明け方の街(堀みこVer)
- 2015/01/11 02:55
- Novel(R-15), 堀みこ(R-15)
- 月刊少女野崎くん, 堀みこ, pixivUP済, 社会人設定, ワンライ, pictBLandUP済
※二人が社会人で付き合っている前提での話です。ご注意を。
[御子柴Side]
「あれ……? 先輩どっか行くんすか?」
まだ、外が暗いような時間にごそごそ音がしてたと思ったら、先輩が着替えて、今にも外出しようとしているところだった。
「ん、ああ。悪い、起こしちまったか。
米切れてたから、ちょっとコンビニ行って、何か朝飯買ってくるわ。
どうせ、煙草も切れそうだったし」
「ちょ、ちょっと待って下さい! 俺も今着替えるんで! 俺行きます!」
「あ? いや、寝てていいぞ」
「でも、米の減り早いのって俺も食うからっすよね?
俺行って来ますよ、先輩こそ寝てて下さいって」
結構、先輩の家には入り浸っているから、適度な頃合いを見計らって光熱費やら食費やらを渡してはいる。
けど、不足してるものを勝手に買い足して良いのかどうかまでは、踏み込み過ぎのような気もしてしまって、イマイチどうしていいものか分からない。
床に散らばった服を慌てて拾って、着替える。
こんな時間のコンビニなら、大して人にも会わねぇだろうし、ワックスとかは使わなくていいよな。
先輩だって、前髪下ろしたまんまなんだし。
「そこら辺は気にすんな。ま、でも一緒に行った方が、おまえも食いたいもん選べていいか」
「一緒に行くんすか?」
「何だ、その迷惑そうな口ぶり」
「や、そういうわけじゃないっすけど」
早朝から、男二人でコンビニで、朝飯買うっておかしくねぇ?
アヤシイ関係とか思われたりしねぇかな。
実際、アヤシイ関係なんで、否定も出来ないとこではあるんだけども。
……いや、俺が考えすぎか。
堂々としてりゃ、そんな不審がられずに済むよな、きっと。
そんな事を考えながら、身支度を済ませた。
***
マンションを出ると、さっきまでは暗かった空が明るみ始めていて、コンビニに行き、買い物を済ませた頃には完全に夜が明けていた。
「あー、この時間だとやっぱり人いないけど、余計寒さが身に染みますね」
どうせ、行くのはコンビニだけだからと手袋をしてこなかったのを、少しだけ後悔した。
片手はコンビニで買ったものを持ってるから、仕方ないとして、もう一方の手はせめてとコートのポケットに突っ込む。
温かい飲み物の一つでも買っておきゃ良かった。
先輩はといえば、やっぱり手袋はしてないけど、特にポケットに手を入れてはいない。
「実際、気温も低いしな。仕方ねぇだろ。
ま、冬の空気は清々しくて、結構俺は好きだけどな。
つか、背ぇ丸めて歩くなよ、みっともねぇ。
せっかくのイケメンが勿体ないだろ」
「どうせ、誰かいるわけでもなし、ほっといて下さい!
寒いもんは寒いんすよ!」
「……っとに、仕方ねぇなぁ」
「……わ!?」
俺のコートのポケットに、先輩の手が突っ込まれる。
ポケットに突っ込んでいた手を握られて、思わず瞬時に周囲を見回してしまったが、先輩が意地の悪そうな顔で笑う。
「心配すんな。人がいねぇのは確認してやってるっつの」
「……脅かさないで下さいよ。先輩、こんな寒いのに手ぇあったかいっすね」
「体温高ぇんだよ、割りと。おまえなら、よく知ってんだろ?」
「っ!!」
その言葉の意味がどういう事かなんて、問いただすまでもない。
それこそ、昨夜だって全身で思い知らされたばかりだ。
……ああ、くそ。今ので色々思い出しちまったじゃねぇか。
「御子柴。……おまえ、分かりやすいなぁ、ホント」
ポケットの中の握られた手が、指先だけですっと撫でられて、それこそ俺の方の体温が上がる。
「…………外では勘弁して下さいって」
「冬で良かったなぁ、おまえ。コート着てるから勃ってても分からない季節で」
「勃……っ! ……て、なん……か」
「家着いてから、確認してもいいか?」
「…………マジ、勘弁して下さい」
そう言いながらも、ポケットの中の手を追い出せないどころか、先輩の指を握り返してしまうあたりで、きっとバレバレなんだろう。
朝飯より先に食われそうな予感を抱きつつ、マンションに戻った。
[堀Side]
「あれ……? 先輩どっか行くんすか?」
なるべく御子柴を起こさないよう、静かに動いていたつもりだったが、結局起こしてしまっていたらしい。
コートを着たところで、声がかかった。
「ん、ああ。悪い、起こしちまったか。
米切れてたから、ちょっとコンビニ行って、何か朝飯買ってくるわ。
どうせ、煙草も切れそうだったし」
昨日の朝の時点で、帰りに米を買って帰るつもりだったのに、すっかり忘れてしまっていたのは不覚だった。
「ちょ、ちょっと待って下さい! 俺も今着替えるんで! 俺行きます!」
「あ? いや、寝てていいぞ」
「でも、米の減り早いのって俺も食うからっすよね?
