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適度に歳取った既婚者堀&独身御子柴

Immorality of targetシリーズのプロトタイプに相当します。

01~03の流れの元。

[堀Side]

 

「おまえ、煙草の銘柄、変えてなかったんだな」

 

御子柴がサイドテーブルに置いてあった煙草の箱を手にして、一本中から取り出す。

以前と違うのはかつて剥き出しで持ち歩いていた煙草を、シガレットケースに入れるようになっていたことか。

まぁ、そんな辺りは俺も同じだが。

 

「あー……変える気でいくつか試したんすけど、どれもしっくり来なくて。結局戻したんです。先輩こそ変えてなかったんすね」

「まぁ……何となくな。一本貰うぞ」

「あ、俺も吸います。一本取ってくださ……。……っ」

 

ベッドから身体を起こした御子柴が、腰に手を当てて顔を顰めた。

さっきまでのセックスが原因なのは、明白すぎた。

 

「悪い。……無茶させすぎたな」

「あ、いや、久々だったんで。やっぱ歳っすかね」

「おまえの一つ上の俺の前で、それを言うのかよ」

 

まずは自分の煙草にライターで火を着けてから、御子柴にも一本渡す。

そして、ライターは再びサイドテーブルに戻し、昔、よくやったように俺の火の着いた煙草から、御子柴の煙草に火を移した。

馴染んだ煙草の香りと、御子柴の吐息が混じり合って、鼻孔を擽っていく。

伏せた目元に多少の皺は見つかっても、相変わらず睫毛は長くて、妙な色気がある。

いや、寧ろ色気は昔より増した気がするのは気のせいか?

さっきもこの色気にやられて、久々にセックスに熱が入ったもんなぁ。

一晩で三回出したとか何年ぶりだろうか。

歳でいい加減枯れてきたと思ってたが、そういうわけでもなかったようだ。

 

――す……みませ……ん。久々、なんで、ちょっとキツ……っ。

――何だよ、セックスはご無沙汰だったのか。前にしたのいつだ?

 

問いかけたら、随分とバツの悪そうな顔になって、ややあって、小さく御子柴が呟いた。

 

――その、先輩と別れてからは全然……。

――……マジか。女とは? 

 

黙って首を振った御子柴にめちゃくちゃ興奮した。

申告通りなら、こいつは俺しか知らないままで、もしかしたら、オナニーする時も俺を想像してやっていたのかも知れないと思うと堪らなかった。

久々の御子柴の中は、挿れた時こそ強ばってキツかったが、元々俺しか知らない身体だったからか、ゆっくり擦っていくとちゃんと俺のモノに馴染み出したのもさらに煽った。

 

――せ……んぱ……っ、先輩……っ!!

――キツけりゃ、俺に捕まっとけ、よ……っ!

――ダ……メです……って、痕、残しちま……あああ!

――いいっつってん、だろがっ……!

 

あれは可愛すぎてヤバかった。

自分じゃ見られないけど、多分、背中に爪痕残ってんだろうな。

まだ、少しだけひりひりする場所あるし。

まぁ、ここしばらく女房とはレスが続いてるから、バレねぇとは思うけど。

 

「先輩」

「ん?」

「…………すみません」

 

指輪を外した左手の薬指を、御子柴の手が触れた。

少し、御子柴の声と指が震えている。

指輪は今、サイドテーブルに置いてある。

セックスの最中に御子柴が見ているのに気付いて、外したからだ。

そういや、結婚してから初めて外したなと今更ながらに思う。

 

――……悪い、気にならないわけねぇよな。

――え、あ。…………ちょ……っと、先輩!?

 

指輪を外した瞬間に、御子柴の中が蠢いて。

それにもっととねだられたような気がして、止められなくなった。

 

「謝るのはこっちだろ。…………おまえが悪いんじゃねぇよ。誘ったのは俺だ」

「けど、拒まなかったのは俺です、し……っ」

 

声が詰まったのに気付いて、御子柴の顔を見たと同時に、涙がぽたりと指に落ちた。

 

「す……みませ……。俺……俺、こんな、つもり、じゃ……っ」

「…………御子柴。おまえのせいじゃない」

「ふ……っ……」

 

御子柴の吸っていた煙草を口から抜きとって、自分の吸っていた煙草と一緒にテーブルの灰皿に置く。

手と口が空いたところで、御子柴にキスして背を抱くと、嗚咽が溢れた。

 

