全年全月30日の投稿[3件]
2021年5月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する
第二百八十四回紅敬版深夜の創作一本勝負、お題『ハグ』『キス』『手を繋ぐ』『撫でる』『ごはん』を全部使ってみました。
星奏館は部屋によって二人から四人で住んでいる。俺の部屋は一応四人部屋なんだが、斎宮も瀬名も拠点は海外だから部屋にいる方が珍しい上に、残った衣更や俺にしても時々実家の様子を見に帰っていたりするから、他の部屋に比べると一人になれる機会は案外多い方だろう。
今日もこの部屋は俺一人になることがわかっていたから、夜までは衣装を作るのに専念出来るなと、ずっと作業をしていた。
夜は蓮巳の旦那が来て、夕飯を一緒に食ってからこっちの部屋に泊まっていくってことになっていたから、それまでに衣装作りをやれるところまでやっちまおうって心積もりだったんだが。
「ん……? ヤベぇ、思ってた以上に寝ちまっ……あ?」
衣装を縫っている途中で眠気が来て、ちょっとだけ休憩するつもりで壁に寄りかかってウトウトしていたら、日差しで明るかった部屋はすっかり暗くなっていた。
一旦裁縫道具は片付けて、夕飯の用意でもと思ったところで、肩に寄りかかっている重さと温もりに気付く。
旦那が俺の肩を枕に寝入っていた。
いつの間に部屋に来ていたのか、いつから寄りかかって寝ていたのかもさっぱり覚えちゃいねぇが、多分、俺を起こすのを躊躇った結果、自分も少しだけ寝ようと思ったんだろうな、こいつ。
眼鏡は外されていて、俺が避けておいた裁縫道具と一緒に置かれている。
蓮巳は特に意識しちゃいねぇのかもしれねぇが、蓮巳曰く『生涯の伴侶』と称している眼鏡を、俺の裁縫道具に預けるように置いているっていうのは何となく気分がいい。
旦那は疲労がピークに達すると外でも寝ちまったりするが、その場合ほとんど眼鏡は外さずにそのままだ。
蓮巳は視力がかなり悪いから、寝るとき以外は極力眼鏡を外したがらねぇし、その寝るときにしたって、ちょっとウトウトするって程度ならまず外さねぇ。
俺の傍だから安心して外して眠りについたんだろうなっていうのは、きっとうぬぼれじゃないはずだ。
そっと旦那の髪を撫でると、微かに身動いだから今ので起こしちまったかと手を止めたが、旦那は相変わらず俺の肩に寄りかかったまま。
起こさずに済んだかと思ったが、蓮巳の指が床についたままの方の俺の手首に絡みつく。寝惚けての行動だと思えなくもないが、これは多分目を覚ましてる。
「……狸寝入りかよ、旦那」
「言っておくが、先程までは本当に寝ていたぞ。……予定より早く用事が済んだから来てみたらおまえが寝ていたから、俺も少しくらいはと」
旦那が頭を俺の肩から起こし、眼鏡に手を伸ばそうとしたところで、その手首を掴んで止める。
そして、蓮巳がこっちを向いたところで唇を重ねた。
眼鏡をかけちまうとキスしにくくなるから、その前にってやつだ。
「……ん」
蓮巳の目が驚きの色を浮かべたのは一瞬だ。直ぐに力を抜いて、目を閉じる。
部屋には他に誰もいねぇし、部屋の外も割と静かだから、キスしても問題ねぇって判断したんだろう。
掴んでいた手首を離すと、旦那の方から俺の手を追って指を絡めて来た。
手を繋いで、指先でお互いの手を弄んでいると、触れているのが唇と手だけじゃ物足りなくなる。
一度唇を離して、蓮巳の身体に腕を回すと、やつの方も身体を寄せてこっちに腕を回してきた。
阿吽の呼吸ってやつなのか、こんなところはもう言葉にしなくても何となく通じるもんがあるってことに嬉しくなっちまう。
あやすようにぽんぽんと背中を叩くと、蓮巳の旦那が笑ったのが伝わった。
「予定より早く用事済んだってんなら、おまえも夕飯作りに手ぇ貸してくれるんだよな?」
当初の予定では、旦那の帰りを待ちがてら俺が二人分の夕飯を作るって流れだったが、その本人がもういるなら話は変わってくる。
「ああ。当然だ。で、何を作る予定だ?」
「デミグラスソースのオムライスとオニオンスープ。椎名に美味いデミグラスソースのレシピ聞いたから、それ一回試してみようと思ってな」
「なるほど。それは楽しみだ。食堂に行くか」
「おう」
身体を離す前に一度、旦那を強く抱きしめてから離れる。
