No.50, No.49, No.48, No.47, No.46, No.45, No.44[7件]
キスブラ版ワンドロライ第19回でのお題から『花見酒』『温泉』を使って書いた話です。
※数年後の時間軸で、既に二人とも研修チームのメンターではない&キスブラが一緒に住んでるというのを想定の下に書いてます。
オレとブラッド、二人が同時に取れた長期休暇は少し桜の時期には早く、花見酒を楽しむのはちょっとばかり難しいと予想していたが、ここ数日で急に暖かくなったとかで、いざ目的地に訪れてみれば、ちょうど満開のタイミングだったのは運が良かった。
今回泊まる宿は客室に温泉を引いた露天風呂がついていて、しかも一杯だけなら風呂で酒を飲んでもいいとくれば、飲まない手はねぇ。
まだ外は明るいが、日が沈んじまう前にまず一回風呂に入って飲もうって提案はブラッドも断らなかったから、宿に着いて早々に二人で風呂に浸かっている。
露天風呂からは大きめの桜の木が見えて、単純にその桜を眺めるのもいいが、風向きのせいで時折桜の花片がこっちまで飛んできて、湯船に浮かぶのもいい。
こういうのを『風流』とか言うんだっけか?
ブラッドも景色をちゃんと見たいのか、コンタクトは外してるが風呂用の眼鏡を持ち込んで来ている。
「あー……酒は美味いし、風呂からの眺めもいいし最高だなぁ。これで酒がもう一杯飲めりゃ言うことねぇんだけど」
「温泉に浸かりながら飲むのは一度に一杯まで、がこの旅館のルールだ」
「わあってるって。一杯だけだから、こうしてちびちび飲んでんじゃねぇか」
そうは言っても個室だから、こっそり飲めばわかんねぇだろうけど、まぁそういうのをブラッドが許すはずねぇんだよな。
せっかくの旅行でお小言を聞きたくはねぇし、ここは大人しくしとくに限る。
今回みたいに二人揃っての長期休暇なんて、今度いつ取れるかわかんねぇし、ブラッドにしてみりゃ念願の日本旅行だ。
空港降りた時から、どことなく楽しげにしているブラッドの機嫌を損ねるようなことをするのも気が咎める。
「…………ただ、一度に一杯ということは、夜にまた温泉に浸かるのであれば、その時にもう一杯飲む分には構わないということだろう。お前が夕食後にやたらに飲み過ぎなければの話だが」
「お、いいねぇ。夜桜を肴に一杯! せっかくだし、次は何か違う銘柄の酒持ってきて貰って、温泉に入った後は部屋でそのまま飲み明か……」
そこまで言って、ふと気付いた。
日本を旅行するなら、訪れる場所はブラッドの好きにしていいが、美味い日本酒を楽しみたいと言ったのはオレだ。
結果、訪れる場所や宿を決めたのはほぼブラッドだが――。
「……もしかして、お前さ。温泉に入りながら飲める宿、わざわざ探してくれたの?」
普段は家で風呂に入りながら酒を飲むのは極力やめておけとブラッドに言われている。
ブラッドと一緒に住むようになったとき、ブラッドの希望で浴室は日本風のものにしたが、入浴しながらの飲酒はどうしても体への負担もかかるから、せめて自分がいるときに少し飲むだけにしろと。
実際、下手に風呂場で酔っ払って寝たとしたら世話になる相手は間違いなくブラッドだし、そうなったらブラッド側としちゃ面倒だよなと、あんまり家で風呂に入りながら飲むことはしてこなかったんだけど。
「美味い日本酒を楽しみたいと言ったのはお前だろう。今回の旅行は場所にしろ、食事にしろ、ほとんど俺の希望を通したのだし、そのくらいはと思ってな」
「おお……マジか。嬉しいことしてくれるねぇ」
ブラッドの頬が紅く染まってるのは風呂で上気してるだけとも取れるが、微かにオレから視線を逸らしたあたり、多分照れてる。
オレが飲んでいる一方、ブラッドがほとんど酒に手をつけてないのも、恐らくオレの様子を気にしてのことだ。
ホントは旅行先で酔い潰れられるのなんざごめんだろうに。
「サンキュ、ブラッド」
「……そう思うのなら、酒は適度にしておけ。夜は長い」
「へいへい」
その長い夜は夜桜だけを楽しむなってことだろう。適度、ってのはその後に動ける余力を残せって意味だ。
ブラッドは表情がわかりにくいことも多いが、いい加減長い付き合いだ。そんくらいは察する。
わかってると言う代わりに、酒を一度盆の上に置き、ブラッドの眼鏡を外してキスを交わした。
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#キスブラ #ワンライ
※数年後の時間軸で、既に二人とも研修チームのメンターではない&キスブラが一緒に住んでるというのを想定の下に書いてます。
オレとブラッド、二人が同時に取れた長期休暇は少し桜の時期には早く、花見酒を楽しむのはちょっとばかり難しいと予想していたが、ここ数日で急に暖かくなったとかで、いざ目的地に訪れてみれば、ちょうど満開のタイミングだったのは運が良かった。
今回泊まる宿は客室に温泉を引いた露天風呂がついていて、しかも一杯だけなら風呂で酒を飲んでもいいとくれば、飲まない手はねぇ。
まだ外は明るいが、日が沈んじまう前にまず一回風呂に入って飲もうって提案はブラッドも断らなかったから、宿に着いて早々に二人で風呂に浸かっている。
露天風呂からは大きめの桜の木が見えて、単純にその桜を眺めるのもいいが、風向きのせいで時折桜の花片がこっちまで飛んできて、湯船に浮かぶのもいい。
こういうのを『風流』とか言うんだっけか?
