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キスブラ版ワンドロライ第9回でのお題から『体温』を使って書いた話です。
事後かつ事前。
「うっわ……寒……」
夜中に目が覚めて、トイレに行って戻ってくるのに数分って程度だが、その数分ですっかり体が冷えちまった。
面倒だったから、寝る前にシャワー浴びたときに使ったバスローブだけ羽織っていったが、少し湿った状態だったから、かえって冷えたかもしれねぇ。
そういや、今夜はニュースでこの冬一番の冷え込みとか何とか言ってたっけか。
いっそ、一、二杯飲んで軽く体を温めてから寝直すかと思ったが、生憎、今日はブラッドが泊まってる。
このタイミングで飲んだら酒の匂いは絶対残るから、朝一番に小言スイッチが入るのは間違いねぇ。
かと言って、起きてる時ならまだしも、寝てる間にエアコンをつけておくのも躊躇う。
ま、ベッドに入ってりゃそのうち温まるだろと、大人しくベッドに戻って、さっさとバスローブを脱いで、ブラッドの隣に滑り込んだ。
ちょっとだけ体温をお裾分けして貰おうと、ヤツの臑に軽く爪先をくっつけたら、びく、とブラッドが身動いで目を開けた。
「…………キース。冷たい」
「悪ぃ。ちょっとくっつくくらいなら起きねぇかなって思ったんだけど」
マジで起こすつもりはなかったから、ブラッドから少し離れようとしたが、ブラッドの足が、ベッドの中でオレの足を挟み込んだ。
冷たさからか、一瞬だけブラッドが眉を顰めたが、足を離そうとはしない。
「…………温まるつもりなら、もう少し身を寄せろ」
「いや、お前が冷えるだろ」
「触れていれば、数分もしないうちに暖かくなる。ほら、手も寄越せ」
「あ、おい、ブラッド」
ブラッドがさっさとオレの手を探って、掴んだ手を自分の太股に触れさせた。
手も足と変わんねぇくらいに冷えてんのに、今度は眉一つ動かさない。
ここまでされたら、もう全身でくっついても変わんねぇかと、体ごとブラッドに近寄って、くっついた。
冷えていた部分がブラッドの体温でじわじわと温かくなっていくのがわかる。
ブラッドの言った通り、数分もしないうちにオレの体も温まっていった。
「あー……あったけぇ……」
「……少し、煙草の本数を減らしたらどうだ。昔よりお前の手足が冷えやすくなったのは、煙草のせいもあると思うが」
「あー……わかってんだけどなぁ……」
確かに煙草が一因だろうが、こうやって手足が冷えるのは今みたいな真冬くらいで、他の季節だとそんなに冷えることもねぇから、減らすってことに気が乗らねぇ。
「…………まぁ、少し言って減るくらいなら、とっくに本数など減っているか」
軽く溜め息を吐いたブラッドが目を閉じて、太股に触れさせていたオレの手に自分の手を重ねる。
体が温まったから、もうブラッドの手から伝わる体温と、オレの手の体温の差はほとんど感じられない。
オレの指の形でも確かめるかのように動いているブラッドの指の動きが、妙に気になる。
「…………怒んねぇの?」
「何だ、怒られたいのか?」
「そういうわけでもねぇけどさ」
ブラッドにしちゃ、やけにあっさり引き下がったように思えたのが気になる。
それが伝わったのか、ブラッドが微かに口元に笑みを浮かべた。
「お前の手足が冷えるのは今時期くらいだからな。これが一年中なら、どうにかして減らすことも考えるが、お前を温めるのが俺の特権だと思えば悪くはない」
「…………煽んなよ。そんなこと言われたら、もっと温まりたくなっちまうだろ」
温まるを通り越して、熱くなってしまう方法だってある。
つい、さっきだってそれを実践したところだ。
けど、これは……もしかしたら誘われてる?
そう考えると、絡めるように動いているブラッドの指にも納得がいく。
ブラッドの動いている指を捕まえて、指先を辿らせ、手のひらを擽るように動かすと、ブラッドが再び目を開けて、鮮やかなネオンピンクが挑発するように光った気がした。
「構わない、と言ったらどうする?」
「そりゃ……据え膳食わねぇ趣味はねぇからな。お前の中でもう一回温めさせて貰うけど」
何を、とまでは言わずに腰を擦り付けると、下着越しにもブラッドも反応しているのが伝わる。
やっぱり酒は飲まないでおいて正解だったと思いながら、サイコキネシスでエアコンのスイッチを入れ、キスを待ち構えて目を閉じたブラッドに口付けた。
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#キスブラ #ワンライ
事後かつ事前。
「うっわ……寒……」
夜中に目が覚めて、トイレに行って戻ってくるのに数分って程度だが、その数分ですっかり体が冷えちまった。
面倒だったから、寝る前にシャワー浴びたときに使ったバスローブだけ羽織っていったが、少し湿った状態だったから、かえって冷えたかもしれねぇ。
そういや、今夜はニュースでこの冬一番の冷え込みとか何とか言ってたっけか。
いっそ、一、二杯飲んで軽く体を温めてから寝直すかと思ったが、生憎、今日はブラッドが泊まってる。
このタイミングで飲んだら酒の匂いは絶対残るから、朝一番に小言スイッチが入るのは間違いねぇ。
かと言って、起きてる時ならまだしも、寝てる間にエアコンをつけておくのも躊躇う。
ま、ベッドに入ってりゃそのうち温まるだろと、大人しくベッドに戻って、さっさとバスローブを脱いで、ブラッドの隣に滑り込んだ。
ちょっとだけ体温をお裾分けして貰おうと、ヤツの臑に軽く爪先をくっつけたら、びく、とブラッドが身動いで目を開けた。
「…………キース。冷たい」
「悪ぃ。ちょっとくっつくくらいなら起きねぇかなって思ったんだけど」
マジで起こすつもりはなかったから、ブラッドから少し離れようとしたが、ブラッドの足が、ベッドの中でオレの足を挟み込んだ。
冷たさからか、一瞬だけブラッドが眉を顰めたが、足を離そうとはしない。
「…………温まるつもりなら、もう少し身を寄せろ」
「いや、お前が冷えるだろ」
「触れていれば、数分もしないうちに暖かくなる。ほら、手も寄越せ」
「あ、おい、ブラッド」
ブラッドがさっさとオレの手を探って、掴んだ手を自分の太股に触れさせた。
手も足と変わんねぇくらいに冷えてんのに、今度は眉一つ動かさない。
ここまでされたら、もう全身でくっついても変わんねぇかと、体ごとブラッドに近寄って、くっついた。
冷えていた部分がブラッドの体温でじわじわと温かくなっていくのがわかる。
ブラッドの言った通り、数分もしないうちにオレの体も温まっていった。
「あー……あったけぇ……」
「……少し、煙草の本数を減らしたらどうだ。昔よりお前の手足が冷えやすくなったのは、煙草のせいもあると思うが」
「あー……わかってんだけどなぁ……」
確かに煙草が一因だろうが、こうやって手足が冷えるのは今みたいな真冬くらいで、他の季節だとそんなに冷えることもねぇから、減らすってことに気が乗らねぇ。
「…………まぁ、少し言って減るくらいなら、とっくに本数など減っているか」
軽く溜め息を吐いたブラッドが目を閉じて、太股に触れさせていたオレの手に自分の手を重ねる。
体が温まったから、もうブラッドの手から伝わる体温と、オレの手の体温の差はほとんど感じられない。
オレの指の形でも確かめるかのように動いているブラッドの指の動きが、妙に気になる。
「…………怒んねぇの?」
「何だ、怒られたいのか?」
「そういうわけでもねぇけどさ」
ブラッドにしちゃ、やけにあっさり引き下がったように思えたのが気になる。
それが伝わったのか、ブラッドが微かに口元に笑みを浮かべた。
「お前の手足が冷えるのは今時期くらいだからな。これが一年中なら、どうにかして減らすことも考えるが、お前を温めるのが俺の特権だと思えば悪くはない」
「…………煽んなよ。そんなこと言われたら、もっと温まりたくなっちまうだろ」
温まるを通り越して、熱くなってしまう方法だってある。
つい、さっきだってそれを実践したところだ。
けど、これは……もしかしたら誘われてる?
そう考えると、絡めるように動いているブラッドの指にも納得がいく。
ブラッドの動いている指を捕まえて、指先を辿らせ、手のひらを擽るように動かすと、ブラッドが再び目を開けて、鮮やかなネオンピンクが挑発するように光った気がした。
「構わない、と言ったらどうする?」
「そりゃ……据え膳食わねぇ趣味はねぇからな。お前の中でもう一回温めさせて貰うけど」
何を、とまでは言わずに腰を擦り付けると、下着越しにもブラッドも反応しているのが伝わる。
やっぱり酒は飲まないでおいて正解だったと思いながら、サイコキネシスでエアコンのスイッチを入れ、キスを待ち構えて目を閉じたブラッドに口付けた。
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#キスブラ #ワンライ
キスブラ版ワンドロライ第8回でのお題から『ぬいぐるみ』を使って書いた話です。
ルーキー時代のキスブラ。ジェイやディノもちょっと出て来ます。
「ヒーローをデフォルメしたぬいぐるみ?」
第10期生ルーキーとして【HELIOS】に入所してから、早数ヶ月。
日々の仕事にも共同生活にも慣れてきた、ある日の夕食後にジェイがそんな話を切り出した。
「そう。ブロマイドやポスターの撮影を少し前にしたかと思うが、今度新たに商品を展開するってことで、子どもを主に対象として各ヒーローのぬいぐるみを作ることになったらしい」
「えええ……そんないい大人をぬいぐるみにしたヤツとか欲しがるもんかぁ?」
「デフォルメの仕方によっては結構人気あったりするみたいだよ。アイドルやアーティストでも出てたりするのあるよね、キースは見たことない?」
「興味ねぇから、知らねぇよ」
入所時にヒーローを使って作成するグッズに関しては、全て商品開発部に一任するという誓約書にサインしてある。
ヒーローとしての仕事の一つだ。
今更それに異議を唱えるつもりもないが、ぬいぐるみが作られようとは予想していなかった。
「何のグッズであろうと問題ない。どんなものに仕上がるかは興味があるが」
「それが、商品開発部の話ではもう試作品は出来ているようでな。そろそろジャックが持ってきてくれるはず……お」
「失礼シマス。商品開発部からぬいぐるみの試作品を持ってきマシタ」
ちょうど、そのタイミングでジャックがぬいぐるみの試作品が入ったカートを引き摺って持ってきた。
が、ぬいぐるみの大きさが予想していたよりも大きく、全員が恐らく同じ理由から一瞬言葉を失った。
「デ……デカくねぇ?」
「俺もクレーンゲームとかでよくあるような大きさだと思ってた……」
「ふむ……小さな子どもくらいの大きさがありそうだな」
カートの中から自分がデフォルメされたと思しきぬいぐるみを取り、持ってみた。
俺がアカデミーに入学する頃のフェイスがこのくらいの大きさだったような気がする。
勿論、ぬいぐるみだからフェイスよりもずっと軽いが。
「ジャック。この試作品はこのまま俺たちが貰うってことで合っているか?」
「ハイ。何か訂正して欲しいところがアレバ、商品開発部にメールを送ってクダサイ。十日後までにメールがなけレバ、問題ないという形で処理サレマス」
「えー、別にいらねぇんだけど。自分のぬいぐるみとかあってもなぁ。こんだけ大きいと置き場にも困るし」
