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キスブラ版ワンドロライ第7回でのお題から『食事』『クリスマス』『愛情』を使って書いた話(修正版)です。
※数年後の時間軸で、既に二人とも研修チームのメンターではない&キスブラが一緒に住んでるというのを想定の下に書いてます。
【Brad's Side】
「お、【クリスマス・リーグ】の結果出たみたいだぜ」
キースの言葉に顔を上げれば、街中にある大型ビジョンでは見慣れた光景と、ノースセクターの研修チームメンバーが映し出されていた。
なるほど、今年の勝者はノースセクターか。
「ああ、もうそんな時間か。……ふむ。もう少ししたら、パトロールを終了しても良さそうだな」
「ま、ここらに限らず、今日はどこの地区も異常なさそうだしな。街が平和で何よりっと」
クリスマスとなると、研修チームは毎年恒例の【クリスマス・リーグ】に参戦しているから、その間のパトロールは俺たちのように研修チームに所属していないヒーローの仕事となる。
特にメジャーヒーローともなれば、その実力を買われ、通常よりも少ない人数で組んでパトロールすることも多い。
今日、俺とキースが組む形でこの地区のパトロールに当たっているのもそれを考慮してのことだろう。
他に意図があっての人選ではないはずだ。……多分。
「せっかくのクリスマスなのに、仕事ってのも味気ねぇよなぁ」
「俺たちがヒーローになってから十年以上経つが、休みだったクリスマスなど一度だってあったか?」
「いや、ねぇけどさ。気分の問題だよ」
――クリスマスなぁ……。一回か二回は祝ったことあったけど、ホントに小せぇ頃だわ。母親が家出て行く前だからなぁ。ああ、でもクリスマスに教会行くと食い物貰えたのは有り難かったから、アカデミー入学前はそれで教会行ったりしてたな。
――だから、クリスマスが楽しかった記憶なんて0とまではいかなくても、ほとんどねぇわ。思い入れもねぇよ。
かつては遠い目でそんなことを口にしていた男が、クリスマスに仕事が入っていることをぼやけるようになった境遇の変化を喜ぶべきだろう。
少なくとも、今のキースはクリスマスの楽しみ方を知っている。
クリスマスを楽しいものだと認識しているからこそのぼやきだ。
「仕事が終わって、家に帰ったら、数時間はクリスマス気分を味わえるだろうに」
「そうだけどさ。あ…………こりゃ、雪降ってきたか?」
「雪だと?」
日が傾いて暗くなり始めた空を見上げたら、ややあって、雪が舞い落ちる様が確認出来た。
勢いは弱く、積もるほどではなさそうだが、このまま深夜まで降り続けば、薄ら街が白く染まるくらいにはなるだろうか。
「ホワイトクリスマスだな」
「今夜は雪見酒か。悪くねぇな。例のワイン、帰ったら開けるんだよな?」
例のワインとは、少し前に取り寄せた俺たちの生まれ年のワインだ。
一緒に住むようになった記念も兼ねて、二人で今回のクリスマス用にと購入してみた。
キースは甘い物を好まないから、甘口だというそのワインを購入するか少し迷ったが、今が飲み頃と表記されていたことや、キースも興味があると言ったことで購入に踏み切った。
「ああ。甘口のようだから、お前の口にはもしかしたら合わないかもしれんが」
「でも、お前は好きだろ。どうしても合わなきゃ、日本酒の方でも開ける」
「一応、そっちは新年用にするつもりだったが……うん? 司令部からの通信だな、ちょっと待て」
「げっ、何か起きたか?」
司令からの通信が入って、キースとの会話を一度切る。
何か異常でも発生したのかと思ったが、そうではなく、パトロールが終了次第、タワーに寄らずそのまま帰宅しても構わないとの連絡だった。
特に何かがあったわけではなかったことにほっとする。
「……キース。パトロールの報告書を提出するのは明日でいいそうだ。今日はこのまま帰宅して構わんと」
「マジか。司令いいとこあんな。じゃ、ちょっとディナーの準備する手間を考えても、いつもの時間には家で飯が食えるってことか」
「そうなる。真っ直ぐ帰るが構わんな?」
「おう。どうせ、大体の店もう閉まってんだし。ローストビーフ、どんな風に出来てるか楽しみだな」
「ああ」
日本の調味料を使ってローストビーフを作りたいと言ったのは俺だ。
評判の良さそうなレシピだったし、手順通りに昨夜仕込んだから問題はないと思うが。
あとは、予め作って冷凍してあるキッシュを温め、サラダを作ってそれに合わせれば今夜のディナーは完成だ。
以前はホテルでクリスマスディナーというのもやったことはあるが、キースがあまり好まないのと、どうしても人目につくところだと、市民への対応をすることもあり、落ち着かないからと、家で二人きりのディナーを楽しむようになった。
この場所からなら、俺たちの住んでいる家までは歩いて数分。
タワーには今朝の出勤時に使った俺の車を置いたままだが、家にはキースの方の車もあるから、明日出勤するにもさしあたって問題はない。
何となく足早になりながら、キースと並んで家への道を歩いていると、不意にキースが口を開いた。
「今日のパトロールさ、この組み合わせでこの場所って、配慮されたってやつなのかね」
「…………かもしれんな」
俺たちが一緒に暮らしているのは、知っている者も多い。
司令は当然知っている者の一人だ。
もしかしたら、クリスマスだからとキースの言うように配慮してくれたのかもしれない。
だとしたら、粋なクリスマスプレゼントだ。
後日、少しばかり礼の品でも贈っておくかと思いながら、キースと肩が触れ合いそうになる距離まで近付き、家への道を歩いて行った。
【Keith's Side】
「お、【クリスマス・リーグ】の結果出たみたいだぜ」
パトロールの最中、目に付いた大型ビジョンではノースセクターの研修チームのルーキーがガッツポーズをして、マリオンに窘められているところが映っていた。
が、そのマリオンも嬉しそうな目をしてるのはモニター越しでも伝わる。
アイツも何だかんだこの数年ですっかりメンターらしくなったよなぁ。
でもって、あからさまに喜びはしねぇで表向きはこれが当然って装うあたり、やっぱり元メンターであるブラッドにちょっと似てる。
口にした日にゃ、二人から揃って睨まれそうだけど。
「ああ、もうそんな時間か。……ふむ。もう少ししたら、パトロールを終了しても良さそうだな」
「ま、ここらに限らず、今日はどこの地区も異常なさそうだしな。街が平和で何よりっと」
研修チームは【クリスマス・リーグ】に参戦となると、当然パトロールはそれ以外のメンツでやることになる。
どうしてもその分人数が少なくなるから、メジャーヒーローなんかはそれこそ二人で組んで、パトロールするって形だが、今オレとブラッドでパトロールしてるこの地区は、オレたちの家からも比較的近い場所だ。
わざとなのかどうかわかんねぇが、普段は戦力の偏りを抑えるためにもメジャーヒーロー同士になるブラッドと一緒にパトロールすることは稀だし、ブラッドの小言さえなけりゃ一緒にパトロールするのは気も楽だからいいんだが、少し気になるところだ。
「せっかくのクリスマスなのに、仕事ってのも味気ねぇよなぁ」
「俺たちがヒーローになってから十年以上経つが、休みだったクリスマスなど一度だってあったか?」
「いや、ねぇけどさ。気分の問題だよ」
昔はクリスマスなんてもんに思い入れはなかった。