ブラッドも景色をちゃんと見たいのか、コンタクトは外してるが風呂用の眼鏡を持ち込んで来ている。
「あー……酒は美味いし、風呂からの眺めもいいし最高だなぁ。これで酒がもう一杯飲めりゃ言うことねぇんだけど」
「温泉に浸かりながら飲むのは一度に一杯まで、がこの旅館のルールだ」
「わあってるって。一杯だけだから、こうしてちびちび飲んでんじゃねぇか」
そうは言っても個室だから、こっそり飲めばわかんねぇだろうけど、まぁそういうのをブラッドが許すはずねぇんだよな。
せっかくの旅行でお小言を聞きたくはねぇし、ここは大人しくしとくに限る。
今回みたいに二人揃っての長期休暇なんて、今度いつ取れるかわかんねぇし、ブラッドにしてみりゃ念願の日本旅行だ。
空港降りた時から、どことなく楽しげにしているブラッドの機嫌を損ねるようなことをするのも気が咎める。
「…………ただ、一度に一杯ということは、夜にまた温泉に浸かるのであれば、その時にもう一杯飲む分には構わないということだろう。お前が夕食後にやたらに飲み過ぎなければの話だが」
「お、いいねぇ。夜桜を肴に一杯! せっかくだし、次は何か違う銘柄の酒持ってきて貰って、温泉に入った後は部屋でそのまま飲み明か……」
そこまで言って、ふと気付いた。
日本を旅行するなら、訪れる場所はブラッドの好きにしていいが、美味い日本酒を楽しみたいと言ったのはオレだ。
結果、訪れる場所や宿を決めたのはほぼブラッドだが――。
「……もしかして、お前さ。温泉に入りながら飲める宿、わざわざ探してくれたの?」
普段は家で風呂に入りながら酒を飲むのは極力やめておけとブラッドに言われている。
ブラッドと一緒に住むようになったとき、ブラッドの希望で浴室は日本風のものにしたが、入浴しながらの飲酒はどうしても体への負担もかかるから、せめて自分がいるときに少し飲むだけにしろと。
実際、下手に風呂場で酔っ払って寝たとしたら世話になる相手は間違いなくブラッドだし、そうなったらブラッド側としちゃ面倒だよなと、あんまり家で風呂に入りながら飲むことはしてこなかったんだけど。
「美味い日本酒を楽しみたいと言ったのはお前だろう。今回の旅行は場所にしろ、食事にしろ、ほとんど俺の希望を通したのだし、そのくらいはと思ってな」
「おお……マジか。嬉しいことしてくれるねぇ」
ブラッドの頬が紅く染まってるのは風呂で上気してるだけとも取れるが、微かにオレから視線を逸らしたあたり、多分照れてる。
オレが飲んでいる一方、ブラッドがほとんど酒に手をつけてないのも、恐らくオレの様子を気にしてのことだ。
ホントは旅行先で酔い潰れられるのなんざごめんだろうに。
「サンキュ、ブラッド」
「……そう思うのなら、酒は適度にしておけ。夜は長い」
「へいへい」
その長い夜は夜桜だけを楽しむなってことだろう。適度、ってのはその後に動ける余力を残せって意味だ。
ブラッドは表情がわかりにくいことも多いが、いい加減長い付き合いだ。そんくらいは察する。
わかってると言う代わりに、酒を一度盆の上に置き、ブラッドの眼鏡を外してキスを交わした。
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#キスブラ #ワンライ
忙しくて数日ほど趣味の文章を全然書けてなかったので、ただ推しのエロが書きたかった。
書きたいとこだけ書いたキスブラで69。
時間出来たらまともに仕上げる。多分。
普段の姿からは中々想像出来ないだろう、快感に溺れて乱れてるブラッドのツラを見るのが一番興奮するのは確かだが、こうしてシックスナインしてる状態で相手の顔が見えねぇままにジワジワ責めてやるのも中々にくるもんがある。
一方的にフェラされるとなると、ブラッドは結構上手いからあっさりこっちがイカされる、なんてパターンもあったりするが、シックスナインだと自分も一緒に口でされることで余裕がなくなるらしく、かなりの確率で途中で音を上げる。
今日もじきにそうなりそうだ。
さっきからブラッドの舌の動きがたどたどしいものになってる。
このタイミングのブラッドの顔見られねぇのがつくづく惜しい。
「キー、ス」
「ん? どうした? そろそろギブアップか?」
わざと煽るような言い方をしながらそう返すと、ブラッドが一瞬息を飲んだのが聞こえたが、オレが一旦ヤツのペニスから口を離したことでちょっと余裕を取り戻したのか、舌が再び動き出す。
「…………まだ、だ……っ」
「あっそ」
「っ……!」
やや深めにブラッドのモノを咥え込んで、カリの辺りを舌先でくすぐるように動かすと、またブラッドの舌が動きを止める。
わざと唾液を多めに絡ませて吸い込むと同時に、ひくついてる孔を指先で軽く叩いてやった。
「キースっ、そっちは、触ら……」
「ねぇ、なんて約束はしてねぇし、今一緒に触っといた方が時間の短縮にもなるだろ? お前の好きな『効率的』ってヤツでさ」
「あ、うあ!」
ブラッドのペニスを緩く咥えたまま、ローションのボトルをサイコキネシスを使って手元に引き寄せ、指先に少し垂らしてから孔の周囲を撫でる。
「ふ……うっ…………んんっ」
ブラッドの口が完全にオレのモノから離れて、顔が太股に押し当てられてるのが伝わった。
内股の肌を吸っているのは、なけなしの意地なのか、少しでもオレに快感を与えようとしてるのか、まぁ多分両方か。
鈴口を舌先で突きながら、指も一本だけ挿れて浅いところで動かすと、ブラッドが小さい悲鳴を上げた。
こりゃ、そろそろだな。
「やめ、ろ。……もう、十分、だ」
「何が? 十分?」
「……口も、指も、だ」
「そうか? もうちょっと慣らした方がいいんじゃねぇの? こっちはさ」
「んうっ!」
口はペニスから離して、浅いところだけで動かしていた指を付け根までつっこんで、奥を軽くノックする。
「や、めっ、キース、それ以上されたら、出て、しま、う……っ」
「別に出してもい……うおっ!?」
抗議のつもりか、ブラッドの手がオレのペニスの根元を強めに掴む。
さすがに加減はされてるが、ちょっと痛いくらいの刺激に一瞬身が竦んだ。
「お前、それ潰す気かよ!?」
「潰されたくなければ、さっさと挿れろ。ローションを多めにつければもう挿入る」
「へぇへぇ……っとに、この暴君が」
今ので萎えなかったのを幸いに思えよ、コイツと思いはしたが、口には出さない。
体勢を変える寸前、先っぽにキスされたので固さを増した自覚があったからだ。
オレも大概だよなと思いながら、ゴムを着けて、ローションをまぶす。
足を開いたブラッドの中心に目をやると、白い肌がほんのりピンクに染まっている中で唯一と言っていい微かに黒ずんだ孔がひくひくと誘うように動いている。
先っぽをくっつけてやれば、期待を秘めた吐息が零れた。
「やらし……」
「ん……んんっ!」
そうしたのはオレなんだよな、と思いながら熱いブラッドの中に体を沈めていった。
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#キスブラ #R18
書きたいとこだけ書いたキスブラで69。
時間出来たらまともに仕上げる。多分。
普段の姿からは中々想像出来ないだろう、快感に溺れて乱れてるブラッドのツラを見るのが一番興奮するのは確かだが、こうしてシックスナインしてる状態で相手の顔が見えねぇままにジワジワ責めてやるのも中々にくるもんがある。
一方的にフェラされるとなると、ブラッドは結構上手いからあっさりこっちがイカされる、なんてパターンもあったりするが、シックスナインだと自分も一緒に口でされることで余裕がなくなるらしく、かなりの確率で途中で音を上げる。
今日もじきにそうなりそうだ。
さっきからブラッドの舌の動きがたどたどしいものになってる。
このタイミングのブラッドの顔見られねぇのがつくづく惜しい。
「キー、ス」
「ん? どうした? そろそろギブアップか?」
わざと煽るような言い方をしながらそう返すと、ブラッドが一瞬息を飲んだのが聞こえたが、オレが一旦ヤツのペニスから口を離したことでちょっと余裕を取り戻したのか、舌が再び動き出す。
「…………まだ、だ……っ」
「あっそ」
「っ……!」
やや深めにブラッドのモノを咥え込んで、カリの辺りを舌先でくすぐるように動かすと、またブラッドの舌が動きを止める。
わざと唾液を多めに絡ませて吸い込むと同時に、ひくついてる孔を指先で軽く叩いてやった。
「キースっ、そっちは、触ら……」
「ねぇ、なんて約束はしてねぇし、今一緒に触っといた方が時間の短縮にもなるだろ? お前の好きな『効率的』ってヤツでさ」
「あ、うあ!」
ブラッドのペニスを緩く咥えたまま、ローションのボトルをサイコキネシスを使って手元に引き寄せ、指先に少し垂らしてから孔の周囲を撫でる。