キースがぼやきながら自分のぬいぐるみの頭をポンポンと叩く。
置き場に困るというのはわからなくもない。少なくとも、この研修チーム部屋に置くにはスペースに余裕がないように思える。
「俺はこれ、おじいちゃんとおばあちゃんのところに送ろうっと。俺の代わりだと思ってって言えばきっと喜んでくれるし! ちょっと実家に電話してくる!」
ディノがスマホを手に部屋を出ると、ジェイもぬいぐるみをソファに置いて軽くその頭を叩いた。
「ふむ。家に置けば、息子のおもちゃになってくれるだろう。俺も家に連絡してこよう」
研修チーム部屋は共同生活を送る場ということもあって、各自プライベートな電話をするときは、タワー内の談話スペースの一角を使うことになっている。
あっという間に、部屋の中には俺とキースが残された。
俺も近いうちに実家にこれを送ろうと考えていると、キースが溜め息を吐く。
「いや……マジでこれいらねぇんだけど。とはいえ、発売前の試作品は処分したらさすがにまずい……よなぁ。いや、細かくバラしたらわかんねぇか?」
キースが自分のぬいぐるみを抱きかかえながらそんなことを言うが、細かくバラすというのを想像すると、どうにもいたたまれなくなり、気付けばキースの腕からそのぬいぐるみを取り上げていた。
「ブラッド?」
「そんなことをするぐらいなら、俺がこれを譲り受けよう。いらないというぐらいだ、構わんな?」
「いいけど……マジでいるか? それ?」
「……試作品にしては、お前の特徴をよく捉えている。デフォルメも悪くない」
それに素材がいいのか、抱き心地も良い。
ぬいぐるみの頭を撫でると、キースが複雑そうな表情を見せた。
「お前がいいなら、いいけどさ。……でも、それをこの部屋に置かれるとなんか恥ずかしいから、お前もどっか他のとこに送ってくれよ」
「何だ、妬いてるのか?」
「そうじゃねぇよ。恥ずかしいっつっただろ。…………何で…………だよ」
「? 今、何と言った?」
キースの言葉がよく聞こえなかったから聞き返したが、キースは何でもねぇよと話を打ち切る。
耳が赤くなっていたことには言及しないでおくかわりに、腕の中のぬいぐるみを少し強めに抱きしめた。
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#キスブラ #ワンライ
ルーキー時代のキスブラ。ジェイやディノもちょっと出て来ます。
「ヒーローをデフォルメしたぬいぐるみ?」
第10期生ルーキーとして【HELIOS】に入所してから、早数ヶ月。
日々の仕事にも共同生活にも慣れてきた、ある日の夕食後にジェイがそんな話を切り出した。
「そう。ブロマイドやポスターの撮影を少し前にしたかと思うが、今度新たに商品を展開するってことで、子どもを主に対象として各ヒーローのぬいぐるみを作ることになったらしい」
「えええ……そんないい大人をぬいぐるみにしたヤツとか欲しがるもんかぁ?」
「デフォルメの仕方によっては結構人気あったりするみたいだよ。アイドルやアーティストでも出てたりするのあるよね、キースは見たことない?」
「興味ねぇから、知らねぇよ」
入所時にヒーローを使って作成するグッズに関しては、全て商品開発部に一任するという誓約書にサインしてある。
ヒーローとしての仕事の一つだ。
今更それに異議を唱えるつもりもないが、ぬいぐるみが作られようとは予想していなかった。
「何のグッズであろうと問題ない。どんなものに仕上がるかは興味があるが」
「それが、商品開発部の話ではもう試作品は出来ているようでな。そろそろジャックが持ってきてくれるはず……お」
「失礼シマス。商品開発部からぬいぐるみの試作品を持ってきマシタ」
ちょうど、そのタイミングでジャックがぬいぐるみの試作品が入ったカートを引き摺って持ってきた。
が、ぬいぐるみの大きさが予想していたよりも大きく、全員が恐らく同じ理由から一瞬言葉を失った。
「デ……デカくねぇ?」
「俺もクレーンゲームとかでよくあるような大きさだと思ってた……」
「ふむ……小さな子どもくらいの大きさがありそうだな」
カートの中から自分がデフォルメされたと思しきぬいぐるみを取り、持ってみた。
俺がアカデミーに入学する頃のフェイスがこのくらいの大きさだったような気がする。
勿論、ぬいぐるみだからフェイスよりもずっと軽いが。
「ジャック。この試作品はこのまま俺たちが貰うってことで合っているか?」
「ハイ。何か訂正して欲しいところがアレバ、商品開発部にメールを送ってクダサイ。十日後までにメールがなけレバ、問題ないという形で処理サレマス」
「えー、別にいらねぇんだけど。自分のぬいぐるみとかあってもなぁ。こんだけ大きいと置き場にも困るし」
キースがぼやきながら自分のぬいぐるみの頭をポンポンと叩く。
置き場に困るというのはわからなくもない。少なくとも、この研修チーム部屋に置くにはスペースに余裕がないように思える。
「俺はこれ、おじいちゃんとおばあちゃんのところに送ろうっと。俺の代わりだと思ってって言えばきっと喜んでくれるし! ちょっと実家に電話してくる!」
ディノがスマホを手に部屋を出ると、ジェイもぬいぐるみをソファに置いて軽くその頭を叩いた。
「ふむ。家に置けば、息子のおもちゃになってくれるだろう。俺も家に連絡してこよう」
研修チーム部屋は共同生活を送る場ということもあって、各自プライベートな電話をするときは、タワー内の談話スペースの一角を使うことになっている。
あっという間に、部屋の中には俺とキースが残された。
俺も近いうちに実家にこれを送ろうと考えていると、キースが溜め息を吐く。
「いや……マジでこれいらねぇんだけど。とはいえ、発売前の試作品は処分したらさすがにまずい……よなぁ。いや、細かくバラしたらわかんねぇか?」
キースが自分のぬいぐるみを抱きかかえながらそんなことを言うが、細かくバラすというのを想像すると、どうにもいたたまれなくなり、気付けばキースの腕からそのぬいぐるみを取り上げていた。
「ブラッド?」
「そんなことをするぐらいなら、俺がこれを譲り受けよう。いらないというぐらいだ、構わんな?」
「いいけど……マジでいるか? それ?」
「……試作品にしては、お前の特徴をよく捉えている。デフォルメも悪くない」
それに素材がいいのか、抱き心地も良い。
ぬいぐるみの頭を撫でると、キースが複雑そうな表情を見せた。
「お前がいいなら、いいけどさ。……でも、それをこの部屋に置かれるとなんか恥ずかしいから、お前もどっか他のとこに送ってくれよ」
「何だ、妬いてるのか?」
「そうじゃねぇよ。恥ずかしいっつっただろ。…………何で…………だよ」
「? 今、何と言った?」
キースの言葉がよく聞こえなかったから聞き返したが、キースは何でもねぇよと話を打ち切る。
耳が赤くなっていたことには言及しないでおくかわりに、腕の中のぬいぐるみを少し強めに抱きしめた。
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#キスブラ #ワンライ
ミラクルトリオで3P。エロいとこはまだ書いてない。
最終的には全ての穴に全ての棒が入る、頭の緩いやつ。
パトロールの最中に見慣れないサブスタンスを回収しようとしたら、その途端に空気が一変したのは覚えている。
ブラッドとディノが顔色を変えてこっちに駆け寄ってきたのも。
が、そこで一旦記憶は途切れ、次に目が覚めた時、いたのは見たことのねぇだだっぴろい場所だった。
大きめのベッドが部屋の中央にでんと置いてあって、部屋の奥にはガラス張りで丸見えのこれまたそこそこ広めのバスルームがある。
その割に壁には全く窓ってもんがない。
ベッドの傍でブラッドとディノが何かの紙切れを前に困惑してた。
「……なんだ、ここ」
「起きたか、キース。これを読め」
「何だよ、一体。……ん? 全員とセックスしないと出られない部屋?」
***
「他に具体的な解決策もないのであれば、書いてあるとおり試すのが一番早い。実際、ヒーロー能力が封じられている状態で他に出来ることもないだろう。黙って突っ立っているよりは試すべきだ」
「試すべきだって……お前、もうちょっと恥じらいとか躊躇いとかねぇの……」
「でも、俺もブラッドの言う通りだと思うよ。ずっとこのままでいるのも埒が開かないしさ」
***
「で、これ誰か二人がやってる時、もう一人ってどうしたらいい。見学?」
「待てよ、見学ってなんだ……」
「……いっそ、三人でするのはどうだ。挿入されながら、もう一人に挿入するというのは出来るんじゃないか」
「想像したら凄ぇシュールな図だけどな。つうか、その挿入されるのとするの同時にするヤツが負担大きいんじゃねぇの」
「それ、三回やればいいんじゃない? そしたら、平等!」
「平等!じゃねぇよ。ドヤ顔で言うな」
Close
#3P #ミラクルトリオ
最終的には全ての穴に全ての棒が入る、頭の緩いやつ。
パトロールの最中に見慣れないサブスタンスを回収しようとしたら、その途端に空気が一変したのは覚えている。
ブラッドとディノが顔色を変えてこっちに駆け寄ってきたのも。
が、そこで一旦記憶は途切れ、次に目が覚めた時、いたのは見たことのねぇだだっぴろい場所だった。
大きめのベッドが部屋の中央にでんと置いてあって、部屋の奥にはガラス張りで丸見えのこれまたそこそこ広めのバスルームがある。
その割に壁には全く窓ってもんがない。
ベッドの傍でブラッドとディノが何かの紙切れを前に困惑してた。
「……なんだ、ここ」
「起きたか、キース。これを読め」
「何だよ、一体。……ん? 全員とセックスしないと出られない部屋?」
***
「他に具体的な解決策もないのであれば、書いてあるとおり試すのが一番早い。実際、ヒーロー能力が封じられている状態で他に出来ることもないだろう。黙って突っ立っているよりは試すべきだ」
「試すべきだって……お前、もうちょっと恥じらいとか躊躇いとかねぇの……」
「でも、俺もブラッドの言う通りだと思うよ。ずっとこのままでいるのも埒が開かないしさ」
***
「で、これ誰か二人がやってる時、もう一人ってどうしたらいい。見学?」
「待てよ、見学ってなんだ……」
「……いっそ、三人でするのはどうだ。挿入されながら、もう一人に挿入するというのは出来るんじゃないか」
「想像したら凄ぇシュールな図だけどな。つうか、その挿入されるのとするの同時にするヤツが負担大きいんじゃねぇの」
「それ、三回やればいいんじゃない? そしたら、平等!」
「平等!じゃねぇよ。ドヤ顔で言うな」
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#3P #ミラクルトリオ
キスブラ版ワンドロライ第7回でのお題から『食事』『クリスマス』『愛情』を使って書いた話(修正版)です。
※数年後の時間軸で、既に二人とも研修チームのメンターではない&キスブラが一緒に住んでるというのを想定の下に書いてます。
【Brad's Side】
「お、【クリスマス・リーグ】の結果出たみたいだぜ」
キースの言葉に顔を上げれば、街中にある大型ビジョンでは見慣れた光景と、ノースセクターの研修チームメンバーが映し出されていた。
なるほど、今年の勝者はノースセクターか。