遠い昔、まだ母親が家を出る前に、一度だけ家族でクリスマスらしく祝ったことはあったが、その記憶が苦しくなるぐらいにはその後のクリスマスは散々なものだった。
母親がいなくなったことで、親父が不機嫌になったときの矛先が全部オレに向かうようになって以降、クリスマスはオレにとって、教会に行くと食い物が貰える日であり、街を歩く幸せそうな家族の気が緩んでいる隙を狙える『稼ぎ時』って認識だったのだ。
アカデミーに入って、ブラッドやディノと出会い、さらにはルーキーとして入所した後のジェイによって、クリスマスパーティーなんてもんを経験するまでは。
一緒に騒いで、時にプレゼントを贈り合ったりして、美味いもんを食って。
ヒーローになって以降、確かにブラッドの言ったようにクリスマスが一日休みだったことなんて一度だってない。
けど、それがどうでもよくなるくらいには、今はクリスマスのこのどこか優しい空気が嫌いじゃなかったし、大事なヤツと過ごせるクリスマスってもんに価値を見いだしている。
「仕事が終わって、家に帰ったら、数時間はクリスマス気分を味わえるだろうに」
「そうだけどさ。あ…………こりゃ、雪降ってきたか?」
「雪だと?」
微かな違和感に手を出したら、確かに冷たいものが指先に触れた。
やがて、誰の目にもわかるくらいにハッキリと降り始めた雪に、ブラッドが目元を綻ばせる。
「ホワイトクリスマスだな」
「今夜は雪見酒か。悪くねぇな。例のワイン、帰ったら開けるんだよな?」
少し前に、オレたちが生まれた年に出来たワインを見つけて、ブラッドがクリスマスの祝いに、そして一緒に住み始めた記念にと欲しがった結果、一緒に買ったワインだ。
オレはワインよりは断然ビールの方が好きだが、今がちょうど飲み頃だっていうし、ブラッドが酒に対しては珍しいくらいに興味を持っていたのが、妙に可愛かったり嬉しかったりしたもんだから、少し値段はしたけどそれを買うことにした。
そのまま飲んだ後はホットワインにして、ベランダで飲むのもいいかもしれねぇなんて思っていたら、ブラッドが頷きながらも少しだけ表情を曇らせている。
「ああ。甘口のようだから、お前の口にはもしかしたら合わないかもしれんが」
どうも、そこを気にしていたらしい。
確かに甘いのは得意じゃねぇけど、酒の時点で何でも楽しめるから気にしなくていいんだけどな。
「でも、お前は好きだろ。どうしても合わなきゃ、日本酒の方でも開ける」
実際、一緒に買った日本酒の方が味として楽しみなのが正直なところだ。
こっちこそ、こんな日には熱燗にして飲んでみたいってのはある。
「一応、そっちは新年用にするつもりだったが……うん? 司令部からの通信だな、ちょっと待て」
「げっ、何か起きたか?」
仕事なら仕方ねぇけど、平穏なクリスマスの予定が崩れるのは切ねぇな、なんて思っていたが、司令との話を終えたブラッドは口元に笑みを浮かべていた。
「……キース。パトロールの報告書を提出するのは明日でいいそうだ。今日はこのまま帰宅して構わんと」
「マジか。司令いいとこあんな。じゃ、ちょっとディナーの準備する手間を考えても、いつもの時間には家で飯が食えるってことか」
「そうなる。真っ直ぐ帰るが構わんな?」
「おう。どうせ、大体の店もう閉まってんだし。ローストビーフ、どんな風に出来てるか楽しみだな」
「ああ」
ブラッドが日本の調味料を使ったローストビーフが作りたいと言いだしたから、昨夜のうちに仕込んである。
前のオフの時に作って、冷凍しておいたキッシュも温めつつ、サラダを作りゃ立派なディナーの出来上がりだ。
どうも、慣れてねぇからホテルのディナーだと落ち着かねぇし、そもそもオレはともかく、ブラッドはかなりヒーローとして顔が知られているから、どうしても外で食うってなると人目につくのは避けられねぇんだよな。
何より、家でのディナーだと本当に二人きりで楽しめるというのが大きい。
一緒に住む前も仕事が終わった後に料理を持ち寄って、一緒に食ったりしてたけど、一緒に住むことで一から十まで、全部一緒に出来るっていうのがたまんねぇ。
ここからなら、家には数分で着く。
ブラッドの車はタワーに一晩置きっぱなしになるが、オレの車もあるし、明日帰りにそれぞれの車で帰って来りゃいいだけだ。
雪の降る中をブラッドと一緒に歩きながら、つい気になっていたことを口にする。
「今日のパトロールさ、この組み合わせでこの場所って、配慮されたってやつなのかね」
「…………かもしれんな」
勿論、イクリプスが出現したら仕事が優先だが、今日のようにパトロール中に何もなければ、終わった後は二人揃ってそのまま家に帰れる。しかもクリスマスの夜に――なんてのは何も考えずに手配した結果だとは考えにくい。
ブラッドとは長い付き合いだし、今更って思わなくもねぇが、それでも心の中がなんとなく温かくなる。
ほんの少し、体を寄せて来たブラッドの腰に手の一つでも回したくなるが、家に着くまでは我慢だ。
いくらクリスマスの夜でも、本当にやったら小言スイッチが入るのは間違いない。
腰に手を回すのも、抱きしめるのも、キスをするのも、家にさえ着いちまえば、いくらだって出来る。
今日が終わるまでの数時間、ブラッドとのクリスマスを楽しむ想像をしながら、家への道を歩いて行った。
Close
#キスブラ #ワンライ
※数年後の時間軸で、既に二人とも研修チームのメンターではない&キスブラが一緒に住んでるというのを想定の下に書いてます。
【Brad's Side】
「お、【クリスマス・リーグ】の結果出たみたいだぜ」
キースの言葉に顔を上げれば、街中にある大型ビジョンでは見慣れた光景と、ノースセクターの研修チームメンバーが映し出されていた。
なるほど、今年の勝者はノースセクターか。
「ああ、もうそんな時間か。……ふむ。もう少ししたら、パトロールを終了しても良さそうだな」
「ま、ここらに限らず、今日はどこの地区も異常なさそうだしな。街が平和で何よりっと」
クリスマスとなると、研修チームは毎年恒例の【クリスマス・リーグ】に参戦しているから、その間のパトロールは俺たちのように研修チームに所属していないヒーローの仕事となる。
特にメジャーヒーローともなれば、その実力を買われ、通常よりも少ない人数で組んでパトロールすることも多い。
今日、俺とキースが組む形でこの地区のパトロールに当たっているのもそれを考慮してのことだろう。
他に意図があっての人選ではないはずだ。……多分。
「せっかくのクリスマスなのに、仕事ってのも味気ねぇよなぁ」
「俺たちがヒーローになってから十年以上経つが、休みだったクリスマスなど一度だってあったか?」
「いや、ねぇけどさ。気分の問題だよ」
――クリスマスなぁ……。一回か二回は祝ったことあったけど、ホントに小せぇ頃だわ。母親が家出て行く前だからなぁ。ああ、でもクリスマスに教会行くと食い物貰えたのは有り難かったから、アカデミー入学前はそれで教会行ったりしてたな。
――だから、クリスマスが楽しかった記憶なんて0とまではいかなくても、ほとんどねぇわ。思い入れもねぇよ。
かつては遠い目でそんなことを口にしていた男が、クリスマスに仕事が入っていることをぼやけるようになった境遇の変化を喜ぶべきだろう。
少なくとも、今のキースはクリスマスの楽しみ方を知っている。
クリスマスを楽しいものだと認識しているからこそのぼやきだ。
