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審神者業は突然に・サンプル<あんさんぶるスターズ!・紅敬・R-18>

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審神者業は突然に 2016/12/30(コミックマーケット91二日目)発行

ジャンル:あんさんぶるスターズ!・紅敬(R-18)※刀剣乱舞とのクロスオーバー

仕様:A5判(コピー)・20P・200円・完全書き下ろし

既に付き合っている紅敬二人がいきなり刀剣乱舞の世界に飛ばされて、二人で一つの本丸の審神者になるというクロスオーバーもの。
刀剣男士たちはカプを想定しないで書いてます。
※発行前に書いていた説明及び本の前書きに記載した内容と一部異なってます。

 

「しかし、何故俺たちなんだ? 元々の時代じゃ普通にアイドルやってるだけの高校生だぜ?」

鬼龍の困惑はもっともだし、俺も概ね同意だ。
鬼龍は空手、俺は弓道と武道を嗜んではいても、特に異質な能力などは持ち合わせていないし、こうして審神者の能力があると言われたところでどうにもピンと来ない。
鬼龍の体力や筋力は常人以上ではあるだろうが、聞いた限りではそれが審神者とやらの能力と直接結びつくとも思えないし、仮にそうだとしても俺の方は一体何が影響したのかという話にもなる。
沈黙がしばし続いた後、男が言いにくそうに応じた。

「申し訳ないが、我々にも何故君たちが選ばれたのかは分からない」
「分からない?」
「そう。元来、既にある歴史を改変してはならないということから、審神者は二二〇五年の時点で存在し、その能力を持ち合わせている者であることが前提だ。過去の時代に審神者の能力を持っている者がいたとしても、この時代に連れてくることで歴史に歪みが生じる可能性がある以上、干渉しないというのが本来の在り方だし、事実これまで過去の時代の者を審神者として就任させたことはない」
「ならば――」
「だが、君たちを元の時代に戻そうとしたら、歴史改変の怖れがあるというシステムからの警報が鳴った。そうなった以上、政府として見過ごすわけにはいかない」
「……ちょっと待て。えーと、つまり……」
「俺たち二人がこの時代で、審神者として何らかの働きをすることは二二〇五年の時点で『築き上げてきた歴史の中に含まれて』いる事象の一つ。である以上、それをこなすまでは歴史を改変する怖れがあるため、元の時代には戻れない。そういうことか」

タイムパラドックス。
小説や漫画でそんな題材を扱った話を読んだ経験はあったが、それが自分たちの身の上に降りかかってこようとは、想像もしていなかった。

「そうだ。――ただ、こちらで調査した結果、君たちが一時期行方不明になった等の記録は残っていない。恐らく審神者としてこの時代で一定期間然るべき働きをした後は、元の時代に戻って何事もなかったかのように人生を送っているはずだ」

二百年近く前の一個人の情報がどこまで有効だろうかと言い掛けてやめた。俺たちの時代の常識で考えない方がいい。二百年も違えば、把握出来る情報量はかなり変わってくるだろう。そこは俺たちの時代から二百年前を遡って考えてみても分かることだ。

「……選択肢は一つしかなさそうだな」

鬼龍と顔を見合わせて頷く。
自分たちだけで元の時代に戻ることも出来そうにないし、出来たとしても、それが歴史の改変に繋がるかも知れないと聞かされては撥ね除けるのも難しい。

「一定期間の働きって具体的にどの位になるのかは」

一応、尋ねてみた内容には男が無言で首を振る。そうだろうなと半ば予測はしていた。
俺たちが選ばれ、ここに来た理由を把握していないのであれば、一定期間がどの位を示すのか分かるはずもない。
現状、終わりの見えない戦いだというのが、気に掛かるが。

「仕方ない、か」

しばらくはこの時代で、審神者として過ごして行く他ないと腹を括るより他になかった。

***(中略)

「旦那。まだ起きてるか?」

基本、早寝早起きの旦那はいつも通りならこの時間はもう寝ている。
が、何となく起きていそうな気配を感じて、直ぐ横に布団を並べて寝ていた蓮巳に声を掛けると、旦那は目を開けてこっちを向いた。