「ふ……うっ…………んんっ」
ブラッドの口が完全にオレのモノから離れて、顔が太股に押し当てられてるのが伝わった。
内股の肌を吸っているのは、なけなしの意地なのか、少しでもオレに快感を与えようとしてるのか、まぁ多分両方か。
鈴口を舌先で突きながら、指も一本だけ挿れて浅いところで動かすと、ブラッドが小さい悲鳴を上げた。
こりゃ、そろそろだな。
「やめ、ろ。……もう、十分、だ」
「何が? 十分?」
「……口も、指も、だ」
「そうか? もうちょっと慣らした方がいいんじゃねぇの? こっちはさ」
「んうっ!」
口はペニスから離して、浅いところだけで動かしていた指を付け根までつっこんで、奥を軽くノックする。
「や、めっ、キース、それ以上されたら、出て、しま、う……っ」
「別に出してもい……うおっ!?」
抗議のつもりか、ブラッドの手がオレのペニスの根元を強めに掴む。
さすがに加減はされてるが、ちょっと痛いくらいの刺激に一瞬身が竦んだ。
「お前、それ潰す気かよ!?」
「潰されたくなければ、さっさと挿れろ。ローションを多めにつければもう挿入る」
「へぇへぇ……っとに、この暴君が」
今ので萎えなかったのを幸いに思えよ、コイツと思いはしたが、口には出さない。
体勢を変える寸前、先っぽにキスされたので固さを増した自覚があったからだ。
オレも大概だよなと思いながら、ゴムを着けて、ローションをまぶす。
足を開いたブラッドの中心に目をやると、白い肌がほんのりピンクに染まっている中で唯一と言っていい微かに黒ずんだ孔がひくひくと誘うように動いている。
先っぽをくっつけてやれば、期待を秘めた吐息が零れた。
「やらし……」
「ん……んんっ!」
そうしたのはオレなんだよな、と思いながら熱いブラッドの中に体を沈めていった。
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#キスブラ #R18
キスブラ版ワンドロライ第15回でのお題から『本音』『バレンタインデー』を使って書いた話です。
バレンタインデー限定のホームボイスネタが含まれます。
「…………何だ、この有様は」
バレンタインデーから数日後。
お互いのオフに合わせる形でキースの家を訪れたら、そこには解かれた包装と酒瓶で山が出来上がっていた。
元々、整理整頓の得意ではないキースの家やタワーの研修チーム部屋が散らかっているのは日常茶飯事だが、今日は特に酷い状態だ。
足の踏み場もないとはこのことだろう。
雑多に散らばっている包装に使われていた箱や包み紙を軽く纏め、どうにか道を作ってキースの元まで行くと、俺が来るのを待っている間に少し飲んでいたらしいキースが、少し赤みがかった顔でニヤリと笑った。
「バレンタインデーに市民から貰ったヤツだよ。オレなんかに贈って寄越すような市民はちゃんと好み覚えててくれてんだよなー。大体が酒かウイスキーボンボンをくれたんだよ。これでしばらくは飲むのに困らねぇ」
「……そういうことか」
キースは積極的にファンサービスを行うタイプではないが、曲がりなりにもメジャーヒーローだ。
特にルーキー研修終了後からはずっとウエストセクターに所属し、ここ数年はウエストセクターのバーを中心に日々飲み歩いていることもあって、他地域はともかくウエストではそれなりに知名度が高い。
キースが甘い物を好まず、酒を好むことは、特にバーでキースを見かけることがある者なら容易にわかるだろう。
よくよく見れば、確認出来る範疇の酒は大体が良いものだとラベルからわかるし、別途分けて置かれていたメッセージカードも結構な量になっている。
どれもキースのことを考えた上で贈られているのが伝わって来た。
ウエストのセクターランキングが順調なのもあってか、例年よりも多いような気がする。
恐らく、タワーの部屋にもまだプレゼントはあるはずだ。
「今年は随分貰ったようだな」
「はぁ? お前がそれ言うのかよ? アカデミー時代から抱えきれない量のプレゼント貰ってたお前が。今回だってどうせ沢山貰ってるんだろうが」
「否定はしない。少なくはないだろうな」
「だよなー。知ってた。ま、それはそれとしてお前もくれるんだろ?」
当たり前のように手を差し出して来た相手に、つい溜め息を吐きながら、持参していた紙袋ごと渡す。
受け取ったキースが直ぐさま袋から中身を取りだし、包装を取り除く。
箱を開けた途端にキースの目の色が変わった。
「おお、日本酒とチョコの組み合わせか」
「ああ。そのチョコは同梱されている日本酒を使って作られたものだそうだ」
日本酒であれば、他の者からのプレゼントとは恐らく被らないだろうと選んだ一品だ。
「いいねぇ。サンキュ。じゃ、早速……っと。お、チョコの方も甘さ控えめでいいな。こりゃ、日本酒の方も期待出来そうだ。なぁブラッド」
「? 何…………っ!」
手招きされて、キースにもう少し近寄ると頭をおさえられ、唇を重ねられる。
酒とチョコの混じった香りを纏った舌が唇をこじ開け、俺の口の中に溶けかけたチョコを押し込んできた。
ふわ、と甘い香りが一際強くなる。
口の中のチョコを転がすのと同時に、舌で歯茎や上顎も擦られて、チョコが溶けきった頃にはすっかり息が上がってしまい、気付いた時にはいつの間にかベッドの上だった。
どうやら、口付けを交わしている間にサイコキネシスで移動させられていたらしい。
油断のならない男だ。
「……酔っ払いとはしたくないが」
「大して酔ってねぇのくらいわかってんだろ。記憶飛ぶほど飲んじゃいねぇし、勿論、勃たなくなるような状態でもねぇ」
「んっ」
俺に覆い被さったキースが腰を押し付けてくる。
布地越しでも既に固さも熱も持っていると伝わるそれに、こっちもつられて反応してしまう。
「キー、ス」
「プレゼントは有り難いけど、どうしてもこの時期はカロリーオーバーが気になるよなー。ってことで、早速運動して消費するとしようぜ。俺からお前にやる分のチョコはもうちょっと冷蔵庫で冷やしときたいしさ」
「……何か作ってくれたの、か」
早くも体を這い始めた指に翻弄される前に確認したくて問いかけたら、キースが目を細めた。
バレンタインデーに何かを贈りあうことはしても、それが手作りだったことはまだない。
イベントごとは面倒がる傾向もあるし、何かをくれるだけでも十分だと思っていたのだが、どうやら今年は少し勝手が違うようだ。
「まぁな。何かは後のお楽しみってやつだけど。――楽しみだろ?」
「ああ。楽しみ、だ」
キースの作るものに外れはない。
冷蔵庫にあるというチョコが楽しみというのは紛う方ない本音だ。
だが、それ以上にわざわざ手をかけて作ってくれたことが嬉しい。
きっと、俺が他の者とのプレゼントとは被らないようにと選んだのと同じように、キースも他者とは被らないようにとそれを作ってくれたのだろうから。
癖のあるアッシュブロンドを撫でながら、俺からもキスを仕掛け、部屋の惨状には一先ず目を瞑り、束の間の行為に没頭しようと決めた。
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#キスブラ #ワンライ
バレンタインデー限定のホームボイスネタが含まれます。
「…………何だ、この有様は」
バレンタインデーから数日後。
お互いのオフに合わせる形でキースの家を訪れたら、そこには解かれた包装と酒瓶で山が出来上がっていた。
元々、整理整頓の得意ではないキースの家やタワーの研修チーム部屋が散らかっているのは日常茶飯事だが、今日は特に酷い状態だ。
足の踏み場もないとはこのことだろう。
雑多に散らばっている包装に使われていた箱や包み紙を軽く纏め、どうにか道を作ってキースの元まで行くと、俺が来るのを待っている間に少し飲んでいたらしいキースが、少し赤みがかった顔でニヤリと笑った。
「バレンタインデーに市民から貰ったヤツだよ。オレなんかに贈って寄越すような市民はちゃんと好み覚えててくれてんだよなー。大体が酒かウイスキーボンボンをくれたんだよ。これでしばらくは飲むのに困らねぇ」
「……そういうことか」
キースは積極的にファンサービスを行うタイプではないが、曲がりなりにもメジャーヒーローだ。
特にルーキー研修終了後からはずっとウエストセクターに所属し、ここ数年はウエストセクターのバーを中心に日々飲み歩いていることもあって、他地域はともかくウエストではそれなりに知名度が高い。
キースが甘い物を好まず、酒を好むことは、特にバーでキースを見かけることがある者なら容易にわかるだろう。
よくよく見れば、確認出来る範疇の酒は大体が良いものだとラベルからわかるし、別途分けて置かれていたメッセージカードも結構な量になっている。
