2015/01/10のフリーワンライ(第32回)から『明け方の街』。
明け方といえば、朝チュンかなと思った。
pixiv纏め時に堀視点を追加しました。
pixivではShort Stories 03に収録してあります。
※二人が社会人で同棲している前提での話になっております。
初出:2015/01/10 ※堀視点は2015/04/07
文字数:3656文字
[鹿島Side]
まだ、起きるには随分早いだろう時間に目が覚めてしまった。
カーテンの隙間から、部屋に差し込む光はまだ薄暗い。
隣で眠っている先輩を起こさないように、そうっと枕元に置いてあったスマホを手にして、時間を確認するとやっぱりまだ四時半。
だけど、もう一度眠ろうにも何となく目が覚めてしまった。
静かにベッドから抜け出したところで、少しひんやりした空気が肌をさす。
「わ、寒っ」
そういえば、昨夜はセックスした後は疲れてしまって、何も着ないままで寝ちゃったんだった。
床に無造作に散らばったままの二人分の服の中から、普段寝るときに使用しているロングTシャツだけ見つけると、そそくさと着て窓辺のところまで移動する。
少しだけカーテンの隙間を広げて、外を見るとちょうど日が昇り始めたところだった。
闇色の空は日の光で柔らかなベールを纏い、地平線ではオレンジのグラデーションが夜明けを主張している。
そんな時間だけど、窓の下を見下ろすと新聞配達の途中だろう人とか、ジョギングをしている人、車や自転車も時折行き交っていた。
人の生活時間って本当に様々なんだなぁと、こういう時に実感する。
他の時間帯に比べれば、動いている人はずっと少ないんだろうけど、静かなだけでちゃんと街は息づいている。
こういう光景を見るのは結構好きかも知れない。
「……何だ、眠れないのか?」
そうやって、窓から風景を眺めていたら、不意に声を掛けられて我に返った。
ベッドの方を見ると、先輩が身体を起こしているところだった。
「すみません、起こしちゃいましたか」
「いや、起こされたってわけでもねぇけど。何見てんだ?」
「もうちょっとで日が昇りそうだから、目が覚めたついでに見ておこうかなって」
「ふーん。……喉渇いたから、コーヒー淹れる。おまえも飲むか?」
「飲みます!」
「おう。ちょっと待ってろ」
先輩もベッドから出ると、床から下着とスウェットの上下を拾って、手早く着替え、キッチンに向かった。
キッチンの方から、カチャカチャと物音が微かに聞こえてくる。
その間にも窓の外では、少しずつオレンジのグラデーションが広がっていき、太陽が僅かに顔を覗かせ始めた。
あまり、普段夜明けの時間を窓から見ていることなんてないから新鮮だ。
「ほれ。淹れてきたぞ」
「あ、ありがとうございます」
コーヒー入りのマグカップを受け取って、口に含んだ。
温かいコーヒーは、少し冷えていた身体に染みて心地良い。
私たちが同棲を始めたタイミングで、千代ちゃんと野崎は結婚し、その式の時の引き出物で貰ったペアのマグカップ。
最近、私たちが飲み物を飲む時は、何となくこれを選ぶことが多くなっていた。
今日もそう。
外だと別にペアルックをしたいとか、そういうのはあんまりないんだけど、家の中でこうして同じ容れ物で同じ飲み物を飲んだりするのは、何だか嬉しい。
「あー、もう大分日が昇ったな」
「そうですね。ちょっと目を離してる隙に結構違ってきますよね、この時間帯って。普段そんなに意識しないですけど」
「こんな時間でも結構人いたりするもんだよなぁ。何か、こう静かだけど街はちゃんと生きてるって感じがするのが結構好きかも知んねぇな、俺。……ん? 何だ、どうした?」
多分、顔がにやけてしまった私を不審に思ったんだろう。
先輩がそうやって尋ねて来た。
「いや、さっき私も同じようなこと思ったんで、嬉しいなーって」
「……こんだけ、一緒に居る時間増えりゃ、好みも似てくるだろ、そりゃ」
それでも、先輩も少し照れたのか、飲んでいたコーヒーをサイドテーブルに置いて、私の背後に回り込んだ。
後ろから抱き付かれて、先輩の体温が服越しに伝わってくる。
そこまでは単純に気持ち良かったのだけど。
「あ」
「うわっ」
私のTシャツの裾から、先輩の手が入り込んで来た。
声を上げてしまったのは二人同時。
ややあって、先輩の溜め息を吐いた音が聞こえてきた。
「……おまえ、下着つけてなかったのかよ」
「その、ちょっと外見るだけのつもりだったんで」
「ってことは、こっちも聞くまでもねぇな」
「あっ、ちょっ……待ってくださ……」
もう一方の手も胸の方に回されて、Tシャツの上から探られていく。
まだマグカップに残っているコーヒーを溢してしまってはマズいと、マグカップをサイドテーブルに置いたら、より遠慮なく手があちこちを探り始めた。
「せん、ぱ……ダメ、ここだと外から見え……っ」
「また、カーテン閉めときゃいいだろ」
