2021年1月10日の投稿[1件]
キスブラ版ワンドロライ第10回でのお題から『似顔絵』を使って書いた話です。
『断捨離』も混ぜようとしたけど、そこまででもなくなったw(ので似顔絵だけ)
ED3CDのネタバレ含みます。
修正版はこちら。
期限を過ぎているのに未提出の報告書があるから出せと、ウエストセクターの研修チーム部屋まで訪れたブラッドに言われて、その提出していない報告書を共有スペースで探していたが、何でか見当たらない。
ディノが戻ってきてからはヤツに手伝って貰うこともあるから、共有スペースの方に置くようにしてんだけどな。
でも、ディノが勝手に報告書の場所を移すってことはしねぇから、ここにねぇなら自室に置きっぱなしにしてる可能性が高い。
というか、自宅に報告書を持って帰ることはしねぇし、ほぼ間違いなくそのパターンだ。
「こっちにねぇってことは自室の方か?」
独り言のつもりだったが、ブラッドにもしっかり聞こえていて、呆れたように溜め息を吐かれた。
「貴様……いい加減、書類の管理くらいまともに出来んのか。自室だな。探すぞ」
「はいよ、悪ぃな」
「本気で悪いと思っているなら、何故期限内に提出しない」
「………………すんません」
ブラッドの仕事を余計に増やした自覚はあるから、小言が続く前に大人しく引き下がる。
二人でメンター部屋に入り、机の上に重なっている紙の束をブラッドと一緒にチェックしていった。
どうせ、ブラッドに見られて困る書類はねぇし、基本、報告書の類は九割方ブラッドに提出するやつだ。
ついでにブラッドの方が書類の内容をチェックしながら、用途別に分けておいてくれるだろうって期待もある。
目的の書類を探していると、ふとブラッドが動きを止めた。
「…………何だ、これは」
ブラッドが困惑した様子で数枚捲って首を傾げてたから、何の書類かと覗き込んだら、ブラッドが持っていたのは仕事の書類じゃなかった。
「ん? あー、こりゃこの前ノヴァ博士作の似顔絵製造マシーンってヤツで、オレが寝てる間に描かれた似顔絵の数々だ。あ、この一枚だけフェイスを描いたやつな」
ディノの快気祝いって名目のパーティーで、ディノがノヴァ博士が入院中の退屈しのぎに持ってきてくれたやつだと、場を盛り上げる為に出したやつだ。
「なぜ、それが仕事の書類に交じっている。……まぁ、いい。これは別に避けておくぞ。…………? 何だ?」
あの時、フェイスを見て描かれた似顔絵と、目の前のブラッドの顔を改めて見比べてみる。
…………アイツら、この絵を見てフェイスよりブラッドと似てるなんて言ってたけど、やっぱりブラッドとは違うよなぁ。
ブラッドも顔は整ってるし、フェイスと似てねぇってこともねぇんだが、細面ってわけじゃねぇし、何より纏う空気というか、雰囲気が全く違う。
あえて言うなら、ブラッドが市民に営業スマイルで対応してる時はちょっとこれに近くなるかもしれねぇけど、あの表情は未だに違和感しかねぇんだよな。笑ってるんだけど、笑ってねぇっていうか。
顰め面してる方が余程ブラッドらしい。
「いや、やっぱり違うなって思ってさ」
「何のことだ。――ああ、これだな。記入もろくにしていない。今すぐこの場で書け」
「へいへい」
ブラッドが持っていた紙の束の方に目的の書類があったらしく、机の上に転がっていたペンと一緒に書類を渡されたから、自分が持っていた紙の束を代わりにブラッドに渡す。
一瞬だけ眉を顰められたが、直ぐにオレがこれを書いているのを待つ間に、自分が書類を整頓した方が効率がいいと思ったんだろう。
文句は言わずに紙の束を分類し始めた。
ブラッドが書類を片付ける物音をBGMに書いていたら、ふとその音がやんだ。
ヤベぇ、ブラッドが整頓する方が早かったかと様子を窺うと、ブラッドは先程別に避けておいた似顔絵を見ているようだった。
オレは自分の似顔絵をじっくり見る趣味もねぇから、ざっくりとしか見てねぇけど、結構な枚数あったんだよな、アレ。
何となく気恥ずかしく、さっさと書類を書き上げてブラッドに渡そうと、心持ち早く進めて、最後の署名をしていたら、ブラッドが笑った気配がして思わず顔を上げた。
