Kiss22 2017/02/12(brilliant days 6)発行
ジャンル:あんさんぶるスターズ!・紅敬(R-18)
仕様:新書判・62P・500円・完全書き下ろし
キスの場所で22のお題を元にひたすら紅敬がキスばっかりしてる短編集になります。健全、R-15、R-18まで様々。
奇数番号は鬼龍視点、偶数番号は蓮巳視点の話。
お題配布サイトはこちら。
短編集ですが、卒業後で同棲していたり、女体化による紅敬♀だったりと世界線はバラバラです。
(卒業後の同棲前提の話と女体化が割りと多め)
タイトルと合わせて各話の傾向を載せておりますので、そちらでご判断頂ければと。
※特に記載がないのは夢ノ咲学院在学中で付き合っているのが前提の紅敬です。
あと時間の都合で、19:腿(支配)&20:臑(服従)が間に合わなかったので、後日、購入特典の電子書籍版で追加(&他も加筆修正)します。申し訳ありません……。
1:髪(思慕)※サンプル掲載
※紅敬♀で結婚済、子どももいるのでご注意を。
2:額(祝福)※サンプル掲載
※夢ノ咲卒業後も紅月はアイドル活動をしています。
3:瞼(憧憬)
4:耳(誘惑)
※夢ノ咲卒業後、紅敬が同棲しているのが前提。
5:鼻梁(愛玩)
※夢ノ咲卒業後、紅敬が同棲している前提で大学生。
6:頬(親愛)
※夢ノ咲卒業後、紅敬が同棲している前提。
7:唇(愛情)
※夢ノ咲卒業後、紅敬が同棲している前提。
8:喉(欲求)
※結婚話が出る前の付き合っている紅敬♀。鬼龍くんの母親に色々捏造があります、ご注意を。
9:首筋(執着)※サンプル掲載
※夢ノ咲卒業後、紅敬が同棲している前提。
10:背中(確認)
※夢ノ咲卒業後、紅敬が同棲している前提。
11:胸(所有)
※同棲している紅敬♀です。
12:腕(恋慕)※サンプル掲載。
※卒業後も紅月として活動から数年、引退した後の話。
13:手首(欲望)
※夢ノ咲卒業後、紅敬が同棲している前提。
14:手の甲(敬愛)
※賢者パロっぽい世界観での紅敬。
15:掌(懇願)
※両片想い的な紅敬。
16:指先(勝算)
17:腹(回帰)
※紅敬♀で結婚済。子どもたち独立後の熟年夫婦で生理ネタにつきご注意を。
18:腰(束縛)
19:腿(支配)電子書籍版に掲載します。
20:臑(服従)
※賢者パロっぽい世界観での紅敬。14の続き。電子書籍版に掲載します。
21:足の甲(隷属)
※付き合っている紅敬♀。
22:爪先(崇拝)
※紅敬♀で結婚済、妊娠中の話につきご注意を。
***
1:髪(思慕)
※紅敬♀で結婚済、子どももいるのでご注意を。
敬人が作ってくれる朝食は大抵和食だ。
今日も例に漏れずだが、寝室のドアの隙間から入って来る味噌汁の匂いで目が覚めるのは、毎朝のように繰り返していても気分が良い。
ベッドから起き上がり寝室を出て、対面式になっているキッチンに入るとすぐに敬人が俺に気付いた。
「おはよう、紅郎」
「おう、おはよう。ん? 坊主は寝てるのか」
「ああ。さっき少し目が覚めていたんだが、ホットミルクを飲ませたらまた寝た」
ソファに寝っ転がった我が家の長男は、気持ち良さそうな寝息を立てている。
あどけない寝顔にキスしてやりてぇが、それで起こしちまうのも忍びない。
それに寝ているなら、今のうちにやりたいこともある。
「だったら、朝食の準備終わったら、こいつが寝ているうちに髪結っちまうか」
「頼む。もう今一通り終わった。あとはよそうだけだ」
ガス台の火を止めてから、敬人がリビングに置いてあるドレッサーの前に腰掛けた。
すぐに俺も敬人の後ろにまわり、ドレッサーの引き出しを開けてから、ヘアピンやリボンを幾つか取り出す。
今日は赤いリボンを使うか。
後ろで緩く一つに束ねられていた髪を解いて、ブラシで梳かす。
日に透かすと新緑を思わせる髪は滑らかで、肩よりも長くなったってのに全然引っかからない。
――髪、大分伸びてきたな。美容院行くのがしんどいなら俺が切ってやろうか?