「ああ、もうそんな時間か。……ふむ。もう少ししたら、パトロールを終了しても良さそうだな」
「ま、ここらに限らず、今日はどこの地区も異常なさそうだしな。街が平和で何よりっと」
クリスマスとなると、研修チームは毎年恒例の【クリスマス・リーグ】に参戦しているから、その間のパトロールは俺たちのように研修チームに所属していないヒーローの仕事となる。
特にメジャーヒーローともなれば、その実力を買われ、通常よりも少ない人数で組んでパトロールすることも多い。
今日、俺とキースが組む形でこの地区のパトロールに当たっているのもそれを考慮してのことだろう。
他に意図があっての人選ではないはずだ。……多分。
「せっかくのクリスマスなのに、仕事ってのも味気ねぇよなぁ」
「俺たちがヒーローになってから十年以上経つが、休みだったクリスマスなど一度だってあったか?」
「いや、ねぇけどさ。気分の問題だよ」
――クリスマスなぁ……。一回か二回は祝ったことあったけど、ホントに小せぇ頃だわ。母親が家出て行く前だからなぁ。ああ、でもクリスマスに教会行くと食い物貰えたのは有り難かったから、アカデミー入学前はそれで教会行ったりしてたな。
――だから、クリスマスが楽しかった記憶なんて0とまではいかなくても、ほとんどねぇわ。思い入れもねぇよ。
かつては遠い目でそんなことを口にしていた男が、クリスマスに仕事が入っていることをぼやけるようになった境遇の変化を喜ぶべきだろう。
少なくとも、今のキースはクリスマスの楽しみ方を知っている。
クリスマスを楽しいものだと認識しているからこそのぼやきだ。
「仕事が終わって、家に帰ったら、数時間はクリスマス気分を味わえるだろうに」
「そうだけどさ。あ…………こりゃ、雪降ってきたか?」
「雪だと?」
日が傾いて暗くなり始めた空を見上げたら、ややあって、雪が舞い落ちる様が確認出来た。
勢いは弱く、積もるほどではなさそうだが、このまま深夜まで降り続けば、薄ら街が白く染まるくらいにはなるだろうか。
「ホワイトクリスマスだな」
「今夜は雪見酒か。悪くねぇな。例のワイン、帰ったら開けるんだよな?」
例のワインとは、少し前に取り寄せた俺たちの生まれ年のワインだ。
一緒に住むようになった記念も兼ねて、二人で今回のクリスマス用にと購入してみた。
キースは甘い物を好まないから、甘口だというそのワインを購入するか少し迷ったが、今が飲み頃と表記されていたことや、キースも興味があると言ったことで購入に踏み切った。
「ああ。甘口のようだから、お前の口にはもしかしたら合わないかもしれんが」
「でも、お前は好きだろ。どうしても合わなきゃ、日本酒の方でも開ける」
「一応、そっちは新年用にするつもりだったが……うん? 司令部からの通信だな、ちょっと待て」
「げっ、何か起きたか?」
司令からの通信が入って、キースとの会話を一度切る。
何か異常でも発生したのかと思ったが、そうではなく、パトロールが終了次第、タワーに寄らずそのまま帰宅しても構わないとの連絡だった。
特に何かがあったわけではなかったことにほっとする。
「……キース。パトロールの報告書を提出するのは明日でいいそうだ。今日はこのまま帰宅して構わんと」
「マジか。司令いいとこあんな。じゃ、ちょっとディナーの準備する手間を考えても、いつもの時間には家で飯が食えるってことか」
「そうなる。真っ直ぐ帰るが構わんな?」
「おう。どうせ、大体の店もう閉まってんだし。ローストビーフ、どんな風に出来てるか楽しみだな」
「ああ」
日本の調味料を使ってローストビーフを作りたいと言ったのは俺だ。
評判の良さそうなレシピだったし、手順通りに昨夜仕込んだから問題はないと思うが。
あとは、予め作って冷凍してあるキッシュを温め、サラダを作ってそれに合わせれば今夜のディナーは完成だ。
以前はホテルでクリスマスディナーというのもやったことはあるが、キースがあまり好まないのと、どうしても人目につくところだと、市民への対応をすることもあり、落ち着かないからと、家で二人きりのディナーを楽しむようになった。
この場所からなら、俺たちの住んでいる家までは歩いて数分。
タワーには今朝の出勤時に使った俺の車を置いたままだが、家にはキースの方の車もあるから、明日出勤するにもさしあたって問題はない。
何となく足早になりながら、キースと並んで家への道を歩いていると、不意にキースが口を開いた。
「今日のパトロールさ、この組み合わせでこの場所って、配慮されたってやつなのかね」
「…………かもしれんな」
俺たちが一緒に暮らしているのは、知っている者も多い。
司令は当然知っている者の一人だ。
もしかしたら、クリスマスだからとキースの言うように配慮してくれたのかもしれない。
だとしたら、粋なクリスマスプレゼントだ。
後日、少しばかり礼の品でも贈っておくかと思いながら、キースと肩が触れ合いそうになる距離まで近付き、家への道を歩いて行った。
【Keith's Side】
「お、【クリスマス・リーグ】の結果出たみたいだぜ」
パトロールの最中、目に付いた大型ビジョンではノースセクターの研修チームのルーキーがガッツポーズをして、マリオンに窘められているところが映っていた。
が、そのマリオンも嬉しそうな目をしてるのはモニター越しでも伝わる。
アイツも何だかんだこの数年ですっかりメンターらしくなったよなぁ。
でもって、あからさまに喜びはしねぇで表向きはこれが当然って装うあたり、やっぱり元メンターであるブラッドにちょっと似てる。
口にした日にゃ、二人から揃って睨まれそうだけど。
「ああ、もうそんな時間か。……ふむ。もう少ししたら、パトロールを終了しても良さそうだな」
「ま、ここらに限らず、今日はどこの地区も異常なさそうだしな。街が平和で何よりっと」
研修チームは【クリスマス・リーグ】に参戦となると、当然パトロールはそれ以外のメンツでやることになる。
どうしてもその分人数が少なくなるから、メジャーヒーローなんかはそれこそ二人で組んで、パトロールするって形だが、今オレとブラッドでパトロールしてるこの地区は、オレたちの家からも比較的近い場所だ。
わざとなのかどうかわかんねぇが、普段は戦力の偏りを抑えるためにもメジャーヒーロー同士になるブラッドと一緒にパトロールすることは稀だし、ブラッドの小言さえなけりゃ一緒にパトロールするのは気も楽だからいいんだが、少し気になるところだ。
「せっかくのクリスマスなのに、仕事ってのも味気ねぇよなぁ」
「俺たちがヒーローになってから十年以上経つが、休みだったクリスマスなど一度だってあったか?」
「いや、ねぇけどさ。気分の問題だよ」
昔はクリスマスなんてもんに思い入れはなかった。
遠い昔、まだ母親が家を出る前に、一度だけ家族でクリスマスらしく祝ったことはあったが、その記憶が苦しくなるぐらいにはその後のクリスマスは散々なものだった。
母親がいなくなったことで、親父が不機嫌になったときの矛先が全部オレに向かうようになって以降、クリスマスはオレにとって、教会に行くと食い物が貰える日であり、街を歩く幸せそうな家族の気が緩んでいる隙を狙える『稼ぎ時』って認識だったのだ。
アカデミーに入って、ブラッドやディノと出会い、さらにはルーキーとして入所した後のジェイによって、クリスマスパーティーなんてもんを経験するまでは。
一緒に騒いで、時にプレゼントを贈り合ったりして、美味いもんを食って。
ヒーローになって以降、確かにブラッドの言ったようにクリスマスが一日休みだったことなんて一度だってない。
けど、それがどうでもよくなるくらいには、今はクリスマスのこのどこか優しい空気が嫌いじゃなかったし、大事なヤツと過ごせるクリスマスってもんに価値を見いだしている。
「仕事が終わって、家に帰ったら、数時間はクリスマス気分を味わえるだろうに」
「そうだけどさ。あ…………こりゃ、雪降ってきたか?」
「雪だと?」
微かな違和感に手を出したら、確かに冷たいものが指先に触れた。
やがて、誰の目にもわかるくらいにハッキリと降り始めた雪に、ブラッドが目元を綻ばせる。
「ホワイトクリスマスだな」
「今夜は雪見酒か。悪くねぇな。例のワイン、帰ったら開けるんだよな?」
少し前に、オレたちが生まれた年に出来たワインを見つけて、ブラッドがクリスマスの祝いに、そして一緒に住み始めた記念にと欲しがった結果、一緒に買ったワインだ。
オレはワインよりは断然ビールの方が好きだが、今がちょうど飲み頃だっていうし、ブラッドが酒に対しては珍しいくらいに興味を持っていたのが、妙に可愛かったり嬉しかったりしたもんだから、少し値段はしたけどそれを買うことにした。
そのまま飲んだ後はホットワインにして、ベランダで飲むのもいいかもしれねぇなんて思っていたら、ブラッドが頷きながらも少しだけ表情を曇らせている。
「ああ。甘口のようだから、お前の口にはもしかしたら合わないかもしれんが」
どうも、そこを気にしていたらしい。
確かに甘いのは得意じゃねぇけど、酒の時点で何でも楽しめるから気にしなくていいんだけどな。
「でも、お前は好きだろ。どうしても合わなきゃ、日本酒の方でも開ける」
実際、一緒に買った日本酒の方が味として楽しみなのが正直なところだ。
こっちこそ、こんな日には熱燗にして飲んでみたいってのはある。
「一応、そっちは新年用にするつもりだったが……うん? 司令部からの通信だな、ちょっと待て」
「げっ、何か起きたか?」
仕事なら仕方ねぇけど、平穏なクリスマスの予定が崩れるのは切ねぇな、なんて思っていたが、司令との話を終えたブラッドは口元に笑みを浮かべていた。
「……キース。パトロールの報告書を提出するのは明日でいいそうだ。今日はこのまま帰宅して構わんと」
「マジか。司令いいとこあんな。じゃ、ちょっとディナーの準備する手間を考えても、いつもの時間には家で飯が食えるってことか」
「そうなる。真っ直ぐ帰るが構わんな?」
「おう。どうせ、大体の店もう閉まってんだし。ローストビーフ、どんな風に出来てるか楽しみだな」
「ああ」
ブラッドが日本の調味料を使ったローストビーフが作りたいと言いだしたから、昨夜のうちに仕込んである。
前のオフの時に作って、冷凍しておいたキッシュも温めつつ、サラダを作りゃ立派なディナーの出来上がりだ。
どうも、慣れてねぇからホテルのディナーだと落ち着かねぇし、そもそもオレはともかく、ブラッドはかなりヒーローとして顔が知られているから、どうしても外で食うってなると人目につくのは避けられねぇんだよな。
何より、家でのディナーだと本当に二人きりで楽しめるというのが大きい。
一緒に住む前も仕事が終わった後に料理を持ち寄って、一緒に食ったりしてたけど、一緒に住むことで一から十まで、全部一緒に出来るっていうのがたまんねぇ。
ここからなら、家には数分で着く。
ブラッドの車はタワーに一晩置きっぱなしになるが、オレの車もあるし、明日帰りにそれぞれの車で帰って来りゃいいだけだ。
雪の降る中をブラッドと一緒に歩きながら、つい気になっていたことを口にする。
「今日のパトロールさ、この組み合わせでこの場所って、配慮されたってやつなのかね」
「…………かもしれんな」
勿論、イクリプスが出現したら仕事が優先だが、今日のようにパトロール中に何もなければ、終わった後は二人揃ってそのまま家に帰れる。しかもクリスマスの夜に――なんてのは何も考えずに手配した結果だとは考えにくい。
