2019年の投稿[1件]
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かべうちに置いてたとこからの移動分。(加筆修正有)
JINSのポスター撮影を想定したネタによる紅敬。
元ネタを2018年に書いて、2019年の蓮巳敬人WEB誕生日会『Listen to me!』用に電子書籍として纏めた中に『どちらも本心』のタイトルで収録したものです。
完成品ですが、電子書籍に収録済なのでpixivにはUPしません。
(サイトとピクブラには後で置く)※もう少し余裕が出来たらサイトのNovelに移動します。
国内有数の眼鏡メーカーからいくつかのユニットをイメージした眼鏡を発売したい、というオファーがあり、それに伴って各ユニットのリーダーが宣伝用のポスター等に使う写真を撮ることになった。
今回に関してはユニットを問わず、衣装は全て先方が用意してくれるとのことだったが、それを聞いた鬼龍がプロのスタイリストの仕事を見ておきたいから、自分も同席させて欲しいと言ってきた。
今回はステージ衣装とはコンセプトが違う。
鬼龍が見ても、今後生かせる機会があるかわからんだろうと思ったのだが。
「それぞれのユニットイメージやユニットリーダー本人に合わせて、スーツやインナーを選ぶんだろ? 題材がシンプルだからこそ、どんな風になるのかみてぇんだよな」
「なるほど」
紅月の衣装は一部の例外を除けば、鬼龍がほぼ一手に担っている。
衣装だけではなく、小道具やヘアメイクもこいつの手によるものだ。
今はステージ衣装が大半だが、今後メディアの露出が増えるのであれば、確かに今回のような仕事も増えるかもしれん。
そうなったとき、やはり出来るだけ自分で関わりたいというのもあるのだろう。
実際、鬼龍が手掛ける衣装は紅月の大きな武器の一つだ。
そういうことならば、と先方に許可を取って、鬼龍も一緒に撮影現場へ来ることになった。
元々知り合ったときに眼鏡をかけていた守沢はともかく、他の面々の眼鏡姿を見るのは新鮮だったし、それぞれに合わせたスーツは皆似合っていて、制服とはまた違った印象を抱かせたことで、鬼龍が見たいと言った理由が理解できる。
幾人かの撮影が終わって俺の番になり、いざ撮影を開始したものの、数回シャッターを切ったところでカメラマンからストップがかかった。
「ごめん。ちょっとストップ。うーん……蓮巳くん、普段から眼鏡だからかなぁ……どうにもこうしっくりこないというか、決め手に欠けるんだよねぇ。もうちょっと印象が普段と変わるようなのが欲しいんだけど。勿論、紅月や蓮巳くん自身のイメージは保つ感じで」
「普段と変わる、ですか」
そうは言われても、眼鏡は生涯の伴侶と決めているくらい俺の生活になくてはならないものだ。
根本的なイメージはそのままに印象を変えるというのも中々難題のように思える。
どうしたものか――と思案していたら、ずっと黙ってみていた鬼龍が口を挟んできた。
「だったら、逆に眼鏡を外しかけているところを撮るってのはどうっすか。普段から眼鏡してるのって撮影するメンバーだとこいつだけなんで、印象が変わるって意味じゃありだと思うんすけど。完全に外すんじゃなけりゃ、眼鏡もちゃんと一緒に写りますし」
「待て、鬼龍。貴様、俺が眼鏡を外すと全然見えないのを知っているだろう。カメラに目線を合わせられるか分からんぞ」
「俺がカメラの傍にいて声を掛けるから、声掛けた方向を見りゃいい。旦那耳いいから、声なら方向は正確にわかるだろ」
「ああ、なるほど! じゃ、それでちょっとやってみようか。蓮巳くん、眼鏡をちょっと顔から離す感じで……そうだな、モダンが耳に引っ掛かってるかどうかってくらいの離し方を試して貰えるかい」
せっかくの眼鏡の広告だというのに、肝心の眼鏡を外しかけるなどと――とは思ったが、物は試しだ。
「蓮巳。顔の位置はそのままで視線だけこっち寄越せ」
「こう、か?」
鬼龍の声がした方向に視線を向けるとシャッター音が続けざまにスタジオに鳴り響く。
「あー、これだ、これこれ! ちょっとこんな感じで数枚撮らせて貰うね。うん」