温もりを手放すのはちょっと惜しいが、夕飯後にまた抱き合えばいいだけの話だ。今日はまだこれからだしな。
裁縫道具と作りかけの衣装を片付けてから、二人で食堂に向かった。
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#紅敬 #ワンライ
星奏館は部屋によって二人から四人で住んでいる。俺の部屋は一応四人部屋なんだが、斎宮も瀬名も拠点は海外だから部屋にいる方が珍しい上に、残った衣更や俺にしても時々実家の様子を見に帰っていたりするから、他の部屋に比べると一人になれる機会は案外多い方だろう。
今日もこの部屋は俺一人になることがわかっていたから、夜までは衣装を作るのに専念出来るなと、ずっと作業をしていた。
夜は蓮巳の旦那が来て、夕飯を一緒に食ってからこっちの部屋に泊まっていくってことになっていたから、それまでに衣装作りをやれるところまでやっちまおうって心積もりだったんだが。
「ん……? ヤベぇ、思ってた以上に寝ちまっ……あ?」
衣装を縫っている途中で眠気が来て、ちょっとだけ休憩するつもりで壁に寄りかかってウトウトしていたら、日差しで明るかった部屋はすっかり暗くなっていた。
一旦裁縫道具は片付けて、夕飯の用意でもと思ったところで、肩に寄りかかっている重さと温もりに気付く。
旦那が俺の肩を枕に寝入っていた。
いつの間に部屋に来ていたのか、いつから寄りかかって寝ていたのかもさっぱり覚えちゃいねぇが、多分、俺を起こすのを躊躇った結果、自分も少しだけ寝ようと思ったんだろうな、こいつ。
眼鏡は外されていて、俺が避けておいた裁縫道具と一緒に置かれている。
蓮巳は特に意識しちゃいねぇのかもしれねぇが、蓮巳曰く『生涯の伴侶』と称している眼鏡を、俺の裁縫道具に預けるように置いているっていうのは何となく気分がいい。
旦那は疲労がピークに達すると外でも寝ちまったりするが、その場合ほとんど眼鏡は外さずにそのままだ。
蓮巳は視力がかなり悪いから、寝るとき以外は極力眼鏡を外したがらねぇし、その寝るときにしたって、ちょっとウトウトするって程度ならまず外さねぇ。
俺の傍だから安心して外して眠りについたんだろうなっていうのは、きっとうぬぼれじゃないはずだ。
そっと旦那の髪を撫でると、微かに身動いだから今ので起こしちまったかと手を止めたが、旦那は相変わらず俺の肩に寄りかかったまま。
起こさずに済んだかと思ったが、蓮巳の指が床についたままの方の俺の手首に絡みつく。寝惚けての行動だと思えなくもないが、これは多分目を覚ましてる。
「……狸寝入りかよ、旦那」
「言っておくが、先程までは本当に寝ていたぞ。……予定より早く用事が済んだから来てみたらおまえが寝ていたから、俺も少しくらいはと」
旦那が頭を俺の肩から起こし、眼鏡に手を伸ばそうとしたところで、その手首を掴んで止める。
そして、蓮巳がこっちを向いたところで唇を重ねた。
眼鏡をかけちまうとキスしにくくなるから、その前にってやつだ。
「……ん」
蓮巳の目が驚きの色を浮かべたのは一瞬だ。直ぐに力を抜いて、目を閉じる。
部屋には他に誰もいねぇし、部屋の外も割と静かだから、キスしても問題ねぇって判断したんだろう。
掴んでいた手首を離すと、旦那の方から俺の手を追って指を絡めて来た。
手を繋いで、指先でお互いの手を弄んでいると、触れているのが唇と手だけじゃ物足りなくなる。
一度唇を離して、蓮巳の身体に腕を回すと、やつの方も身体を寄せてこっちに腕を回してきた。
阿吽の呼吸ってやつなのか、こんなところはもう言葉にしなくても何となく通じるもんがあるってことに嬉しくなっちまう。
あやすようにぽんぽんと背中を叩くと、蓮巳の旦那が笑ったのが伝わった。
「予定より早く用事済んだってんなら、おまえも夕飯作りに手ぇ貸してくれるんだよな?」
当初の予定では、旦那の帰りを待ちがてら俺が二人分の夕飯を作るって流れだったが、その本人がもういるなら話は変わってくる。
「ああ。当然だ。で、何を作る予定だ?」
「デミグラスソースのオムライスとオニオンスープ。椎名に美味いデミグラスソースのレシピ聞いたから、それ一回試してみようと思ってな」
「なるほど。それは楽しみだ。食堂に行くか」
「おう」