俺行って来ますよ、先輩こそ寝てて下さいって」
俺の返事を待たずに御子柴がベッドから抜け出して、床から散らばった服を拾い上げて、着替えていく。
「そこら辺は気にすんな。ま、でも一緒に行った方が、おまえも食いたいもん選べていいか」
「一緒に行くんすか?」
「何だ、その迷惑そうな口ぶり」
「や、そういうわけじゃないっすけど」
そう口では言いつつ、複雑そうな表情を浮かべている。
何か余計なこと考えてやがるな、これは。
俺の家に、入り浸りになりつつある癖に、ふとした瞬間に周りの目が気になるらしい。
堂々としてりゃいいのに、基本的にこいつ小心者だからなぁ。
家の中で二人きりだと、結構あからさまに甘えてきたりする癖に、外ではそれを悟らせまいとやっきになっているように思える。
……正直、あんまり効果ねぇんだけどな。
御子柴はそもそも分かりやすいから。
なんで、俺としてはもう色々吹っ切ってしまっているが、こいつはいつそれに気付くのか。
用意を終わらせた御子柴と並んで家を出ながら、そんなことを思ったりした。
***
マンションを出た時には、まだ暗かった空は明るみ始めていて、コンビニで買い物を済ませて出たら、完全に夜は明けていた。
「あー、この時間だとやっぱり人いないけど、余計寒さが身に染みますね」
「実際、気温も低いしな。仕方ねぇだろ。
ま、冬の空気は清々しくて、結構俺は好きだけどな。
つか、背ぇ丸めて歩くなよ、みっともねぇ。
せっかくのイケメンが勿体ないだろ」
しゃんとしてりゃ、女の視線を集め放題のイケメンは、寒さで縮こまっている。
これはこれで可愛いっていうやつもいるだろうが、どうにも勿体ない。
ただ、俺が御子柴を見せびらかしたいだけかも知れないが。
「どうせ、誰かいるわけでもなし、ほっといて下さい!
寒いもんは寒いんすよ!」
ああ、そうか。
人目がなければ結構適当だったんだよな、こいつ。
ま、人目がなければないで、寒いからこそ出来ることもあった。
「……っとに、仕方ねぇなぁ」
「……わ!?」
御子柴のコートのポケットに、手を突っ込んで、ポケットの中にあった御子柴の手を軽く握る。
少しひやりとした手がびくりと動いた。
その瞬間、御子柴が辺りをきょろきょろを見回したのに、つい笑ってしまった。
「心配すんな。人がいねぇのは確認してやってるっつの」
少なくとも通りにはいない。
家の窓から見てるのはいるかも知れないが、そこについてはあえて口にしないでおく。
「……脅かさないで下さいよ。先輩、こんな寒いのに手ぇあったかいっすね」
「体温高ぇんだよ、割りと。おまえなら、よく知ってんだろ?」
「っ!!」
わざと煽るように言ってやると、御子柴の目元が赤くなり、ポケットの中で握っている手が心持ち温かくなった。
予想通り過ぎる。
多分、昨夜のセックスでも思い出したんだろう。
布団から出た肩が薄ら寒いとか、ぶつぶつ言ってたところを、最終的には暑いって言わせるくらいには攻め立てたアレを。
「御子柴。……おまえ、分かりやすいなぁ、ホント」
ポケットの中の手を、指先だけでそっと撫でると、さらに手が温かくなったのを感じた。
「…………外では勘弁して下さいって」
「冬で良かったなぁ、おまえ。コート着てるから勃ってても分からない季節で」
「勃……っ! ……て、なん……か」
「家着いてから、確認してもいいか?」
正直、確認するまでもねぇなってくらいだけど。
御子柴の表情は、既にあまり人目に晒したくない程度には色っぽくなってる。
寒さで赤くなっている顔じゃない。
「…………マジ、勘弁して下さい」
そんな風に小さく呟きつつも、それまで指を動かさなかった御子柴の手が動いて、俺の指を握り返してくる。
こういうとこがつくづく可愛いよな、こいつ。
今朝は朝飯をコンビニで買ってきたから、作らずに済むわけだし、御子柴を味わう時間くらいあるなと考えながら、マンションのエントランスに入った。
- Memo
- 2015/1/10のワンライから『明け方の街』でもう一つ書いた話。
文章整頓したら、堀みこのエロ無しがなかったので書こうとしたけど、結局最後はエロ要素入ったというw
pixivではShort Stories 02に収録してあります。