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明け方の街(堀みこVer)

※二人が社会人で付き合っている前提での話です。ご注意を。

[御子柴Side]

 

「あれ……? 先輩どっか行くんすか?」

 

まだ、外が暗いような時間にごそごそ音がしてたと思ったら、先輩が着替えて、今にも外出しようとしているところだった。

 

「ん、ああ。悪い、起こしちまったか。

米切れてたから、ちょっとコンビニ行って、何か朝飯買ってくるわ。

どうせ、煙草も切れそうだったし」

「ちょ、ちょっと待って下さい! 俺も今着替えるんで! 俺行きます!」

「あ? いや、寝てていいぞ」

「でも、米の減り早いのって俺も食うからっすよね? 

俺行って来ますよ、先輩こそ寝てて下さいって」

 

結構、先輩の家には入り浸っているから、適度な頃合いを見計らって光熱費やら食費やらを渡してはいる。

けど、不足してるものを勝手に買い足して良いのかどうかまでは、踏み込み過ぎのような気もしてしまって、イマイチどうしていいものか分からない。

床に散らばった服を慌てて拾って、着替える。

こんな時間のコンビニなら、大して人にも会わねぇだろうし、ワックスとかは使わなくていいよな。

先輩だって、前髪下ろしたまんまなんだし。

 

「そこら辺は気にすんな。ま、でも一緒に行った方が、おまえも食いたいもん選べていいか」

「一緒に行くんすか?」

「何だ、その迷惑そうな口ぶり」

「や、そういうわけじゃないっすけど」

 

早朝から、男二人でコンビニで、朝飯買うっておかしくねぇ?

アヤシイ関係とか思われたりしねぇかな。

実際、アヤシイ関係なんで、否定も出来ないとこではあるんだけども。

……いや、俺が考えすぎか。

堂々としてりゃ、そんな不審がられずに済むよな、きっと。

そんな事を考えながら、身支度を済ませた。

 

***

 

マンションを出ると、さっきまでは暗かった空が明るみ始めていて、コンビニに行き、買い物を済ませた頃には完全に夜が明けていた。

 

「あー、この時間だとやっぱり人いないけど、余計寒さが身に染みますね」

 

どうせ、行くのはコンビニだけだからと手袋をしてこなかったのを、少しだけ後悔した。

片手はコンビニで買ったものを持ってるから、仕方ないとして、もう一方の手はせめてとコートのポケットに突っ込む。

温かい飲み物の一つでも買っておきゃ良かった。

先輩はといえば、やっぱり手袋はしてないけど、特にポケットに手を入れてはいない。

 

「実際、気温も低いしな。仕方ねぇだろ。

ま、冬の空気は清々しくて、結構俺は好きだけどな。

つか、背ぇ丸めて歩くなよ、みっともねぇ。

せっかくのイケメンが勿体ないだろ」

「どうせ、誰かいるわけでもなし、ほっといて下さい!

寒いもんは寒いんすよ!」

「……っとに、仕方ねぇなぁ」

「……わ!?」

 

俺のコートのポケットに、先輩の手が突っ込まれる。

ポケットに突っ込んでいた手を握られて、思わず瞬時に周囲を見回してしまったが、先輩が意地の悪そうな顔で笑う。

 

「心配すんな。人がいねぇのは確認してやってるっつの」

「……脅かさないで下さいよ。先輩、こんな寒いのに手ぇあったかいっすね」

「体温高ぇんだよ、割りと。おまえなら、よく知ってんだろ?」

「っ!!」

 

その言葉の意味がどういう事かなんて、問いただすまでもない。

それこそ、昨夜だって全身で思い知らされたばかりだ。

……ああ、くそ。今ので色々思い出しちまったじゃねぇか。

 

「御子柴。……おまえ、分かりやすいなぁ、ホント」

 

ポケットの中の握られた手が、指先だけですっと撫でられて、それこそ俺の方の体温が上がる。

 

「…………外では勘弁して下さいって」

「冬で良かったなぁ、おまえ。コート着てるから勃ってても分からない季節で」

「勃……っ! ……て、なん……か」

「家着いてから、確認してもいいか?」

「…………マジ、勘弁して下さい」

 

そう言いながらも、ポケットの中の手を追い出せないどころか、先輩の指を握り返してしまうあたりで、きっとバレバレなんだろう。

朝飯より先に食われそうな予感を抱きつつ、マンションに戻った。

 

[堀Side]

 

「あれ……? 先輩どっか行くんすか?」

 

なるべく御子柴を起こさないよう、静かに動いていたつもりだったが、結局起こしてしまっていたらしい。

コートを着たところで、声がかかった。

 

「ん、ああ。悪い、起こしちまったか。

米切れてたから、ちょっとコンビニ行って、何か朝飯買ってくるわ。

どうせ、煙草も切れそうだったし」

 

昨日の朝の時点で、帰りに米を買って帰るつもりだったのに、すっかり忘れてしまっていたのは不覚だった。

 

「ちょ、ちょっと待って下さい! 俺も今着替えるんで! 俺行きます!」

「あ? いや、寝てていいぞ」

「でも、米の減り早いのって俺も食うからっすよね? 