どれもキースのことを考えた上で贈られているのが伝わって来た。
ウエストのセクターランキングが順調なのもあってか、例年よりも多いような気がする。
恐らく、タワーの部屋にもまだプレゼントはあるはずだ。
「今年は随分貰ったようだな」
「はぁ? お前がそれ言うのかよ? アカデミー時代から抱えきれない量のプレゼント貰ってたお前が。今回だってどうせ沢山貰ってるんだろうが」
「否定はしない。少なくはないだろうな」
「だよなー。知ってた。ま、それはそれとしてお前もくれるんだろ?」
当たり前のように手を差し出して来た相手に、つい溜め息を吐きながら、持参していた紙袋ごと渡す。
受け取ったキースが直ぐさま袋から中身を取りだし、包装を取り除く。
箱を開けた途端にキースの目の色が変わった。
「おお、日本酒とチョコの組み合わせか」
「ああ。そのチョコは同梱されている日本酒を使って作られたものだそうだ」
日本酒であれば、他の者からのプレゼントとは恐らく被らないだろうと選んだ一品だ。
「いいねぇ。サンキュ。じゃ、早速……っと。お、チョコの方も甘さ控えめでいいな。こりゃ、日本酒の方も期待出来そうだ。なぁブラッド」
「? 何…………っ!」
手招きされて、キースにもう少し近寄ると頭をおさえられ、唇を重ねられる。
酒とチョコの混じった香りを纏った舌が唇をこじ開け、俺の口の中に溶けかけたチョコを押し込んできた。
ふわ、と甘い香りが一際強くなる。
口の中のチョコを転がすのと同時に、舌で歯茎や上顎も擦られて、チョコが溶けきった頃にはすっかり息が上がってしまい、気付いた時にはいつの間にかベッドの上だった。
どうやら、口付けを交わしている間にサイコキネシスで移動させられていたらしい。
油断のならない男だ。
「……酔っ払いとはしたくないが」
「大して酔ってねぇのくらいわかってんだろ。記憶飛ぶほど飲んじゃいねぇし、勿論、勃たなくなるような状態でもねぇ」
「んっ」
俺に覆い被さったキースが腰を押し付けてくる。
布地越しでも既に固さも熱も持っていると伝わるそれに、こっちもつられて反応してしまう。
「キー、ス」
「プレゼントは有り難いけど、どうしてもこの時期はカロリーオーバーが気になるよなー。ってことで、早速運動して消費するとしようぜ。俺からお前にやる分のチョコはもうちょっと冷蔵庫で冷やしときたいしさ」
「……何か作ってくれたの、か」
早くも体を這い始めた指に翻弄される前に確認したくて問いかけたら、キースが目を細めた。
バレンタインデーに何かを贈りあうことはしても、それが手作りだったことはまだない。
イベントごとは面倒がる傾向もあるし、何かをくれるだけでも十分だと思っていたのだが、どうやら今年は少し勝手が違うようだ。
「まぁな。何かは後のお楽しみってやつだけど。――楽しみだろ?」
「ああ。楽しみ、だ」
キースの作るものに外れはない。
冷蔵庫にあるというチョコが楽しみというのは紛う方ない本音だ。
だが、それ以上にわざわざ手をかけて作ってくれたことが嬉しい。
きっと、俺が他の者とのプレゼントとは被らないようにと選んだのと同じように、キースも他者とは被らないようにとそれを作ってくれたのだろうから。
癖のあるアッシュブロンドを撫でながら、俺からもキスを仕掛け、部屋の惨状には一先ず目を瞑り、束の間の行為に没頭しようと決めた。
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#キスブラ #ワンライ
キスブラ版ワンドロライ第13回でのお題から『共有』を使って書いた話です。
ヤッてはいないけど、性描写がちょっと含まれるのでR-15くらいで。
数年後、キスブラが同棲し始めたという前提の元に書いてます。
「キース、準備はいいか」
「おう。いつでも行けるぜ。つうか、借りといてなんだけど、やっぱりこういう服どうも落ち着かねぇな」
「仕方あるまい。明後日には荷物も届くようだし、一、二日くらいは我慢しろ」
「へいへい、わかってるって」
キースが今着ているのは、下着を除く全てが俺の服だ。
キースと俺は服の趣味が全く異なるのもあって、本人は落ち着かないと言うが、良く似合っているし、時々はこうして俺の服を着るキースを見たいくらいだが、それを口にすると反発されるのは目に見えているのでやめておいた。
二人で一緒に住むことを決め、セントラルに新たにマンションを借り、引っ越して来たのが昨日のことだ。
が、キースが引っ越しに利用した業者の方でトラブルが発生し、他の客との荷物が混じってしまい、分別に時間が掛かっているとのことで、本来は今日のうちに届くはずだったキースの荷物は、明後日に届くという連絡が入った。
さすがに下着については、荷物遅延の連絡が入った時点で身近な店から数枚購入したが、他の衣類まではその店だとほとんど置いていなかったこともあって貸した。
俺たちの体格は近く、サイズの問題は全くないのだし、これから買い物に行くことを除けば、明後日までは仕事以外の外出予定もない。
家を出て、地下の駐車場に向かい、車に乗り込んで、ナビにショッピングセンターの情報を入れる。
道の混雑状況から最適なルートを導き出したナビが所要時間を告げ、車を走らせると、助手席に座っていたキースがそういえば、と口を開いた。
「日用品だけどさ。オレたちがそれぞれで使ってたヤツ、使い切った後どうする? 同じヤツ使うようにして纏めちまうか? シャンプーとかはこだわりがあれば分けるとしても、食器用の洗剤なんかは分けるの逆に面倒だろ?」
「そうだな。俺はお前が使っていたボディソープを継続して使うのであれば、他はどちらのものに変えても構わない。統一出来る物はしてしまった方が今後買い物する際にも都合がいいだろう」
「……ん? ボディソープってオレの? お前の、じゃなくて?」
「ああ。……香りが気に入っているからな」
キースの家に泊まった際にずっと使っていたのもあって、俺としても馴染みがある。
キースは喫煙者だから、一緒にいるとどうしても煙草の匂いの方が強く出るが、それでもふとした拍子にボディソープの方の香りを感じることもあったし、何より――セックスの際はシャワーを浴びてすぐ、というのが大半だから、触れ合った際には煙草よりもボディソープの香りの方が強く出る。
別々に住んでいた時はわざわざ同じ物で揃えるのは躊躇われたが、住まいが一緒であれば、同じ物で揃える理由としては十分だろう。
「…………うわ、エロ」
「……何故、そうなる」
キースの使っているボディソープを選んだ理由に下心がなかったわけではないから、微かに動揺はしたが、表情には出さなかったはずだ。
「ええ……考えてなかった、なんて言わせねぇぞ。オレ、普段は酒と煙草の匂いしかしねぇだろ。ボディソープの香りがわかるタイミングなんて限られてるじゃねぇか。それこそ、セックスの前後とか――ああ、あとフェラの時なんか特に分かりやすいよな。毛に匂い絡みつくから」
「…………キース」
車の中とはいえ、外でするような話ではない。
信号で止まった際に睨み付けたが、キースは涼しげな顔だ。
「なんだよ、お前が最初に言ったんじゃねぇか」
「俺はボディソープの話をしただけだが」
「そうだなー。香りが気に入っているって言った割には、自分で買わずに別のを使っていたってボディソープの話な。こっちはずっと同じ物を何年も使っているってのに、お前が買わないまんまで、あえて別のを使っていたって理由をちゃんと教えてくれるなら、ここで話切り上げてやってもいいぜ」
「…………そこまで言うのであれば、理由など察しているんだろう」
「どうだろうなぁ。案外間違ってるかもしれねぇし、お前の口から説明して欲しいとこだな、オレとしちゃ」
俺の耳に触れてきたキースの手を撥ね除けてしまいたいが、そんなタイミングで信号が変わる。
こちらが手が出せないのをいいことに、キースの指は離れていかない。
さすがに運転中だから、本当に危なくなるような動き方はしないが、話していた内容が内容なだけに、ただ触れられているだけでも妙な意識をしてしまう。
諦めて白旗を挙げたのは俺の方だった。
「…………買い物が終わって家に戻ったら説明する。だから、一旦その指を離せ」
「よし、言質は取ったからな。ちゃんと説明しろよ。ああ、買い物するならボディソープも買っていこうな。オレが使っていたヤツ、まだ届いてねぇし」
俺が使っていたボディソープならまだある、と喉元まで出かけたが、結局は口を閉ざす。
こうなると、今、キースが着ているのが俺の服だというのもまずかった。
それこそ脱ぐ前から柔軟剤による同じ香りで、必要以上に意識してしまいそうだ。
せめて、買い物を終わらせる前に何か反撃の糸口を見つけようと考えながら、ショッピングセンターへと向かった。
