No.91
世界の果てまで共に
天使×堕天使のキスブラ。
報酬フレームのテキストからイメージしたパロ。
厨二設定しかないので、ポイピクではフォロ限ですが、こっちは見る人自体が少ないのでそのまま置いときます。
ブラッド視点も追加。神(モブ)が出ます。
[Keith's Side]
「……何で逃げねぇの」
オレがブラッドの胸元に突きつけた剣は堕天使を討伐するためだけに作られたもので、僅かでも触れれば存在が消滅するように出来ている。
コイツがそれを知らねぇはずはない。
なのに、抵抗する素振りも見せねぇ。
「…………ここで逃げたところで他の追っ手が来るのだろう。ならば、お前の手に掛かって終わるのも悪くないと思ったまでだ」
そう言葉にしたブラッドの目には迷いがない。
かつて、天界でもっとも神に近い天使と言われていたあの当時となんら変わりのない目だ。
――下界の争いごとにより、人間たちが……幼い子どもたちも含めた命が日々失われている。だが、神はそれは淘汰であり、必要な犠牲だと言う。だから、手出しは不要だと。俺はそれが納得出来ん。
そう言って、ブラッドは神の元へと直談判に出向いたが、直後知らされたのはブラッドが堕天したとの報告だった。
誰もが耳を疑ったし、オレも信じられなかった。
再会して、堕天した証である黒い翼を見るまでは。
だが、それ以外は何も変わっちゃいない。
融通のきかないカタブツ。己の信念のままに突き進む、以前と同じブラッドがいた。
下界で失われる命の数が減ったというのは間違いなくコイツによるものだろう。
「一応、聞くけど後悔は」
「していない」
「だよなぁ」
剣を引いて、そのまま手放す。
地に落ちた剣の衝撃音がやけに甲高く響いた。
ブラッドが失ったのは左の羽根か。
だったら、オレは右だなと手を背の方に回して、勢いに任せて自分の右の羽根をもぎ取った。
「いっ……!」
「なっ、キース!!」
ずっと平然としていたブラッドの目に初めて動揺の色が浮かぶ。
自分だってつい先日同じようなことしただろうがよ。
身体から離れた羽根は白から黒へと色を変え――気付けば視界に映る残った左の羽根も漆黒に染まっていた。
なるほどな、堕天するとこうなんのか。
背の痛みが少し和らいだのはブラッドの力だな。
堕天しても天使として持っていた力は健在ってことか。
「……馬鹿な真似を」
「いや、お前にだけは言われたくないわ、それ。……ったく、一人でさっさと決めやがって。肝心なとこで一人でどうにかしようとするのやめろよな」
普段冷静な癖にブチ切れると見境ねぇよな、全く。
「――共に来てくれるのか」
「一人より二人の方が逃げやすいだろ。オレは左側の羽根残したし、肩組んで呼吸合わせりゃ何とか飛べんじゃねぇの。能力も残ってんだし」
「なるほどな」
ブラッドと肩を組み、幾度か羽根を羽ばたかせ、タイミングを合わせて地を蹴ると呆気ないほど楽に飛び立てた。
悪いな、カミサマ。
オレももうアンタには従えねぇよ。
二度と触れなくなった剣を一瞥し、オレも天界に別れを告げた。
[Brad's Side]
――何故、介入しないのですか。あの地域は今明らかに度を超えた殺戮が行われている。放置していいはずがない。
――人は増えすぎたのだよ、ブラッド。故に世界の生態系全てに弊害を及ぼし始めている。あれは必要な犠牲だ。
――必要…………?
――全てを救い上げることなど出来ない。弱い生命が淘汰されていくのはこれまでの歴史でも繰り返されてきたことだ。浄化だと思えば良い。それでもなお、争いがやまないなら、それは世界の寿命だ。
だから、見捨てるというのか。
祝福され生まれたばかりの赤子も無残に殺されることも珍しくなくなりつつあるあの地を。
浄化、という言葉にこれほど嫌悪感を覚えたことはない。
いつだったか、キースが胡散臭いと評したその言葉の意味が今はわかる。
神が見放すというのであれば。
――せめて、この手で救えるだけでも俺が救う。
――ブラッ……!?
片翼をむしり取り、それをそのまま目の前の神に叩きつけた。
瞬く間に黒く変化した羽根にこんなに簡単だったのかと苦笑いする。
――貴方にはもう従えない。俺は俺の信じる道を行く。それを堕天と言うのなら好きに言えばいい。
――ブラッド!!
