見える位置に残された痕
- 2015/02/19 03:47
- Novel(R-15), 堀みこ(R-15)
- 月刊少女野崎くん, 堀みこ, 3つの恋のお題, pictBLandUP済
「あれ? 御子柴。ここ虫に刺された?」
「あ? 何処だって?」
鹿島が指さした場所をイマイチ把握しかねて尋ねると、鹿島がとんとん、と指で突いた。
首の後ろ、襟足にかろうじて隠れるくらいの場所だ。
「ん、特に痒くはな…………あ」
虫刺されとしての心当たりはないが、別の心当たりに思いついて、思わず顔が赤くなった。
「ん?」
「あ、いや、何でもねぇ! そういや、昨晩なんか蚊が部屋ん中に一匹いてさ!」
「ああ、まだちょっと暑い日あるもんねぇ」
蚊というには凄ぇでっかい蚊だけどな!
堀政行っていう名前のな!
……とは、勿論鹿島に言えるはずもない。
幸い、鹿島もそれ以上はツッコんで来なかったから、適当に話題を変える。
…………くそ、見える位置に痕残すのやめてくれって前にも言ったのに、先輩は!
多分、セックス終わってうとうとしている時にやられたな。
そういえば、昨日はバックでした後、ついそのままうつ伏せになっていたんだった。
どうせ、明日会う約束してるから、後で問いたださねぇと。
***
「で。何で前にも言ったのに、俺も気付かないような場所に痕残したのか、聞かせて貰っていいっすかね」
「何だ、思ったより気付くの早かったな。誰かに指摘されでもしたか?」
翌日。
会って早々、先輩に問いただしたが、先輩は涼しい顔して受け流す。
「鹿島ですよ。こんな場所じゃ何かの折に目につくに決まってるじゃないっすか!」
「ああ、おまえと鹿島だと身長近いもんな。どうせ、虫刺されで誤魔化せたんだろう? なら気にすることねぇだろ」
「気にしますよ! 今は誤魔化されてくれてたって、それがずっと続くなんて限んねぇだろ!? っとに、そんなん言ってると、先輩にも見える場所に痕残しますよ!?」
「俺はいいぜ、別に」
「……は?」
さらっと返された言葉に、しばし思考回路が停止した。
「あの、先輩。俺が言った意味分かってます?」
「ん? だから、おまえが俺に痕残してくれるって話だろ? 見える場所に」
「……いいんすか、それ」
「キスマークなんて、男の勲章だろ。俺は特に嫌じゃねぇよ」
ニヤリと笑って応じるあたりに目眩がする。
恥じらいってもんは無いのかよ、先輩。
曲がりなりにもまだ学生だぞ、俺たち。
「先輩には、同じ事しても仕返しになんねぇってのだけは理解しましたよ。……くそ、面白くねぇ」
「何だ、付けないのか?」
「…………どうやったら、痕って残るんすかね」
「そこからかよ」
低い笑い声が癪だと思いつつも、どうやら実践で教えてくれるつもりらしいから、シャツの裾を捲られるのは止めずにおく。
見えない場所なら、俺だってそんなに困らない。
……寧ろ、嬉しくもあるが、それを言ったが最後、歯止めもなくなりそうだから、そこはあえて黙っておく。
「結局のところ、軽い内出血だからなー、これ。こうして、強めに何度か同じ場所を吸うと…………」
「ん……っ」
腹に触れた先輩の唇が、俺の皮膚を吸い上げて、其処からじわりと快感が広がる。
先輩が唇を離したときには、しっかりと痕が残っていた。
「ほれ。要領わかったか?」
「ああ……まぁ、何となく」
せっかくだから、実践してみようと、俺も先輩の腹に付けようかと思ったが、そういや見えるとこでも構わねぇって言ったなと、首筋に唇を寄せてみる。
耳の少し下の辺りを吸ってみると、少しだけ先輩の肌が震えた。
あー……先輩でもここら辺弱かったりすんのかと、ちょっとばかり良い気分だ。
唇を離してみると、ちゃんと痕が残った。
「……先輩、残していいって言いましたもんね」
「ああ、言った。そこは否定しない。ところでな、御子柴」
「ん? 何すか?」
「俺、三倍返しが信条なんだよな。知ってたか?」
「え、ちょ、待っ……」
がしっと肩を掴まれて、抱き寄せられて。
あっという間に首筋に先輩の唇が触れて、其処の皮膚が吸い上げられる。
「っ!!」
「というわけで、あと二ヶ所。適当な場所に残してやる」
「さっきの腹は!? そっち入れたら、あと一ヶ所で済むんじゃないんすか!?」
「ありゃ、ノーカンだ。おまえに教えるためにつけたんだから」
どんな屁理屈だよ!と思いつつも、先輩は腕の力を緩める様子がない。
煽るようなこと言っちまったのが間違いだったかと、後悔しながら諦めた。
- Memo
- 3つの恋のお題にあった中から。
普段は攻が受に対して、積極的につけるキスマークを受が攻に気まぐれでつけて、逆襲されるパターンが好きです。
pixivではShort Stories 04に収録してあります。