身体を離す前に一度、旦那を強く抱きしめてから離れる。
温もりを手放すのはちょっと惜しいが、夕飯後にまた抱き合えばいいだけの話だ。今日はまだこれからだしな。
裁縫道具と作りかけの衣装を片付けてから、二人で食堂に向かった。
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#紅敬 #ワンライ
2020年10月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する
5章のネタバレを含むキスブラ。
キスブラ+ディノでディノ視点。
※これをキース&ブラッド視点にしたのが『不器用で、だけど。』 になります。(リンク先は自サイト)
いや、マジで5章のキスブラ凄かった。
推しカプが強い。最高でした、ありがとうございます。
そのうち、もうちょっとちゃんと形にしたい。
※5章ED後、ディノの復帰が認められて、以降ウエストセクターにメンターとして所属する形になり、ウエストセクターのメンター部屋の空きに引っ越してきた、という想定で書いてます。
キスブラがアカデミー時代から体の関係持ってて、二人とも『付き合ってはいない』という認識なんだけど、ディノから見たら付き合っている以外の何でもないんだよなぁという。
***
「おーい、ディノ。このウェイトレスの衣装どうする?」
「あ、こっちの引き出しにしまっとくよ」
「しまうって……処分しねぇのかよ。いや、好きにすりゃいいけどさ。お前のもんなんだし」
キースから受け取った衣装を引き出しにおさめたところで、ブラッドが話し掛けてくる。
「ディノ。この置物はどうする。……昔、フューチャーランドに行った時に土産として買ったものだったか」
「そうそう。そこの棚に並べるよ。覚えてたんだね、ブラッド。懐かしいだろ?」
「そうだな。……俺は友人と泊まりがけで遠出したというのは、あの時が初めてだったからな。忘れようがない」
当時を思い出したのか、ブラッドの目が優しいものになった。
おじいちゃん――正確には【HELIOS】の方で俺の保護者兼監視者としてつけられた人だけど――ブラッドとキースを連れて行ったときに心なしか嬉しそうにしていたことを思い出す。
「あー、それってそん時のだっけ。妙に見覚えはあるけどなんだっけってずっと思ってた」
「ええ、キースは覚えてないのかよ。お前そういうとこあるよな」
対するキースは細かいことはあんまり覚えていない性質だ。
その時には凄く楽しんでいたのは間違いないから、あまり気にしないけど。
「ロストガーデンに忍び込んだ辺りはまぁ覚えてるけど、フューチャーランド自体の記憶はどうも曖昧なんだよなぁ」
「ディノ、コイツの記憶力に期待するだけ無駄だ」
「なんだよ。そういうお前はいらねぇことまで覚えすぎなんだよ。ああ、フューチャーランドのことがいらねぇことって言ってるわけじゃねぇけどさ」
「わかってる。ブラッドもキースも相変わらずだなぁ。あ、そうだ。二人ともする時は言ってね。席外すよ。ジェイのとことか、外に行くとかするから」
漂う二人の間の空気感は四年前から変わっていないし、多分、今も二人は関係があるんだろうと踏んで、そう言ってみる。
「あ? するって……いやいや、待て待て。タワーじゃしねぇからな!?」
「――おい、キース」
「なるほど、タワー『じゃ』しない、ね。ま、ここじゃ隣にルーキーたちもいるから難しいか。しかも、片方はブラッドの弟だもんね。今、ブラッドはメンターリーダーもやってるし、バレたら気まずいどころじゃないか」
「…………キース」
「何だよ……ちょっと口滑らしただけじゃねぇか。ディノは元々知ってるんだし、小言なら勘弁してくれって」
「普段からの心がけの問題だ。大体、お前というやつは――」
「ホント相変わらずだなぁ」
ああ、昔からこの二人はそうだった。
全然タイプが違うから、しょっちゅう揉めているように見えるし、実際揉めてもいるんだけど、根っこの深いところでは何か似てるんだよなぁ。
今だって、ブラッドは咎めたけど俺の言葉については否定しなかった。
俺の問いかけについて、暗に示した状態になっているのはブラッドの方もだ。
これでこそ帰ってきたって実感がする。