「仕事が終わって、家に帰ったら、数時間はクリスマス気分を味わえるだろうに」
「そうだけどさ。あ…………こりゃ、雪降ってきたか?」
「雪だと?」
日が傾いて暗くなり始めた空を見上げたら、ややあって、雪が舞い落ちる様が確認出来た。
勢いは弱く、積もるほどではなさそうだが、このまま深夜まで降り続けば、薄ら街が白く染まるくらいにはなるだろうか。
「ホワイトクリスマスだな」
「今夜は雪見酒か。悪くねぇな。例のワイン、帰ったら開けるんだよな?」
例のワインとは、少し前に取り寄せた俺たちの生まれ年のワインだ。
一緒に住むようになった記念も兼ねて、二人で今回のクリスマス用にと購入してみた。
キースは甘い物を好まないから、甘口だというそのワインを購入するか少し迷ったが、今が飲み頃と表記されていたことや、キースも興味があると言ったことで購入に踏み切った。
「ああ。甘口のようだから、お前の口にはもしかしたら合わないかもしれんが」
「でも、お前は好きだろ。どうしても合わなきゃ、日本酒の方でも開ける」
「一応、そっちは新年用にするつもりだったが……うん? 司令部からの通信だな、ちょっと待て」
「げっ、何か起きたか?」
司令からの通信が入って、キースとの会話を一度切る。
何か異常でも発生したのかと思ったが、そうではなく、パトロールが終了次第、タワーに寄らずそのまま帰宅しても構わないとの連絡だった。
特に何かがあったわけではなかったことにほっとする。
「……キース。パトロールの報告書を提出するのは明日でいいそうだ。今日はこのまま帰宅して構わんと」
「マジか。司令いいとこあんな。じゃ、ちょっとディナーの準備する手間を考えても、いつもの時間には家で飯が食えるってことか」
「そうなる。真っ直ぐ帰るが構わんな?」
「おう。どうせ、大体の店もう閉まってんだし。ローストビーフ、どんな風に出来てるか楽しみだな」
「ああ」
日本の調味料を使ってローストビーフを作りたいと言ったのは俺だ。
評判の良さそうなレシピだったし、手順通りに昨夜仕込んだから問題はないと思うが。
あとは、予め作って冷凍してあるキッシュを温め、サラダを作ってそれに合わせれば今夜のディナーは完成だ。
以前はホテルでクリスマスディナーというのもやったことはあるが、キースがあまり好まないのと、どうしても人目につくところだと、市民への対応をすることもあり、落ち着かないからと、家で二人きりのディナーを楽しむようになった。
この場所からなら、俺たちの住んでいる家までは歩いて数分。
タワーには今朝の出勤時に使った俺の車を置いたままだが、家にはキースの方の車もあるから、明日出勤するにもさしあたって問題はない。
何となく足早になりながら、キースと並んで家への道を歩いていると、不意にキースが口を開いた。
「今日のパトロールさ、この組み合わせでこの場所って、配慮されたってやつなのかね」
「…………かもしれんな」
俺たちが一緒に暮らしているのは、知っている者も多い。
司令は当然知っている者の一人だ。
もしかしたら、クリスマスだからとキースの言うように配慮してくれたのかもしれない。
だとしたら、粋なクリスマスプレゼントだ。
後日、少しばかり礼の品でも贈っておくかと思いながら、キースと肩が触れ合いそうになる距離まで近付き、家への道を歩いて行った。
【Keith's Side】
「お、【クリスマス・リーグ】の結果出たみたいだぜ」
パトロールの最中、目に付いた大型ビジョンではノースセクターの研修チームのルーキーがガッツポーズをして、マリオンに窘められているところが映っていた。
が、そのマリオンも嬉しそうな目をしてるのはモニター越しでも伝わる。
アイツも何だかんだこの数年ですっかりメンターらしくなったよなぁ。
でもって、あからさまに喜びはしねぇで表向きはこれが当然って装うあたり、やっぱり元メンターであるブラッドにちょっと似てる。
口にした日にゃ、二人から揃って睨まれそうだけど。
「ああ、もうそんな時間か。……ふむ。もう少ししたら、パトロールを終了しても良さそうだな」
「ま、ここらに限らず、今日はどこの地区も異常なさそうだしな。街が平和で何よりっと」
研修チームは【クリスマス・リーグ】に参戦となると、当然パトロールはそれ以外のメンツでやることになる。
どうしてもその分人数が少なくなるから、メジャーヒーローなんかはそれこそ二人で組んで、パトロールするって形だが、今オレとブラッドでパトロールしてるこの地区は、オレたちの家からも比較的近い場所だ。
わざとなのかどうかわかんねぇが、普段は戦力の偏りを抑えるためにもメジャーヒーロー同士になるブラッドと一緒にパトロールすることは稀だし、ブラッドの小言さえなけりゃ一緒にパトロールするのは気も楽だからいいんだが、少し気になるところだ。
「せっかくのクリスマスなのに、仕事ってのも味気ねぇよなぁ」
「俺たちがヒーローになってから十年以上経つが、休みだったクリスマスなど一度だってあったか?」
「いや、ねぇけどさ。気分の問題だよ」
昔はクリスマスなんてもんに思い入れはなかった。
遠い昔、まだ母親が家を出る前に、一度だけ家族でクリスマスらしく祝ったことはあったが、その記憶が苦しくなるぐらいにはその後のクリスマスは散々なものだった。
母親がいなくなったことで、親父が不機嫌になったときの矛先が全部オレに向かうようになって以降、クリスマスはオレにとって、教会に行くと食い物が貰える日であり、街を歩く幸せそうな家族の気が緩んでいる隙を狙える『稼ぎ時』って認識だったのだ。
アカデミーに入って、ブラッドやディノと出会い、さらにはルーキーとして入所した後のジェイによって、クリスマスパーティーなんてもんを経験するまでは。
一緒に騒いで、時にプレゼントを贈り合ったりして、美味いもんを食って。
ヒーローになって以降、確かにブラッドの言ったようにクリスマスが一日休みだったことなんて一度だってない。
けど、それがどうでもよくなるくらいには、今はクリスマスのこのどこか優しい空気が嫌いじゃなかったし、大事なヤツと過ごせるクリスマスってもんに価値を見いだしている。
「仕事が終わって、家に帰ったら、数時間はクリスマス気分を味わえるだろうに」
「そうだけどさ。あ…………こりゃ、雪降ってきたか?」
「雪だと?」
微かな違和感に手を出したら、確かに冷たいものが指先に触れた。
やがて、誰の目にもわかるくらいにハッキリと降り始めた雪に、ブラッドが目元を綻ばせる。
「ホワイトクリスマスだな」
「今夜は雪見酒か。悪くねぇな。例のワイン、帰ったら開けるんだよな?」
少し前に、オレたちが生まれた年に出来たワインを見つけて、ブラッドがクリスマスの祝いに、そして一緒に住み始めた記念にと欲しがった結果、一緒に買ったワインだ。
オレはワインよりは断然ビールの方が好きだが、今がちょうど飲み頃だっていうし、ブラッドが酒に対しては珍しいくらいに興味を持っていたのが、妙に可愛かったり嬉しかったりしたもんだから、少し値段はしたけどそれを買うことにした。
そのまま飲んだ後はホットワインにして、ベランダで飲むのもいいかもしれねぇなんて思っていたら、ブラッドが頷きながらも少しだけ表情を曇らせている。
「ああ。甘口のようだから、お前の口にはもしかしたら合わないかもしれんが」
どうも、そこを気にしていたらしい。
確かに甘いのは得意じゃねぇけど、酒の時点で何でも楽しめるから気にしなくていいんだけどな。
