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キスブラ版ワンドロライ第12回でのお題から『手料理』『頼み事』『ワイン』を使って書いた話です。
+15分。
頂き物だっていうワインに合う和風のつまみを作って欲しい――とブラッドに言われたのは先週のことだ。
「父が付き合いのある他国の外交官から贈って貰ったワインだそうだが、二本貰ったから一本は俺に譲ると貰い受けてきた」
「贈って貰った……って、これ凄ぇ高いヤツじゃねぇかよ……」
オレが飲むのはビールが多いとはいえ、ワインや日本酒なんかも飲むことがある。
リカーショップに行きゃ、買わない酒も目に入るし、それが飛び抜けた値段だったりなんかしたら、嫌でも記憶に残る。
ブラッドの親父さんが贈って貰ったってワインは、オレの月収半月分は軽く飛ぶような代物だ。
ヒーロー、特にメジャーヒーローともなれば、それなりの金額を貰っているのに。
それを二本も贈って寄越す相手ってどんなんだよ。
「ああ。お前は知っていたか」
「そりゃ、店で目にすることくらいはあるからなー。買おうと思ったことはさすがにねぇけど」
「そうか。俺も金額を聞いて一度は断ったが、酒が好きな者が飲んだ方がワインも本望だろうと言われれば、それも一理あるなと受け取ってきた。両親も酒は嗜むが、特別好むというわけでもないからな」
一瞬、ブラッドの言葉を聞き流しそうになったが、酒が好きな者が飲んだ方が、って内容に引っかかった。
「……待て。酒が好きなヤツってそれ……」
「お前を想定してのことだろうな。両親の中ではお前は酒好き、ディノはピザ好きで覚えられている」
「そうかよ」
まぁ、アカデミーの頃からの付き合いだし、ルーキー時代に呼ばれた何かのパーティーでブラッドの父親に直接会ったこともあるから、知っててもおかしくはねぇんだけど。
「そして、どうせ良いワインを飲むのであれば、美味く飲みたい。お前がワインに合うつまみを作ってくれるなら、ちょうどいいだろう」
「あー、マリアージュってヤツか」
ワインと料理の相性を結婚に例えて、そう呼ばれるって教えてくれたのはジェイだ。
ルーキー時代、オレたち三人が酒が飲めるようになった時に、ヒーローだと今後何かとパーティー等に呼ばれる機会も多くなるからと、酒の楽しみ方を最初に色々と教えてくれた。
マリアージュの話もその時に聞いたし、研修チーム部屋で共同生活をおくっていた当時、部屋でワインを開けて、飲みながらつまみを作ったりしたこともある。
あの時のワインは安物だったが、それでも料理との相性次第で変わるっていうのは実感した。
「美味く飲みたいってのはわかったけど、つまみは和風がいいってのは完全にお前の趣味だよな?」
「…………ダメか?」
「いや、ダメってこたねぇけど……ワインに和風のつまみって合うのか?」
日本酒ならルーツ的にわからなくもねぇけど、ワインと和食という組み合わせは経験がねぇからか、どうもピンと来ない。
「合うものもあるようだ。例えば、こういうのなんかはどうだろう」
ブラッドが手にしていたタブレットを操作し、何かのサイトを表示してからオレに寄越した。
元は日本語で書かれていただろうサイトは翻訳されていて、オレにも内容がわかるようになっていた。
レシピなんかもいくつか掲載されている。
こりゃ、オレに話持ってくる前にガッツリチェックしてたな、ブラッドのヤツ。
ま、ブラッドと飲める機会もそんな多くねぇし、この先飲む機会があるかどうかもわかんねぇような高い酒飲ませて貰うなら、多少面倒なもんでも作ってやるとするか。
「で、お前が食いたいのってどれだよ?」
「……いいのか?」
「どうせ、目星つけてあんだろ。来週のオフでいいよな? 材料なんかも揃えられるか確認しねぇとなんねぇし」
グリーンイーストのリトルトーキョーなら、調味料なんかは結構揃うが、食材によっては季節に左右されるもんも少なからずある。