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#キスブラ #ワンライ
ヤッてはいないけど、性描写がちょっと含まれるのでR-15くらいで。
数年後、キスブラが同棲し始めたという前提の元に書いてます。
「キース、準備はいいか」
「おう。いつでも行けるぜ。つうか、借りといてなんだけど、やっぱりこういう服どうも落ち着かねぇな」
「仕方あるまい。明後日には荷物も届くようだし、一、二日くらいは我慢しろ」
「へいへい、わかってるって」
キースが今着ているのは、下着を除く全てが俺の服だ。
キースと俺は服の趣味が全く異なるのもあって、本人は落ち着かないと言うが、良く似合っているし、時々はこうして俺の服を着るキースを見たいくらいだが、それを口にすると反発されるのは目に見えているのでやめておいた。
二人で一緒に住むことを決め、セントラルに新たにマンションを借り、引っ越して来たのが昨日のことだ。
が、キースが引っ越しに利用した業者の方でトラブルが発生し、他の客との荷物が混じってしまい、分別に時間が掛かっているとのことで、本来は今日のうちに届くはずだったキースの荷物は、明後日に届くという連絡が入った。
さすがに下着については、荷物遅延の連絡が入った時点で身近な店から数枚購入したが、他の衣類まではその店だとほとんど置いていなかったこともあって貸した。
俺たちの体格は近く、サイズの問題は全くないのだし、これから買い物に行くことを除けば、明後日までは仕事以外の外出予定もない。
家を出て、地下の駐車場に向かい、車に乗り込んで、ナビにショッピングセンターの情報を入れる。
道の混雑状況から最適なルートを導き出したナビが所要時間を告げ、車を走らせると、助手席に座っていたキースがそういえば、と口を開いた。
「日用品だけどさ。オレたちがそれぞれで使ってたヤツ、使い切った後どうする? 同じヤツ使うようにして纏めちまうか? シャンプーとかはこだわりがあれば分けるとしても、食器用の洗剤なんかは分けるの逆に面倒だろ?」
「そうだな。俺はお前が使っていたボディソープを継続して使うのであれば、他はどちらのものに変えても構わない。統一出来る物はしてしまった方が今後買い物する際にも都合がいいだろう」
「……ん? ボディソープってオレの? お前の、じゃなくて?」
「ああ。……香りが気に入っているからな」
キースの家に泊まった際にずっと使っていたのもあって、俺としても馴染みがある。
キースは喫煙者だから、一緒にいるとどうしても煙草の匂いの方が強く出るが、それでもふとした拍子にボディソープの方の香りを感じることもあったし、何より――セックスの際はシャワーを浴びてすぐ、というのが大半だから、触れ合った際には煙草よりもボディソープの香りの方が強く出る。
別々に住んでいた時はわざわざ同じ物で揃えるのは躊躇われたが、住まいが一緒であれば、同じ物で揃える理由としては十分だろう。
「…………うわ、エロ」
「……何故、そうなる」
キースの使っているボディソープを選んだ理由に下心がなかったわけではないから、微かに動揺はしたが、表情には出さなかったはずだ。
「ええ……考えてなかった、なんて言わせねぇぞ。オレ、普段は酒と煙草の匂いしかしねぇだろ。ボディソープの香りがわかるタイミングなんて限られてるじゃねぇか。それこそ、セックスの前後とか――ああ、あとフェラの時なんか特に分かりやすいよな。毛に匂い絡みつくから」
「…………キース」
車の中とはいえ、外でするような話ではない。
信号で止まった際に睨み付けたが、キースは涼しげな顔だ。
「なんだよ、お前が最初に言ったんじゃねぇか」
「俺はボディソープの話をしただけだが」
「そうだなー。香りが気に入っているって言った割には、自分で買わずに別のを使っていたってボディソープの話な。こっちはずっと同じ物を何年も使っているってのに、お前が買わないまんまで、あえて別のを使っていたって理由をちゃんと教えてくれるなら、ここで話切り上げてやってもいいぜ」
「…………そこまで言うのであれば、理由など察しているんだろう」
「どうだろうなぁ。案外間違ってるかもしれねぇし、お前の口から説明して欲しいとこだな、オレとしちゃ」
俺の耳に触れてきたキースの手を撥ね除けてしまいたいが、そんなタイミングで信号が変わる。
こちらが手が出せないのをいいことに、キースの指は離れていかない。
さすがに運転中だから、本当に危なくなるような動き方はしないが、話していた内容が内容なだけに、ただ触れられているだけでも妙な意識をしてしまう。
諦めて白旗を挙げたのは俺の方だった。
「…………買い物が終わって家に戻ったら説明する。だから、一旦その指を離せ」
「よし、言質は取ったからな。ちゃんと説明しろよ。ああ、買い物するならボディソープも買っていこうな。オレが使っていたヤツ、まだ届いてねぇし」
俺が使っていたボディソープならまだある、と喉元まで出かけたが、結局は口を閉ざす。
こうなると、今、キースが着ているのが俺の服だというのもまずかった。
それこそ脱ぐ前から柔軟剤による同じ香りで、必要以上に意識してしまいそうだ。
せめて、買い物を終わらせる前に何か反撃の糸口を見つけようと考えながら、ショッピングセンターへと向かった。
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#キスブラ #ワンライ
キスブラ版ワンドロライ第12回でのお題から『手料理』『頼み事』『ワイン』を使って書いた話です。
+15分。
頂き物だっていうワインに合う和風のつまみを作って欲しい――とブラッドに言われたのは先週のことだ。
「父が付き合いのある他国の外交官から贈って貰ったワインだそうだが、二本貰ったから一本は俺に譲ると貰い受けてきた」
「贈って貰った……って、これ凄ぇ高いヤツじゃねぇかよ……」
オレが飲むのはビールが多いとはいえ、ワインや日本酒なんかも飲むことがある。
リカーショップに行きゃ、買わない酒も目に入るし、それが飛び抜けた値段だったりなんかしたら、嫌でも記憶に残る。
ブラッドの親父さんが贈って貰ったってワインは、オレの月収半月分は軽く飛ぶような代物だ。
ヒーロー、特にメジャーヒーローともなれば、それなりの金額を貰っているのに。
それを二本も贈って寄越す相手ってどんなんだよ。
「ああ。お前は知っていたか」
「そりゃ、店で目にすることくらいはあるからなー。買おうと思ったことはさすがにねぇけど」
「そうか。俺も金額を聞いて一度は断ったが、酒が好きな者が飲んだ方がワインも本望だろうと言われれば、それも一理あるなと受け取ってきた。両親も酒は嗜むが、特別好むというわけでもないからな」
一瞬、ブラッドの言葉を聞き流しそうになったが、酒が好きな者が飲んだ方が、って内容に引っかかった。
「……待て。酒が好きなヤツってそれ……」
「お前を想定してのことだろうな。両親の中ではお前は酒好き、ディノはピザ好きで覚えられている」
「そうかよ」
まぁ、アカデミーの頃からの付き合いだし、ルーキー時代に呼ばれた何かのパーティーでブラッドの父親に直接会ったこともあるから、知っててもおかしくはねぇんだけど。
「そして、どうせ良いワインを飲むのであれば、美味く飲みたい。お前がワインに合うつまみを作ってくれるなら、ちょうどいいだろう」
「あー、マリアージュってヤツか」
ワインと料理の相性を結婚に例えて、そう呼ばれるって教えてくれたのはジェイだ。
ルーキー時代、オレたち三人が酒が飲めるようになった時に、ヒーローだと今後何かとパーティー等に呼ばれる機会も多くなるからと、酒の楽しみ方を最初に色々と教えてくれた。
マリアージュの話もその時に聞いたし、研修チーム部屋で共同生活をおくっていた当時、部屋でワインを開けて、飲みながらつまみを作ったりしたこともある。
あの時のワインは安物だったが、それでも料理との相性次第で変わるっていうのは実感した。
「美味く飲みたいってのはわかったけど、つまみは和風がいいってのは完全にお前の趣味だよな?」
「…………ダメか?」
「いや、ダメってこたねぇけど……ワインに和風のつまみって合うのか?」
日本酒ならルーツ的にわからなくもねぇけど、ワインと和食という組み合わせは経験がねぇからか、どうもピンと来ない。
「合うものもあるようだ。例えば、こういうのなんかはどうだろう」
ブラッドが手にしていたタブレットを操作し、何かのサイトを表示してからオレに寄越した。
元は日本語で書かれていただろうサイトは翻訳されていて、オレにも内容がわかるようになっていた。
レシピなんかもいくつか掲載されている。
こりゃ、オレに話持ってくる前にガッツリチェックしてたな、ブラッドのヤツ。