「でも、お前は好きだろ。どうしても合わなきゃ、日本酒の方でも開ける」
実際、一緒に買った日本酒の方が味として楽しみなのが正直なところだ。
こっちこそ、こんな日には熱燗にして飲んでみたいってのはある。
「一応、そっちは新年用にするつもりだったが……うん? 司令部からの通信だな、ちょっと待て」
「げっ、何か起きたか?」
仕事なら仕方ねぇけど、平穏なクリスマスの予定が崩れるのは切ねぇな、なんて思っていたが、司令との話を終えたブラッドは口元に笑みを浮かべていた。
「……キース。パトロールの報告書を提出するのは明日でいいそうだ。今日はこのまま帰宅して構わんと」
「マジか。司令いいとこあんな。じゃ、ちょっとディナーの準備する手間を考えても、いつもの時間には家で飯が食えるってことか」
「そうなる。真っ直ぐ帰るが構わんな?」
「おう。どうせ、大体の店もう閉まってんだし。ローストビーフ、どんな風に出来てるか楽しみだな」
「ああ」
ブラッドが日本の調味料を使ったローストビーフが作りたいと言いだしたから、昨夜のうちに仕込んである。
前のオフの時に作って、冷凍しておいたキッシュも温めつつ、サラダを作りゃ立派なディナーの出来上がりだ。
どうも、慣れてねぇからホテルのディナーだと落ち着かねぇし、そもそもオレはともかく、ブラッドはかなりヒーローとして顔が知られているから、どうしても外で食うってなると人目につくのは避けられねぇんだよな。
何より、家でのディナーだと本当に二人きりで楽しめるというのが大きい。
一緒に住む前も仕事が終わった後に料理を持ち寄って、一緒に食ったりしてたけど、一緒に住むことで一から十まで、全部一緒に出来るっていうのがたまんねぇ。
ここからなら、家には数分で着く。
ブラッドの車はタワーに一晩置きっぱなしになるが、オレの車もあるし、明日帰りにそれぞれの車で帰って来りゃいいだけだ。
雪の降る中をブラッドと一緒に歩きながら、つい気になっていたことを口にする。
「今日のパトロールさ、この組み合わせでこの場所って、配慮されたってやつなのかね」
「…………かもしれんな」
勿論、イクリプスが出現したら仕事が優先だが、今日のようにパトロール中に何もなければ、終わった後は二人揃ってそのまま家に帰れる。しかもクリスマスの夜に――なんてのは何も考えずに手配した結果だとは考えにくい。
ブラッドとは長い付き合いだし、今更って思わなくもねぇが、それでも心の中がなんとなく温かくなる。
ほんの少し、体を寄せて来たブラッドの腰に手の一つでも回したくなるが、家に着くまでは我慢だ。
いくらクリスマスの夜でも、本当にやったら小言スイッチが入るのは間違いない。
腰に手を回すのも、抱きしめるのも、キスをするのも、家にさえ着いちまえば、いくらだって出来る。
今日が終わるまでの数時間、ブラッドとのクリスマスを楽しむ想像をしながら、家への道を歩いて行った。
Close
#キスブラ #ワンライ
キスブラ版ワンドロライ第7回でのお題から『食事』『クリスマス』『愛情』を使って書いた話です。
※数年後の時間軸で、既に二人とも研修チームのメンターではない&キスブラが一緒に住んでるというのを想定の下に書いてます。
修正版はこちらです。
※pixivに纏める際に消します。
「お、【クリスマス・リーグ】の結果出たみたいだぜ」
街中にある大型ビジョンでは見慣れた光景と、ノースセクターの研修チームメンバーが映し出されていた。
なるほど、今年の勝者はノースセクターか。
「ああ、もうそんな時間か。……ふむ。もう少ししたら、パトロールを終了しても良さそうだな」
「ま、ここらに限らず、どこの地区も異常なさそうだしな。平和で何よりっと」
クリスマスとなると、研修チームは毎年恒例の【クリスマス・リーグ】に参戦しているから、その間のパトロールは俺たちのように研修チームに所属していないヒーローの仕事となる。
特にメジャーヒーローともなれば、その実力を買われ、通常よりも少ない人数でパトロールすることも多い。
今日、俺とキースが組む形でこの地区のパトロールに当たっているのもそれを考慮してのことだろう。
他に意図があっての人選ではないはずだ。……多分。
「せっかくのクリスマスなのに、仕事ってのも味気ねぇよなぁ」
「俺たちがヒーローになってから、休みだったクリスマスなど一度だってあったか?」
「いや、ねぇけどさ。気分の問題だよ」
――クリスマスなぁ……。一回か二回は祝ったことあったけど、ホントに小せぇ頃だわ。母親が家出て行く前だからなぁ。ああ、でもクリスマスに教会行くと食い物貰えたのは有り難かったから、アカデミー入学前はそれで教会行ったりしてたな。
――だから、クリスマスが楽しかった記憶なんて0とまではいかなくても、ほとんどねぇわ。思い入れもねぇよ。
かつてはそんなことを口にしていた男が、クリスマスに仕事が入っていることをぼやけるようになった境遇の変化を喜ぶべきだろう。
少なくとも、今のキースはクリスマスの楽しみ方を知っている。
「仕事が終わって、家に帰ったら、数時間はクリスマス気分を味わえるだろうに」
「そうだけどさ。あ…………こりゃ、雪降ってきたか?」
「雪だと?」
日が傾いて暗くなり始めた空を見上げたら、ややあって、雪が舞い落ちる様が確認出来た。
勢いは弱く、積もるほどではなさそうだが、このまま深夜まで降り続けば、薄ら白くなるくらいにはなるだろうか。
「ホワイトクリスマスだな」
「雪見酒か。悪くねぇな。例のワイン、帰ったら開けるんだよな?」
「ああ。甘口のようだから、お前の口にはもしかしたら合わないかもしれんが」
「でも、お前は好きだろ。どうしても合わなきゃ、日本酒の方でも開ける」
「一応、そっちは新年用にするつもりだったが……うん? ちょっと待て」
司令からの通信が入って、キースとの会話を一度切る。
何か異常でも発生したかと思ったが、そうではなく、パトロールが終了次第、タワーに寄らずそのまま帰宅して構わないとの連絡だった。
「……キース。パトロールの報告書を提出するのは明日でいいそうだ。今日はこのまま帰宅して構わんと」
「マジか。司令いいとこあんな。じゃ、いつもの時間に家で飯が食えるってことか」
「そうなる。真っ直ぐ帰るが構わんな?」
「おう。どうせ、大体の店もう閉まってんだし。ローストビーフ、どんな風に出来てるか楽しみだな」
「ああ」
日本の調味料を使ってローストビーフを作りたいと言ったのは俺だ。
評判の良さそうなレシピだったし、手順通りに昨夜仕込んだから問題はないと思うが。
ここからなら、俺たちの住んでいる家までは歩いて数分。
何となく足早になりながら、キースと並んで家への道を歩いていると、不意にキースが口を開いた。
「今日のパトロールさ、この組み合わせでこの場所って、配慮されたってやつなのかな」
「…………かもしれんな」
俺たちが一緒に暮らしているのは、知っている者も多い。
司令は当然知っている。
もしかしたら、キースの言うように配慮してくれたのかもしれない。
後日、少しばかり礼の品でも贈っておくかと思いながら、キースと肩が触れ合いそうになる距離まで近付き、家への道を歩いて行った。
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#キスブラ #ワンライ
※数年後の時間軸で、既に二人とも研修チームのメンターではない&キスブラが一緒に住んでるというのを想定の下に書いてます。