カメラマンの声が明るくなったのが伝わる。
どうやら、これで良かったらしい。そのままシャッターが立て続けにきられて、終了の声が上がった。
「はい、いいよ、お疲れさま! ほら、こんな感じになったけどどうかな?」
「これは……」
「いいじゃねぇか。やっぱり」
眼鏡を元通りに掛け、たった今撮ったばかりのデータを見せて貰ったが、自分の目から見ても先ほどに比べて印象がぐっと良くなっていた。
眼鏡も外しかけているとはいえ、存在感が薄くなっているわけではない。
「うん、どうなるかと思ったけど、こういう手があったね。そういえば、紅月って普段は衣装やヘアメイクは鬼龍くんがやっているんだっけ。紅月のメンバーを見せることを普段から考えているからかな。いい案出してくれてありがとう」
「いえ。お役に立てたならよかったっす」
「じゃ、蓮巳くんは休憩入ってくれるかな。えーっと、次は――」
次に撮影する者が呼ばれたところで、俺と鬼龍はスタジオを出た。
ごく自然に俺に着いてきたものだから、つい問いかける。
「ん? 貴様は撮影を見ていなくていいのか?」
「一番見たかった旦那は終わったし、撮影そのものよりゃ、衣装の合わせ方を見たかったからな。全員分の衣装はもうチェック出来たから俺もちょっと一息入れる。自販機で飲み物買って休憩だ」
「そうか。俺もそうしよう。買ったら控室まで戻るか」
スタジオ内は飲食禁止だし、何か飲むなら控室が無難だ。
控室は何人かで利用していたが、まだ誰も戻ってきてはいなかった。他の場所で休憩していたり、撮影中だったりなのだろう。
控室の椅子にそれぞれ座って、自販機で購入したばかりのお茶を飲んでいると、鬼龍が何かノートに書き付けていた。
「……今回の衣装についてのメモか」
「ああ。それと眼鏡のな。やっぱりプロの仕事だな。全体通して見ても誰かが飛び抜けて目立つわけでもねぇが、ちゃんとそれぞれの個性も引き立てている」
「なるほど、言われてみれば。今後の参考になったようで何よりだ」
鬼龍は紅月の衣装だけではなく、流星隊を始め他ユニットの衣装も作成することもあるし、その点を踏まえても良い経験だったのだろう。
ふと、鬼龍が俺の顔を――正確には目元あたりをじっと見つめている視線を感じた。
「? 何だ?」
「…………ま、個人的な感情としちゃ、蓮巳の旦那が眼鏡外したところは極力人に見せたくなかったけどな。仕事とありゃそうも言ってられねぇ」
「……何だ、妬いているのか」
先ほどの撮影で眼鏡を外すことを提案したのは当の鬼龍だというのに。
「てめぇが眼鏡外すところなんざ、俺だってそんなに見る機会ねぇからな。でも、旦那は眼鏡外すと整った顔してんのがより分かりやすいから、こういう機会に見せびらかしてぇって気もあるんだよ」
「…………度し難い」
つい口元が緩んでしまうのを自覚する。
恋人としては妬くが、同じユニットの仲間としてはせっかくの機会を逃せないということか。
俺が鬼龍の衣装作りの腕前を誇らしく思うのと同時に、それが紅月だけでなく、他ユニットの衣装にも生かされることを、ほんの少しだけ面白くなく思うことと似ているのかも知れない。
他ユニットの衣装も手懸けることで鬼龍の評判、引いては紅月の評判もあがることがわかっていてもだ。
いくら恋仲であっても、アイドルとしての立場上、私情を優先させるなど有り得ない。
有り得ないが。
「撮影終了後、時間があるようならうちの蔵に寄れ。眼鏡を外したところを好きなだけ見せてやろう」
他者に見られることのない場所であれば話は別だ。
自室ではなく、防音を施してある蔵を口にした意味はこいつなら分かるだろう。
対外的に、いや、正確には家族に対して、紅月の誰かと蔵にいる時は、まだ公表出来ないユニットの活動についての話や練習をするときだから絶対に近寄らないよう告げてある。
だから、何をしようと他の誰にもわからない。
そう、何をしようともだ。
鬼龍が目を見開いたのは一瞬で、直ぐに笑みを浮かべた。
「なら、寄らせて貰うぜ。好きなだけっつったのはてめぇだってことを忘れんなよ」
「二言はない」
鬼龍の分の夕食も用意して貰うよう、母にメッセージを打ちながらそう返すと、旦那にゃ敵わねぇなという呟きが聞こえた。