ま、ブラッドと飲める機会もそんな多くねぇし、この先飲む機会があるかどうかもわかんねぇような高い酒飲ませて貰うなら、多少面倒なもんでも作ってやるとするか。
「で、お前が食いたいのってどれだよ?」
「……いいのか?」
「どうせ、目星つけてあんだろ。来週のオフでいいよな? 材料なんかも揃えられるか確認しねぇとなんねぇし」
グリーンイーストのリトルトーキョーなら、調味料なんかは結構揃うが、食材によっては季節に左右されるもんも少なからずある。
「ああ。感謝する」
表情こそ大した差はねぇが、ブラッドの声が弾んでるのが伝わってきた。
***
「うわ……美味……。いや、美味いのは想像してたけど、マジで料理と合うな」
ブラッドの頼み事からほぼ一週間後。
事前にチェックしていた食材を昼のうちにブラッドと一緒にグリーンイーストまで買いに行って、オレの家で一緒に作り、夕食として作ったつまみとワインを楽しんでいるが、想像以上のモンだった。
最初、ワインだけ口にしたときは、美味いのは美味いけど、これまでにもパーティーで口にしてきたヤツとそう大差ねぇかも?なんて思ってたぐらいだったが、料理と合わせた瞬間驚いた。
味の世界の広がり方が、これまで経験してきたのとは比較になんねぇレベルだ。
作ったつまみも味見しながらだったから、味はわかっていたつもりだが、こっちもこっちでワインと合わせることによって美味さがより引き立つ。
こりゃ、酒もつまみも進む一方だなと思っていたら、ブラッドも普段よりも酒の進みが早い。
ソファに隣り合って座ってるから、飲み食いするスピードが分かりやすい。
「ああ。最高だな。お前の料理が美味いのは今に始まったことではないが、今まで食ってきた中でも一際美味い」
「酒がめちゃくちゃ良いからなー。……これ、今日で全部空けちまってもいいのか?」
「構わん。料理の方が足りなくなりそうだがな」
「和風じゃなくてもいいなら、あり合わせので何か作ってやるよ」
「それは楽しみだ」
ブラッドの空になったワイングラスにワインを注ぎながら、残ってる食材でこのワインに合いそうなメニューを考えていたら、不意にブラッドが体を寄せて、オレの肩にことんと頭を乗せてくる。
酔ってるせいなのか、食事中にこんな風に甘えてくるのは珍しい。
ワインを注ぎ終わってから、乗っかった頭を撫でてやると微かに笑い声がした。
午後から買い物とつまみ作りにかかりきりだったけど、たまにはこんなオフも悪くないと思いながら、ブラッドの髪にそっとキスをした。
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#キスブラ #ワンライ
+15分。
頂き物だっていうワインに合う和風のつまみを作って欲しい――とブラッドに言われたのは先週のことだ。
「父が付き合いのある他国の外交官から贈って貰ったワインだそうだが、二本貰ったから一本は俺に譲ると貰い受けてきた」
「贈って貰った……って、これ凄ぇ高いヤツじゃねぇかよ……」
オレが飲むのはビールが多いとはいえ、ワインや日本酒なんかも飲むことがある。
リカーショップに行きゃ、買わない酒も目に入るし、それが飛び抜けた値段だったりなんかしたら、嫌でも記憶に残る。
ブラッドの親父さんが贈って貰ったってワインは、オレの月収半月分は軽く飛ぶような代物だ。
ヒーロー、特にメジャーヒーローともなれば、それなりの金額を貰っているのに。
それを二本も贈って寄越す相手ってどんなんだよ。
「ああ。お前は知っていたか」
「そりゃ、店で目にすることくらいはあるからなー。買おうと思ったことはさすがにねぇけど」
「そうか。俺も金額を聞いて一度は断ったが、酒が好きな者が飲んだ方がワインも本望だろうと言われれば、それも一理あるなと受け取ってきた。両親も酒は嗜むが、特別好むというわけでもないからな」
一瞬、ブラッドの言葉を聞き流しそうになったが、酒が好きな者が飲んだ方が、って内容に引っかかった。
「……待て。酒が好きなヤツってそれ……」
「お前を想定してのことだろうな。両親の中ではお前は酒好き、ディノはピザ好きで覚えられている」
「そうかよ」
まぁ、アカデミーの頃からの付き合いだし、ルーキー時代に呼ばれた何かのパーティーでブラッドの父親に直接会ったこともあるから、知っててもおかしくはねぇんだけど。
「そして、どうせ良いワインを飲むのであれば、美味く飲みたい。お前がワインに合うつまみを作ってくれるなら、ちょうどいいだろう」
「あー、マリアージュってヤツか」
ワインと料理の相性を結婚に例えて、そう呼ばれるって教えてくれたのはジェイだ。
ルーキー時代、オレたち三人が酒が飲めるようになった時に、ヒーローだと今後何かとパーティー等に呼ばれる機会も多くなるからと、酒の楽しみ方を最初に色々と教えてくれた。
マリアージュの話もその時に聞いたし、研修チーム部屋で共同生活をおくっていた当時、部屋でワインを開けて、飲みながらつまみを作ったりしたこともある。
あの時のワインは安物だったが、それでも料理との相性次第で変わるっていうのは実感した。
「美味く飲みたいってのはわかったけど、つまみは和風がいいってのは完全にお前の趣味だよな?」
「…………ダメか?」
「いや、ダメってこたねぇけど……ワインに和風のつまみって合うのか?」
日本酒ならルーツ的にわからなくもねぇけど、ワインと和食という組み合わせは経験がねぇからか、どうもピンと来ない。
「合うものもあるようだ。例えば、こういうのなんかはどうだろう」
ブラッドが手にしていたタブレットを操作し、何かのサイトを表示してからオレに寄越した。
元は日本語で書かれていただろうサイトは翻訳されていて、オレにも内容がわかるようになっていた。
レシピなんかもいくつか掲載されている。
こりゃ、オレに話持ってくる前にガッツリチェックしてたな、ブラッドのヤツ。
ま、ブラッドと飲める機会もそんな多くねぇし、この先飲む機会があるかどうかもわかんねぇような高い酒飲ませて貰うなら、多少面倒なもんでも作ってやるとするか。
「で、お前が食いたいのってどれだよ?」
「……いいのか?」
「どうせ、目星つけてあんだろ。来週のオフでいいよな? 材料なんかも揃えられるか確認しねぇとなんねぇし」
グリーンイーストのリトルトーキョーなら、調味料なんかは結構揃うが、食材によっては季節に左右されるもんも少なからずある。
「ああ。感謝する」
表情こそ大した差はねぇが、ブラッドの声が弾んでるのが伝わってきた。
***
「うわ……美味……。いや、美味いのは想像してたけど、マジで料理と合うな」
ブラッドの頼み事からほぼ一週間後。
事前にチェックしていた食材を昼のうちにブラッドと一緒にグリーンイーストまで買いに行って、オレの家で一緒に作り、夕食として作ったつまみとワインを楽しんでいるが、想像以上のモンだった。
最初、ワインだけ口にしたときは、美味いのは美味いけど、これまでにもパーティーで口にしてきたヤツとそう大差ねぇかも?なんて思ってたぐらいだったが、料理と合わせた瞬間驚いた。
味の世界の広がり方が、これまで経験してきたのとは比較になんねぇレベルだ。
作ったつまみも味見しながらだったから、味はわかっていたつもりだが、こっちもこっちでワインと合わせることによって美味さがより引き立つ。
こりゃ、酒もつまみも進む一方だなと思っていたら、ブラッドも普段よりも酒の進みが早い。
ソファに隣り合って座ってるから、飲み食いするスピードが分かりやすい。
「ああ。最高だな。お前の料理が美味いのは今に始まったことではないが、今まで食ってきた中でも一際美味い」
「酒がめちゃくちゃ良いからなー。……これ、今日で全部空けちまってもいいのか?」
「構わん。料理の方が足りなくなりそうだがな」
「和風じゃなくてもいいなら、あり合わせので何か作ってやるよ」
「それは楽しみだ」
ブラッドの空になったワイングラスにワインを注ぎながら、残ってる食材でこのワインに合いそうなメニューを考えていたら、不意にブラッドが体を寄せて、オレの肩にことんと頭を乗せてくる。
酔ってるせいなのか、食事中にこんな風に甘えてくるのは珍しい。
ワインを注ぎ終わってから、乗っかった頭を撫でてやると微かに笑い声がした。
午後から買い物とつまみ作りにかかりきりだったけど、たまにはこんなオフも悪くないと思いながら、ブラッドの髪にそっとキスをした。
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#キスブラ #ワンライ
ブラキス版ワンドロ&ワンライ第7回でのお題から『得意料理』を使って書いた話です。
思い出話もつっこみたかったけど、時間が足りなかった!