修正版はこちらです。
※pixivに纏める際に消します。
「お、【クリスマス・リーグ】の結果出たみたいだぜ」
街中にある大型ビジョンでは見慣れた光景と、ノースセクターの研修チームメンバーが映し出されていた。
なるほど、今年の勝者はノースセクターか。
「ああ、もうそんな時間か。……ふむ。もう少ししたら、パトロールを終了しても良さそうだな」
「ま、ここらに限らず、どこの地区も異常なさそうだしな。平和で何よりっと」
クリスマスとなると、研修チームは毎年恒例の【クリスマス・リーグ】に参戦しているから、その間のパトロールは俺たちのように研修チームに所属していないヒーローの仕事となる。
特にメジャーヒーローともなれば、その実力を買われ、通常よりも少ない人数でパトロールすることも多い。
今日、俺とキースが組む形でこの地区のパトロールに当たっているのもそれを考慮してのことだろう。
他に意図があっての人選ではないはずだ。……多分。
「せっかくのクリスマスなのに、仕事ってのも味気ねぇよなぁ」
「俺たちがヒーローになってから、休みだったクリスマスなど一度だってあったか?」
「いや、ねぇけどさ。気分の問題だよ」
――クリスマスなぁ……。一回か二回は祝ったことあったけど、ホントに小せぇ頃だわ。母親が家出て行く前だからなぁ。ああ、でもクリスマスに教会行くと食い物貰えたのは有り難かったから、アカデミー入学前はそれで教会行ったりしてたな。
――だから、クリスマスが楽しかった記憶なんて0とまではいかなくても、ほとんどねぇわ。思い入れもねぇよ。
かつてはそんなことを口にしていた男が、クリスマスに仕事が入っていることをぼやけるようになった境遇の変化を喜ぶべきだろう。
少なくとも、今のキースはクリスマスの楽しみ方を知っている。
「仕事が終わって、家に帰ったら、数時間はクリスマス気分を味わえるだろうに」
「そうだけどさ。あ…………こりゃ、雪降ってきたか?」
「雪だと?」
日が傾いて暗くなり始めた空を見上げたら、ややあって、雪が舞い落ちる様が確認出来た。
勢いは弱く、積もるほどではなさそうだが、このまま深夜まで降り続けば、薄ら白くなるくらいにはなるだろうか。
「ホワイトクリスマスだな」
「雪見酒か。悪くねぇな。例のワイン、帰ったら開けるんだよな?」
「ああ。甘口のようだから、お前の口にはもしかしたら合わないかもしれんが」
「でも、お前は好きだろ。どうしても合わなきゃ、日本酒の方でも開ける」
「一応、そっちは新年用にするつもりだったが……うん? ちょっと待て」
司令からの通信が入って、キースとの会話を一度切る。
何か異常でも発生したかと思ったが、そうではなく、パトロールが終了次第、タワーに寄らずそのまま帰宅して構わないとの連絡だった。
「……キース。パトロールの報告書を提出するのは明日でいいそうだ。今日はこのまま帰宅して構わんと」
「マジか。司令いいとこあんな。じゃ、いつもの時間に家で飯が食えるってことか」
「そうなる。真っ直ぐ帰るが構わんな?」
「おう。どうせ、大体の店もう閉まってんだし。ローストビーフ、どんな風に出来てるか楽しみだな」
「ああ」
日本の調味料を使ってローストビーフを作りたいと言ったのは俺だ。
評判の良さそうなレシピだったし、手順通りに昨夜仕込んだから問題はないと思うが。
ここからなら、俺たちの住んでいる家までは歩いて数分。
何となく足早になりながら、キースと並んで家への道を歩いていると、不意にキースが口を開いた。
「今日のパトロールさ、この組み合わせでこの場所って、配慮されたってやつなのかな」
「…………かもしれんな」
俺たちが一緒に暮らしているのは、知っている者も多い。
司令は当然知っている。
もしかしたら、キースの言うように配慮してくれたのかもしれない。
後日、少しばかり礼の品でも贈っておくかと思いながら、キースと肩が触れ合いそうになる距離まで近付き、家への道を歩いて行った。
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#キスブラ #ワンライ
キスブラ版ワンドロライ第6回でのお題から『ハンテン』を使って書いた話です。
何か、ハンテンというよりこたつの話になったw
逆視点追加バージョンNovel にあります。
※pixivにも纏めたら、こことポイピクから削除します。
ブラッドが今日はオフだから、本来は昨日が締め切りだった報告書は明日提出すればいいか、なんて思っていたところ、当のブラッドからサウスの研修チーム部屋まで報告書を持ってこいって連絡が入った。
だったら、昼休みのタイミングで先に報告書を提出しとくかと、サウスの研修チーム部屋に行ったら、数日ここを訪れていなかった間に、見慣れない物が共有スペースの中央に置いてあった。
最初、低めのテーブルかと思ったが、脚があるはずの部分には布団が覆い被さっていて、見えないようになっている。
朧気に記憶に引っかかるが、名称が出て来ない。何ていうんだっけ、これ。
多分、ブラッドに教えて貰った日本の暖房器具だったと思うんだが――。
そう考えていたところで、キッチンの方にいたブラッドがオレのところまで来た。
「ああ、来たのか。ちょうど昼飯にポトフを作っていたところだが、お前も食っていくか?」
「お、食う食う。今日寒いから外出るの億劫だし、昼飯どうしようかと思ってたんだよな。こんな日だとタワー内にある店は絶対混むしさ。で、これ何だっけ? 前に教えて貰った気がするけど、名前出て来ねぇんだよな」
「『こたつ』だ。日本の暖房器具の」
「あ、それだ。お前が48手やってみたいとか言ったときに、日本人の小柄な体格ならともかく、オレたちの体格だと使っても試すのはキツそうだってなったやつな」
日本の性技書?に、48手っていうやつがあって、その中にこのこたつってのを使うのがあったんだよな。
こうして実際に見てみると、オレたちじゃ難しそうだってのは間違ってなかったなと思う。テーブルの脚の低さを考えると、オレたち二人分の足を入れて、かつ動くとなるとスペースに余裕がなさ過ぎる。
「……他に言うことはないのか。昼から出す話題でもないだろう」
「思い出しちまったんだから仕方ねぇだろ。他のヤツラもいねぇんだからそんくらい見逃してくれって。結局買ったのかよ」
「単純に暖房器具としてな。もう少しで出来るから、こたつに入って待ってろ。それと今のうちに報告書にミスがないか確認しておけ。寒ければ、そこに置いてあるハンテンを着るといい」
「ハンテン? これも日本のか?」
こたつのテーブルに乗っかっている、ぱっと見ちっちゃな布団っぽく見えるやつは着るものだったらしい。
「ああ。日本の室内での防寒着だ。アキラに教わって取り寄せた物をオスカーにもやったが、以来この部屋にいる時はずっと着ているな」
「あー、オスカー寒がりだもんなぁ。お、こりゃ確かに暖かいわ」
ハンテンってやつに袖を通し、靴を脱いで足をこたつの中につっこむと全身がポカポカと温まってくる。
「うわー、こりゃいいな……ここから出たくなくなりそうだ。お前、この状態で仕事していて嫌になんねぇ?」
テーブルの上には他にもブラッドが使っていただろうノートパソコンやタブレット、数枚の書類が置かれていて、昼飯作るまでは仕事してたんだろうってのは想像ついた。