俺行って来ますよ、先輩こそ寝てて下さいって」

 

俺の返事を待たずに御子柴がベッドから抜け出して、床から散らばった服を拾い上げて、着替えていく。

 

「そこら辺は気にすんな。ま、でも一緒に行った方が、おまえも食いたいもん選べていいか」

「一緒に行くんすか?」

「何だ、その迷惑そうな口ぶり」

「や、そういうわけじゃないっすけど」

 

そう口では言いつつ、複雑そうな表情を浮かべている。

何か余計なこと考えてやがるな、これは。

俺の家に、入り浸りになりつつある癖に、ふとした瞬間に周りの目が気になるらしい。

堂々としてりゃいいのに、基本的にこいつ小心者だからなぁ。

家の中で二人きりだと、結構あからさまに甘えてきたりする癖に、外ではそれを悟らせまいとやっきになっているように思える。

……正直、あんまり効果ねぇんだけどな。

御子柴はそもそも分かりやすいから。

なんで、俺としてはもう色々吹っ切ってしまっているが、こいつはいつそれに気付くのか。

用意を終わらせた御子柴と並んで家を出ながら、そんなことを思ったりした。

 

***

 

マンションを出た時には、まだ暗かった空は明るみ始めていて、コンビニで買い物を済ませて出たら、完全に夜は明けていた。

 

「あー、この時間だとやっぱり人いないけど、余計寒さが身に染みますね」

「実際、気温も低いしな。仕方ねぇだろ。

ま、冬の空気は清々しくて、結構俺は好きだけどな。

つか、背ぇ丸めて歩くなよ、みっともねぇ。

せっかくのイケメンが勿体ないだろ」

 

しゃんとしてりゃ、女の視線を集め放題のイケメンは、寒さで縮こまっている。

これはこれで可愛いっていうやつもいるだろうが、どうにも勿体ない。

ただ、俺が御子柴を見せびらかしたいだけかも知れないが。

 

「どうせ、誰かいるわけでもなし、ほっといて下さい!

寒いもんは寒いんすよ!」

 

ああ、そうか。

人目がなければ結構適当だったんだよな、こいつ。

ま、人目がなければないで、寒いからこそ出来ることもあった。

 

「……っとに、仕方ねぇなぁ」

「……わ!?」

 

御子柴のコートのポケットに、手を突っ込んで、ポケットの中にあった御子柴の手を軽く握る。

少しひやりとした手がびくりと動いた。

その瞬間、御子柴が辺りをきょろきょろを見回したのに、つい笑ってしまった。

 

「心配すんな。人がいねぇのは確認してやってるっつの」

 

少なくとも通りにはいない。

家の窓から見てるのはいるかも知れないが、そこについてはあえて口にしないでおく。

 

「……脅かさないで下さいよ。先輩、こんな寒いのに手ぇあったかいっすね」

「体温高ぇんだよ、割りと。おまえなら、よく知ってんだろ?」

「っ!!」

 

わざと煽るように言ってやると、御子柴の目元が赤くなり、ポケットの中で握っている手が心持ち温かくなった。

予想通り過ぎる。

多分、昨夜のセックスでも思い出したんだろう。

布団から出た肩が薄ら寒いとか、ぶつぶつ言ってたところを、最終的には暑いって言わせるくらいには攻め立てたアレを。

 

「御子柴。……おまえ、分かりやすいなぁ、ホント」

 

ポケットの中の手を、指先だけでそっと撫でると、さらに手が温かくなったのを感じた。

 

「…………外では勘弁して下さいって」

「冬で良かったなぁ、おまえ。コート着てるから勃ってても分からない季節で」

「勃……っ! ……て、なん……か」

「家着いてから、確認してもいいか?」

 

正直、確認するまでもねぇなってくらいだけど。

御子柴の表情は、既にあまり人目に晒したくない程度には色っぽくなってる。

寒さで赤くなっている顔じゃない。

 

「…………マジ、勘弁して下さい」

 

そんな風に小さく呟きつつも、それまで指を動かさなかった御子柴の手が動いて、俺の指を握り返してくる。

こういうとこがつくづく可愛いよな、こいつ。

今朝は朝飯をコンビニで買ってきたから、作らずに済むわけだし、御子柴を味わう時間くらいあるなと考えながら、マンションのエントランスに入った。

Memo
2015/1/10のワンライから『明け方の街』でもう一つ書いた話。
文章整頓したら、堀みこのエロ無しがなかったので書こうとしたけど、結局最後はエロ要素入ったというw
pixivではShort Stories 02に収録してあります。

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