No.61
キスブラ版ワンドロライ第100回は『一番好きなシチュエーション』とのことで、『キースがつまみを作って一緒にお酒を飲むキスブラ』で書きました。
第100回開催おめでとうございます!
そして、100回という長い間、企画の運営を続けて頂き、本当にありがとうございました!!
美味いと評判の日本酒を手に入れたから、その代わりに美味い和食のつまみを用意して欲しいと、ブラッドから言われたのが先週。
で、互いに明日がオフだからとオレの家で飲むことになったのが今日だ。
普段はこっちから飲みに誘っても、滅多に応じちゃくれねぇくせに、交換条件みてぇに日本酒を持ってくるから、オレはつまみを作れという形だと時々向こうから誘ってくるんだよな。
勿論、美味い酒がブラッドと飲めるとくりゃ断る理由はねぇけど。
例によって、オレより仕事が多く、やることが積み上がってるブラッドが仕事を一通り片付けてから、うちに来るまでにはまだ時間がある。
急な飲みだと用意出来るつまみにも限りはあるが、今回みてぇに数日前から予定を立てるなら、出来上がるまでに時間のかかるタイプのつまみも用意出来るから、今日はそんなつまみを幾つか出してやろうと、あらかじめ仕込んでおいた。
ブラッドは和食は一品、二品で構わないと口では言うが、実際数があれば目の輝きが違ってくるもんだから、たまにならいいだろと、こんな機会にはつい作っちまっう。
「お。良い感じじゃねぇか」
数日前に漬けておいた、豆腐の味噌漬けを味見ついでに軽くつまむと、つい冷蔵庫にストックしてあるビール缶を開けたくなったが、そこはどうにか堪えて、ナスとキュウリの漬物も味見する。
使った唐辛子の量がちょうど良かったらしく、これまたビールが飲みたくなる一品に仕上がってた。
日本の漬物ってヤツは何でこう酒に合うように出来てんだ?
いっそ、ブラッドが来る前に一缶だけビール飲んじまおうかなと思った矢先、手元のスマホがブラッドからのメッセージの着信を知らせる。
『仕事が終わった。今からそちらに向かう』
当初、予想していた時間よりは早い。
恐らくは、ブラッドが今日の飲みの為に、仕事を早めに片付けた結果だろう。
もうこっちに向かってるんだったら、温かいつまみを作り始めるにはちょうどいいと、どうにかビールの誘惑をおさえて、だし巻き玉子と揚げ物の用意をする。
ブラッドが持ち込むせいで、どんどん増える日本の調味料はもう結構な種類があるから、食材と時間さえあれば、何だかんだ色々な和食が作れちまうんだよな。……面倒くさいのはなるべく避けてぇけど。
ブラッドが好む味付けのだし巻き玉子も、すっかり作り方を覚えちまったなぁと出来ただし巻き玉子を皿に(これまたブラッドが持ち込んだ日本の食器だ)盛り、温度の様子を見ながら揚げ物をやってたところで、玄関の鍵が開く音がした。
オレがつまみの支度で手を離せないだろうと予想して、最初から合鍵を使うあたり、アイツもすっかり慣れたもんだ。
「おう、お帰り。仕事お疲れさん」
「ただいま。……ほう。お前に作って貰ったことのないものが並んでいる」
テーブルの上を確認したブラッドの声が、期待からか微かに弾んだのがわかる。
チラッと表情も窺うと、ブラッドは目元も綻ばせていた。
……こういうとこ可愛いんだよな。
小言を畳みかけてくるときと同一人物とは思えねぇ。
「あー、日数かけた漬物、試してみたかったからなぁ。味は保証出来るぜ」
「お前が手懸けた料理で味に不満があったものもないがな。何かやることはあるか?」
「お前が持ってきた日本酒の器用意してくれ。まだそっちまで手が回ってねぇ」
「わかった」
ブラッドが酒を注いでいる間に、オレの方も揚げ物が終わり、良い感じに飲む準備は完了ってヤツだ。
二人でテーブルについて、確か江戸切子とかいった、繊細な細工のグラスを軽く合わせ乾杯する。
「……かーっ……美味っ……!」
グラスを口につける手前でわかった薫りから期待はしてたが、口当たりも良い。いくらでも飲めそうな酒だった。
一方でブラッドは一口飲んだ後は、つまみの方に次々と手を出していく。
「……やはり美味いな。お前の作る料理は」
「だったら、良かったぜ。あ、漬物は結構量作ったけど、明日帰るとき持ってくか?」
「貰おう。酒だけでなく米にも合いそうだ」
「あー、じゃ明日の朝は飯炊いて米に合わせて食ってみるか」
「そうしよう。味噌汁も――」
「はいはい。ちゃんと作ってやるっての」
こんな日にブラッドが泊まっていくのは、もう暗黙の了解ってヤツだ。
ただ酒を酌み交わすためだけに泊まるわけじゃないってことも。
……酔いすぎねぇようにしとかねぇとな。
後に控えてる楽しみも頭の隅に置きつつ、まずは二人きりの晩酌を楽しむことにした。
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#キスブラ #ワンライ
第100回開催おめでとうございます!