「適度に温度の調節はしている。あと、俺が休みの日に仕事をしていた原因の一端は貴様にもあるのだが」
「おっと、悪ぃ。報告書にミスがないか確認、な」
下手に小言が続かねぇよう、報告書を取りだして内容をチェックする。大丈夫なはず、だ。多分。
「確認したぜ、大丈夫なはずだ。これ、ここの書類の上に乗っけて大丈夫か?」
「ああ。それでいい。ポトフが出来たから、自分の分は自分で持って……あ、こら」
多分自分用にブラッドが手にしていた、ポトフとパンの入った皿をサイコキネシスでここまで運び、ついでにもう1セット分もサイコキネシスで運んだ。
呆れた顔でブラッドがフォークとスプーンだけ二人分手にしてこっちに来る。
「軽率に能力を使うなと何度言えば」
「他のヤツがいない時くらいいいだろ。ほらほら冷めねぇうちに食おうぜ」
流石に熱々のポトフを食いながらだと暑くなりそうだと、ハンテンを脱いでこれまた能力でソファに置く。
「…………お前がこたつとハンテンを使うようになったら、その能力との合わせ技でろくにこたつから出て来なくなりそうだな」
「いやー、ちょっとこの温かさは魅力的だろ。自宅用に買うのはありかもな」
ウエストの研修チーム部屋でも勿論いいんだが、あえて自宅と口にした意味をブラッドが気付くかどうか。
表情に変化はなかったが、僅かな沈黙の後に発した言葉は心なしか弾んでいるように聞こえた。
「……もし、本当にお前が自宅に置くつもりなら、三分の二は俺が出してもいい」
「半分で十分だっての。じゃ、買うかー。こたつの脚が長めのやつな」
「探してみよう」
これは意味が伝わったな。次、オフが重なるのっていつだっけ。
それまでにこたつを調達出来るといいなと思いながら、熱々のポトフを堪能した。
Close
#キスブラ #ワンライ
何か、ハンテンというよりこたつの話になったw
逆視点追加バージョンNovel にあります。
※pixivにも纏めたら、こことポイピクから削除します。
ブラッドが今日はオフだから、本来は昨日が締め切りだった報告書は明日提出すればいいか、なんて思っていたところ、当のブラッドからサウスの研修チーム部屋まで報告書を持ってこいって連絡が入った。
だったら、昼休みのタイミングで先に報告書を提出しとくかと、サウスの研修チーム部屋に行ったら、数日ここを訪れていなかった間に、見慣れない物が共有スペースの中央に置いてあった。
最初、低めのテーブルかと思ったが、脚があるはずの部分には布団が覆い被さっていて、見えないようになっている。
朧気に記憶に引っかかるが、名称が出て来ない。何ていうんだっけ、これ。
多分、ブラッドに教えて貰った日本の暖房器具だったと思うんだが――。
そう考えていたところで、キッチンの方にいたブラッドがオレのところまで来た。
「ああ、来たのか。ちょうど昼飯にポトフを作っていたところだが、お前も食っていくか?」
「お、食う食う。今日寒いから外出るの億劫だし、昼飯どうしようかと思ってたんだよな。こんな日だとタワー内にある店は絶対混むしさ。で、これ何だっけ? 前に教えて貰った気がするけど、名前出て来ねぇんだよな」
「『こたつ』だ。日本の暖房器具の」
「あ、それだ。お前が48手やってみたいとか言ったときに、日本人の小柄な体格ならともかく、オレたちの体格だと使っても試すのはキツそうだってなったやつな」
日本の性技書?に、48手っていうやつがあって、その中にこのこたつってのを使うのがあったんだよな。
こうして実際に見てみると、オレたちじゃ難しそうだってのは間違ってなかったなと思う。テーブルの脚の低さを考えると、オレたち二人分の足を入れて、かつ動くとなるとスペースに余裕がなさ過ぎる。
「……他に言うことはないのか。昼から出す話題でもないだろう」
「思い出しちまったんだから仕方ねぇだろ。他のヤツラもいねぇんだからそんくらい見逃してくれって。結局買ったのかよ」
「単純に暖房器具としてな。もう少しで出来るから、こたつに入って待ってろ。それと今のうちに報告書にミスがないか確認しておけ。寒ければ、そこに置いてあるハンテンを着るといい」
「ハンテン? これも日本のか?」
こたつのテーブルに乗っかっている、ぱっと見ちっちゃな布団っぽく見えるやつは着るものだったらしい。
「ああ。日本の室内での防寒着だ。アキラに教わって取り寄せた物をオスカーにもやったが、以来この部屋にいる時はずっと着ているな」
「あー、オスカー寒がりだもんなぁ。お、こりゃ確かに暖かいわ」
ハンテンってやつに袖を通し、靴を脱いで足をこたつの中につっこむと全身がポカポカと温まってくる。
「うわー、こりゃいいな……ここから出たくなくなりそうだ。お前、この状態で仕事していて嫌になんねぇ?」
テーブルの上には他にもブラッドが使っていただろうノートパソコンやタブレット、数枚の書類が置かれていて、昼飯作るまでは仕事してたんだろうってのは想像ついた。
「適度に温度の調節はしている。あと、俺が休みの日に仕事をしていた原因の一端は貴様にもあるのだが」
「おっと、悪ぃ。報告書にミスがないか確認、な」
下手に小言が続かねぇよう、報告書を取りだして内容をチェックする。大丈夫なはず、だ。多分。
「確認したぜ、大丈夫なはずだ。これ、ここの書類の上に乗っけて大丈夫か?」
「ああ。それでいい。ポトフが出来たから、自分の分は自分で持って……あ、こら」
多分自分用にブラッドが手にしていた、ポトフとパンの入った皿をサイコキネシスでここまで運び、ついでにもう1セット分もサイコキネシスで運んだ。
呆れた顔でブラッドがフォークとスプーンだけ二人分手にしてこっちに来る。
「軽率に能力を使うなと何度言えば」
「他のヤツがいない時くらいいいだろ。ほらほら冷めねぇうちに食おうぜ」
流石に熱々のポトフを食いながらだと暑くなりそうだと、ハンテンを脱いでこれまた能力でソファに置く。
「…………お前がこたつとハンテンを使うようになったら、その能力との合わせ技でろくにこたつから出て来なくなりそうだな」
「いやー、ちょっとこの温かさは魅力的だろ。自宅用に買うのはありかもな」
ウエストの研修チーム部屋でも勿論いいんだが、あえて自宅と口にした意味をブラッドが気付くかどうか。
表情に変化はなかったが、僅かな沈黙の後に発した言葉は心なしか弾んでいるように聞こえた。
「……もし、本当にお前が自宅に置くつもりなら、三分の二は俺が出してもいい」
「半分で十分だっての。じゃ、買うかー。こたつの脚が長めのやつな」
「探してみよう」
これは意味が伝わったな。次、オフが重なるのっていつだっけ。
それまでにこたつを調達出来るといいなと思いながら、熱々のポトフを堪能した。
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#キスブラ #ワンライ
キスブラ版ワンドロライ第5回でのお題から『眉』『笑顔』『名前』を使って書いた話です。
事後&二回戦前なので、R-15くらい。
逆視点追加バージョンNovel にあります。(R-18に引き上げたのでご注意を)
※pixivにも纏めたら、こことポイピクから削除します。
多分、仕事が忙しくてブラッドが普段よりも疲れ気味だったんだろうとは思った。
あまり顔に出ない方で、長い付き合いでも未だに表情を掴みきれねぇ時があるブラッドが、珍しくそんなオレにもわかるくらいには表情に疲労の色を滲ませていたからだ。