ブラッドとは長い付き合いだし、今更って思わなくもねぇが、それでも心の中がなんとなく温かくなる。
ほんの少し、体を寄せて来たブラッドの腰に手の一つでも回したくなるが、家に着くまでは我慢だ。
いくらクリスマスの夜でも、本当にやったら小言スイッチが入るのは間違いない。
腰に手を回すのも、抱きしめるのも、キスをするのも、家にさえ着いちまえば、いくらだって出来る。
今日が終わるまでの数時間、ブラッドとのクリスマスを楽しむ想像をしながら、家への道を歩いて行った。
Close
#キスブラ #ワンライ
※数年後の時間軸で、既に二人とも研修チームのメンターではない&キスブラが一緒に住んでるというのを想定の下に書いてます。
【Brad's Side】
「お、【クリスマス・リーグ】の結果出たみたいだぜ」
キースの言葉に顔を上げれば、街中にある大型ビジョンでは見慣れた光景と、ノースセクターの研修チームメンバーが映し出されていた。
なるほど、今年の勝者はノースセクターか。
「ああ、もうそんな時間か。……ふむ。もう少ししたら、パトロールを終了しても良さそうだな」
「ま、ここらに限らず、今日はどこの地区も異常なさそうだしな。街が平和で何よりっと」
クリスマスとなると、研修チームは毎年恒例の【クリスマス・リーグ】に参戦しているから、その間のパトロールは俺たちのように研修チームに所属していないヒーローの仕事となる。
特にメジャーヒーローともなれば、その実力を買われ、通常よりも少ない人数で組んでパトロールすることも多い。
今日、俺とキースが組む形でこの地区のパトロールに当たっているのもそれを考慮してのことだろう。
他に意図があっての人選ではないはずだ。……多分。
「せっかくのクリスマスなのに、仕事ってのも味気ねぇよなぁ」
「俺たちがヒーローになってから十年以上経つが、休みだったクリスマスなど一度だってあったか?」
「いや、ねぇけどさ。気分の問題だよ」
――クリスマスなぁ……。一回か二回は祝ったことあったけど、ホントに小せぇ頃だわ。母親が家出て行く前だからなぁ。ああ、でもクリスマスに教会行くと食い物貰えたのは有り難かったから、アカデミー入学前はそれで教会行ったりしてたな。
――だから、クリスマスが楽しかった記憶なんて0とまではいかなくても、ほとんどねぇわ。思い入れもねぇよ。
かつては遠い目でそんなことを口にしていた男が、クリスマスに仕事が入っていることをぼやけるようになった境遇の変化を喜ぶべきだろう。
少なくとも、今のキースはクリスマスの楽しみ方を知っている。
クリスマスを楽しいものだと認識しているからこそのぼやきだ。
「仕事が終わって、家に帰ったら、数時間はクリスマス気分を味わえるだろうに」
「そうだけどさ。あ…………こりゃ、雪降ってきたか?」
「雪だと?」
日が傾いて暗くなり始めた空を見上げたら、ややあって、雪が舞い落ちる様が確認出来た。
勢いは弱く、積もるほどではなさそうだが、このまま深夜まで降り続けば、薄ら街が白く染まるくらいにはなるだろうか。
「ホワイトクリスマスだな」
「今夜は雪見酒か。悪くねぇな。例のワイン、帰ったら開けるんだよな?」
例のワインとは、少し前に取り寄せた俺たちの生まれ年のワインだ。
一緒に住むようになった記念も兼ねて、二人で今回のクリスマス用にと購入してみた。
キースは甘い物を好まないから、甘口だというそのワインを購入するか少し迷ったが、今が飲み頃と表記されていたことや、キースも興味があると言ったことで購入に踏み切った。
「ああ。甘口のようだから、お前の口にはもしかしたら合わないかもしれんが」
「でも、お前は好きだろ。どうしても合わなきゃ、日本酒の方でも開ける」
「一応、そっちは新年用にするつもりだったが……うん? 司令部からの通信だな、ちょっと待て」
「げっ、何か起きたか?」
司令からの通信が入って、キースとの会話を一度切る。
何か異常でも発生したのかと思ったが、そうではなく、パトロールが終了次第、タワーに寄らずそのまま帰宅しても構わないとの連絡だった。
特に何かがあったわけではなかったことにほっとする。
「……キース。パトロールの報告書を提出するのは明日でいいそうだ。今日はこのまま帰宅して構わんと」
「マジか。司令いいとこあんな。じゃ、ちょっとディナーの準備する手間を考えても、いつもの時間には家で飯が食えるってことか」
「そうなる。真っ直ぐ帰るが構わんな?」
「おう。どうせ、大体の店もう閉まってんだし。ローストビーフ、どんな風に出来てるか楽しみだな」
「ああ」
日本の調味料を使ってローストビーフを作りたいと言ったのは俺だ。
評判の良さそうなレシピだったし、手順通りに昨夜仕込んだから問題はないと思うが。
あとは、予め作って冷凍してあるキッシュを温め、サラダを作ってそれに合わせれば今夜のディナーは完成だ。
以前はホテルでクリスマスディナーというのもやったことはあるが、キースがあまり好まないのと、どうしても人目につくところだと、市民への対応をすることもあり、落ち着かないからと、家で二人きりのディナーを楽しむようになった。
この場所からなら、俺たちの住んでいる家までは歩いて数分。
タワーには今朝の出勤時に使った俺の車を置いたままだが、家にはキースの方の車もあるから、明日出勤するにもさしあたって問題はない。
何となく足早になりながら、キースと並んで家への道を歩いていると、不意にキースが口を開いた。
「今日のパトロールさ、この組み合わせでこの場所って、配慮されたってやつなのかね」
「…………かもしれんな」
俺たちが一緒に暮らしているのは、知っている者も多い。
司令は当然知っている者の一人だ。
もしかしたら、クリスマスだからとキースの言うように配慮してくれたのかもしれない。
だとしたら、粋なクリスマスプレゼントだ。
後日、少しばかり礼の品でも贈っておくかと思いながら、キースと肩が触れ合いそうになる距離まで近付き、家への道を歩いて行った。
【Keith's Side】
「お、【クリスマス・リーグ】の結果出たみたいだぜ」
パトロールの最中、目に付いた大型ビジョンではノースセクターの研修チームのルーキーがガッツポーズをして、マリオンに窘められているところが映っていた。
が、そのマリオンも嬉しそうな目をしてるのはモニター越しでも伝わる。
アイツも何だかんだこの数年ですっかりメンターらしくなったよなぁ。
でもって、あからさまに喜びはしねぇで表向きはこれが当然って装うあたり、やっぱり元メンターであるブラッドにちょっと似てる。
口にした日にゃ、二人から揃って睨まれそうだけど。
「ああ、もうそんな時間か。……ふむ。もう少ししたら、パトロールを終了しても良さそうだな」
「ま、ここらに限らず、今日はどこの地区も異常なさそうだしな。街が平和で何よりっと」
研修チームは【クリスマス・リーグ】に参戦となると、当然パトロールはそれ以外のメンツでやることになる。
どうしてもその分人数が少なくなるから、メジャーヒーローなんかはそれこそ二人で組んで、パトロールするって形だが、今オレとブラッドでパトロールしてるこの地区は、オレたちの家からも比較的近い場所だ。
わざとなのかどうかわかんねぇが、普段は戦力の偏りを抑えるためにもメジャーヒーロー同士になるブラッドと一緒にパトロールすることは稀だし、ブラッドの小言さえなけりゃ一緒にパトロールするのは気も楽だからいいんだが、少し気になるところだ。
「せっかくのクリスマスなのに、仕事ってのも味気ねぇよなぁ」
「俺たちがヒーローになってから十年以上経つが、休みだったクリスマスなど一度だってあったか?」
「いや、ねぇけどさ。気分の問題だよ」
昔はクリスマスなんてもんに思い入れはなかった。
遠い昔、まだ母親が家を出る前に、一度だけ家族でクリスマスらしく祝ったことはあったが、その記憶が苦しくなるぐらいにはその後のクリスマスは散々なものだった。
母親がいなくなったことで、親父が不機嫌になったときの矛先が全部オレに向かうようになって以降、クリスマスはオレにとって、教会に行くと食い物が貰える日であり、街を歩く幸せそうな家族の気が緩んでいる隙を狙える『稼ぎ時』って認識だったのだ。
アカデミーに入って、ブラッドやディノと出会い、さらにはルーキーとして入所した後のジェイによって、クリスマスパーティーなんてもんを経験するまでは。
一緒に騒いで、時にプレゼントを贈り合ったりして、美味いもんを食って。
ヒーローになって以降、確かにブラッドの言ったようにクリスマスが一日休みだったことなんて一度だってない。
けど、それがどうでもよくなるくらいには、今はクリスマスのこのどこか優しい空気が嫌いじゃなかったし、大事なヤツと過ごせるクリスマスってもんに価値を見いだしている。
「仕事が終わって、家に帰ったら、数時間はクリスマス気分を味わえるだろうに」
「そうだけどさ。あ…………こりゃ、雪降ってきたか?」
「雪だと?」
微かな違和感に手を出したら、確かに冷たいものが指先に触れた。
やがて、誰の目にもわかるくらいにハッキリと降り始めた雪に、ブラッドが目元を綻ばせる。
「ホワイトクリスマスだな」
「今夜は雪見酒か。悪くねぇな。例のワイン、帰ったら開けるんだよな?」
少し前に、オレたちが生まれた年に出来たワインを見つけて、ブラッドがクリスマスの祝いに、そして一緒に住み始めた記念にと欲しがった結果、一緒に買ったワインだ。
オレはワインよりは断然ビールの方が好きだが、今がちょうど飲み頃だっていうし、ブラッドが酒に対しては珍しいくらいに興味を持っていたのが、妙に可愛かったり嬉しかったりしたもんだから、少し値段はしたけどそれを買うことにした。
そのまま飲んだ後はホットワインにして、ベランダで飲むのもいいかもしれねぇなんて思っていたら、ブラッドが頷きながらも少しだけ表情を曇らせている。
「ああ。甘口のようだから、お前の口にはもしかしたら合わないかもしれんが」
どうも、そこを気にしていたらしい。
確かに甘いのは得意じゃねぇけど、酒の時点で何でも楽しめるから気にしなくていいんだけどな。
「でも、お前は好きだろ。どうしても合わなきゃ、日本酒の方でも開ける」
実際、一緒に買った日本酒の方が味として楽しみなのが正直なところだ。
こっちこそ、こんな日には熱燗にして飲んでみたいってのはある。
「一応、そっちは新年用にするつもりだったが……うん? 司令部からの通信だな、ちょっと待て」
「げっ、何か起きたか?」
仕事なら仕方ねぇけど、平穏なクリスマスの予定が崩れるのは切ねぇな、なんて思っていたが、司令との話を終えたブラッドは口元に笑みを浮かべていた。
「……キース。パトロールの報告書を提出するのは明日でいいそうだ。今日はこのまま帰宅して構わんと」
「マジか。司令いいとこあんな。じゃ、ちょっとディナーの準備する手間を考えても、いつもの時間には家で飯が食えるってことか」
「そうなる。真っ直ぐ帰るが構わんな?」
「おう。どうせ、大体の店もう閉まってんだし。ローストビーフ、どんな風に出来てるか楽しみだな」
「ああ」
ブラッドが日本の調味料を使ったローストビーフが作りたいと言いだしたから、昨夜のうちに仕込んである。
