堀みこで姫初めその3
- 2015/01/03 03:46
- Novel(R-18), 堀みこ(R-18)
- 月刊少女野崎くん, 堀みこ, pixivUP済, 社会人設定, 季節イベント, pictBLandUP済
※二人が社会人で付き合っている前提での話(not不倫堀みこ)です。ご注意を。
[堀Side]
「あー、やっぱりここが一番落ち着く」
俺の家に来て早々、煙草を取り出して吸っていた御子柴が、煙草の煙を吐き出しながら、ぼそりとそんなことを言う。
正月だから、俺も昼までは実家に戻っていたが、御子柴も同じく実家にいた。
そして、自宅に戻る前に俺の家に寄った。
こいつ、自分の家より、俺の家にいることの方が多いんじゃねぇのと最近思うが、そこは言わずにおく。
「あー。おまえ、実家じゃ煙草一切吸えないんだっけ?」
「そうっす。うちの親どっちも煙草嫌いなんで。
実家帰省中は全然吸ってなかったんすけど、煙草の匂いが結構残ってるみたいで、凄ぇぶつくさ言われました」
「吸わないヤツからしたら、ちょっと吸っただけでも、かなり匂うらしいからなぁ、煙草。
俺のとこも母親は全く吸わねぇから、結構言ってくる。
あ、一本貰うぞ」
「どうぞ」
テーブルの上に無造作に置かれた、御子柴が持っていた煙草の箱から一本取り出した。
テーブルにはライターも置いてあるが、そっちには手を伸ばさず、指で御子柴を呼んだ。
俺の意図を察した御子柴が、俺に近寄って軽く身を屈める。
御子柴の吸っている煙草の先に、俺も煙草を咥えた状態で触れさせ、御子柴の煙草から火を移した。
「ん、センキュ」
「いえ」
ちゃんと火が着いたのを確認すると、御子柴が離れる。
紫煙を燻らせる横顔を見ながら、イケメン顔だとこういうのも様になるなぁなんて考えた。
俺は成人して早々に煙草を覚えたが、御子柴が吸い始めたのは俺の影響だ。
当初、散々咳き込みながら無理して吸っているように思えたので、無理してまで吸わなくてもいいじゃねぇかって言ったことがあったが。
――だって、これ吸ってたら先輩と同じ匂いになるじゃないっすか。
ほんのり頬を染めながら、そんな可愛いことを言いやがった。
だから、こいつの吸っている煙草は俺と同じ銘柄だ。
ついでに言うなら、ライターは俺が御子柴に贈ったやつで、俺も全く同じものを揃いで持っている。
何だかんだで、御子柴が煙草を吸うことにも慣れた今となっては、ふとした瞬間にそんなことを思い出して、嬉しくなったりもする。
「もう、ただでさえそろそろ結婚しないのかとか言われて、ストレスたまるのに、さらに煙草も吸えないって、ホント堪んなかったっすよ。
先輩んとこ、そういうの言われません?」
「まぁ、言われるけどな。この歳だから仕方ねぇだろ。
どこの家も一緒だ、そりゃ」
「ですよね」
社会人も数年目になると、周囲から結婚話がちらほら持ち上がり始めるから、どうしても結婚はまだかなんて言われ始めてしまう。
今のところは、まだ結婚する気はない、で押し通してるが、いつまで持つことやら。
煙を吐き出しながら、隣の御子柴を見上げたら、御子柴も俺の方を見ていて、双方の視線が重なった。
結婚する気が全く起きない理由の一つは、こいつと過ごす時間が意外に心地良いからだ。
いつまで、続けるつもりなのか自分でもよくわからないが、この関係をあえて終わらせようとも思えないのも事実だった。
まだ、それなりの長さが残っていた煙草を灰皿に押しつけて火を消すと、御子柴も俺と同じように煙草を吸うのを止めて、灰皿に押しつけた。
そのまま、お互いに何も言わなかったが、ごく自然に唇が触れ合う。
御子柴の口の中を舌で探ると、すっかり馴染んだ煙草の味がした。
御子柴の赤くなってる耳を触りながら唇を離すと、早くも潤み始めていた目が開く。
「今日、泊まっていくよな?」
「そのつもりっす」
「ベッド行くか。昼のうちにシーツ変えといたから、洗い立てで寝っ転がると気持ちいいぜ」
「……っ」
益々、赤くなった耳に一度だけ口付けると、御子柴の返事は待たずにさっさと寝室に向かった。
***
「せ……んぱ……っ、先輩……っ!」
「なん……だよ」
四つん這いになった御子柴が、後ろ側に右手を伸ばしてきた。
掴んで欲しいんだろうなと解釈したから、握ってやると繋がっている場所が締まった。
「先輩、は……将来、結婚、とか考えて……るんす、か」
「……今する話かよ、それ」