クッキングイベのPトークネタが入ってます。
「キース。こちらで受け持っていた食材は一通り切り終わった」
「おー、お疲れさん。じゃ、切ったヤツボウルに入れたら、ちょっと奥のコンロで作ってるヤツの火加減見といてくれ。吹きこぼれそうになったら、差し水で」
「わかった」
今日は一日オフだからと、ブラッドに頼まれて……いや、押し切られてと言うべきだな。久々に夕飯に和食を作っていた。
和食は色々と面倒だから、あんまり作りたくねぇんだが、ブラッドが和食を作って欲しいって言うときは、こっちに打診する時点でレシピと材料、なければ調味料なんかも纏めて持ってきてから言うもんだから、それらを無駄にするのも気が咎めて、結局作る羽目になる。
まぁ、材料費が全部ブラッド持ちな上に、和食の面倒さの一端である食材を切るのも、ブラッドに任せときゃ丁寧にやってくれるから、ヤツも必ず手伝うって条件でたまに作ってやっていた。
アカデミー時代やルーキーの頃なんかはともかく、今は料理する機会が減ってるってこともあって、調味料は期限内にも使い切れるくらいの少なめの量で選ぶし、食材もほぼその時に使い切れるような量にしてるから、かえって店で食うより割高なんじゃねぇかと思うけど、オレの作る料理だから食いたいと言われちまえば、しゃーねーなってなっちまう。
ブラッドに火加減見といて貰ってる間に、こっちでも一品作っていると、ブラッドがふいに話し掛けてきた。
「ウィルに和食は作れないと言ったそうだな」
「ん? あー、そういや言ったかも知れねぇ」
少し前に、俺がレストランを経営してる飲み仲間からの依頼で、最近の経営状況があんまよくねぇからヒーローと協力して店の話題性が欲しいってことで、オスカー、ウィルと一緒にそのレストランの話題作りとして、メニューの考案、そして、初日はヒーローである自分たちの手で料理を作るってことをやった。
その時に、雑談で得意料理を聞かれて、得意料理は意識したことねぇけど、和食はとにかく面倒くさいから作れねぇとは言ったような気がする。
「お前相手にも滅多に作んねぇようなもんは、表向き作れねぇって言っといた方が手っ取り早いからなー。実際、和食の中でも特に面倒そうなもんって作れねぇし」
ブラッドが日本好きってこともあって、話だけならコイツから伝え聞いて知ってるっていうのもあるが、年明けに食うっていうおせち料理だとか、懐石料理だとかは試しに作ってみようっていう気にさえならねぇ。
精々、日常的に一般家庭で食べるだろうっていうメニューならってくらいだ。それでも、ものによっては避けたい。
ブラッドもそこら辺はわかってるらしく、面倒すぎるメニューは持ってこねぇからどうにかなってるけど。
「作ろうと思えば、作れなくもなさそうだがな、お前なら」
「やだよ、面倒くせぇ。手順が特に大変そうなのは、それこそ店に行って食えよ。金はかかるけど席で待ってるだけで出て来る、しかも場合によっちゃ作るより金もかかんねぇんだから、それこそお前が好きな『効率』が良いって話じゃねぇか」
「そうだな。…………だが、お前が表向き他人には作れないと言っている和食を、作れることを知っていて、かつ味も知っているという優越感は効率の話ではどうにもならんものだ」
「……包丁使ってるときにしれっとそういうこと言うのやめろよなー……」
「? 何か問題がある内容だったか?」
「何でもねぇよ」
オレだって、お前だから面倒な和食でもたまに作ってやろうかってなるし、お前相手じゃなきゃいくら材料やら何やら用意されてても最初から作んねぇよと言おうと思ったが、涼しげなブラッドの笑みにとっくに見透かされている気がして口にするのはやめておく。
どうせ、作るなら出来るだけ美味いものを食わせてやろうって思っちまってる時点で、ブラッドに勝てねぇのを自覚しながら、メニュー最後の一品を完成させた。
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#ブラキス #ワンライ
思い出話もつっこみたかったけど、時間が足りなかった!