「ああ。感謝する」
表情こそ大した差はねぇが、ブラッドの声が弾んでるのが伝わってきた。
***
「うわ……美味……。いや、美味いのは想像してたけど、マジで料理と合うな」
ブラッドの頼み事からほぼ一週間後。
事前にチェックしていた食材を昼のうちにブラッドと一緒にグリーンイーストまで買いに行って、オレの家で一緒に作り、夕食として作ったつまみとワインを楽しんでいるが、想像以上のモンだった。
最初、ワインだけ口にしたときは、美味いのは美味いけど、これまでにもパーティーで口にしてきたヤツとそう大差ねぇかも?なんて思ってたぐらいだったが、料理と合わせた瞬間驚いた。
味の世界の広がり方が、これまで経験してきたのとは比較になんねぇレベルだ。
作ったつまみも味見しながらだったから、味はわかっていたつもりだが、こっちもこっちでワインと合わせることによって美味さがより引き立つ。
こりゃ、酒もつまみも進む一方だなと思っていたら、ブラッドも普段よりも酒の進みが早い。
ソファに隣り合って座ってるから、飲み食いするスピードが分かりやすい。
「ああ。最高だな。お前の料理が美味いのは今に始まったことではないが、今まで食ってきた中でも一際美味い」
「酒がめちゃくちゃ良いからなー。……これ、今日で全部空けちまってもいいのか?」
「構わん。料理の方が足りなくなりそうだがな」
「和風じゃなくてもいいなら、あり合わせので何か作ってやるよ」
「それは楽しみだ」
ブラッドの空になったワイングラスにワインを注ぎながら、残ってる食材でこのワインに合いそうなメニューを考えていたら、不意にブラッドが体を寄せて、オレの肩にことんと頭を乗せてくる。
酔ってるせいなのか、食事中にこんな風に甘えてくるのは珍しい。
ワインを注ぎ終わってから、乗っかった頭を撫でてやると微かに笑い声がした。
午後から買い物とつまみ作りにかかりきりだったけど、たまにはこんなオフも悪くないと思いながら、ブラッドの髪にそっとキスをした。
Close
#キスブラ #ワンライ
+15分。
頂き物だっていうワインに合う和風のつまみを作って欲しい――とブラッドに言われたのは先週のことだ。
「父が付き合いのある他国の外交官から贈って貰ったワインだそうだが、二本貰ったから一本は俺に譲ると貰い受けてきた」
「贈って貰った……って、これ凄ぇ高いヤツじゃねぇかよ……」
オレが飲むのはビールが多いとはいえ、ワインや日本酒なんかも飲むことがある。
リカーショップに行きゃ、買わない酒も目に入るし、それが飛び抜けた値段だったりなんかしたら、嫌でも記憶に残る。
ブラッドの親父さんが贈って貰ったってワインは、オレの月収半月分は軽く飛ぶような代物だ。
ヒーロー、特にメジャーヒーローともなれば、それなりの金額を貰っているのに。
それを二本も贈って寄越す相手ってどんなんだよ。
「ああ。お前は知っていたか」
「そりゃ、店で目にすることくらいはあるからなー。買おうと思ったことはさすがにねぇけど」
「そうか。俺も金額を聞いて一度は断ったが、酒が好きな者が飲んだ方がワインも本望だろうと言われれば、それも一理あるなと受け取ってきた。両親も酒は嗜むが、特別好むというわけでもないからな」
一瞬、ブラッドの言葉を聞き流しそうになったが、酒が好きな者が飲んだ方が、って内容に引っかかった。
「……待て。酒が好きなヤツってそれ……」
「お前を想定してのことだろうな。両親の中ではお前は酒好き、ディノはピザ好きで覚えられている」
「そうかよ」
まぁ、アカデミーの頃からの付き合いだし、ルーキー時代に呼ばれた何かのパーティーでブラッドの父親に直接会ったこともあるから、知っててもおかしくはねぇんだけど。
「そして、どうせ良いワインを飲むのであれば、美味く飲みたい。お前がワインに合うつまみを作ってくれるなら、ちょうどいいだろう」
「あー、マリアージュってヤツか」
ワインと料理の相性を結婚に例えて、そう呼ばれるって教えてくれたのはジェイだ。