「くあっ!」
もっと深い部分を突くと、御子柴の背が震えた。
俺たちは同性だから、結婚なんて区切りはない。
結婚話っていうのは、イコール別の相手との話ってことだ。
そんなのセックスの最中に聞きたい話ではない。
こいつだって、それは一緒だろうに。
枕に顔を押しつけている状態で、俺に顔が見えないから、そんな事聞きやがったな、こいつ。
そもそも、今日この体位でやりたいっつったのも御子柴だ。
そんなんで、俺を誤魔化せると思ったのなら甘い。
「そういうおまえはどうなんだよ」
「どう……って……」
「人に聞くなら、自分からも言えよ。
…………実琴。おまえは誰かと結婚して、家庭持って。
子ども欲しいとか思ってんのか?」
「お……れは……っ!? んんんっ!!」
動きを一旦止めて、御子柴の中から抜け、御子柴が俺の動作に戸惑っている間に、御子柴の身体を仰向けにし、直ぐに足を抱えて再び突き入れた。
真っ正面から御子柴の顔を見ようとすると、御子柴が慌てて腕で顔を覆い隠す。
隠れる前に見えた目が、哀しい色を浮かべて涙ぐんでいたのは見逃さなかった。
涙目なのが、快楽からなのか、そうでないのかくらいはいい加減分かる。
分かるくらいには、こいつとの付き合いは長い。
顔を覆う腕を強引に解いて、自分の腕で押さえつける。
改めて顔を見てやると、御子柴が居心地悪そうにしていたが、諦めたように溜め息を吐いた。
「……ったく。なんつー顔してんだよ、新年早々」
「だ……って」
「実家で色々言われて、ぐだぐだ考えてんだろうけど。
おまえはどうしたいんだよ」
「う、あ…………ひっ、あっ!!」
腰を動かして、弱いと知っている部分を狙って擦り上げる。
御子柴の喉から、引き攣ったような悲鳴が断続的に聞こえ始めた。
「なぁ、どうしたいんだ? 終わらせたいのか? それとも――」
「……せ、たく、な……」
乱れた吐息混じりの声が、上手く聞き取れない。
「あ?」
「終わらせ、たく、なんか、ねぇ……よっ!」
「……なら、答えなんか、一つ、だろうが……っ!」
「あ、ああ、やっ、そこっ、うああ!!」
「……っ!」
押さえつけている御子柴の手が、もがくように動いて、俺の指に爪を立てる。
そこの痛みと、繋がった部分の快感が混じり合って、思考がぐだぐだになりながらイッた。
我に返ると、御子柴もイッてて、互いの腹に精液が飛び散っている。
涙でぐしゃぐしゃになった顔の御子柴は、まだ荒い呼吸が収まっていなかった。
「……バカじゃねぇの、おまえ」
「………………うる……せ……」
悪態をついたやつの頬に唇を落とす。
隠し事なんか、下手な癖に。
誤魔化そうとするとか、ホント、バカだろ。
***
「御子柴」
「……何すか」
実家での気疲れもあったのか、簡単に後始末を済ませると、御子柴は早くも夢の世界に引きずり込まれつつあるようだった。
どこか眠そうな声が俺に応じる。
「おまえんとこ、来月部屋更新時期だろ。
あそこ、もう更新しないで引き払っとけ」
「…………は?」
とろんとしてた目が、驚きに見開かれる。
呆然と俺を見てる顔に唇を寄せて、軽く口付けた。
「ここより、少し広い部屋探すぞ。
とりあえずは一緒に住むことにしようぜ」
「…………っ」
区切りとしては悪くないだろう。
どうせ、ほとんど御子柴は俺の家に入り浸っていた状態だったんだしな。
再び涙目になって、抱き付いてきた御子柴の背を優しく撫でてやりながら、一言、バカと呟くと、バカですみませんねと拗ねたような声が聞こえ、それが無性に可愛く思えた。
[御子柴Side]
「あー、やっぱりここが一番落ち着く」
正月早々、実家で親と軽く口論になってうんざりしていた気分は、堀先輩の家で煙草を吸っているだけで、随分楽になった。
ヘビースモーカーのつもりは全然ねぇけど、ストレス溜まったときに吸えないってのは結構キツい。
自分でもここまで煙草に依存するなんて、思ってなかった。
「あー。おまえ、実家じゃ煙草一切吸えないんだっけ?」
「そうっす。うちの親どっちも煙草嫌いなんで。
実家帰省中は全然吸ってなかったんすけど、煙草の匂いが結構残ってるみたいで、凄ぇぶつくさ言われました」
「吸わないヤツからしたら、ちょっと吸っただけでも、かなり匂うらしいからなぁ、煙草。
俺のとこも母親は全く吸わねぇから、結構言ってくる。
あ、一本貰うぞ」
「どうぞ」