Close
#紅敬
JINSのポスター撮影を想定したネタによる紅敬。
元ネタを2018年に書いて、2019年の蓮巳敬人WEB誕生日会『Listen to me!』用に電子書籍として纏めた中に『どちらも本心』のタイトルで収録したものです。
完成品ですが、電子書籍に収録済なのでpixivにはUPしません。
(サイトとピクブラには後で置く)※もう少し余裕が出来たらサイトのNovelに移動します。
国内有数の眼鏡メーカーからいくつかのユニットをイメージした眼鏡を発売したい、というオファーがあり、それに伴って各ユニットのリーダーが宣伝用のポスター等に使う写真を撮ることになった。
今回に関してはユニットを問わず、衣装は全て先方が用意してくれるとのことだったが、それを聞いた鬼龍がプロのスタイリストの仕事を見ておきたいから、自分も同席させて欲しいと言ってきた。
今回はステージ衣装とはコンセプトが違う。
鬼龍が見ても、今後生かせる機会があるかわからんだろうと思ったのだが。
「それぞれのユニットイメージやユニットリーダー本人に合わせて、スーツやインナーを選ぶんだろ? 題材がシンプルだからこそ、どんな風になるのかみてぇんだよな」
「なるほど」
紅月の衣装は一部の例外を除けば、鬼龍がほぼ一手に担っている。
衣装だけではなく、小道具やヘアメイクもこいつの手によるものだ。
今はステージ衣装が大半だが、今後メディアの露出が増えるのであれば、確かに今回のような仕事も増えるかもしれん。
そうなったとき、やはり出来るだけ自分で関わりたいというのもあるのだろう。
実際、鬼龍が手掛ける衣装は紅月の大きな武器の一つだ。
そういうことならば、と先方に許可を取って、鬼龍も一緒に撮影現場へ来ることになった。
元々知り合ったときに眼鏡をかけていた守沢はともかく、他の面々の眼鏡姿を見るのは新鮮だったし、それぞれに合わせたスーツは皆似合っていて、制服とはまた違った印象を抱かせたことで、鬼龍が見たいと言った理由が理解できる。
幾人かの撮影が終わって俺の番になり、いざ撮影を開始したものの、数回シャッターを切ったところでカメラマンからストップがかかった。
「ごめん。ちょっとストップ。うーん……蓮巳くん、普段から眼鏡だからかなぁ……どうにもこうしっくりこないというか、決め手に欠けるんだよねぇ。もうちょっと印象が普段と変わるようなのが欲しいんだけど。勿論、紅月や蓮巳くん自身のイメージは保つ感じで」
「普段と変わる、ですか」
そうは言われても、眼鏡は生涯の伴侶と決めているくらい俺の生活になくてはならないものだ。
根本的なイメージはそのままに印象を変えるというのも中々難題のように思える。
どうしたものか――と思案していたら、ずっと黙ってみていた鬼龍が口を挟んできた。
「だったら、逆に眼鏡を外しかけているところを撮るってのはどうっすか。普段から眼鏡してるのって撮影するメンバーだとこいつだけなんで、印象が変わるって意味じゃありだと思うんすけど。完全に外すんじゃなけりゃ、眼鏡もちゃんと一緒に写りますし」
「待て、鬼龍。貴様、俺が眼鏡を外すと全然見えないのを知っているだろう。カメラに目線を合わせられるか分からんぞ」
「俺がカメラの傍にいて声を掛けるから、声掛けた方向を見りゃいい。旦那耳いいから、声なら方向は正確にわかるだろ」
「ああ、なるほど! じゃ、それでちょっとやってみようか。蓮巳くん、眼鏡をちょっと顔から離す感じで……そうだな、モダンが耳に引っ掛かってるかどうかってくらいの離し方を試して貰えるかい」
せっかくの眼鏡の広告だというのに、肝心の眼鏡を外しかけるなどと――とは思ったが、物は試しだ。
「蓮巳。顔の位置はそのままで視線だけこっち寄越せ」
「こう、か?」
鬼龍の声がした方向に視線を向けるとシャッター音が続けざまにスタジオに鳴り響く。
「あー、これだ、これこれ! ちょっとこんな感じで数枚撮らせて貰うね。うん」
カメラマンの声が明るくなったのが伝わる。
どうやら、これで良かったらしい。そのままシャッターが立て続けにきられて、終了の声が上がった。