羽根を失った背の痛みを堪え、急いでその場を立ち去る。
キースに別れを告げる間もなかったことだけが心残りだったが、ここで捕らえられては本末転倒だ。
幸い、堕天しても天使の能力は失われなかったから、それを利用し、可能な限り殺戮を食い止めていたが――キリがなかった。
生命を救いつつ、堕天使を討つ天界の追っ手からも身を隠し続けるのは容易ではなく、消耗が激しくなってきたタイミングで俺の前に現れたのはキースだった。
「本当に堕ちたんだな、お前」
「…………キース」
ほんの一瞬だけ泣きそうに見えた表情に動けなくなった。
キースの掲げている剣が天界の最終兵器と謳われる堕天使を消滅させるものだと気付いても、その剣先が胸元に触れそうなところに定められても。
キースの実力は俺が誰より知っている。
そもそも、この剣を扱えるのは天界でも一握りの天使だけだ。
万事休す。
他の者の手に掛かるよりは、キースにならば――。
「……何で逃げねぇの」
「…………ここで逃げたところで他の追っ手が来るのだろう。ならば、お前の手に掛かって終わるのも悪くないと思ったまでだ」
「一応、聞くけど後悔は」
「していない」
俺の命運もここまでか、という悔いはあれど、堕天したことについての後悔は微塵もない。
「だよなぁ」
知っていた、と言わんばかりの口調でキースが剣を引き、そのまま持っていた剣を地面に落とす。
どういうつもりかと問い質そうとした刹那、キースが自らの片翼をもぎ取った。
「いっ……!」
「なっ、キース!!」
もぎ取られ、地に落ちたキースの翼が黒く染まる。
そのまま残っている方の羽根も、あっという間に全て黒くなった。
急いで膝をついたキースに駆け寄り、回復の術を使う。
「……馬鹿な真似を」
「いや、お前にだけは言われたくないわ、それ。……ったく、一人でさっさと決めやがって。肝心なとこで一人でどうにかしようとするのやめろよな」
普段冷静な癖にブチ切れると見境ねぇよなとぼやかれて、一瞬返す言葉に詰まる。
「――共に来てくれるのか」
「一人より二人の方が逃げやすいだろ。オレは左側の羽根残したし、肩組んで呼吸合わせりゃ何とか飛べんじゃねぇの。能力も残ってんだし」
「なるほどな」
キースの飛び方の癖は知っているし、逆も然りだ。
肩を組んで、羽根の動きを合わせ、音が重なったところで地を蹴る。
自分一人で両翼で飛んでいたときとそう変わらずに飛ぶことが出来た。
「お、いけたいけた。よし。あの剣を回収しに来られる前にとりあえずここから離れようぜ」
「ああ」
一人ではなくなったという心強さに口元が緩みそうになりながら、晴れ渡る空を二人で飛び続けた。Close
#キスブラ
天使×堕天使のキスブラ。
報酬フレームのテキストからイメージしたパロ。
厨二設定しかないので、ポイピクではフォロ限ですが、こっちは見る人自体が少ないのでそのまま置いときます。
ブラッド視点も追加。神(モブ)が出ます。
[Keith's Side]
「……何で逃げねぇの」
オレがブラッドの胸元に突きつけた剣は堕天使を討伐するためだけに作られたもので、僅かでも触れれば存在が消滅するように出来ている。
コイツがそれを知らねぇはずはない。
なのに、抵抗する素振りも見せねぇ。
「…………ここで逃げたところで他の追っ手が来るのだろう。ならば、お前の手に掛かって終わるのも悪くないと思ったまでだ」
そう言葉にしたブラッドの目には迷いがない。
かつて、天界でもっとも神に近い天使と言われていたあの当時となんら変わりのない目だ。
――下界の争いごとにより、人間たちが……幼い子どもたちも含めた命が日々失われている。だが、神はそれは淘汰であり、必要な犠牲だと言う。だから、手出しは不要だと。俺はそれが納得出来ん。
そう言って、ブラッドは神の元へと直談判に出向いたが、直後知らされたのはブラッドが堕天したとの報告だった。
誰もが耳を疑ったし、オレも信じられなかった。
再会して、堕天した証である黒い翼を見るまでは。
だが、それ以外は何も変わっちゃいない。
融通のきかないカタブツ。己の信念のままに突き進む、以前と同じブラッドがいた。
下界で失われる命の数が減ったというのは間違いなくコイツによるものだろう。
「一応、聞くけど後悔は」
「していない」
「だよなぁ」
剣を引いて、そのまま手放す。
地に落ちた剣の衝撃音がやけに甲高く響いた。
ブラッドが失ったのは左の羽根か。
だったら、オレは右だなと手を背の方に回して、勢いに任せて自分の右の羽根をもぎ取った。
「いっ……!」
「なっ、キース!!」
ずっと平然としていたブラッドの目に初めて動揺の色が浮かぶ。
自分だってつい先日同じようなことしただろうがよ。
身体から離れた羽根は白から黒へと色を変え――気付けば視界に映る残った左の羽根も漆黒に染まっていた。
なるほどな、堕天するとこうなんのか。
背の痛みが少し和らいだのはブラッドの力だな。
堕天しても天使として持っていた力は健在ってことか。
「……馬鹿な真似を」
「いや、お前にだけは言われたくないわ、それ。……ったく、一人でさっさと決めやがって。肝心なとこで一人でどうにかしようとするのやめろよな」
普段冷静な癖にブチ切れると見境ねぇよな、全く。
「――共に来てくれるのか」
「一人より二人の方が逃げやすいだろ。オレは左側の羽根残したし、肩組んで呼吸合わせりゃ何とか飛べんじゃねぇの。能力も残ってんだし」
「なるほどな」
ブラッドと肩を組み、幾度か羽根を羽ばたかせ、タイミングを合わせて地を蹴ると呆気ないほど楽に飛び立てた。
悪いな、カミサマ。
オレももうアンタには従えねぇよ。
二度と触れなくなった剣を一瞥し、オレも天界に別れを告げた。
[Brad's Side]
――何故、介入しないのですか。あの地域は今明らかに度を超えた殺戮が行われている。放置していいはずがない。
――人は増えすぎたのだよ、ブラッド。故に世界の生態系全てに弊害を及ぼし始めている。あれは必要な犠牲だ。
――必要…………?