作り上げた営業スマイルとは全く違う、ふわ、と周りの空気まで緩むような柔らかな笑みに、ついかける言葉を失う。
「…………意外に良く描けているな。これなんかは、お前が寝てるときの様子そのものだ」
「ええ……何か、それ実際の年齢よりガキっぽくみえねぇ?」
ブラッドが取りだした似顔絵の一枚は、中途半端にデフォルメされた絵柄のものだった。
「いや、お前が寝てるときの表情はこんな感じだぞ。この一枚、貰っていってもいいか?」
「え、いるのかよ! いや、別にいいけどさ。ほい、報告書も出来たぜ」
「確認する。――――ふむ。少し記載に甘い点があるが、まぁいい。確かに受け取った。今度からは提出日時をまず一番に確認しろ。とりあえず、ここの書類は提出日が近い順に並べておいたから、後で確認して、出来れば早い内に出せるものは出せ」
「あいよ。片付けサンキュ」
書類の確認であっという間に引っ込んでしまった笑みが惜しい。
オレの似顔絵で浮かべていたはずの笑みが、オレで引っ込むってのもどうなんだ。
今してる表情の方がブラッドらしいといえばらしいけど、何となく悪戯心が湧いた。
隙をついて、部屋を出ようとしたブラッドの頬にキスすると、ブラッドが目を丸くする。
「……何だ」
「いや、似顔絵のオレじゃ、お前にキスは出来ねぇよなって思っただけ」
「…………自分の似顔絵に妬くとか、それこそ子どもでもしないが」
「妬いてるわけじゃねぇよ」
「…………そういうことにしておいてやろう」
再び、浮かんだ柔らかい笑みが近付いて来て、オレの頬に軽く口付けて離れていく。部屋を出ようとした背中に慌てて声を掛けた。
「ブラッド、次のオフ――」
「三日後だ。お前の家に行く。それでいいな?」
「了解」
ブラッドは返事だけしてこっちを振り返らなかったが、耳が微かに赤くなったのは確認出来た。
これ以上のお楽しみは三日後にとっておくとするか。
Close
#キスブラ #ワンライ
『断捨離』も混ぜようとしたけど、そこまででもなくなったw(ので似顔絵だけ)
ED3CDのネタバレ含みます。
修正版はこちら。
期限を過ぎているのに未提出の報告書があるから出せと、ウエストセクターの研修チーム部屋まで訪れたブラッドに言われて、その提出していない報告書を共有スペースで探していたが、何でか見当たらない。
ディノが戻ってきてからはヤツに手伝って貰うこともあるから、共有スペースの方に置くようにしてんだけどな。
でも、ディノが勝手に報告書の場所を移すってことはしねぇから、ここにねぇなら自室に置きっぱなしにしてる可能性が高い。
というか、自宅に報告書を持って帰ることはしねぇし、ほぼ間違いなくそのパターンだ。
「こっちにねぇってことは自室の方か?」
独り言のつもりだったが、ブラッドにもしっかり聞こえていて、呆れたように溜め息を吐かれた。
「貴様……いい加減、書類の管理くらいまともに出来んのか。自室だな。探すぞ」
「はいよ、悪ぃな」
「本気で悪いと思っているなら、何故期限内に提出しない」
「………………すんません」
ブラッドの仕事を余計に増やした自覚はあるから、小言が続く前に大人しく引き下がる。
二人でメンター部屋に入り、机の上に重なっている紙の束をブラッドと一緒にチェックしていった。
どうせ、ブラッドに見られて困る書類はねぇし、基本、報告書の類は九割方ブラッドに提出するやつだ。
ついでにブラッドの方が書類の内容をチェックしながら、用途別に分けておいてくれるだろうって期待もある。
目的の書類を探していると、ふとブラッドが動きを止めた。
「…………何だ、これは」
ブラッドが困惑した様子で数枚捲って首を傾げてたから、何の書類かと覗き込んだら、ブラッドが持っていたのは仕事の書類じゃなかった。
「ん? あー、こりゃこの前ノヴァ博士作の似顔絵製造マシーンってヤツで、オレが寝てる間に描かれた似顔絵の数々だ。あ、この一枚だけフェイスを描いたやつな」