前のオフの時に作って、冷凍しておいたキッシュも温めつつ、サラダを作りゃ立派なディナーの出来上がりだ。
どうも、慣れてねぇからホテルのディナーだと落ち着かねぇし、そもそもオレはともかく、ブラッドはかなりヒーローとして顔が知られているから、どうしても外で食うってなると人目につくのは避けられねぇんだよな。
何より、家でのディナーだと本当に二人きりで楽しめるというのが大きい。
一緒に住む前も仕事が終わった後に料理を持ち寄って、一緒に食ったりしてたけど、一緒に住むことで一から十まで、全部一緒に出来るっていうのがたまんねぇ。
ここからなら、家には数分で着く。
ブラッドの車はタワーに一晩置きっぱなしになるが、オレの車もあるし、明日帰りにそれぞれの車で帰って来りゃいいだけだ。
雪の降る中をブラッドと一緒に歩きながら、つい気になっていたことを口にする。
「今日のパトロールさ、この組み合わせでこの場所って、配慮されたってやつなのかね」
「…………かもしれんな」
勿論、イクリプスが出現したら仕事が優先だが、今日のようにパトロール中に何もなければ、終わった後は二人揃ってそのまま家に帰れる。しかもクリスマスの夜に――なんてのは何も考えずに手配した結果だとは考えにくい。
ブラッドとは長い付き合いだし、今更って思わなくもねぇが、それでも心の中がなんとなく温かくなる。
ほんの少し、体を寄せて来たブラッドの腰に手の一つでも回したくなるが、家に着くまでは我慢だ。
いくらクリスマスの夜でも、本当にやったら小言スイッチが入るのは間違いない。
腰に手を回すのも、抱きしめるのも、キスをするのも、家にさえ着いちまえば、いくらだって出来る。
今日が終わるまでの数時間、ブラッドとのクリスマスを楽しむ想像をしながら、家への道を歩いて行った。
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#キスブラ #ワンライ
キスブラ版ワンドロライ第7回でのお題から『食事』『クリスマス』『愛情』を使って書いた話です。
※数年後の時間軸で、既に二人とも研修チームのメンターではない&キスブラが一緒に住んでるというのを想定の下に書いてます。
修正版はこちらです。
※pixivに纏める際に消します。
「お、【クリスマス・リーグ】の結果出たみたいだぜ」
街中にある大型ビジョンでは見慣れた光景と、ノースセクターの研修チームメンバーが映し出されていた。
なるほど、今年の勝者はノースセクターか。
「ああ、もうそんな時間か。……ふむ。もう少ししたら、パトロールを終了しても良さそうだな」
「ま、ここらに限らず、どこの地区も異常なさそうだしな。平和で何よりっと」
クリスマスとなると、研修チームは毎年恒例の【クリスマス・リーグ】に参戦しているから、その間のパトロールは俺たちのように研修チームに所属していないヒーローの仕事となる。
特にメジャーヒーローともなれば、その実力を買われ、通常よりも少ない人数でパトロールすることも多い。
今日、俺とキースが組む形でこの地区のパトロールに当たっているのもそれを考慮してのことだろう。
他に意図があっての人選ではないはずだ。……多分。
「せっかくのクリスマスなのに、仕事ってのも味気ねぇよなぁ」
「俺たちがヒーローになってから、休みだったクリスマスなど一度だってあったか?」
「いや、ねぇけどさ。気分の問題だよ」
――クリスマスなぁ……。一回か二回は祝ったことあったけど、ホントに小せぇ頃だわ。母親が家出て行く前だからなぁ。ああ、でもクリスマスに教会行くと食い物貰えたのは有り難かったから、アカデミー入学前はそれで教会行ったりしてたな。
――だから、クリスマスが楽しかった記憶なんて0とまではいかなくても、ほとんどねぇわ。思い入れもねぇよ。
かつてはそんなことを口にしていた男が、クリスマスに仕事が入っていることをぼやけるようになった境遇の変化を喜ぶべきだろう。
少なくとも、今のキースはクリスマスの楽しみ方を知っている。
「仕事が終わって、家に帰ったら、数時間はクリスマス気分を味わえるだろうに」
「そうだけどさ。あ…………こりゃ、雪降ってきたか?」
「雪だと?」
日が傾いて暗くなり始めた空を見上げたら、ややあって、雪が舞い落ちる様が確認出来た。
勢いは弱く、積もるほどではなさそうだが、このまま深夜まで降り続けば、薄ら白くなるくらいにはなるだろうか。
「ホワイトクリスマスだな」
「雪見酒か。悪くねぇな。例のワイン、帰ったら開けるんだよな?」
「ああ。甘口のようだから、お前の口にはもしかしたら合わないかもしれんが」
「でも、お前は好きだろ。どうしても合わなきゃ、日本酒の方でも開ける」
「一応、そっちは新年用にするつもりだったが……うん? ちょっと待て」
司令からの通信が入って、キースとの会話を一度切る。
何か異常でも発生したかと思ったが、そうではなく、パトロールが終了次第、タワーに寄らずそのまま帰宅して構わないとの連絡だった。
「……キース。パトロールの報告書を提出するのは明日でいいそうだ。今日はこのまま帰宅して構わんと」
「マジか。司令いいとこあんな。じゃ、いつもの時間に家で飯が食えるってことか」
「そうなる。真っ直ぐ帰るが構わんな?」
「おう。どうせ、大体の店もう閉まってんだし。ローストビーフ、どんな風に出来てるか楽しみだな」
「ああ」
日本の調味料を使ってローストビーフを作りたいと言ったのは俺だ。
評判の良さそうなレシピだったし、手順通りに昨夜仕込んだから問題はないと思うが。
ここからなら、俺たちの住んでいる家までは歩いて数分。
何となく足早になりながら、キースと並んで家への道を歩いていると、不意にキースが口を開いた。
「今日のパトロールさ、この組み合わせでこの場所って、配慮されたってやつなのかな」
「…………かもしれんな」
俺たちが一緒に暮らしているのは、知っている者も多い。
司令は当然知っている。
もしかしたら、キースの言うように配慮してくれたのかもしれない。
後日、少しばかり礼の品でも贈っておくかと思いながら、キースと肩が触れ合いそうになる距離まで近付き、家への道を歩いて行った。
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#キスブラ #ワンライ
※数年後の時間軸で、既に二人とも研修チームのメンターではない&キスブラが一緒に住んでるというのを想定の下に書いてます。
修正版はこちらです。
※pixivに纏める際に消します。
「お、【クリスマス・リーグ】の結果出たみたいだぜ」
街中にある大型ビジョンでは見慣れた光景と、ノースセクターの研修チームメンバーが映し出されていた。
なるほど、今年の勝者はノースセクターか。
「ああ、もうそんな時間か。……ふむ。もう少ししたら、パトロールを終了しても良さそうだな」
「ま、ここらに限らず、どこの地区も異常なさそうだしな。平和で何よりっと」
クリスマスとなると、研修チームは毎年恒例の【クリスマス・リーグ】に参戦しているから、その間のパトロールは俺たちのように研修チームに所属していないヒーローの仕事となる。
特にメジャーヒーローともなれば、その実力を買われ、通常よりも少ない人数でパトロールすることも多い。
今日、俺とキースが組む形でこの地区のパトロールに当たっているのもそれを考慮してのことだろう。
他に意図があっての人選ではないはずだ。……多分。
「せっかくのクリスマスなのに、仕事ってのも味気ねぇよなぁ」
「俺たちがヒーローになってから、休みだったクリスマスなど一度だってあったか?」
「いや、ねぇけどさ。気分の問題だよ」
――クリスマスなぁ……。一回か二回は祝ったことあったけど、ホントに小せぇ頃だわ。母親が家出て行く前だからなぁ。ああ、でもクリスマスに教会行くと食い物貰えたのは有り難かったから、アカデミー入学前はそれで教会行ったりしてたな。
――だから、クリスマスが楽しかった記憶なんて0とまではいかなくても、ほとんどねぇわ。思い入れもねぇよ。
かつてはそんなことを口にしていた男が、クリスマスに仕事が入っていることをぼやけるようになった境遇の変化を喜ぶべきだろう。
少なくとも、今のキースはクリスマスの楽しみ方を知っている。
「仕事が終わって、家に帰ったら、数時間はクリスマス気分を味わえるだろうに」
「そうだけどさ。あ…………こりゃ、雪降ってきたか?」
「雪だと?」
日が傾いて暗くなり始めた空を見上げたら、ややあって、雪が舞い落ちる様が確認出来た。
勢いは弱く、積もるほどではなさそうだが、このまま深夜まで降り続けば、薄ら白くなるくらいにはなるだろうか。
「ホワイトクリスマスだな」
「雪見酒か。悪くねぇな。例のワイン、帰ったら開けるんだよな?」
「ああ。甘口のようだから、お前の口にはもしかしたら合わないかもしれんが」
「でも、お前は好きだろ。どうしても合わなきゃ、日本酒の方でも開ける」
「一応、そっちは新年用にするつもりだったが……うん? ちょっと待て」
司令からの通信が入って、キースとの会話を一度切る。
何か異常でも発生したかと思ったが、そうではなく、パトロールが終了次第、タワーに寄らずそのまま帰宅して構わないとの連絡だった。
「……キース。パトロールの報告書を提出するのは明日でいいそうだ。今日はこのまま帰宅して構わんと」
「マジか。司令いいとこあんな。じゃ、いつもの時間に家で飯が食えるってことか」
「そうなる。真っ直ぐ帰るが構わんな?」
「おう。どうせ、大体の店もう閉まってんだし。ローストビーフ、どんな風に出来てるか楽しみだな」
「ああ」
日本の調味料を使ってローストビーフを作りたいと言ったのは俺だ。
評判の良さそうなレシピだったし、手順通りに昨夜仕込んだから問題はないと思うが。
ここからなら、俺たちの住んでいる家までは歩いて数分。
何となく足早になりながら、キースと並んで家への道を歩いていると、不意にキースが口を開いた。
「今日のパトロールさ、この組み合わせでこの場所って、配慮されたってやつなのかな」
「…………かもしれんな」
俺たちが一緒に暮らしているのは、知っている者も多い。
司令は当然知っている。
もしかしたら、キースの言うように配慮してくれたのかもしれない。
後日、少しばかり礼の品でも贈っておくかと思いながら、キースと肩が触れ合いそうになる距離まで近付き、家への道を歩いて行った。
Close
#キスブラ #ワンライ
キスブラ版ワンドロライ第5回でのお題から『眉』『笑顔』『名前』を使って書いた話です。
事後&二回戦前なので、R-15くらい。
逆視点追加バージョンNovel にあります。(R-18に引き上げたのでご注意を)
※pixivにも纏めたら、こことポイピクから削除します。
多分、仕事が忙しくてブラッドが普段よりも疲れ気味だったんだろうとは思った。
あまり顔に出ない方で、長い付き合いでも未だに表情を掴みきれねぇ時があるブラッドが、珍しくそんなオレにもわかるくらいには表情に疲労の色を滲ませていたからだ。
だから、今日はこのままセックスはせずに大人しく寝るだけにしておくかと問いかけたら、疲れマラってヤツだったのか、せっかくオフが重なったタイミングを、無駄にしてたまるかと突っぱねられた。
本人が積極的ならいいかとオレも応じた結果、ブラッドはコトが済んだあと、シャワーも浴びずに撃沈した。