「はい、いいよ、お疲れさま! ほら、こんな感じになったけどどうかな?」
「これは……」
「いいじゃねぇか。やっぱり」
眼鏡を元通りに掛け、たった今撮ったばかりのデータを見せて貰ったが、自分の目から見ても先ほどに比べて印象がぐっと良くなっていた。
眼鏡も外しかけているとはいえ、存在感が薄くなっているわけではない。
「うん、どうなるかと思ったけど、こういう手があったね。そういえば、紅月って普段は衣装やヘアメイクは鬼龍くんがやっているんだっけ。紅月のメンバーを見せることを普段から考えているからかな。いい案出してくれてありがとう」
「いえ。お役に立てたならよかったっす」
「じゃ、蓮巳くんは休憩入ってくれるかな。えーっと、次は――」
次に撮影する者が呼ばれたところで、俺と鬼龍はスタジオを出た。
ごく自然に俺に着いてきたものだから、つい問いかける。
「ん? 貴様は撮影を見ていなくていいのか?」
「一番見たかった旦那は終わったし、撮影そのものよりゃ、衣装の合わせ方を見たかったからな。全員分の衣装はもうチェック出来たから俺もちょっと一息入れる。自販機で飲み物買って休憩だ」
「そうか。俺もそうしよう。買ったら控室まで戻るか」
スタジオ内は飲食禁止だし、何か飲むなら控室が無難だ。
控室は何人かで利用していたが、まだ誰も戻ってきてはいなかった。他の場所で休憩していたり、撮影中だったりなのだろう。
控室の椅子にそれぞれ座って、自販機で購入したばかりのお茶を飲んでいると、鬼龍が何かノートに書き付けていた。
「……今回の衣装についてのメモか」
「ああ。それと眼鏡のな。やっぱりプロの仕事だな。全体通して見ても誰かが飛び抜けて目立つわけでもねぇが、ちゃんとそれぞれの個性も引き立てている」
「なるほど、言われてみれば。今後の参考になったようで何よりだ」
鬼龍は紅月の衣装だけではなく、流星隊を始め他ユニットの衣装も作成することもあるし、その点を踏まえても良い経験だったのだろう。
ふと、鬼龍が俺の顔を――正確には目元あたりをじっと見つめている視線を感じた。
「? 何だ?」
「…………ま、個人的な感情としちゃ、蓮巳の旦那が眼鏡外したところは極力人に見せたくなかったけどな。仕事とありゃそうも言ってられねぇ」
「……何だ、妬いているのか」
先ほどの撮影で眼鏡を外すことを提案したのは当の鬼龍だというのに。
「てめぇが眼鏡外すところなんざ、俺だってそんなに見る機会ねぇからな。でも、旦那は眼鏡外すと整った顔してんのがより分かりやすいから、こういう機会に見せびらかしてぇって気もあるんだよ」
「…………度し難い」
つい口元が緩んでしまうのを自覚する。
恋人としては妬くが、同じユニットの仲間としてはせっかくの機会を逃せないということか。
俺が鬼龍の衣装作りの腕前を誇らしく思うのと同時に、それが紅月だけでなく、他ユニットの衣装にも生かされることを、ほんの少しだけ面白くなく思うことと似ているのかも知れない。
他ユニットの衣装も手懸けることで鬼龍の評判、引いては紅月の評判もあがることがわかっていてもだ。
いくら恋仲であっても、アイドルとしての立場上、私情を優先させるなど有り得ない。
有り得ないが。
「撮影終了後、時間があるようならうちの蔵に寄れ。眼鏡を外したところを好きなだけ見せてやろう」
他者に見られることのない場所であれば話は別だ。
自室ではなく、防音を施してある蔵を口にした意味はこいつなら分かるだろう。
対外的に、いや、正確には家族に対して、紅月の誰かと蔵にいる時は、まだ公表出来ないユニットの活動についての話や練習をするときだから絶対に近寄らないよう告げてある。
だから、何をしようと他の誰にもわからない。
そう、何をしようともだ。
鬼龍が目を見開いたのは一瞬で、直ぐに笑みを浮かべた。
「なら、寄らせて貰うぜ。好きなだけっつったのはてめぇだってことを忘れんなよ」
「二言はない」
鬼龍の分の夕食も用意して貰うよう、母にメッセージを打ちながらそう返すと、旦那にゃ敵わねぇなという呟きが聞こえた。
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