だから、今日はこのままセックスはせずに大人しく寝るだけにしておくかと問いかけたら、疲れマラってヤツだったのか、せっかくオフが重なったタイミングを、無駄にしてたまるかと突っぱねられた。
本人が積極的ならいいかとオレも応じた結果、ブラッドはコトが済んだあと、シャワーも浴びずに撃沈した。
正直かなり珍しい。
少し休んだ後に続けて二回戦するってならともかく、一回終わってそのままシャワーも浴びずに寝落ちるなんてのは滅多にあることじゃない。
眠りも深いのか、普段は睡眠の効率が悪くなると嫌がる腕枕をしても、それに気付かず眠り続けている。
ただ、することして、スッキリはしたのか、寝顔は随分と穏やかなもんだ。
眉も下がって、少し笑っているようにさえ見える。
「…………気分転換になってんだったら、いいけどさ」
オレとしてもこんなブラッドは早々見られねぇから、汗を含んだ髪のにおいや、服に隠れて見えなくなるはずの範囲に着けたキスマークを、ちょっとだけ追加して楽しんでいたら、不意にブラッドが目を覚ました。
「……っと、悪ぃ。起こしちまったか」
「キー……ス。今……何時、だ」
掠れた声でオレを呼ぶ声は、さっきまでの行為の最中に呼んでいた声に近くて、少しだけ鼓動が跳ねる。
「あー……日付変わってちょっとってとこか。お前が寝てからまだそんなに経ってねぇよ。もうちょっとそのまま寝とけ」
「…………ん」
ブラッドの髪を撫でながらそう言うと、ブラッドは柔らかく笑いながらオレの体にすり寄ってきて、腕を絡めた。
ほんのり汗ばんでいる肌が触れ合う感触は心地良い一方で、一度は収まったはずの欲が再び頭をもたげ始めてしまう。
疲れてるブラッドをこのまま寝かせといてやりたいってのは紛れもない本心だが、疲れているからこそ積極的だったさっきのセックスを思い出すと、もう一度したくなるってのも本心だから困る。
とはいえ、さすがに今日はもうダメだろと、なるべく意識を他の事に逸らそうと思ったところで、背に回っていたはずのブラッドの手が前に移動しようとしたから、慌てて手を掴んで止めた。
こんなタイミングでブラッドに触られたら、落ち着くモンも落ち着きやしねぇ。
「いやいやいや、疲れてんだろ、大人しく寝とけ!?」
「疲れているのは否定しない。少し眠くもあるが……それ以上にしたい」
「うわ、待てって、おい、ブラッド!」
ブラッドが体をずらして、腰をすりつけてくる。
臨戦態勢になりつつあるお互いのモノが擦れ合って――余計そこが熱くなったのを自覚した。
なけなしの自制心はあっさりと音を立てて崩れていく。
「キース。……ダメか?」
ダメ押しのように首を傾げながら、上目遣いで名前を呼ばれ、熱っぽい視線と声でねだられて。
なお、断れる男がいるのなら教えて欲しい。
しかも、こんなことを普段してこない相手にされた日には尚更だ。
白旗を挙げる以外に何が出来るっていうのか。
抑えていたブラッドの手を離し、ヤツの腰を撫でるとブラッドの吐息が微かに乱れた。
「…………この状態でお前にそう言われて、オレが断れると思ってんのかよ……」
「すまんな」
「いいけどさ。明日まともに動けなくてもしらねぇからな」
ま、強制的にブラッドを休ませられると思えばいいかと諦めて、勝ち誇ったような笑みを浮かべているブラッドの顔を引き寄せ、キスをした。
Close
#キスブラ #ワンライ
事後&二回戦前なので、R-15くらい。
逆視点追加バージョンNovel にあります。(R-18に引き上げたのでご注意を)
※pixivにも纏めたら、こことポイピクから削除します。
多分、仕事が忙しくてブラッドが普段よりも疲れ気味だったんだろうとは思った。
あまり顔に出ない方で、長い付き合いでも未だに表情を掴みきれねぇ時があるブラッドが、珍しくそんなオレにもわかるくらいには表情に疲労の色を滲ませていたからだ。
だから、今日はこのままセックスはせずに大人しく寝るだけにしておくかと問いかけたら、疲れマラってヤツだったのか、せっかくオフが重なったタイミングを、無駄にしてたまるかと突っぱねられた。
本人が積極的ならいいかとオレも応じた結果、ブラッドはコトが済んだあと、シャワーも浴びずに撃沈した。
正直かなり珍しい。
少し休んだ後に続けて二回戦するってならともかく、一回終わってそのままシャワーも浴びずに寝落ちるなんてのは滅多にあることじゃない。
眠りも深いのか、普段は睡眠の効率が悪くなると嫌がる腕枕をしても、それに気付かず眠り続けている。
ただ、することして、スッキリはしたのか、寝顔は随分と穏やかなもんだ。
眉も下がって、少し笑っているようにさえ見える。
「…………気分転換になってんだったら、いいけどさ」
オレとしてもこんなブラッドは早々見られねぇから、汗を含んだ髪のにおいや、服に隠れて見えなくなるはずの範囲に着けたキスマークを、ちょっとだけ追加して楽しんでいたら、不意にブラッドが目を覚ました。
「……っと、悪ぃ。起こしちまったか」
「キー……ス。今……何時、だ」
掠れた声でオレを呼ぶ声は、さっきまでの行為の最中に呼んでいた声に近くて、少しだけ鼓動が跳ねる。
「あー……日付変わってちょっとってとこか。お前が寝てからまだそんなに経ってねぇよ。もうちょっとそのまま寝とけ」
「…………ん」
ブラッドの髪を撫でながらそう言うと、ブラッドは柔らかく笑いながらオレの体にすり寄ってきて、腕を絡めた。
ほんのり汗ばんでいる肌が触れ合う感触は心地良い一方で、一度は収まったはずの欲が再び頭をもたげ始めてしまう。
疲れてるブラッドをこのまま寝かせといてやりたいってのは紛れもない本心だが、疲れているからこそ積極的だったさっきのセックスを思い出すと、もう一度したくなるってのも本心だから困る。
とはいえ、さすがに今日はもうダメだろと、なるべく意識を他の事に逸らそうと思ったところで、背に回っていたはずのブラッドの手が前に移動しようとしたから、慌てて手を掴んで止めた。
こんなタイミングでブラッドに触られたら、落ち着くモンも落ち着きやしねぇ。
「いやいやいや、疲れてんだろ、大人しく寝とけ!?」
「疲れているのは否定しない。少し眠くもあるが……それ以上にしたい」
「うわ、待てって、おい、ブラッド!」
ブラッドが体をずらして、腰をすりつけてくる。
臨戦態勢になりつつあるお互いのモノが擦れ合って――余計そこが熱くなったのを自覚した。
なけなしの自制心はあっさりと音を立てて崩れていく。
「キース。……ダメか?」
ダメ押しのように首を傾げながら、上目遣いで名前を呼ばれ、熱っぽい視線と声でねだられて。
なお、断れる男がいるのなら教えて欲しい。
しかも、こんなことを普段してこない相手にされた日には尚更だ。
白旗を挙げる以外に何が出来るっていうのか。
抑えていたブラッドの手を離し、ヤツの腰を撫でるとブラッドの吐息が微かに乱れた。
「…………この状態でお前にそう言われて、オレが断れると思ってんのかよ……」
「すまんな」
「いいけどさ。明日まともに動けなくてもしらねぇからな」
ま、強制的にブラッドを休ませられると思えばいいかと諦めて、勝ち誇ったような笑みを浮かべているブラッドの顔を引き寄せ、キスをした。
Close
#キスブラ #ワンライ
キスブラ版ワンドロライ第3回でのお題から『…。』(3点リーダー)を使って書いた話です。
エロ直結でした、すみません!w
18歳未満の方はご遠慮下さい!