正直かなり珍しい。
少し休んだ後に続けて二回戦するってならともかく、一回終わってそのままシャワーも浴びずに寝落ちるなんてのは滅多にあることじゃない。
眠りも深いのか、普段は睡眠の効率が悪くなると嫌がる腕枕をしても、それに気付かず眠り続けている。
ただ、することして、スッキリはしたのか、寝顔は随分と穏やかなもんだ。
眉も下がって、少し笑っているようにさえ見える。
「…………気分転換になってんだったら、いいけどさ」
オレとしてもこんなブラッドは早々見られねぇから、汗を含んだ髪のにおいや、服に隠れて見えなくなるはずの範囲に着けたキスマークを、ちょっとだけ追加して楽しんでいたら、不意にブラッドが目を覚ました。
「……っと、悪ぃ。起こしちまったか」
「キー……ス。今……何時、だ」
掠れた声でオレを呼ぶ声は、さっきまでの行為の最中に呼んでいた声に近くて、少しだけ鼓動が跳ねる。
「あー……日付変わってちょっとってとこか。お前が寝てからまだそんなに経ってねぇよ。もうちょっとそのまま寝とけ」
「…………ん」
ブラッドの髪を撫でながらそう言うと、ブラッドは柔らかく笑いながらオレの体にすり寄ってきて、腕を絡めた。
ほんのり汗ばんでいる肌が触れ合う感触は心地良い一方で、一度は収まったはずの欲が再び頭をもたげ始めてしまう。
疲れてるブラッドをこのまま寝かせといてやりたいってのは紛れもない本心だが、疲れているからこそ積極的だったさっきのセックスを思い出すと、もう一度したくなるってのも本心だから困る。
とはいえ、さすがに今日はもうダメだろと、なるべく意識を他の事に逸らそうと思ったところで、背に回っていたはずのブラッドの手が前に移動しようとしたから、慌てて手を掴んで止めた。
こんなタイミングでブラッドに触られたら、落ち着くモンも落ち着きやしねぇ。
「いやいやいや、疲れてんだろ、大人しく寝とけ!?」
「疲れているのは否定しない。少し眠くもあるが……それ以上にしたい」
「うわ、待てって、おい、ブラッド!」
ブラッドが体をずらして、腰をすりつけてくる。
臨戦態勢になりつつあるお互いのモノが擦れ合って――余計そこが熱くなったのを自覚した。
なけなしの自制心はあっさりと音を立てて崩れていく。
「キース。……ダメか?」
ダメ押しのように首を傾げながら、上目遣いで名前を呼ばれ、熱っぽい視線と声でねだられて。
なお、断れる男がいるのなら教えて欲しい。
しかも、こんなことを普段してこない相手にされた日には尚更だ。
白旗を挙げる以外に何が出来るっていうのか。
抑えていたブラッドの手を離し、ヤツの腰を撫でるとブラッドの吐息が微かに乱れた。
「…………この状態でお前にそう言われて、オレが断れると思ってんのかよ……」
「すまんな」
「いいけどさ。明日まともに動けなくてもしらねぇからな」
ま、強制的にブラッドを休ませられると思えばいいかと諦めて、勝ち誇ったような笑みを浮かべているブラッドの顔を引き寄せ、キスをした。
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#キスブラ #ワンライ
事後&二回戦前なので、R-15くらい。
逆視点追加バージョンNovel にあります。(R-18に引き上げたのでご注意を)
※pixivにも纏めたら、こことポイピクから削除します。
多分、仕事が忙しくてブラッドが普段よりも疲れ気味だったんだろうとは思った。
あまり顔に出ない方で、長い付き合いでも未だに表情を掴みきれねぇ時があるブラッドが、珍しくそんなオレにもわかるくらいには表情に疲労の色を滲ませていたからだ。
だから、今日はこのままセックスはせずに大人しく寝るだけにしておくかと問いかけたら、疲れマラってヤツだったのか、せっかくオフが重なったタイミングを、無駄にしてたまるかと突っぱねられた。
本人が積極的ならいいかとオレも応じた結果、ブラッドはコトが済んだあと、シャワーも浴びずに撃沈した。
正直かなり珍しい。
少し休んだ後に続けて二回戦するってならともかく、一回終わってそのままシャワーも浴びずに寝落ちるなんてのは滅多にあることじゃない。
眠りも深いのか、普段は睡眠の効率が悪くなると嫌がる腕枕をしても、それに気付かず眠り続けている。
ただ、することして、スッキリはしたのか、寝顔は随分と穏やかなもんだ。
眉も下がって、少し笑っているようにさえ見える。
「…………気分転換になってんだったら、いいけどさ」
オレとしてもこんなブラッドは早々見られねぇから、汗を含んだ髪のにおいや、服に隠れて見えなくなるはずの範囲に着けたキスマークを、ちょっとだけ追加して楽しんでいたら、不意にブラッドが目を覚ました。
「……っと、悪ぃ。起こしちまったか」
「キー……ス。今……何時、だ」
掠れた声でオレを呼ぶ声は、さっきまでの行為の最中に呼んでいた声に近くて、少しだけ鼓動が跳ねる。
「あー……日付変わってちょっとってとこか。お前が寝てからまだそんなに経ってねぇよ。もうちょっとそのまま寝とけ」
「…………ん」
ブラッドの髪を撫でながらそう言うと、ブラッドは柔らかく笑いながらオレの体にすり寄ってきて、腕を絡めた。
ほんのり汗ばんでいる肌が触れ合う感触は心地良い一方で、一度は収まったはずの欲が再び頭をもたげ始めてしまう。
疲れてるブラッドをこのまま寝かせといてやりたいってのは紛れもない本心だが、疲れているからこそ積極的だったさっきのセックスを思い出すと、もう一度したくなるってのも本心だから困る。
とはいえ、さすがに今日はもうダメだろと、なるべく意識を他の事に逸らそうと思ったところで、背に回っていたはずのブラッドの手が前に移動しようとしたから、慌てて手を掴んで止めた。
こんなタイミングでブラッドに触られたら、落ち着くモンも落ち着きやしねぇ。
「いやいやいや、疲れてんだろ、大人しく寝とけ!?」
「疲れているのは否定しない。少し眠くもあるが……それ以上にしたい」
「うわ、待てって、おい、ブラッド!」
ブラッドが体をずらして、腰をすりつけてくる。
臨戦態勢になりつつあるお互いのモノが擦れ合って――余計そこが熱くなったのを自覚した。
なけなしの自制心はあっさりと音を立てて崩れていく。
「キース。……ダメか?」
ダメ押しのように首を傾げながら、上目遣いで名前を呼ばれ、熱っぽい視線と声でねだられて。
なお、断れる男がいるのなら教えて欲しい。
しかも、こんなことを普段してこない相手にされた日には尚更だ。
白旗を挙げる以外に何が出来るっていうのか。
抑えていたブラッドの手を離し、ヤツの腰を撫でるとブラッドの吐息が微かに乱れた。
「…………この状態でお前にそう言われて、オレが断れると思ってんのかよ……」
「すまんな」
「いいけどさ。明日まともに動けなくてもしらねぇからな」
ま、強制的にブラッドを休ませられると思えばいいかと諦めて、勝ち誇ったような笑みを浮かべているブラッドの顔を引き寄せ、キスをした。
Close
#キスブラ #ワンライ
キスブラ版ワンドロライ第3回でのお題から『…。』(3点リーダー)を使って書いた話です。
エロ直結でした、すみません!w
18歳未満の方はご遠慮下さい!
逆視点追加バージョンがNovel にあります。
※pixivにも纏めたら、こことポイピクから削除します。
「…………っ……ふ、うっ」
体を繋いだ場所から鳴るローションの音と、ベッドが軋む音に紛れて、ブラッドが歯を食いしばる音が聞こえる。
まだ、声は上げるまいと必死に抑え込んでいるらしい。
どうせ、最終的には声上げちまうことになるのにな、と思いはするが、口にはしねぇ。
限界ギリギリまで堪えたブラッドが、堪えきれずに乱れ始める瞬間がたまんねぇのを知ってるからだ。
快感に揺らいで、オレを求めてくるネオンピンクの目は、何度見ても気分が良い。
一旦動きを止めて、キスを交わしながら、反り返ってるブラッドのペニスの付け根に触れ、そこから指一本だけを裏筋に滑らせ、カリと先っぽの辺りで軽くくすぐるように動かし、絡ませてたブラッドの舌が動きを止めたのを確認してから、臍のちょっと下を軽く指先でノックする。
「んっ…………ん、ん」
唇を離すと、キスの最中は閉じていたブラッドの目が開く。
潤んだ目が妙な焦らし方をするなと訴えていた。
いつもは表情の変化がわかりにくいブラッドも、セックスとなると、目は口ほどにものを言うって状態になる。
コイツがここまでわかりやすくなるなんて、こんな時くらいだ。
「キー、ス」
「この辺までオレのが届いてるの、わかるよな?」
「…………」
言葉での返事はなかったが、代わりにブラッドの中が軽く締まった。
ゴム越しでも伝わってくる熱さが気持ち良くて、もっとこれを味わっていたい感覚と、突き上げてブラッドを乱したいという欲がせめぎあう。
短い葛藤の末に、もうちょっと焦らすことを決め、深い部分で小さな律動を始めた。
「んっ……く……はっ…………」
自分の中にある衝動からどうにか意識を逸らし、ブラッドが限界を訴えるのを待つ。
中のうねり方からして、多分そんなに遠くない。
オレが衝動に負けるのが先か、ブラッドが限界を訴えるのが先か。
出来れば後者がいい。
勝ち負けの問題じゃねぇのはわかってる。
けど、普段はどうにもブラッドに対して分が悪いことが多いから、ベッドの中でくらいは譲りたくねぇ。
ややあって、ブラッドがオレの肩を掴んで、吐息混じりにねだった。
「キース……欲し、い……」
「あ? 何だって?」
ブラッドが欲しいものが何かなんてとっくにわかってるけど、それを言葉で明確に言わねぇうちはダメだと先を促す。
飲み込ませてたまるかよ。察してなんかやらねぇ。
ブラッドがオレを一瞬睨んだが、直ぐに諦めたらしく、再び言葉が発された。
「…………お前が、欲しい……っ、もっと、強く突い……っ! あっ、うあ!!」
「っ! こう、だろっ!」
「あ、ああっ……そ、こ……ああ!」
ブラッドが言い終わる前に、勢い良く突き上げる。
さっきはわざと避けていた弱い部分を狙って擦っていくと、ブラッドの声に甘さが混じっていく。
肩を掴んでいた手も余裕のなさからか、爪が立てられていた。
ブラッドが本気で感じていることがわかって、こっちのなけなしの余裕もなくなっていく。
こうなると、食い込む爪がもたらす痛みも快感を増幅させるだけだ。
爪で傷になったとこに汗がしみることさえ、興奮を高める。
止めようと思ってもつい動いちまう腰に抵抗することをやめて、衝動のままに動くと、ブラッドが嬉しそうに笑った。
オレにも余裕がないことがわかったからだろう。
普段からこうなら、何考えてるかわかんねぇなんてことねぇんだけど、問題はこんな状態のブラッドを誰にも見せらんねぇってことだ。
「可愛い、な。ブラッド……っ」
「――あ、キー、うあっ、あああーっ!!」
オレしかしらねぇブラッドを堪能しながら、一際強く抱いて、腹と腹の間でブラッドが精を吐き出したのを感じつつ、オレもブラッドの中に出して――。
「…………」
「…………」
何も言わずに、お互いまだ息の乱れてる状態で唇を重ねた。
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#キスブラ #R18 #ワンライ
エロ直結でした、すみません!w
18歳未満の方はご遠慮下さい!