「ああ」
「ちょっと相談があるんだがいいか?」
「――ちょうどいい。俺も少し話したいことがあった」
「何だ、じゃあ、旦那から先に言ってくれ」
「いや、貴様が先でいい」

蓮巳が布団の上に身体を起こしたのにつられて、俺も布団から起きた。
話をどう切り出したものかと考えあぐねていたが、どうも旦那も似たような感じらしい。
黙ってても埒が開かねぇなと先手を打った。

「じゃーんけん……」
「ぽん……っと。あ」

掛け声に合わせて蓮巳の出した手はチョキで、俺はパー。
じゃんけんで勝った蓮巳が得意げにニヤリと笑った。

「ふふん。俺の勝ちだな。やはり貴様から先に話せ」
「しゃあねぇな。まぁ、いいか。……思ったんだけどよ、手を繋いだり、キスしたりした後に作った鍛刀札の効力が上がったのなら、セックスすることでもっと効力が強くなる可能性があるんじゃねぇか?」

二人一組での審神者は俺たちの他にはいねぇって話だから、本当に効力が上がるかどうかは実際に試してみねぇと分からねぇ。
が、先日の件を考えても、可能性としては十分有り得ると思っていた。
馬鹿げた話だと言われるかと思ったが、旦那は俺の話を否定せずにただ頷く。

「俺もそれは考えていた。俺が話そうと思っていたことも一緒だ。……いくら、俺たちの部屋が刀剣男士たちと離れているとはいえ」
「まぁ、中々何かするような気にはなれなかったよな」

しばらくは慣れない場所での生活に対応していくので手一杯だったし、つい寝るときにも妹や父ちゃん、学校のやつらは今頃どうしているだろうかってのが思考の大半をしめていた。
だが、最近は審神者の仕事に慣れたことと、鍛刀札を作る時に手を繋いだり、キスしたりってのを試すようになったことで火が着いちまって、セックスしたいって欲が頭をもたげている。
元々、蓮巳とは恋仲だったとはいえ、関係を表に出すわけにはいかねぇって理由から、セックスするにはタイミングが限られていた。
が、とっくに想いを通わせている好きな相手と同じ部屋でずっと一緒に寝起きしていて、時に手を繋いだり、キスしたりなんてしてたら、もっと触りたくなるのも、セックスしたくなるのも当たり前だ。

「身の回りの世話もやつらが仕事だと言って譲らんしな。洗濯物を出す時にどうしたものかと思ったが」
「強引にこっちで先に洗濯しちまうってのが無難だろうな。多少勘ぐられるかも知れねぇけど。それより問題はゴムがねぇってことだ」

何しろ、ライブ終了直後にこの時代に飛ばされたから、ゴムなんて持ってきちゃいないし、俺たち二人は本丸から出られない。買い物にも行けやしねぇ。

「万屋に置いてあったとしても頼める買い物ではないだろう。どうせ繋がることで効果が望めるかも知れないのなら、直接する方が都合もいい」
「そりゃ、頭では分かってんだけどよ。……蓮巳」
「うん?」

蓮巳に身体を寄せて、手首を取って握る。
少し力を籠めたら、指先が脈に触れて、少し早めの鼓動が伝わって来た。

「久々だから、あんま加減してやれねぇかも」

多分、負担を掛けちまうと言葉に含みを持たせたが、それに旦那が小さく笑った。

「お互い様だ。……俺だって」

俺が掴んでいない方の手が伸びて、頭を引き寄せられた。

「鍛刀札の作成を抜きにしても貴様に触れたい、鬼龍。加減なんぞ考える余裕が出来るとは思えん。思い切り抱け」

蓮巳の艶を帯びた声と視線に絡め取られ、キスを交わした。

 

 

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