ディノの快気祝いって名目のパーティーで、ディノがノヴァ博士が入院中の退屈しのぎに持ってきてくれたやつだと、場を盛り上げる為に出したやつだ。
「なぜ、それが仕事の書類に交じっている。……まぁ、いい。これは別に避けておくぞ。…………? 何だ?」
あの時、フェイスを見て描かれた似顔絵と、目の前のブラッドの顔を改めて見比べてみる。
…………アイツら、この絵を見てフェイスよりブラッドと似てるなんて言ってたけど、やっぱりブラッドとは違うよなぁ。
ブラッドも顔は整ってるし、フェイスと似てねぇってこともねぇんだが、細面ってわけじゃねぇし、何より纏う空気というか、雰囲気が全く違う。
あえて言うなら、ブラッドが市民に営業スマイルで対応してる時はちょっとこれに近くなるかもしれねぇけど、あの表情は未だに違和感しかねぇんだよな。笑ってるんだけど、笑ってねぇっていうか。
顰め面してる方が余程ブラッドらしい。
「いや、やっぱり違うなって思ってさ」
「何のことだ。――ああ、これだな。記入もろくにしていない。今すぐこの場で書け」
「へいへい」
ブラッドが持っていた紙の束の方に目的の書類があったらしく、机の上に転がっていたペンと一緒に書類を渡されたから、自分が持っていた紙の束を代わりにブラッドに渡す。
一瞬だけ眉を顰められたが、直ぐにオレがこれを書いているのを待つ間に、自分が書類を整頓した方が効率がいいと思ったんだろう。
文句は言わずに紙の束を分類し始めた。
ブラッドが書類を片付ける物音をBGMに書いていたら、ふとその音がやんだ。
ヤベぇ、ブラッドが整頓する方が早かったかと様子を窺うと、ブラッドは先程別に避けておいた似顔絵を見ているようだった。
オレは自分の似顔絵をじっくり見る趣味もねぇから、ざっくりとしか見てねぇけど、結構な枚数あったんだよな、アレ。
何となく気恥ずかしく、さっさと書類を書き上げてブラッドに渡そうと、心持ち早く進めて、最後の署名をしていたら、ブラッドが笑った気配がして思わず顔を上げた。
作り上げた営業スマイルとは全く違う、ふわ、と周りの空気まで緩むような柔らかな笑みに、ついかける言葉を失う。
「…………意外に良く描けているな。これなんかは、お前が寝てるときの様子そのものだ」
「ええ……何か、それ実際の年齢よりガキっぽくみえねぇ?」
ブラッドが取りだした似顔絵の一枚は、中途半端にデフォルメされた絵柄のものだった。
「いや、お前が寝てるときの表情はこんな感じだぞ。この一枚、貰っていってもいいか?」
「え、いるのかよ! いや、別にいいけどさ。ほい、報告書も出来たぜ」
「確認する。――――ふむ。少し記載に甘い点があるが、まぁいい。確かに受け取った。今度からは提出日時をまず一番に確認しろ。とりあえず、ここの書類は提出日が近い順に並べておいたから、後で確認して、出来れば早い内に出せるものは出せ」
「あいよ。片付けサンキュ」
書類の確認であっという間に引っ込んでしまった笑みが惜しい。
オレの似顔絵で浮かべていたはずの笑みが、オレで引っ込むってのもどうなんだ。
今してる表情の方がブラッドらしいといえばらしいけど、何となく悪戯心が湧いた。
隙をついて、部屋を出ようとしたブラッドの頬にキスすると、ブラッドが目を丸くする。
「……何だ」
「いや、似顔絵のオレじゃ、お前にキスは出来ねぇよなって思っただけ」
「…………自分の似顔絵に妬くとか、それこそ子どもでもしないが」
「妬いてるわけじゃねぇよ」
「…………そういうことにしておいてやろう」
再び、浮かんだ柔らかい笑みが近付いて来て、オレの頬に軽く口付けて離れていく。部屋を出ようとした背中に慌てて声を掛けた。
「ブラッド、次のオフ――」
「三日後だ。お前の家に行く。それでいいな?」
「了解」
ブラッドは返事だけしてこっちを振り返らなかったが、耳が微かに赤くなったのは確認出来た。
これ以上のお楽しみは三日後にとっておくとするか。
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#キスブラ #ワンライ