逆視点追加バージョンがNovel にあります。
※pixivにも纏めたら、こことポイピクから削除します。
「…………っ……ふ、うっ」
体を繋いだ場所から鳴るローションの音と、ベッドが軋む音に紛れて、ブラッドが歯を食いしばる音が聞こえる。
まだ、声は上げるまいと必死に抑え込んでいるらしい。
どうせ、最終的には声上げちまうことになるのにな、と思いはするが、口にはしねぇ。
限界ギリギリまで堪えたブラッドが、堪えきれずに乱れ始める瞬間がたまんねぇのを知ってるからだ。
快感に揺らいで、オレを求めてくるネオンピンクの目は、何度見ても気分が良い。
一旦動きを止めて、キスを交わしながら、反り返ってるブラッドのペニスの付け根に触れ、そこから指一本だけを裏筋に滑らせ、カリと先っぽの辺りで軽くくすぐるように動かし、絡ませてたブラッドの舌が動きを止めたのを確認してから、臍のちょっと下を軽く指先でノックする。
「んっ…………ん、ん」
唇を離すと、キスの最中は閉じていたブラッドの目が開く。
潤んだ目が妙な焦らし方をするなと訴えていた。
いつもは表情の変化がわかりにくいブラッドも、セックスとなると、目は口ほどにものを言うって状態になる。
コイツがここまでわかりやすくなるなんて、こんな時くらいだ。
「キー、ス」
「この辺までオレのが届いてるの、わかるよな?」
「…………」
言葉での返事はなかったが、代わりにブラッドの中が軽く締まった。
ゴム越しでも伝わってくる熱さが気持ち良くて、もっとこれを味わっていたい感覚と、突き上げてブラッドを乱したいという欲がせめぎあう。
短い葛藤の末に、もうちょっと焦らすことを決め、深い部分で小さな律動を始めた。
「んっ……く……はっ…………」
自分の中にある衝動からどうにか意識を逸らし、ブラッドが限界を訴えるのを待つ。
中のうねり方からして、多分そんなに遠くない。
オレが衝動に負けるのが先か、ブラッドが限界を訴えるのが先か。
出来れば後者がいい。
勝ち負けの問題じゃねぇのはわかってる。
けど、普段はどうにもブラッドに対して分が悪いことが多いから、ベッドの中でくらいは譲りたくねぇ。
ややあって、ブラッドがオレの肩を掴んで、吐息混じりにねだった。
「キース……欲し、い……」
「あ? 何だって?」
ブラッドが欲しいものが何かなんてとっくにわかってるけど、それを言葉で明確に言わねぇうちはダメだと先を促す。
飲み込ませてたまるかよ。察してなんかやらねぇ。
ブラッドがオレを一瞬睨んだが、直ぐに諦めたらしく、再び言葉が発された。
「…………お前が、欲しい……っ、もっと、強く突い……っ! あっ、うあ!!」
「っ! こう、だろっ!」
「あ、ああっ……そ、こ……ああ!」
ブラッドが言い終わる前に、勢い良く突き上げる。
さっきはわざと避けていた弱い部分を狙って擦っていくと、ブラッドの声に甘さが混じっていく。
肩を掴んでいた手も余裕のなさからか、爪が立てられていた。
ブラッドが本気で感じていることがわかって、こっちのなけなしの余裕もなくなっていく。
こうなると、食い込む爪がもたらす痛みも快感を増幅させるだけだ。
爪で傷になったとこに汗がしみることさえ、興奮を高める。
止めようと思ってもつい動いちまう腰に抵抗することをやめて、衝動のままに動くと、ブラッドが嬉しそうに笑った。
オレにも余裕がないことがわかったからだろう。
普段からこうなら、何考えてるかわかんねぇなんてことねぇんだけど、問題はこんな状態のブラッドを誰にも見せらんねぇってことだ。
「可愛い、な。ブラッド……っ」
「――あ、キー、うあっ、あああーっ!!」
オレしかしらねぇブラッドを堪能しながら、一際強く抱いて、腹と腹の間でブラッドが精を吐き出したのを感じつつ、オレもブラッドの中に出して――。
「…………」
「…………」
何も言わずに、お互いまだ息の乱れてる状態で唇を重ねた。
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#キスブラ #R18 #ワンライ
オスカーと出会った時のキスブラ。
ビームス家に奉公人として約8年ってことは、出会いはルーキー時代→その場にキースも一緒にいてもおかしくないな、というとこから出来たネタ。
そのうちちゃんと仕上げたい。というかネタはいくつも浮かんでるけど書くのが追いついてない……。
俺たちに少年がぶつかった直後、キースがサイコキネシスを使って、走り去ろうとした少年を瞬時に抑え込んだ。
「なっ、離せっ!」
「……お前、ここら辺根城にしてるなら、警察とヒーローには手ぇ出すなって誰かに言われなかったか? それともこっちがルーキーだからと侮ったか。残念だったな」
「キース! 貴様、一般人相手に……っ」
「これ。お前のだろ?」
「っ!?」
キースが能力で俺のところに寄越した財布は見覚えがある、なんてものではなかった。
とっさに財布を入れていたはずのポケットを探ったが、あるべきものはそこにない。
「俺の、財布……?」
「一応、中確認してみろ。すぐ捕まえたから大丈夫だと思うけど」
「盗られた、のか」
全く気付かなかった。
「中は無事だ。だが――」
窃盗の現行犯だ。このまま見過ごすわけにはいかない。
キースと少年に近寄ろうとしたが、キースがこっちに来るなと手で指し示す。
「いいか。十番街のはずれにCieloって赤い看板出してるバーがある。夕方、店が開いたらそこのマスターにキース・マックスに聞いてきたって言えば、今晩の飯と寝床くらいはどうにかしてくれるはずだ。――行け。もうヒーローに手ぇ出すのはやめとくんだな」
「なっ、おい!」
キースが少年から手を離すと、少年が俺たちをちらっと見た後、直ぐに走り出した。
慌てて、後を追おうとしたが、そこでキースに腕を掴まれる。
「見逃してやれ、ブラッド」
「そうもいかん。俺の財布が無事でも、他の者に対して同じことをしないとは限らない」
「だろうな。手慣れてる様子だったから、まぁさっきのが初めてじゃねぇだろうさ」
「ならば、なおのこと――」
「けど、アイツらはそうしなきゃ生きていけねぇんだよ」
「っ……」
キースが俺の腕を掴んでいる手に力を籠めた。
俺の方を見ない目が宿している暗さに二の句が告げられない。
「ここにいるガキはみんな家がないか、あってもまともに帰れねぇヤツばかりだ。親の庇護なんてもんはねぇ。自分で生きていくための金をどうにかしねぇ限り、野垂れ死ぬしかねぇんだよ」
「…………キース」
「警察が保護して、収容施設にいれられたところで、結局一時的なもんだ。ま、ある程度金稼いで、喧嘩も強いってなりゃ、ヒーローを目指して、環境を変えるってことは出来るけどな。そうするまでに生き延びてなけりゃどうにもなんねぇ」
「…………それはお前の体験談か」
キースの育ってきた環境が、俺とは全く違うことは知っていた。
アカデミーに入る前は、人には堂々と言えないようなこともしたというのも聞いた。
詳細まではしらないが、恐らく今の少年のように窃盗などの経験があったということだろう。
キースが自嘲するような笑みを浮かべた。
「お前みたいな坊ちゃん育ちにゃ想像しにくいだろうけどさ」
その言葉に微かに胸の奥が痛んだ。
物心ついた頃から両親は忙しく、ゆっくり話も出来ず、一抹の寂しさこそあったが、与えられた生活そのものは恵まれた方だっただろうという自覚はある。
少なくとも衣食住の面において、不安を抱いたことは一度もない。
――走り去った少年の腕の細さと傷みが酷かった服を思い出す。
かつてのキースもそうだったのだろうか。
頼れるもののない中で、必死に生き延びてヒーローを目指し、今を手に入れて――。
「……先程の少年一人なら、家に事情を話せば、面倒をみてくれると思う」
「おい、ブラッド?」
俺の言った意味を理解し切れていないのか、キースが首を傾げる。
「ヒーローを目指せるだけの素質もありそうだしな。……お前があの少年に能力を使ったのは、そうでなければ逃げられると判断したからだろう?」
「ブラッド」
「――俺だって、誰も彼もを助けられるなどとは思っていない。だが、助けた一人がヒーローとなることで、いずれ他の誰かを助け、守っていくことなら出来るはずだ。先程の少年と似たような環境で過ごしただろうお前が、今はヒーローとしてそうであるように」
キースはアカデミーの頃から体術に長けている。生半可な相手なら抑えるのに能力を使うことなどしなかったはずだ。
そのキースに能力を使わせたという点で、素質は十分にあると判断出来る。
「……さっきのガキがヒーローを目指すとは限んねぇぞ。そもそも、オレが教えたバーに行くかどうかもわからねぇ」
「そうだな。だが、目指さないとも限らないだろう。今日の仕事が終わったら、Cieloとやらに行ってみる」
「――好きにしろよ。オレはもう知らねぇぞ」
「ああ」
「あー……お前も妙なとこで頑固だよな……。マスターが警戒しそうなら、オレの名前出しとけ。一応、伝えておいてはやる」
「感謝する」
Close
#キスブラ #書きかけ
ビームス家に奉公人として約8年ってことは、出会いはルーキー時代→その場にキースも一緒にいてもおかしくないな、というとこから出来たネタ。
そのうちちゃんと仕上げたい。というかネタはいくつも浮かんでるけど書くのが追いついてない……。
俺たちに少年がぶつかった直後、キースがサイコキネシスを使って、走り去ろうとした少年を瞬時に抑え込んだ。
「なっ、離せっ!」
「……お前、ここら辺根城にしてるなら、警察とヒーローには手ぇ出すなって誰かに言われなかったか? それともこっちがルーキーだからと侮ったか。残念だったな」
「キース! 貴様、一般人相手に……っ」
「これ。お前のだろ?」
「っ!?」
キースが能力で俺のところに寄越した財布は見覚えがある、なんてものではなかった。
とっさに財布を入れていたはずのポケットを探ったが、あるべきものはそこにない。
「俺の、財布……?」
「一応、中確認してみろ。すぐ捕まえたから大丈夫だと思うけど」
「盗られた、のか」
全く気付かなかった。
「中は無事だ。だが――」
窃盗の現行犯だ。このまま見過ごすわけにはいかない。
キースと少年に近寄ろうとしたが、キースがこっちに来るなと手で指し示す。
「いいか。十番街のはずれにCieloって赤い看板出してるバーがある。夕方、店が開いたらそこのマスターにキース・マックスに聞いてきたって言えば、今晩の飯と寝床くらいはどうにかしてくれるはずだ。――行け。もうヒーローに手ぇ出すのはやめとくんだな」
「なっ、おい!」
キースが少年から手を離すと、少年が俺たちをちらっと見た後、直ぐに走り出した。
慌てて、後を追おうとしたが、そこでキースに腕を掴まれる。
「見逃してやれ、ブラッド」
「そうもいかん。俺の財布が無事でも、他の者に対して同じことをしないとは限らない」
「だろうな。手慣れてる様子だったから、まぁさっきのが初めてじゃねぇだろうさ」
「ならば、なおのこと――」
「けど、アイツらはそうしなきゃ生きていけねぇんだよ」
「っ……」
キースが俺の腕を掴んでいる手に力を籠めた。
俺の方を見ない目が宿している暗さに二の句が告げられない。
「ここにいるガキはみんな家がないか、あってもまともに帰れねぇヤツばかりだ。親の庇護なんてもんはねぇ。自分で生きていくための金をどうにかしねぇ限り、野垂れ死ぬしかねぇんだよ」
「…………キース」
「警察が保護して、収容施設にいれられたところで、結局一時的なもんだ。ま、ある程度金稼いで、喧嘩も強いってなりゃ、ヒーローを目指して、環境を変えるってことは出来るけどな。そうするまでに生き延びてなけりゃどうにもなんねぇ」
「…………それはお前の体験談か」
キースの育ってきた環境が、俺とは全く違うことは知っていた。
アカデミーに入る前は、人には堂々と言えないようなこともしたというのも聞いた。
詳細まではしらないが、恐らく今の少年のように窃盗などの経験があったということだろう。
キースが自嘲するような笑みを浮かべた。
「お前みたいな坊ちゃん育ちにゃ想像しにくいだろうけどさ」
その言葉に微かに胸の奥が痛んだ。
物心ついた頃から両親は忙しく、ゆっくり話も出来ず、一抹の寂しさこそあったが、与えられた生活そのものは恵まれた方だっただろうという自覚はある。
少なくとも衣食住の面において、不安を抱いたことは一度もない。
――走り去った少年の腕の細さと傷みが酷かった服を思い出す。
かつてのキースもそうだったのだろうか。
頼れるもののない中で、必死に生き延びてヒーローを目指し、今を手に入れて――。
「……先程の少年一人なら、家に事情を話せば、面倒をみてくれると思う」
「おい、ブラッド?」
俺の言った意味を理解し切れていないのか、キースが首を傾げる。
「ヒーローを目指せるだけの素質もありそうだしな。……お前があの少年に能力を使ったのは、そうでなければ逃げられると判断したからだろう?」
「ブラッド」
「――俺だって、誰も彼もを助けられるなどとは思っていない。だが、助けた一人がヒーローとなることで、いずれ他の誰かを助け、守っていくことなら出来るはずだ。先程の少年と似たような環境で過ごしただろうお前が、今はヒーローとしてそうであるように」
キースはアカデミーの頃から体術に長けている。生半可な相手なら抑えるのに能力を使うことなどしなかったはずだ。
そのキースに能力を使わせたという点で、素質は十分にあると判断出来る。