敬人の腹に長男がいたとき、一時期身体の調子が悪くて外出出来なかった為に美容院にも行きそびれていた。
だから、少し襟足が伸びたときにそう訊いてみたら、予想外の言葉が返ってきたのだ。
――いい機会だから、このまま少し伸ばしてみようと思う。似合わんようならやめるが。
――へぇ。いや、いいと思うぜ。髪伸ばすなら、俺にヘアアレンジやらせてくれ。色々な形にして結ってみたい。
紅月としてアイドル活動をしていた時は、敬人の性別は表向き男のままだったからと、髪を伸ばすようなことはしなかった。
神崎なんかは元々長髪だったし、身体には相応の筋肉もついていたからまだしも、旦那が伸ばすと女になったというのが発覚しやすそうだったし、また旦那本人も頑なに伸ばしたがらなかった。
ずっとプライベートでも女の格好をするのは好まなかったこいつが女物の服を着るようになったのは、結婚する時に婚礼衣装で写真を撮った時を除けば、妊娠して腹が出てきたことによる体型の変化からだ。
けど、敬人の髪は綺麗だから、伸ばしたらどうなるかを見てみたいと内心では思っていたし、伸ばした髪でヘアアレンジをしてみたかった。
昔は妹もやらせてくれてたが、小学校の修学旅行をきっかけに、髪は自分でやるっつって俺にやらせてくれなくなっちまったんだよな。だから、こうやって髪を弄らせてくれるのは、俺としてはかなり楽しい。
スタイリング剤を使って簡単には崩れないように編み込んだ髪に、赤いリボンも一緒に織り込んでからアップに纏める。
ちょっとクリスマスリースみたいにも見えそうだが、クリスマスも近いし悪くねぇだろ。子どもは見て喜びそうだしな。
「うし。こんなもんか」
一応、鏡を使って結い上げた後ろ側を見せたが、特に異存はねぇようだ。
「ありがとう」
「今日も美人だな、俺の嫁さんは」
「貴様は持ち上げすぎだ。それを毎日言うと有り難みもなくなるぞ」
そう言いながらも、敬人が少し照れているのか目元を紅く染める。
有り難みがない、なんて口じゃ言いながらこれだもんな。可愛いったらねぇ。
「仕方ねぇだろ。実際美人なんだからよ」
編み込んだ髪が崩れない程度に、軽く敬人の髪にキスを落とした。
2:額(祝福)
※夢ノ咲卒業後も紅月はアイドル活動をしています。
「無事に終わったな」
「ああ。大きなトラブルもなく、終了出来て何よりだ」
「感無量であるな!」
紅月、初の全国ツアー。
一ヶ月半かけて十六ヶ所に及んだライブは、今日の千秋楽までどうにか無事に過ごすことが出来た。
まだ、片付けだの、打ち上げだのが残っているが、一先ず開放感に浸っても許されるだろう。
「打ち上げでも改めて挨拶させて貰うが、まずはお疲れ」
「おう、お疲れさん」
「うむ、我ら紅月ここにあり!」
「「「ハッ!!」」」
神崎の言葉で自然に円陣を組み、三人の手を中心で重ね、掛け声を合わせる。
いつからか、ライブ開始前と終了後の習慣となっていた円陣は、誰が最初に始めるかというのは決まっていないが、気合いの入り方が変わるというか、気が引き締まるような気がして、何とはなしにやるようになっていた。
ハイタッチやハグじゃなく円陣ってところが紅月らしいよね、と以前羽風に言われたことがあるが、俺個人としてはその紅月らしさが気に入っているし、恐らく他二人もそうだろう。
そうやって締めの円陣を終わらせ、片付けが始まり、スタッフが慌ただしく動き始めたところで俺たちも控室に引き上げる。
俺たちは俺たちで衣装を脱いで、早々に控室を片付けなければ。
ライブ会場やスタッフの都合等により、撤収作業に使える時間は案外短い。もたもたしていると、直ぐに時間など過ぎてしまう。
控室で早速着替えを開始したところで、廊下から派手な足音が聞こえてきた。