――全てを救い上げることなど出来ない。弱い生命が淘汰されていくのはこれまでの歴史でも繰り返されてきたことだ。浄化だと思えば良い。それでもなお、争いがやまないなら、それは世界の寿命だ。
だから、見捨てるというのか。
祝福され生まれたばかりの赤子も無残に殺されることも珍しくなくなりつつあるあの地を。
浄化、という言葉にこれほど嫌悪感を覚えたことはない。
いつだったか、キースが胡散臭いと評したその言葉の意味が今はわかる。
神が見放すというのであれば。
――せめて、この手で救えるだけでも俺が救う。
――ブラッ……!?
片翼をむしり取り、それをそのまま目の前の神に叩きつけた。
瞬く間に黒く変化した羽根にこんなに簡単だったのかと苦笑いする。
――貴方にはもう従えない。俺は俺の信じる道を行く。それを堕天と言うのなら好きに言えばいい。
――ブラッド!!
羽根を失った背の痛みを堪え、急いでその場を立ち去る。
キースに別れを告げる間もなかったことだけが心残りだったが、ここで捕らえられては本末転倒だ。
幸い、堕天しても天使の能力は失われなかったから、それを利用し、可能な限り殺戮を食い止めていたが――キリがなかった。
生命を救いつつ、堕天使を討つ天界の追っ手からも身を隠し続けるのは容易ではなく、消耗が激しくなってきたタイミングで俺の前に現れたのはキースだった。
「本当に堕ちたんだな、お前」
「…………キース」
ほんの一瞬だけ泣きそうに見えた表情に動けなくなった。
キースの掲げている剣が天界の最終兵器と謳われる堕天使を消滅させるものだと気付いても、その剣先が胸元に触れそうなところに定められても。
キースの実力は俺が誰より知っている。
そもそも、この剣を扱えるのは天界でも一握りの天使だけだ。
万事休す。
他の者の手に掛かるよりは、キースにならば――。
「……何で逃げねぇの」
「…………ここで逃げたところで他の追っ手が来るのだろう。ならば、お前の手に掛かって終わるのも悪くないと思ったまでだ」
「一応、聞くけど後悔は」
「していない」
俺の命運もここまでか、という悔いはあれど、堕天したことについての後悔は微塵もない。
「だよなぁ」
知っていた、と言わんばかりの口調でキースが剣を引き、そのまま持っていた剣を地面に落とす。
どういうつもりかと問い質そうとした刹那、キースが自らの片翼をもぎ取った。
「いっ……!」
「なっ、キース!!」
もぎ取られ、地に落ちたキースの翼が黒く染まる。
そのまま残っている方の羽根も、あっという間に全て黒くなった。
急いで膝をついたキースに駆け寄り、回復の術を使う。
「……馬鹿な真似を」
「いや、お前にだけは言われたくないわ、それ。……ったく、一人でさっさと決めやがって。肝心なとこで一人でどうにかしようとするのやめろよな」
普段冷静な癖にブチ切れると見境ねぇよなとぼやかれて、一瞬返す言葉に詰まる。
「――共に来てくれるのか」
「一人より二人の方が逃げやすいだろ。オレは左側の羽根残したし、肩組んで呼吸合わせりゃ何とか飛べんじゃねぇの。能力も残ってんだし」
「なるほどな」
キースの飛び方の癖は知っているし、逆も然りだ。
肩を組んで、羽根の動きを合わせ、音が重なったところで地を蹴る。
自分一人で両翼で飛んでいたときとそう変わらずに飛ぶことが出来た。
「お、いけたいけた。よし。あの剣を回収しに来られる前にとりあえずここから離れようぜ」
「ああ」
一人ではなくなったという心強さに口元が緩みそうになりながら、晴れ渡る空を二人で飛び続けた。Close
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