片付けの手が止まって言い争っている二人の声をBGMにしながら、残りの荷物を片付けていった。
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#キスブラ #書きかけ
キスブラ+ディノでディノ視点。
※これをキース&ブラッド視点にしたのが『不器用で、だけど。』 になります。(リンク先は自サイト)
いや、マジで5章のキスブラ凄かった。
推しカプが強い。最高でした、ありがとうございます。
そのうち、もうちょっとちゃんと形にしたい。
※5章ED後、ディノの復帰が認められて、以降ウエストセクターにメンターとして所属する形になり、ウエストセクターのメンター部屋の空きに引っ越してきた、という想定で書いてます。
キスブラがアカデミー時代から体の関係持ってて、二人とも『付き合ってはいない』という認識なんだけど、ディノから見たら付き合っている以外の何でもないんだよなぁという。
***
「おーい、ディノ。このウェイトレスの衣装どうする?」
「あ、こっちの引き出しにしまっとくよ」
「しまうって……処分しねぇのかよ。いや、好きにすりゃいいけどさ。お前のもんなんだし」
キースから受け取った衣装を引き出しにおさめたところで、ブラッドが話し掛けてくる。
「ディノ。この置物はどうする。……昔、フューチャーランドに行った時に土産として買ったものだったか」
「そうそう。そこの棚に並べるよ。覚えてたんだね、ブラッド。懐かしいだろ?」
「そうだな。……俺は友人と泊まりがけで遠出したというのは、あの時が初めてだったからな。忘れようがない」
当時を思い出したのか、ブラッドの目が優しいものになった。
おじいちゃん――正確には【HELIOS】の方で俺の保護者兼監視者としてつけられた人だけど――ブラッドとキースを連れて行ったときに心なしか嬉しそうにしていたことを思い出す。
「あー、それってそん時のだっけ。妙に見覚えはあるけどなんだっけってずっと思ってた」
「ええ、キースは覚えてないのかよ。お前そういうとこあるよな」
対するキースは細かいことはあんまり覚えていない性質だ。
その時には凄く楽しんでいたのは間違いないから、あまり気にしないけど。
「ロストガーデンに忍び込んだ辺りはまぁ覚えてるけど、フューチャーランド自体の記憶はどうも曖昧なんだよなぁ」
「ディノ、コイツの記憶力に期待するだけ無駄だ」
「なんだよ。そういうお前はいらねぇことまで覚えすぎなんだよ。ああ、フューチャーランドのことがいらねぇことって言ってるわけじゃねぇけどさ」
「わかってる。ブラッドもキースも相変わらずだなぁ。あ、そうだ。二人ともする時は言ってね。席外すよ。ジェイのとことか、外に行くとかするから」
漂う二人の間の空気感は四年前から変わっていないし、多分、今も二人は関係があるんだろうと踏んで、そう言ってみる。
「あ? するって……いやいや、待て待て。タワーじゃしねぇからな!?」
「――おい、キース」
「なるほど、タワー『じゃ』しない、ね。ま、ここじゃ隣にルーキーたちもいるから難しいか。しかも、片方はブラッドの弟だもんね。今、ブラッドはメンターリーダーもやってるし、バレたら気まずいどころじゃないか」
「…………キース」
「何だよ……ちょっと口滑らしただけじゃねぇか。ディノは元々知ってるんだし、小言なら勘弁してくれって」
「普段からの心がけの問題だ。大体、お前というやつは――」
「ホント相変わらずだなぁ」
ああ、昔からこの二人はそうだった。
全然タイプが違うから、しょっちゅう揉めているように見えるし、実際揉めてもいるんだけど、根っこの深いところでは何か似てるんだよなぁ。
今だって、ブラッドは咎めたけど俺の言葉については否定しなかった。
俺の問いかけについて、暗に示した状態になっているのはブラッドの方もだ。
これでこそ帰ってきたって実感がする。
片付けの手が止まって言い争っている二人の声をBGMにしながら、残りの荷物を片付けていった。
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#キスブラ #書きかけ
2014年9月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する