そして、100回という長い間、企画の運営を続けて頂き、本当にありがとうございました!!
美味いと評判の日本酒を手に入れたから、その代わりに美味い和食のつまみを用意して欲しいと、ブラッドから言われたのが先週。
で、互いに明日がオフだからとオレの家で飲むことになったのが今日だ。
普段はこっちから飲みに誘っても、滅多に応じちゃくれねぇくせに、交換条件みてぇに日本酒を持ってくるから、オレはつまみを作れという形だと時々向こうから誘ってくるんだよな。
勿論、美味い酒がブラッドと飲めるとくりゃ断る理由はねぇけど。
例によって、オレより仕事が多く、やることが積み上がってるブラッドが仕事を一通り片付けてから、うちに来るまでにはまだ時間がある。
急な飲みだと用意出来るつまみにも限りはあるが、今回みてぇに数日前から予定を立てるなら、出来上がるまでに時間のかかるタイプのつまみも用意出来るから、今日はそんなつまみを幾つか出してやろうと、あらかじめ仕込んでおいた。
ブラッドは和食は一品、二品で構わないと口では言うが、実際数があれば目の輝きが違ってくるもんだから、たまにならいいだろと、こんな機会にはつい作っちまっう。
「お。良い感じじゃねぇか」
数日前に漬けておいた、豆腐の味噌漬けを味見ついでに軽くつまむと、つい冷蔵庫にストックしてあるビール缶を開けたくなったが、そこはどうにか堪えて、ナスとキュウリの漬物も味見する。
使った唐辛子の量がちょうど良かったらしく、これまたビールが飲みたくなる一品に仕上がってた。
日本の漬物ってヤツは何でこう酒に合うように出来てんだ?
いっそ、ブラッドが来る前に一缶だけビール飲んじまおうかなと思った矢先、手元のスマホがブラッドからのメッセージの着信を知らせる。
『仕事が終わった。今からそちらに向かう』
当初、予想していた時間よりは早い。
恐らくは、ブラッドが今日の飲みの為に、仕事を早めに片付けた結果だろう。
もうこっちに向かってるんだったら、温かいつまみを作り始めるにはちょうどいいと、どうにかビールの誘惑をおさえて、だし巻き玉子と揚げ物の用意をする。
ブラッドが持ち込むせいで、どんどん増える日本の調味料はもう結構な種類があるから、食材と時間さえあれば、何だかんだ色々な和食が作れちまうんだよな。……面倒くさいのはなるべく避けてぇけど。
ブラッドが好む味付けのだし巻き玉子も、すっかり作り方を覚えちまったなぁと出来ただし巻き玉子を皿に(これまたブラッドが持ち込んだ日本の食器だ)盛り、温度の様子を見ながら揚げ物をやってたところで、玄関の鍵が開く音がした。
オレがつまみの支度で手を離せないだろうと予想して、最初から合鍵を使うあたり、アイツもすっかり慣れたもんだ。
「おう、お帰り。仕事お疲れさん」
「ただいま。……ほう。お前に作って貰ったことのないものが並んでいる」
テーブルの上を確認したブラッドの声が、期待からか微かに弾んだのがわかる。
チラッと表情も窺うと、ブラッドは目元も綻ばせていた。
……こういうとこ可愛いんだよな。
小言を畳みかけてくるときと同一人物とは思えねぇ。
「あー、日数かけた漬物、試してみたかったからなぁ。味は保証出来るぜ」
「お前が手懸けた料理で味に不満があったものもないがな。何かやることはあるか?」
「お前が持ってきた日本酒の器用意してくれ。まだそっちまで手が回ってねぇ」
「わかった」
ブラッドが酒を注いでいる間に、オレの方も揚げ物が終わり、良い感じに飲む準備は完了ってヤツだ。
二人でテーブルについて、確か江戸切子とかいった、繊細な細工のグラスを軽く合わせ乾杯する。
「……かーっ……美味っ……!」
グラスを口につける手前でわかった薫りから期待はしてたが、口当たりも良い。いくらでも飲めそうな酒だった。
一方でブラッドは一口飲んだ後は、つまみの方に次々と手を出していく。
「……やはり美味いな。お前の作る料理は」
「だったら、良かったぜ。あ、漬物は結構量作ったけど、明日帰るとき持ってくか?」
「貰おう。酒だけでなく米にも合いそうだ」
「あー、じゃ明日の朝は飯炊いて米に合わせて食ってみるか」
「そうしよう。味噌汁も――」
「はいはい。ちゃんと作ってやるっての」
こんな日にブラッドが泊まっていくのは、もう暗黙の了解ってヤツだ。
ただ酒を酌み交わすためだけに泊まるわけじゃないってことも。
……酔いすぎねぇようにしとかねぇとな。
後に控えてる楽しみも頭の隅に置きつつ、まずは二人きりの晩酌を楽しむことにした。
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