「……さっきのガキがヒーローを目指すとは限んねぇぞ。そもそも、オレが教えたバーに行くかどうかもわからねぇ」
「そうだな。だが、目指さないとも限らないだろう。今日の仕事が終わったら、Cieloとやらに行ってみる」
「――好きにしろよ。オレはもう知らねぇぞ」
「ああ」
「あー……お前も妙なとこで頑固だよな……。マスターが警戒しそうなら、オレの名前出しとけ。一応、伝えておいてはやる」
「感謝する」
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#キスブラ #書きかけ
キスブラで誕生日話を書こうとして没にしたもの。
来年、まともに書く。(覚えてたら)
誕生日ボイス元ネタだけど、何か謎時空になった。
廊下の先にキースの姿を見つけたが、俺と目が合った瞬間、キースがマズいと言いたげな表情を浮かべたのを見逃さなかった。手だけひらひらと振って立ち去ろうとしたところをすかさず近付いていく。
残念ながら予想した通り、キースからは微かに酒の匂いが漂った。
一体、何度言えばコイツは二日酔いの状態で出勤することをやめるのか。
「あー……おはよ、ブラッド」
「おはよう。……俺はあれを贈った時、任務に支障の無い程度で飲めと言ったはずだが」
数日前のキースの誕生日、常日頃からキースの飲酒について思うところはあるものの、結局はキースが喜ぶからと酒を贈った。
が、皆考えることは似たり寄ったりで、ジェイやリリーもキースを飲みに誘ったり、酒を贈ったりしていたらしく、数日は色んな酒が楽しめると嬉しそうにしていた。
そこまではいい。
問題はこうして翌日に残るような飲み方をするところにある。
休暇ならばともかく、仕事があるのにこれでは、他のヒーローたちに対して示しがつかない。
「お前から貰ったやつはまだ手ぇつけてねぇよ。昨日飲んだのはジェイから貰った分だ」
「誰から貰った酒だろうと同じことだ。翌朝に残るような飲み方をするなという話をしている。貴様、仕事を何だと――」
「ああ……悪ぃ、ちょっと声抑えてくれ……頭に響く」
「………………」
黙ったのは気遣いからではなく、呆れたのが半分七割、もう三割は――後ろめたさだ。
キースがここ数年で、酒に溺れるようになった理由の一端に心当たりはあるが、それを幾ばくかでも解消してやれそうなことを言ってやることが出来ない。
言えない代わりに、持っていた書類を軽く丸めてキースの肩をポンと叩く。
「……酒はすぐに傷むものでもないんだし、貰ったからと急いで飲む必要はないだろう。少しは自分の体への影響も考えろ」
サブスタンスの投与によって、ヒーローの回復力は一般の人々と比べて早くなっているが、かといって影響がないわけではない。
(中略)
「じゃあ、お前がくれた酒は来年のお前の誕生日まで取っておく。で、その時一緒に飲もうぜ」
「どうしてそうなる」
「だって、お前のこの前の誕生日だって一緒に飲みに行きたかったのに、結局仕事入っちまってダメになったじゃねぇか。来年の約束しとくくらいいいだろ」
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#キスブラ #書きかけ
来年、まともに書く。(覚えてたら)
誕生日ボイス元ネタだけど、何か謎時空になった。
廊下の先にキースの姿を見つけたが、俺と目が合った瞬間、キースがマズいと言いたげな表情を浮かべたのを見逃さなかった。手だけひらひらと振って立ち去ろうとしたところをすかさず近付いていく。
残念ながら予想した通り、キースからは微かに酒の匂いが漂った。
一体、何度言えばコイツは二日酔いの状態で出勤することをやめるのか。
「あー……おはよ、ブラッド」
「おはよう。……俺はあれを贈った時、任務に支障の無い程度で飲めと言ったはずだが」
数日前のキースの誕生日、常日頃からキースの飲酒について思うところはあるものの、結局はキースが喜ぶからと酒を贈った。
が、皆考えることは似たり寄ったりで、ジェイやリリーもキースを飲みに誘ったり、酒を贈ったりしていたらしく、数日は色んな酒が楽しめると嬉しそうにしていた。
そこまではいい。
問題はこうして翌日に残るような飲み方をするところにある。
休暇ならばともかく、仕事があるのにこれでは、他のヒーローたちに対して示しがつかない。
「お前から貰ったやつはまだ手ぇつけてねぇよ。昨日飲んだのはジェイから貰った分だ」
「誰から貰った酒だろうと同じことだ。翌朝に残るような飲み方をするなという話をしている。貴様、仕事を何だと――」
「ああ……悪ぃ、ちょっと声抑えてくれ……頭に響く」
「………………」
黙ったのは気遣いからではなく、呆れたのが半分七割、もう三割は――後ろめたさだ。
キースがここ数年で、酒に溺れるようになった理由の一端に心当たりはあるが、それを幾ばくかでも解消してやれそうなことを言ってやることが出来ない。
言えない代わりに、持っていた書類を軽く丸めてキースの肩をポンと叩く。
「……酒はすぐに傷むものでもないんだし、貰ったからと急いで飲む必要はないだろう。少しは自分の体への影響も考えろ」
サブスタンスの投与によって、ヒーローの回復力は一般の人々と比べて早くなっているが、かといって影響がないわけではない。
(中略)
「じゃあ、お前がくれた酒は来年のお前の誕生日まで取っておく。で、その時一緒に飲もうぜ」
「どうしてそうなる」
「だって、お前のこの前の誕生日だって一緒に飲みに行きたかったのに、結局仕事入っちまってダメになったじゃねぇか。来年の約束しとくくらいいいだろ」
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#キスブラ #書きかけ
5章のネタバレを含むキスブラ。
キスブラ+ディノでディノ視点。
※これをキース&ブラッド視点にしたのが『不器用で、だけど。』 になります。(リンク先は自サイト)
いや、マジで5章のキスブラ凄かった。
推しカプが強い。最高でした、ありがとうございます。
そのうち、もうちょっとちゃんと形にしたい。
※5章ED後、ディノの復帰が認められて、以降ウエストセクターにメンターとして所属する形になり、ウエストセクターのメンター部屋の空きに引っ越してきた、という想定で書いてます。
キスブラがアカデミー時代から体の関係持ってて、二人とも『付き合ってはいない』という認識なんだけど、ディノから見たら付き合っている以外の何でもないんだよなぁという。
***
「おーい、ディノ。このウェイトレスの衣装どうする?」
「あ、こっちの引き出しにしまっとくよ」
「しまうって……処分しねぇのかよ。いや、好きにすりゃいいけどさ。お前のもんなんだし」
キースから受け取った衣装を引き出しにおさめたところで、ブラッドが話し掛けてくる。
「ディノ。この置物はどうする。……昔、フューチャーランドに行った時に土産として買ったものだったか」
「そうそう。そこの棚に並べるよ。覚えてたんだね、ブラッド。懐かしいだろ?」
「そうだな。……俺は友人と泊まりがけで遠出したというのは、あの時が初めてだったからな。忘れようがない」
当時を思い出したのか、ブラッドの目が優しいものになった。
おじいちゃん――正確には【HELIOS】の方で俺の保護者兼監視者としてつけられた人だけど――ブラッドとキースを連れて行ったときに心なしか嬉しそうにしていたことを思い出す。
「あー、それってそん時のだっけ。妙に見覚えはあるけどなんだっけってずっと思ってた」
「ええ、キースは覚えてないのかよ。お前そういうとこあるよな」
対するキースは細かいことはあんまり覚えていない性質だ。
その時には凄く楽しんでいたのは間違いないから、あまり気にしないけど。
「ロストガーデンに忍び込んだ辺りはまぁ覚えてるけど、フューチャーランド自体の記憶はどうも曖昧なんだよなぁ」
「ディノ、コイツの記憶力に期待するだけ無駄だ」
「なんだよ。そういうお前はいらねぇことまで覚えすぎなんだよ。ああ、フューチャーランドのことがいらねぇことって言ってるわけじゃねぇけどさ」
「わかってる。ブラッドもキースも相変わらずだなぁ。あ、そうだ。二人ともする時は言ってね。席外すよ。ジェイのとことか、外に行くとかするから」
漂う二人の間の空気感は四年前から変わっていないし、多分、今も二人は関係があるんだろうと踏んで、そう言ってみる。
「あ? するって……いやいや、待て待て。タワーじゃしねぇからな!?」
「――おい、キース」
「なるほど、タワー『じゃ』しない、ね。ま、ここじゃ隣にルーキーたちもいるから難しいか。しかも、片方はブラッドの弟だもんね。今、ブラッドはメンターリーダーもやってるし、バレたら気まずいどころじゃないか」
「…………キース」
「何だよ……ちょっと口滑らしただけじゃねぇか。ディノは元々知ってるんだし、小言なら勘弁してくれって」
「普段からの心がけの問題だ。大体、お前というやつは――」
「ホント相変わらずだなぁ」
ああ、昔からこの二人はそうだった。
全然タイプが違うから、しょっちゅう揉めているように見えるし、実際揉めてもいるんだけど、根っこの深いところでは何か似てるんだよなぁ。
今だって、ブラッドは咎めたけど俺の言葉については否定しなかった。
俺の問いかけについて、暗に示した状態になっているのはブラッドの方もだ。
これでこそ帰ってきたって実感がする。
片付けの手が止まって言い争っている二人の声をBGMにしながら、残りの荷物を片付けていった。
Close
#キスブラ #書きかけ
キスブラ+ディノでディノ視点。
※これをキース&ブラッド視点にしたのが『不器用で、だけど。』 になります。(リンク先は自サイト)
いや、マジで5章のキスブラ凄かった。
推しカプが強い。最高でした、ありがとうございます。
そのうち、もうちょっとちゃんと形にしたい。
※5章ED後、ディノの復帰が認められて、以降ウエストセクターにメンターとして所属する形になり、ウエストセクターのメンター部屋の空きに引っ越してきた、という想定で書いてます。
キスブラがアカデミー時代から体の関係持ってて、二人とも『付き合ってはいない』という認識なんだけど、ディノから見たら付き合っている以外の何でもないんだよなぁという。
***
「おーい、ディノ。このウェイトレスの衣装どうする?」
「あ、こっちの引き出しにしまっとくよ」
「しまうって……処分しねぇのかよ。いや、好きにすりゃいいけどさ。お前のもんなんだし」
キースから受け取った衣装を引き出しにおさめたところで、ブラッドが話し掛けてくる。
「ディノ。この置物はどうする。……昔、フューチャーランドに行った時に土産として買ったものだったか」
「そうそう。そこの棚に並べるよ。覚えてたんだね、ブラッド。懐かしいだろ?」
「そうだな。……俺は友人と泊まりがけで遠出したというのは、あの時が初めてだったからな。忘れようがない」
当時を思い出したのか、ブラッドの目が優しいものになった。
おじいちゃん――正確には【HELIOS】の方で俺の保護者兼監視者としてつけられた人だけど――ブラッドとキースを連れて行ったときに心なしか嬉しそうにしていたことを思い出す。
「あー、それってそん時のだっけ。妙に見覚えはあるけどなんだっけってずっと思ってた」
「ええ、キースは覚えてないのかよ。お前そういうとこあるよな」
対するキースは細かいことはあんまり覚えていない性質だ。
その時には凄く楽しんでいたのは間違いないから、あまり気にしないけど。
「ロストガーデンに忍び込んだ辺りはまぁ覚えてるけど、フューチャーランド自体の記憶はどうも曖昧なんだよなぁ」
「ディノ、コイツの記憶力に期待するだけ無駄だ」
「なんだよ。そういうお前はいらねぇことまで覚えすぎなんだよ。ああ、フューチャーランドのことがいらねぇことって言ってるわけじゃねぇけどさ」
「わかってる。ブラッドもキースも相変わらずだなぁ。あ、そうだ。二人ともする時は言ってね。席外すよ。ジェイのとことか、外に行くとかするから」
漂う二人の間の空気感は四年前から変わっていないし、多分、今も二人は関係があるんだろうと踏んで、そう言ってみる。
「あ? するって……いやいや、待て待て。タワーじゃしねぇからな!?」
「――おい、キース」
「なるほど、タワー『じゃ』しない、ね。ま、ここじゃ隣にルーキーたちもいるから難しいか。しかも、片方はブラッドの弟だもんね。今、ブラッドはメンターリーダーもやってるし、バレたら気まずいどころじゃないか」
「…………キース」
「何だよ……ちょっと口滑らしただけじゃねぇか。ディノは元々知ってるんだし、小言なら勘弁してくれって」
「普段からの心がけの問題だ。大体、お前というやつは――」
「ホント相変わらずだなぁ」
ああ、昔からこの二人はそうだった。
全然タイプが違うから、しょっちゅう揉めているように見えるし、実際揉めてもいるんだけど、根っこの深いところでは何か似てるんだよなぁ。
今だって、ブラッドは咎めたけど俺の言葉については否定しなかった。
俺の問いかけについて、暗に示した状態になっているのはブラッドの方もだ。
これでこそ帰ってきたって実感がする。
片付けの手が止まって言い争っている二人の声をBGMにしながら、残りの荷物を片付けていった。
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