俺が煙草を吸うようになったのは、先輩の影響だし、吸っている銘柄も同じものだから、煙草を貰ったり貰われたりってのは良くある。
その先輩から貰ったライターも、煙草の箱の近くに置いてあったけど、先輩はそっちには手を出さずに、指で俺をちょいちょいと呼び寄せる。
先輩の意図は伝わったから、そっちに寄っていって、少し身を屈めると、先輩が俺の吸っている煙草の先に、自分も煙草を咥えたままで先を触れさせた。
すっかり馴染んだ匂いの先輩の吐息が鼻腔を擽り、先輩の煙草に火が着く。
「ん、センキュ」
「いえ」
屈めていた身を戻して、再び先輩とは違う方向に顔を向ける。。
立ち上っていく煙を見ながら、煙草吸って何年だっけ、なんて思い返す。
最初の頃は、煙草を吸う度に咽せて咳き込んだりしたもんだけど、吸っていくうちにすっかり慣れた。
吸わなかった頃はそう煙草は好きな方でもなかったんだが、先輩が吸い始めて、何かの折にふと煙草の香りを漂わせるようになると、自分でも吸いたくなった。
せめて、何か共有するものが欲しかったのかも知れない。
基本的に俺たちは持ち物や服の趣味が合わない。
まぁ、趣味が被っていたとしても、大の男がペアルックなんて薄気味悪いし、間違ってもやる気はないけど、シャンプーや歯磨き粉みたいな日用品もことごとく違う。
唯一被っているのが、この煙草の銘柄と先輩から貰ったライターだ。
ーー学生ならともかく、社会人なんだし、この位持っててもいいだろ。
オイル交換をし、フリントのメンテナンスさえ怠らなければ、ずっと使い続けていくことが可能だって言う、世界的にも有名なメーカーのオイルライターだ。
シンプルなデザインだが質は良く、それだけに手に馴染んでいて、先輩も全く同じものを持っている。
今じゃすっかり煙草と一緒に俺の必需品だ。
これが男女だったら、揃いの指輪とかになるんだろうな、なんて考えたところでつい実家のやりとりを思い出してうんざりしてしまった。
「もう、ただでさえそろそろ結婚しないのかとか言われて、ストレスたまるのに、さらに煙草も吸えないって、ホント堪んなかったっすよ。
先輩んとこ、そういうの言われません?」
「まぁ、言われるけどな。この歳だから仕方ねぇだろ。
どこの家も一緒だ、そりゃ」
「ですよね」
ーーあんたもそろそろいい人とかいないの?
そろそろ孫の顔でも見たいわねぇなんていう親の言葉が、胸の奥に棘のように突き刺さって残っている。
俺は一人っ子で兄弟もいないから、孫をというなら俺しかいない。
そんなことは分かってる。
分かっているけど、結婚しようという気にはどうにもなれない。
そうは言っても、男同士で結婚出来るわけじゃないし、いつまでこんな風に先輩と続けていけるのかな、とは思う。
結婚なんて区切りがあるわけでもない関係は、一体どうしたらいいんだろう。
ちらっと先輩を見ようとしたら、先輩も俺を見上げていて目が合った。
先輩がふ、と表情をほんの僅か和らげて、吸っていた煙草を灰皿に押しつける。
まだ、長さが残っていた煙草を消した意味は、深く考えなくても分かった。
いつの間にか分かるようになっていた。
俺も自分の煙草を灰皿に押しつけて、火を消す。
煙草を手放した瞬間、先輩の手が俺の頭の後ろに回される。
近づいた顔に目を閉じて迎え、唇が重なった。
まだ煙草の味が強く残ってるけど、これ同じように先輩も感じてるんだろうな。
煙草の味と入り込んで来た舌の感触に、あっさり興奮が昂ぶっていく。
俺の頭の後ろに回されていた手は、耳へと移動し、縁を優しく撫でるように触っていく。
唇が離れて目を開けると、先輩の目が欲情の色を映していた。
何度も見ているってのに、この目に捉えられると胸が苦しい。
「今日、泊まっていくよな?」
「そのつもりっす」
「ベッド行くか。昼のうちにシーツ変えといたから、洗い立てで寝っ転がると気持ちいいぜ」
「……っ」
耳に口を寄せられてキスされた。
さっさと寝室に向かって歩き出した先輩の背を追うように、俺も足を踏み出した。
***
「せ……んぱ……っ、先輩……っ!」
「なん……だよ」
どことなく、実家でのやりとりを思い出して顔に出しそうになっていたから、今日は俺の方から後ろから抱いて欲しいと頼んだ。
珍しいな、なんて言われたけど、先輩はそれ以上は聞かずに、俺の言うとおりにしてくれた。
ただ、いざ身体を繋げたら、先輩と触れている部分が少ないのが心許なくて、つい右腕を後ろに伸ばす。