ルーキー時代、オレたち三人が酒が飲めるようになった時に、ヒーローだと今後何かとパーティー等に呼ばれる機会も多くなるからと、酒の楽しみ方を最初に色々と教えてくれた。
マリアージュの話もその時に聞いたし、研修チーム部屋で共同生活をおくっていた当時、部屋でワインを開けて、飲みながらつまみを作ったりしたこともある。
あの時のワインは安物だったが、それでも料理との相性次第で変わるっていうのは実感した。
「美味く飲みたいってのはわかったけど、つまみは和風がいいってのは完全にお前の趣味だよな?」
「…………ダメか?」
「いや、ダメってこたねぇけど……ワインに和風のつまみって合うのか?」
日本酒ならルーツ的にわからなくもねぇけど、ワインと和食という組み合わせは経験がねぇからか、どうもピンと来ない。
「合うものもあるようだ。例えば、こういうのなんかはどうだろう」
ブラッドが手にしていたタブレットを操作し、何かのサイトを表示してからオレに寄越した。
元は日本語で書かれていただろうサイトは翻訳されていて、オレにも内容がわかるようになっていた。
レシピなんかもいくつか掲載されている。
こりゃ、オレに話持ってくる前にガッツリチェックしてたな、ブラッドのヤツ。
ま、ブラッドと飲める機会もそんな多くねぇし、この先飲む機会があるかどうかもわかんねぇような高い酒飲ませて貰うなら、多少面倒なもんでも作ってやるとするか。
「で、お前が食いたいのってどれだよ?」
「……いいのか?」
「どうせ、目星つけてあんだろ。来週のオフでいいよな? 材料なんかも揃えられるか確認しねぇとなんねぇし」
グリーンイーストのリトルトーキョーなら、調味料なんかは結構揃うが、食材によっては季節に左右されるもんも少なからずある。
「ああ。感謝する」
表情こそ大した差はねぇが、ブラッドの声が弾んでるのが伝わってきた。
***
「うわ……美味……。いや、美味いのは想像してたけど、マジで料理と合うな」
ブラッドの頼み事からほぼ一週間後。
事前にチェックしていた食材を昼のうちにブラッドと一緒にグリーンイーストまで買いに行って、オレの家で一緒に作り、夕食として作ったつまみとワインを楽しんでいるが、想像以上のモンだった。
最初、ワインだけ口にしたときは、美味いのは美味いけど、これまでにもパーティーで口にしてきたヤツとそう大差ねぇかも?なんて思ってたぐらいだったが、料理と合わせた瞬間驚いた。
味の世界の広がり方が、これまで経験してきたのとは比較になんねぇレベルだ。
作ったつまみも味見しながらだったから、味はわかっていたつもりだが、こっちもこっちでワインと合わせることによって美味さがより引き立つ。
こりゃ、酒もつまみも進む一方だなと思っていたら、ブラッドも普段よりも酒の進みが早い。
ソファに隣り合って座ってるから、飲み食いするスピードが分かりやすい。
「ああ。最高だな。お前の料理が美味いのは今に始まったことではないが、今まで食ってきた中でも一際美味い」
「酒がめちゃくちゃ良いからなー。……これ、今日で全部空けちまってもいいのか?」
「構わん。料理の方が足りなくなりそうだがな」
「和風じゃなくてもいいなら、あり合わせので何か作ってやるよ」
「それは楽しみだ」
ブラッドの空になったワイングラスにワインを注ぎながら、残ってる食材でこのワインに合いそうなメニューを考えていたら、不意にブラッドが体を寄せて、オレの肩にことんと頭を乗せてくる。
酔ってるせいなのか、食事中にこんな風に甘えてくるのは珍しい。
ワインを注ぎ終わってから、乗っかった頭を撫でてやると微かに笑い声がした。
午後から買い物とつまみ作りにかかりきりだったけど、たまにはこんなオフも悪くないと思いながら、ブラッドの髪にそっとキスをした。
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#キスブラ #ワンライ