「昨夜散々してるの、に……っ」
「昨夜は昨夜。今朝は今朝。……ベッド戻ろうぜ。冷えた身体あっためてやっから」
「もう……っ!」
まぁ、休日だから仕方ないかと思った私も私だ。
キスして来た先輩に大人しく身を任せることにして、ベッドに再び潜り込んだ。
[堀Side]
何となく薄ら寒さを感じて目覚めると、隣で寝ていたはずの鹿島がいない。
が、探すまでもなかった。
鹿島は窓辺に立って、カーテンを少し広げた隙間から外を眺めている。
零れた薄暗い日の光に照らされた顔は、寝起きだろうに相変わらず整っていて、やっぱりイケメン面してんなぁと惚れ惚れする。
一枚の絵のように様になってんだよなぁ。
「……何だ、眠れないのか?」
身体を起こしながら声を掛けると、鹿島が俺の方を振り向いた。
「すみません、起こしちゃいましたか」
「いや、起こされたってわけでもねぇけど。何見てんだ?」
「もうちょっとで日が昇りそうだから、目が覚めたついでに見ておこうかなって」
「ふーん。……喉渇いたから、コーヒー淹れる。おまえも飲むか?」
「飲みます!」
「おう。ちょっと待ってろ」
少し冷えているからか、温かいコーヒーが飲みたい。
ベッドから出て、床に散らばった服の中から下着とスウェットの上下を拾い上げて着替える。
キッチンでコーヒーを淹れる準備をしながら、そういや鹿島もブラックコーヒーを飲み始めるようになって、どの位経つんだっけなぁと考えていた。
最初の頃はブラックだと苦いと、結構砂糖やミルクを入れていたが、最近はそのまま飲んでいることが多い。
別に強要したりした訳じゃないが、お互いの味覚の摺り合わせというか、共通点が増えたのは悪い気はしない。
最近よく使っている、野崎達の結婚式で貰った引き出物の白いマグカップに、二人分のブラックコーヒーを注ぎ、鹿島のところまで持っていく。
「ほれ。淹れてきたぞ」
「あ、ありがとうございます」
「あー、もう大分日が昇ったな」
カーテンの隙間からはさっきより明るくなった空が見えた。
日中や夜はあまり意識しないが、こんな夜明けや夕暮れのタイミングだと、ほんの数分目を離すだけで、光景はがらりと変わる。
「そうですね。ちょっと目を離してる隙に結構違ってきますよね、この時間帯って。普段そんなに意識しないですけど」
「こんな時間でも結構人いたりするもんだよなぁ」
カーテンの隙間から見える外では、数人の人や犬などが行き交っている。
仕事だったり、買い物だったり、散歩だったり、目的は様々なんだろうけど。
「何か、こう静かだけど街はちゃんと生きてるって感じがするのが結構好きかも知んねぇな、俺。……ん? 何だ、どうした?」
気付いたら、鹿島がニヤニヤしながら俺を見ていた。
「いや、さっき私も同じようなこと思ったんで、嬉しいなーって」
「……こんだけ、一緒に居る時間増えりゃ、好みも似てくるだろ、そりゃ」
思考もそうだが、ブラックコーヒーを鹿島が飲むようになったことだってそうだ。
二人で過ごしていく中で、こういうことを実感出来るのは嬉しい。
コーヒーの入ったマグカップをサイドテーブルに置き、鹿島の背中側から腕を回して抱き付く。
こいつ、半袖のTシャツ一枚なんだもんなぁ。
冷えた身体を温めるついでに、少しばかりの悪戯心で鹿島のTシャツの裾から手を忍ばせる。
「あ」
「うわっ」
指先に触れたのは下着じゃなく、そのままの肌。
昨夜、散々此処に触れた感触が生々しく甦る。
毛が指を擽っていく様は嬉しくもあるが、少し呆れもした。
いくらなんでも無防備過ぎんだろ。
「……おまえ、下着つけてなかったのかよ」
「その、ちょっと外見るだけのつもりだったんで」
「ってことは、こっちも聞くまでもねぇな」
「あっ、ちょっ……待ってくださ……」
胸にも手を回して、Tシャツの上から探っていく。
当然のようにノーブラだから、直ぐに指先に固くなり始めた乳首の感触が伝わってきた。
鹿島もマグカップをサイドテーブルに置いたのを見計らって、手をもっと色んな場所へと這わせる。
乱れ始めた吐息に気分を良くしながら、足の間で指先を踊らせる。
「せん、ぱ……ダメ、ここだと外から見え……っ」
「また、カーテン閉めときゃいいだろ」
「昨夜散々してるの、に……っ」
「昨夜は昨夜。今朝は今朝。……ベッド戻ろうぜ。冷えた身体あっためてやっから」
「もう……っ!」
まぁ、既に興奮し始めていて温まってきてるけどな、身体。
鹿島も拒んでは来ないのをいいことに、キスして、再びベッドへと戻る。
せっかくの休日、楽しめる余裕はまだまだありそうだった。
朝チュンっていうか、ただの二回戦への流れでした……w
明け方に二人で静かな中過ごすというシチュが好きなので、堀みこでも同タイトルで書きました。
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