「……っと、狡いよ、せんぱ…………狡……っ」

「………………悪い。けど、今、またおまえを手放せる気はしない」

 

やっぱり、こいつと身体の相性合うんだよなぁ。

いや、身体だけってわけでもねぇな。

まともに会ったのは十年以上ぶりだっていうのに、一緒にいて心地良い。

久々なのに、不思議なくらいに御子柴の存在が自分の中にすっと馴染んだ。

多分、それはこいつも同じように感じているはずだ。

理屈じゃなく、そうどこかで確信がある。

 

「……勝手……にそん、な……っ」

「おまえは嫌か? もう俺に会いたくないか?」

 

自分でも狡いと分かっている。

こんな問いかけ方をしたら、御子柴が拒めないだろうことを分かっている。

こういう部分は御子柴は変わっていない。

 

「ホント、狡い……」

「知ってる。……知ってて言ってるのも、おまえ分かってるよな、実琴」

 

駄目押しのように、下の名前も呼んだ。

こいつが二度と俺から離れようなんて思わないように。

本当に酷いという呟きは聞こえたが、御子柴の腕は俺の身体に回って離れなかった。

 

[御子柴Side]

 

「おまえ、煙草の銘柄、変えてなかったんだな」

 

ベッドに横になっていると、先輩が俺の煙草の箱を手にし、一本抜いたところでそう言った。

 

「あー……変える気でいくつか試したんすけど、どれもしっくり来なくて。結局戻したんです。先輩こそ変えてなかったんすね」

 

元々、先輩と俺は趣味があまり合わない方だったから、被っていたのは煙草の銘柄ぐらいだった。

先輩の面影を強く残す煙草の銘柄は、何度か変えようと思ったが、どうも合わずに最終的にはこれに戻ってしまうというのを繰り返した。

いっそ、禁煙してみるかと思ったが、それも結局出来ずに今に至る。

せめて、煙草の銘柄だけでも直接見ないようにとシガレットケースを使うようにはなったけれど。

そういえば、先輩も煙草の銘柄は変わらないけど、やっぱりケースに入れてたよな。

同じような理由なんだろうかと考えかけたところで、その考えを追い払う。

 

「まぁ……何となくな。一本貰うぞ」

「あ、俺も吸います。一本取ってくださ……。……っ」

 

煙草を吸うために、上半身を起こしたが、腰に鈍い痛みが走る。

相変わらずの絶倫っぷりを発揮した先輩は、俺の中が慣れ始めたところでガンガン突いて来たんだよな。

 

「悪い。……無茶させすぎたな」

「あ、いや、久々だったんで。やっぱ歳っすかね」

 

最中はともかく、こうして時間が経つと身体にダメージを感じる辺り、若くねぇなってのを実感する。

 

「おまえの一つ上の俺の前で、それを言うのかよ」

 

先輩が苦笑いしながら、煙草に俺のライターを使って火を着ける。

そして、俺にも煙草を一本くれるとライターはサイドテーブルに戻す。

……そういや、よくやったな、これ。

煙草を咥えると、先輩の咥えている煙草の先に、自分の煙草の先をくっつけて、そこから火を貰う。

こんな吸い方したのも、久しぶりだ。

 

――シガーキスって言われてるらしいぜ、これ。

 

それを教えてくれたのも先輩だった。

口に咥えたままで火を移すと、双方の吐息が共有される形になり、一種の間接キスみたいなものだから、そう言われているんだと。

同じ煙草だから、同じような香りの吐息になるのかと、昔はキスする度に意識して、嬉しかったのを思い出す。

あの日々から十数年経ってたのが、嘘のように馴染んだ空気と身体。

今でこそ、腰にダメージが残ってるけど、最中は久々だったせいか、凄ぇ気持ち良かった。

流石に最初は少しキツかったけど、初めてヤッた時みたいな痛みもなかったし。

いっそ、痛かったら、もうごめんだなんて吹っ切れただろうに。

…………覚えてんだもんなぁ、この人。

俺の弱いところはちゃんと。

 

――ひ、あ、あああ!!

 

自分一人じゃ得られなかった快感に翻弄された感覚は、決して不快なものではなく、正直なところを言えば、身体さえもつなら続けたいくらいだった。

先輩と別れてから全然セックスなんてしてなかったし、それで平気だって思っていたのに。

 

――凄ぇ。久々だってのに、ちゃんとおまえの身体、俺を覚えてるのな。

――そ……んな……ん、知らな……っ。

――自覚してない、なんて言わせねぇ、ぞ……っ!