「すみませーん、舞台脇に本番用の扇子が一つ落ちていましたー! どなたか心当たりありませんかー!」
廊下を駆け抜けながらスタッフがそう言ったのが、閉じたドア越しに聞こえた。
扇子を使っていたのは、俺たち三人以外にも今回のツアーに同行していたバックダンサーもだから、外から声を掛けるに留めたのだろう。ここからなら、バックダンサーたちの控室にも聞こえる。
念の為に懐に収めていた自分の扇子を確認していると、意外なところから扇子の落とし主が判明した。
「やや、しまった。我が落としてきてしまっていたようだ。取りに行かねば!」
「本番中でなくて良かったな」
「早く行ってこい。片付けの邪魔にならんようにな」
「うむ! 速やかに引き取って参る!」
神崎が控室を出て、バタバタと駆けていき、足音が遠のいていった。
「珍しいな。神崎がやっちまうとか」
「しかし、ライブ中には扇子はあったから、舞台袖に下がった時に何かの拍子で落としたんだろうな」
鬼龍と俺は着替えの手は止めずにそんな会話を交わす。
椅子に腰掛け、ブーツの紐を解いていた俺の後ろに回った鬼龍が、首の部分を編み上げている紐を緩めてくれたのが感覚で伝わった。
「蓮巳。首の後ろの編み上げは解いたぜ。後は脱げるだろ」
「ああ。ありが……」
次は俺も鬼龍の衣装の紐を解いてやらねばと後ろを振り返って礼を述べた瞬間、鬼龍の唇が俺の額に触れる。
不意打ちに驚いて見上げると、ニヤリと笑った鬼龍と視線が合った。
……ライブの前後にこの手の接触はやめろと言ってあるのに、無事に終わったことで気が緩んだか。
鬼龍の肩を掴んで頭の位置を少し低くしたところで、鬼龍の額を指で軽く弾いた。
「てっ、デコピンで返すのかよ」
「俺は何度も言っただろう。ライブの前後、特に衣装をまだ着ている時にその手の接触はするなと」
「神崎がいない隙に、ちょっとライブツアー成功おめでとうのキスしただけじゃねぇか」
「拗ねるな。……家に帰ったら幾らでもしてやるから」
指で弾いた部分を軽く撫でてやってから、椅子から立ち上がり、鬼龍の背後に回る。
鬼龍の首の部分の編み上げを解きながら、幾らでもっつったからにはやって貰うからなと言われた言葉には、二言はないとだけ返しておいた。
9:首筋(執着)
※夢ノ咲卒業後、紅敬が同棲している前提。
「っ、おい、少ししつこすぎやしない、か」
「だって、こんな風に何日か休みじゃねぇとここに跡つけられねぇだろ」
「ふ……っ」
アイドル活動なんてやっている以上、普段はどうしても常に人に見られているということを意識しなければならねぇ。見られるような場所に情交の痕跡を残すなんて以ての外。
それは蓮巳と付き合い始めた当初から分かっていたし、時と場所はちゃんと弁えているつもりだ。
だからこそ、連日の休みがあり、その気になれば外出もほぼしなくてもどうにかなるってタイミングなら、跡をつけるには絶好のチャンスだと思っている。
ここぞとばかりに蓮巳の首筋に吸い付いて、跡を残す。
首ばかりに吸い付いているのがもどかしいのか、蓮巳が身体を俺にすり寄せてくる。
寝間着代わりにしている浴衣越しにも随分と旦那のモノが固くなっているのが伝わってはいるがまだだ。まだ足りない。
「き、りゅ……あっ」
熱っぽい吐息に混ざって、俺を呼ぶ声が切ないと訴えかけてくるのに、悪ぃなと内心で詫びながらも、まだ首筋に吸い付く。
少なくとも今夜、明日、明後日と予定がない以上、その間は俺一人だけの蓮巳だ。今は紅月の蓮巳敬人でも、鬼龍紅郎でもない。
ただ、一組の恋人同士がいるだけ。指と唇で蓮巳の全部の場所に余さず触れて、貪って全部食らい尽くしてしまいたい。
「う、あ、くっ」
脈が触れる部分に軽く歯を立てて、うっすらと歯形を残す。
蓮巳が上げる声は痛みではなく、快感によるものだと分かっている。
