に枕とか置いて」
「俺の方から口でするやつだな」
「んー、枕汚しちゃいそうで気になるから、バスタオル巻いて使うのでもいいですか?」
「いいぜ。そっちの方が洗濯するにも楽だしな」
「じゃ、早速用意しましょうか」
鹿島がバスタオルを巻いている間に、俺はバスローブの紐をチェストから取り出す。
こんな風に準備している間はムードねぇんだけど、不思議なことにいざコトをを始めると結構気分が高揚するんだよな、これが。
そして、そんな感覚が俺は嫌いじゃなかった。
***
「ふ、あ、あっ」
バスタオルを巻いたやつを鹿島の腰の下に挿れて、クリトリスや膣口を口で可愛がってやると、甘い声が上がる。鹿島が出すこんな声は他の誰も知らねぇ。
もっと上げさせようと舌を休めずに動かしていると、鹿島が喘ぎまじりに話始めた。
「そ、いえ、ば」
「ん?」
「こうやって、腰の……っん! 下に、何か置いてセックスっするって、いうの、もあります……よ、ね」
「あー、あれか。上付きとか下付きとか言われてたりする」
「そ、です。あれ、私どっち、なんで、しょう、か」
「比較対象ねぇから、分かんねぇけど普通なんじゃねぇの? 少なくとも、正常位やるときに挿れにくいって思った記憶ねぇなぁ」
「んあっ!」
クリトリスに吸い付きながら、指を膣に入れて、腹側の内壁を刺激する。
基準は分からねぇけど、イケメンはどこのパーツも整ってるのか、こいつ、まんこまで綺麗なんだよなぁ。
「ああ、でもあえて言うなら、こうやって腰持ち上げると、足の間から太股にかけて、綺麗に見えるな。そこがいい」
「ひゃっ!」
膝裏を擽るように指先で撫でると、裏返った声と共に、中から新たな蜜が溢れ出す。
そろそろ挿れたくなってきた。
「じゃ、宝船やっていいか?」
「あ、はい。えっと、私が上になればいいんですよ、ね?」
「そうだ。松葉崩しあっただろ。あれのちょっと変形みたいな感じで、おまえが上になって、足絡める感じだ」
「で、先輩の片足をこっちで抱き支えて、帆に見立てるようにするやつですよね」
時々、妙に抜けてるところがあるが、地頭はいいから、理解は早い。俺がベッドに寝てすぐに鹿島が動き、あっと言う間に宝船の体勢になって交わった。
「あ、ああっ、これ、当たる……っ」
「なるほど、俺の太股がおまえのクリを刺激すんだな、これだと」
「や、ちょっと、先輩、動かな……っ」
ちょっと太股を揺らしてやると、繋がった部分から蜜が伝い落ちていく。
騎乗位はこれがいいよな。繋がった場所から、幹を伝って、袋を濡らしていくのが興奮を高めていく。
そのまま太股を揺らしていたら、不意に鹿島がストップを掛けた。
「待って下さ……っ! それ以上されると、流鏑馬まで、いけなく、なるん、で……っ」
一回イッちまうと、上で動くのがしんどいってことだろう。別の機会に回してもいいが、紐も用意したしな。
「わかった。じゃ、流鏑馬いくか。体勢変えられるか?」
「はい、すみま……せん」
鹿島が身体をずらしている間に、枕元に置いておいた紐を取って、鹿島に手渡す。
鹿島が紐を俺の首に回しやすいよう、ちょっとだけ首を持ち上げて、紐がくぐったところで頭を下ろした。
「うわ、何かさっきまでと違う意味で変な気分になりそうです」
見下ろされた状態と、馬から、不意に懐かしいことが頭を過ぎる。
「あー、何か昔を思い出した」
「昔? これ、やったの初めてですよね?」
「ああ、思い出したのは体位じゃねぇよ。馬だ。高校の時に、おまえ馬の被りものして、俺を保健室に運んだことあっただろ」
「ああ、ありましたね」
「……あん時とは逆だけどな」
今回、馬になっているのは俺の方だが。
「じゃ、お馬さんには鳴いて貰わないとですね」
一瞬、淫蕩な光を宿した青の瞳が、俺を快感と共に突き刺していく。
「鳴かせてみろよ、王子様。簡単には鳴いてやらねぇけどな」
「ふふ、いつまでそう言っていられますかね?」
「んっ」
偶にはこういうのも悪くねぇなと、身体を揺らし始めた鹿島の動きに合わせながら、ひっそりと思ってみたりした。