――あ、あ、うあ!!

 

気持ち良さにもがいて、前みたいに先輩の背にしがみついてしまいそうになったところで、今のこの人は俺のものじゃないってことを思い出して。

シーツを掴んでやり過ごそうとしたのに、先輩はそうさせなかった。

 

ーーせ……んぱ……っ、先輩……っ!!

ーーキツけりゃ、俺に捕まっとけ、よ……っ!

ーーダ……メです……って、痕、残しちま……あああ!

ーーいいっつってん、だろがっ……!

 

先輩が覚えてなかったわけはない。

それこそ、当時は何度も先輩の背に爪を立てて傷つけて、何度も痕を残した。

今、そんなのやったら、絶対マズいはずなのに、先輩はシーツを掴んでいた俺の手を解いて、自分の背に捕まらせた。

横目で先輩の見える部分の背中を確認すると、やっぱりさっきつけてしまったらしい爪痕が見つかって、胸が苦しくなる。

 

「先輩」

「ん?」

「…………すみません」

 

挙げ句、最中に指輪まで外させてしまった。

つい、先輩の左手の薬指に嵌めていた指輪を目で追ってしまっていたら、先輩がそれに気付いてしまった。

 

ーー……悪い、気にならないわけねぇよな。

ーーえ、あ。…………ちょ……っと、先輩!?

 

ダメだって確かに思ったのに、そんな行動が本音の部分では嬉しかった。

嬉しいと思ってしまった自分に嫌悪感を抱いたのに、背徳感と快感が混じり合って、そこからさらに気持ち良さが増した。

先輩の奥さんの立場考えたら、嬉しいなんて絶対に思っちゃいけないのに。

指輪を嵌めていた跡の残る指に触れると、胸が焦げる思いがした。

 

「謝るのはこっちだろ。…………おまえが悪いんじゃねぇよ。誘ったのは俺だ」

「けど、拒まなかったのは俺です、し……っ」

 

分かっていながら流されることを望んだ。

今更、身体を繋げたところで、かつての日々は戻ってこないって分かっているのに止められなかった。

久しぶりに感じた体温が泣きたくなるくらいに愛おしかった。

結局、俺はこの人が好きなんだと自覚してしまったのがキツい。

熱くなってきた目元から、涙が落ちていくのを止められない。

 

「す……みませ……。俺……俺、こんな、つもり、じゃ……っ」

「…………御子柴。おまえのせいじゃない」

「ふ……っ……」

 

残酷な位に優しい声。

口から吸っていた煙草が抜かれ、先輩も自分の分の煙草を、俺の分と一緒に灰皿に置いた。

今さっきまで煙草を咥えていた口に、先輩の唇が触れて、背中に腕が回された。

伝わる体温に、理性が完全に崩れ落ちた気がした。

 

「……っと、狡いよ、せんぱ…………狡……っ」

「………………悪い。けど、今、またおまえを手放せる気はしない」

 

随分と勝手な話だ。

自分は家庭を築いておいて、平気でそんな手放さないなんて口にするってどういう神経だよ。

なのに、心の何処かでまた先輩とこんな時間を過ごせるのかと思うと、嬉しいって感じてしまっていた。

それは許されないはずなのに。

 

「……勝手……にそん、な……っ」

「おまえは嫌か? もう俺に会いたくないか?」

 

ああ、相変わらず狡い聞き方すんだな、この人。

ここで会いたくないって言えたら、どんなに楽だろう。

こういう部分、先輩は全然変わっていない。

 

「ホント、狡い……」

「知ってる。……知ってて言ってるのも、おまえ分かってるよな、実琴」

 

分かってるに決まってんだろ。

こんな風に逃げ道を塞ぐような問いかけをされたのだって、一度や二度じゃない。

 

――実琴。

 

先輩が滅多に呼ばない俺の下の名前を呼ぶのも、どういう時かだって、よく分かってる。

…………分かっているのに、拒めない俺も最低だ。

 

「…………本当に酷ぇ」

 

先輩の身体に腕を回しながら、自嘲するより他になかった。

Memo
不倫堀みこの沼にハマったのが別ロマ2前だったので、原稿優先だけど、とりあえずちょっと吐き出したくて書いた物。
pixivではImmorality of target another1に収録してます。

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