逆視点追加バージョンがNovel にあります。
※pixivにも纏めたら、こことポイピクから削除します。
「…………っ……ふ、うっ」
体を繋いだ場所から鳴るローションの音と、ベッドが軋む音に紛れて、ブラッドが歯を食いしばる音が聞こえる。
まだ、声は上げるまいと必死に抑え込んでいるらしい。
どうせ、最終的には声上げちまうことになるのにな、と思いはするが、口にはしねぇ。
限界ギリギリまで堪えたブラッドが、堪えきれずに乱れ始める瞬間がたまんねぇのを知ってるからだ。
快感に揺らいで、オレを求めてくるネオンピンクの目は、何度見ても気分が良い。
一旦動きを止めて、キスを交わしながら、反り返ってるブラッドのペニスの付け根に触れ、そこから指一本だけを裏筋に滑らせ、カリと先っぽの辺りで軽くくすぐるように動かし、絡ませてたブラッドの舌が動きを止めたのを確認してから、臍のちょっと下を軽く指先でノックする。
「んっ…………ん、ん」
唇を離すと、キスの最中は閉じていたブラッドの目が開く。
潤んだ目が妙な焦らし方をするなと訴えていた。
いつもは表情の変化がわかりにくいブラッドも、セックスとなると、目は口ほどにものを言うって状態になる。
コイツがここまでわかりやすくなるなんて、こんな時くらいだ。
「キー、ス」
「この辺までオレのが届いてるの、わかるよな?」
「…………」
言葉での返事はなかったが、代わりにブラッドの中が軽く締まった。
ゴム越しでも伝わってくる熱さが気持ち良くて、もっとこれを味わっていたい感覚と、突き上げてブラッドを乱したいという欲がせめぎあう。
短い葛藤の末に、もうちょっと焦らすことを決め、深い部分で小さな律動を始めた。
「んっ……く……はっ…………」
自分の中にある衝動からどうにか意識を逸らし、ブラッドが限界を訴えるのを待つ。
中のうねり方からして、多分そんなに遠くない。
オレが衝動に負けるのが先か、ブラッドが限界を訴えるのが先か。
出来れば後者がいい。
勝ち負けの問題じゃねぇのはわかってる。
けど、普段はどうにもブラッドに対して分が悪いことが多いから、ベッドの中でくらいは譲りたくねぇ。
ややあって、ブラッドがオレの肩を掴んで、吐息混じりにねだった。
「キース……欲し、い……」
「あ? 何だって?」
ブラッドが欲しいものが何かなんてとっくにわかってるけど、それを言葉で明確に言わねぇうちはダメだと先を促す。
飲み込ませてたまるかよ。察してなんかやらねぇ。
ブラッドがオレを一瞬睨んだが、直ぐに諦めたらしく、再び言葉が発された。
「…………お前が、欲しい……っ、もっと、強く突い……っ! あっ、うあ!!」
「っ! こう、だろっ!」
「あ、ああっ……そ、こ……ああ!」
ブラッドが言い終わる前に、勢い良く突き上げる。
さっきはわざと避けていた弱い部分を狙って擦っていくと、ブラッドの声に甘さが混じっていく。
肩を掴んでいた手も余裕のなさからか、爪が立てられていた。
ブラッドが本気で感じていることがわかって、こっちのなけなしの余裕もなくなっていく。
こうなると、食い込む爪がもたらす痛みも快感を増幅させるだけだ。
爪で傷になったとこに汗がしみることさえ、興奮を高める。
止めようと思ってもつい動いちまう腰に抵抗することをやめて、衝動のままに動くと、ブラッドが嬉しそうに笑った。
オレにも余裕がないことがわかったからだろう。
普段からこうなら、何考えてるかわかんねぇなんてことねぇんだけど、問題はこんな状態のブラッドを誰にも見せらんねぇってことだ。
「可愛い、な。ブラッド……っ」
「――あ、キー、うあっ、あああーっ!!」
オレしかしらねぇブラッドを堪能しながら、一際強く抱いて、腹と腹の間でブラッドが精を吐き出したのを感じつつ、オレもブラッドの中に出して――。
「…………」
「…………」
何も言わずに、お互いまだ息の乱れてる状態で唇を重ねた。
Close
#キスブラ #R18 #ワンライ
エロ直結でした、すみません!w
18歳未満の方はご遠慮下さい!
逆視点追加バージョンがNovel にあります。
※pixivにも纏めたら、こことポイピクから削除します。
「…………っ……ふ、うっ」
体を繋いだ場所から鳴るローションの音と、ベッドが軋む音に紛れて、ブラッドが歯を食いしばる音が聞こえる。
まだ、声は上げるまいと必死に抑え込んでいるらしい。
どうせ、最終的には声上げちまうことになるのにな、と思いはするが、口にはしねぇ。
限界ギリギリまで堪えたブラッドが、堪えきれずに乱れ始める瞬間がたまんねぇのを知ってるからだ。
快感に揺らいで、オレを求めてくるネオンピンクの目は、何度見ても気分が良い。
一旦動きを止めて、キスを交わしながら、反り返ってるブラッドのペニスの付け根に触れ、そこから指一本だけを裏筋に滑らせ、カリと先っぽの辺りで軽くくすぐるように動かし、絡ませてたブラッドの舌が動きを止めたのを確認してから、臍のちょっと下を軽く指先でノックする。
「んっ…………ん、ん」
唇を離すと、キスの最中は閉じていたブラッドの目が開く。
潤んだ目が妙な焦らし方をするなと訴えていた。
いつもは表情の変化がわかりにくいブラッドも、セックスとなると、目は口ほどにものを言うって状態になる。
コイツがここまでわかりやすくなるなんて、こんな時くらいだ。
「キー、ス」
「この辺までオレのが届いてるの、わかるよな?」
「…………」
言葉での返事はなかったが、代わりにブラッドの中が軽く締まった。
ゴム越しでも伝わってくる熱さが気持ち良くて、もっとこれを味わっていたい感覚と、突き上げてブラッドを乱したいという欲がせめぎあう。
短い葛藤の末に、もうちょっと焦らすことを決め、深い部分で小さな律動を始めた。
「んっ……く……はっ…………」
自分の中にある衝動からどうにか意識を逸らし、ブラッドが限界を訴えるのを待つ。
中のうねり方からして、多分そんなに遠くない。
オレが衝動に負けるのが先か、ブラッドが限界を訴えるのが先か。
出来れば後者がいい。
勝ち負けの問題じゃねぇのはわかってる。
けど、普段はどうにもブラッドに対して分が悪いことが多いから、ベッドの中でくらいは譲りたくねぇ。
ややあって、ブラッドがオレの肩を掴んで、吐息混じりにねだった。
「キース……欲し、い……」
「あ? 何だって?」
ブラッドが欲しいものが何かなんてとっくにわかってるけど、それを言葉で明確に言わねぇうちはダメだと先を促す。
飲み込ませてたまるかよ。察してなんかやらねぇ。
ブラッドがオレを一瞬睨んだが、直ぐに諦めたらしく、再び言葉が発された。
「…………お前が、欲しい……っ、もっと、強く突い……っ! あっ、うあ!!」
「っ! こう、だろっ!」
「あ、ああっ……そ、こ……ああ!」
ブラッドが言い終わる前に、勢い良く突き上げる。
さっきはわざと避けていた弱い部分を狙って擦っていくと、ブラッドの声に甘さが混じっていく。
肩を掴んでいた手も余裕のなさからか、爪が立てられていた。
ブラッドが本気で感じていることがわかって、こっちのなけなしの余裕もなくなっていく。
こうなると、食い込む爪がもたらす痛みも快感を増幅させるだけだ。
爪で傷になったとこに汗がしみることさえ、興奮を高める。
止めようと思ってもつい動いちまう腰に抵抗することをやめて、衝動のままに動くと、ブラッドが嬉しそうに笑った。
オレにも余裕がないことがわかったからだろう。
普段からこうなら、何考えてるかわかんねぇなんてことねぇんだけど、問題はこんな状態のブラッドを誰にも見せらんねぇってことだ。
「可愛い、な。ブラッド……っ」
「――あ、キー、うあっ、あああーっ!!」
オレしかしらねぇブラッドを堪能しながら、一際強く抱いて、腹と腹の間でブラッドが精を吐き出したのを感じつつ、オレもブラッドの中に出して――。
「…………」
「…………」
何も言わずに、お互いまだ息の乱れてる状態で唇を重ねた。
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