「この、ケダモノ、が」
「たまにはケダモノも悪くねぇだろ」
「あっ!」
たまにはアイドルなんてしがらみから離れて、一対の番を楽しむのもありだろと、旦那の耳元で囁いて、行為の続きに没頭した。
12:腕(恋慕)
※卒業後も紅月として活動して数年、引退した後の話。
鬼龍の部屋を訪れたとき、普段は見えているフローリングの床が、衣装でほとんど隠れてしまっていた。
衣装の数々はどれも紅月で使ってきた物。
一番、古いのは夢ノ咲学院時代に作成した基本のユニット衣装だが、他にも見覚えのある衣装をこれでもかというくらいに並べていた。
「派手に広げているな」
「衣装をそのままクローゼットに入れて置くとどうしても場所を取っちまうからよ。畳める物は畳んでしまっておこうって思ったんだが、こう並べるとつい見ちまうよなぁ。どれもこれも懐かしくっていけねぇ」
そう、懐かしい。
少し前にアイドルとしての紅月は解散した。神崎が実家の道場を継ぐ必要が出て来たところで、ならばここらが潮時だろうと引退を決め、解散ライブを行った。
そうして、俺と鬼龍は現在、夢ノ咲学院の講師として働いている。
俺たちが在学していた頃に比べて、学科も増え、スタイリスト科なんてものも出来、鬼龍はそちらで衣装についての講義を受け持ちながら、衣装製作を請け負ったりしていた。
「せっかくだし、いくつかは授業でも使えると思うんだよな。まぁ、高校時代に作った物なんざ、今となっちゃ恥ずかしいにも程があるけどよ」
「だが、実際に高校時代に作成したものとあらば、生徒側からも良い指標となる。……やはり紅月の衣装はいいな。華やかで舞台映えする」
俺が鬼龍を引き込む形で、紅月を発足させた当時、二人でユニットの方向性や楽曲、衣装についてアレコレ話し合ったのが、まるで昨日のことのようだ。
あの初めて想いを告げた時や、その後の触れ合い、数日後のセックス。
紅月の歴史は、愛しい歴史ともほぼイコールだ。
幾度目かのライブで、神崎が紅月に加入希望を出し、三人になるまでは、ずっと基本のユニット衣装を使っていた。
「それぞれで少しずつ衣装に特徴を持たせるのも、どうするか考えたっけな。露出の方向性は自分でも良い具合に収まったって今でも思ってるぜ」
鬼龍が基本ユニット衣装の手甲を取って、自分の右腕にはめた。
そういえば、鬼龍の衣装だと、上腕部が出るからと、情交の際にここには爪を立てまいと気をつけたものだ。
もう、そんなことを気にせずに済むということが、嬉しくもある一方、寂しさも感じる。
「旦那?」
「少しじっとしてろ」
鬼龍に一言言い置いて、露出された上腕部にわざとリップ音を立ててキスした。
そんな様子に鬼龍が口元を緩ませる。
「……あんだけ、ライブで使う衣装を着ている時には、性的な接触はするなっつってたのに」
「ライブ中にうっかり情交を思い出すようなことがあっても困ったからだ。だが、もうその心配もないからな、残念ながら」
キスに加えて、指先でも上腕部を撫でると、鬼龍が俺の耳元でそっと呟く。
「だったら、一度ユニット衣装を来て、セックスしてみねぇか? 正直、してみたいと思っていた」
現役時代だったら、絶対おまえ怒っただろうから、言い出さなかったけど、と続けられて驚いた。
「貴様にコスプレ趣味も合ったとは意外だな」
「意外でもねぇよ。男が人に服を贈るってのは、その贈った相手を脱がせたいからってのがお約束ってやつだろ。俺は旦那にやってみてぇ」
「…………ユニット衣装を使うことで、講義の最中に思い出したりしないようにしろよ。俺の衣装を持ってくるから着付けを頼む」
「おう、着付けも脱がすのもバッチリやってやるぜ」
嬉しそうに鬼龍が笑うのを見て、癖になってしまったりしなければいいがと、内心思いながら、自室へ衣装を取りに向かった。