伸ばした手を重ねて貰ったことに安堵して、今なら、と先輩に尋ねてみる。
「先輩、は……将来、結婚、とか考えて……るんす、か」
「……今する話かよ、それ」
「くあっ!」
微かに声に不機嫌さを含ませて、深い部分を突かれた。
繋がった部分から背骨を通っていくように、快感と後ろめたさが駆け抜けていく。
聞きたくはない話だけど、しらふでなんか余計に聞けなかった。
さっきよりも強く枕に顔を押しつけて、先輩からは顔が見えないようにした。
「そういうおまえはどうなんだよ」
「どう……って……」
「人に聞くなら、自分からも言えよ。…………実琴」
たまにしか呼ばれない、下の名前を口にされる。
「おまえは誰かと結婚して、家庭持って。
子ども欲しいとか思ってんのか?」
「お……れは……っ!? んんんっ!!」
先輩と繋いでいた手が離れて、身体が離れて。
動揺している間に、身体をひっくり返された。
先輩の顔が見えたと思った瞬間に、再び足の間に衝撃が走る。
今の顔を見られたくなくて、慌てて腕で顔を覆い隠す。
が、先輩はこんな時に流してくれる相手じゃない。
俺の腕を解いて、両方の手首を先輩の手で押さえつけられてしまった。
振りほどこうにも、昔から俺より先輩の方が力があるから、振りほどけない。
諦めて先輩の顔を見ると、据わった目が俺を真っ直ぐ見つめていた。
「……ったく。なんつー顔してんだよ、新年早々」
「だ……って」
「実家で色々言われて、ぐだぐだ考えてんだろうけど。
おまえはどうしたいんだよ」
「う、あ…………ひっ、あっ!!」
弱い部分を擦られて、声が抑えられない。
一番最初に先輩と身体を繋げた時は、ただ痛かった。
女と違って、元来排泄器官なんだから、それが当たり前だろうけど、幾度も触れて、抱かれて。
中で擦られると気持ち良い場所があると知って、煽られ、先輩の体温が愛しいと感じるようになった。
体温だけじゃなく、吐息も声も匂いもだ。
「なぁ、どうしたいんだ? 終わらせたいのか? それとも――」
終わらせたいのか、という言葉がそんな思いを抉っていく。
終わらせたいわけがない。
「……せ、たく、な……」
「あ?」
「終わらせ、たく、なんか、ねぇ……よっ!」
けど、続けた先がどうなるのかも見えない。
そんな状態で先輩の全部が欲しいなんて、どうして言える?
なのに、先輩は。
「……なら、答えなんか、一つ、だろうが……っ!」
「あ、ああ、やっ、そこっ、うああ!!」
答えはたった一つだって言う。
強い快感に押しつぶされそうで、先輩の指を掴むも留まらない悦楽は容易く限界を超えていった。
「……っ!」
望んでいいのかと、言葉にしなくても――先輩の表情がもう答えを出していた。
苦笑いを含めた顔が俺に語りかける。
「……バカじゃねぇの、おまえ」
「………………うる……せ……」
頬に触れた先輩の唇が、どうにも気恥ずかしかった。
***
「御子柴」
「……何すか」
疲れていたのか、後始末も終わらせた頃には睡魔が容赦なく誘いをかけてきていた。
素肌で感じる温もりの誘惑にも抗いがたい。
「おまえんとこ、来月部屋更新時期だろ。
あそこ、もう更新しないで引き払っとけ」
「…………は?」
が、そんな誘惑は今の一言で何処かに行った。
部屋更新しないで、引き払えって。
それってどういうことかと問いかける前に、先輩が唇を重ねて来た。
ほんの少しだけ掠めていった唇は直ぐに離れて、続きの言葉を紡ぐ。
「ここより、少し広い部屋探すぞ。
とりあえずは一緒に住むことにしようぜ」
「…………っ」
もっと一緒にいることが出来るのかと思うと堪らなかった。
……悪い。親父、お袋。
でも、たった一度の人生なら、自分で納得のいく相手と一緒に生きて行きたい。
泣き顔を見られたくなくて先輩に抱き付いたら、お見通しだと言わんばかりにバカと言われて、背中を撫でられる。
バカ、に籠められた優しい響きも、温かい手も、俺はもう手放せない。
「……バカですみませんね」
俺がバカな分は先輩がフォローしてくれるんだろうから、気にするのはやめにした。
- Memo
- 大人な関係での堀みこ。
年始は親戚集まったりするから、それなりの年齢になると色々面倒くさいよねーというネタ。
シガーキスとか、お揃いの煙草にライターとか、堪らないです、私が!←
不倫堀みことは違って、一度も別れることなく続いていくパターン。
pixivでは姫初め×10に収録してあります。