クッキングイベのPトークネタが入ってます。
「キース。こちらで受け持っていた食材は一通り切り終わった」
「おー、お疲れさん。じゃ、切ったヤツボウルに入れたら、ちょっと奥のコンロで作ってるヤツの火加減見といてくれ。吹きこぼれそうになったら、差し水で」
「わかった」
今日は一日オフだからと、ブラッドに頼まれて……いや、押し切られてと言うべきだな。久々に夕飯に和食を作っていた。
和食は色々と面倒だから、あんまり作りたくねぇんだが、ブラッドが和食を作って欲しいって言うときは、こっちに打診する時点でレシピと材料、なければ調味料なんかも纏めて持ってきてから言うもんだから、それらを無駄にするのも気が咎めて、結局作る羽目になる。
まぁ、材料費が全部ブラッド持ちな上に、和食の面倒さの一端である食材を切るのも、ブラッドに任せときゃ丁寧にやってくれるから、ヤツも必ず手伝うって条件でたまに作ってやっていた。
アカデミー時代やルーキーの頃なんかはともかく、今は料理する機会が減ってるってこともあって、調味料は期限内にも使い切れるくらいの少なめの量で選ぶし、食材もほぼその時に使い切れるような量にしてるから、かえって店で食うより割高なんじゃねぇかと思うけど、オレの作る料理だから食いたいと言われちまえば、しゃーねーなってなっちまう。
ブラッドに火加減見といて貰ってる間に、こっちでも一品作っていると、ブラッドがふいに話し掛けてきた。
「ウィルに和食は作れないと言ったそうだな」
「ん? あー、そういや言ったかも知れねぇ」
少し前に、俺がレストランを経営してる飲み仲間からの依頼で、最近の経営状況があんまよくねぇからヒーローと協力して店の話題性が欲しいってことで、オスカー、ウィルと一緒にそのレストランの話題作りとして、メニューの考案、そして、初日はヒーローである自分たちの手で料理を作るってことをやった。
その時に、雑談で得意料理を聞かれて、得意料理は意識したことねぇけど、和食はとにかく面倒くさいから作れねぇとは言ったような気がする。
「お前相手にも滅多に作んねぇようなもんは、表向き作れねぇって言っといた方が手っ取り早いからなー。実際、和食の中でも特に面倒そうなもんって作れねぇし」
ブラッドが日本好きってこともあって、話だけならコイツから伝え聞いて知ってるっていうのもあるが、年明けに食うっていうおせち料理だとか、懐石料理だとかは試しに作ってみようっていう気にさえならねぇ。
精々、日常的に一般家庭で食べるだろうっていうメニューならってくらいだ。それでも、ものによっては避けたい。
ブラッドもそこら辺はわかってるらしく、面倒すぎるメニューは持ってこねぇからどうにかなってるけど。
「作ろうと思えば、作れなくもなさそうだがな、お前なら」
「やだよ、面倒くせぇ。手順が特に大変そうなのは、それこそ店に行って食えよ。金はかかるけど席で待ってるだけで出て来る、しかも場合によっちゃ作るより金もかかんねぇんだから、それこそお前が好きな『効率』が良いって話じゃねぇか」
「そうだな。…………だが、お前が表向き他人には作れないと言っている和食を、作れることを知っていて、かつ味も知っているという優越感は効率の話ではどうにもならんものだ」
「……包丁使ってるときにしれっとそういうこと言うのやめろよなー……」
「? 何か問題がある内容だったか?」
「何でもねぇよ」
オレだって、お前だから面倒な和食でもたまに作ってやろうかってなるし、お前相手じゃなきゃいくら材料やら何やら用意されてても最初から作んねぇよと言おうと思ったが、涼しげなブラッドの笑みにとっくに見透かされている気がして口にするのはやめておく。
どうせ、作るなら出来るだけ美味いものを食わせてやろうって思っちまってる時点で、ブラッドに勝てねぇのを自覚しながら、メニュー最後の一品を完成させた。
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#ブラキス #ワンライ
キスブラ版ワンドロライ第11回でのお題から『おにぎり』を使って書いた話です。
少し、クッキングイベのキース☆3カドストのネタバレを含みます。
アカデミー時代、様々な料理を作れる上に、どれをとっても美味かったキースに、一度和食を作ってみる気はないかと聞いたところ、数秒の沈黙の後、めんどくせぇと一蹴された。
「和食ってやつは、具材の切り方が細かかったり、調味料が多様だったりで、繊細過ぎるっていうか……ちょっと手ぇ出すには面倒なんだよ。大体、お前の好きな寿司に至ってはそれ専門の職人がいるってぐらいだしさ」
今にして思えば、和食を好む俺を考えて、一応ざっくりと調べてくれた上でのことだったのだと理解出来る。
全くその気がなければ、面倒だということもわからないのだから。
「ああ、確かに寿司職人といわゆる和食の板前とはまた違うものらしいな」
「っつーわけだ。悪ぃな、諦めてくれ」
「…………そうか」
残念だが、本人にその気がないのに押し通すことも出来ない。
和食でなくともキースの料理は美味いし、作ってくれる機会があるだけいいかと納得した。
だが、キースの方はそれをずっと気にしていたようだ。
第10期生ルーキーとして、タワーで共同生活を送るようになったある日。
ジェイもディノも不在だったことで箍が外れ、昼間からキースとセックスして――眠ってしまい、目が覚めたら夕食の時間だった。
今日の夕食を作るのは俺だったと慌てて起きたら、キースが部屋まで何かを持ってきた。
「お、目ぇ覚めたか。体大丈夫か? 食えそうなら夕飯にしようぜ。簡単なもんにしちまったけど」
「すまない。今日は俺が作るはずだったのに――これは、おにぎりか?」
キースがトレイに乗せていたのは、おにぎりと味噌汁と卵焼き、それにお茶。
確かに米や味噌、他日本の調味料は俺がキッチンに持ち込んでいた分があるとはいえ、炊飯器が少し前に壊れて、新たに買い直さねばと思っていたところだったから、米を炊く発想はなかった。
「そ。まぁ、簡単なものならって思ってな。お前、和食で使うような調味料色々持ち込んでいたし」
「……炊飯器は壊れていたはずだが」
「んなの、鍋がありゃ炊けるっての。まぁ、炊飯器で炊くみたいに均等にはならなくて、ちょっと焦げ付いた部分とかあるけどな。これはこれでいいだろ」
キースの言うように確かにおにぎりに少し焦げた部分があったが、その焦げが逆に香ばしく食欲をそそってくる。
手を合わせてから、まずは味噌汁、そしておにぎりと手をつける。
味噌汁は揚げた茄子に長ネギ。少し濃いめの味付けだが、今の体にはちょうどいい。
そして、おにぎりも塩加減が絶妙だった。
これなら、卵焼きもと期待をして箸を伸ばせば、やはり美味い。
綺麗に巻かれたそれは色や形だけでなく、だしの味が生かされていて、おにぎりによく合っていた。
「美味い。……やはりお前の作る料理には外れがないな」
キースは簡単なものにしたと言ったが、鍋で米を炊くには火加減に気を配る必要があるし、味噌汁に入っていた茄子も揚げてあった。
何より、味噌汁や卵焼きのだしの味から察するに、インスタントは使っていない。
どれもそれなりに手がかかるはずだ。簡単だったとは言えない。
だからこそ、かつて面倒だと言われたのだが、結局は数年越しでも作ってくれた。
それを思うと、さらに美味しく感じ、あっという間に平らげてしまった。
キースよりも早く食い終わった俺を見て、キースが表情を綻ばせたのを覚えている。
「だったら良かったけどさ」
「……出来れば、また作って欲しい」
「まー、気が向いたらな」
――そんなやりとりをしたのが少し懐かしい。
あれから数年。
ルーキーとしての研修チーム部屋での共同生活を終え、キースの自宅に少しずつ、炊飯器等の調理器具や、日本の調味料を持ちこんだのもあってか、時折キースは和食の類も作ってくれるようになった。
日本酒を持ち込んだときにも、つまみと称して作ってくれるし、あの時のように朝食におにぎりを作ってくれることもある。
「……おい、ブラッド。何か棚ん中に見たことない調味料増えてんだけど」
「グリーンイーストの店に入荷されていたから、試しに買ってみた」
「お前、自分のセクター部屋に持っていく前にここで試すなよなー。……で、これでどんなの作れるんだ?」
「作ってくれるのか?」
「そのために持ってきといてよく言うぜ。ほら、レシピ寄越せ。失敗しても文句言うなよ。あと、お前も手伝え」
「……感謝する」
そうは言いながらも、キースが失敗することはほとんどない。
タブレットであらかじめ開いておいたレシピを端末ごとキースに手渡しながら、俺も手渡されたエプロンを身に着けた。
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#キスブラ #ワンライ
少し、クッキングイベのキース☆3カドストのネタバレを含みます。
アカデミー時代、様々な料理を作れる上に、どれをとっても美味かったキースに、一度和食を作ってみる気はないかと聞いたところ、数秒の沈黙の後、めんどくせぇと一蹴された。
「和食ってやつは、具材の切り方が細かかったり、調味料が多様だったりで、繊細過ぎるっていうか……ちょっと手ぇ出すには面倒なんだよ。大体、お前の好きな寿司に至ってはそれ専門の職人がいるってぐらいだしさ」
今にして思えば、和食を好む俺を考えて、一応ざっくりと調べてくれた上でのことだったのだと理解出来る。
全くその気がなければ、面倒だということもわからないのだから。
「ああ、確かに寿司職人といわゆる和食の板前とはまた違うものらしいな」
「っつーわけだ。悪ぃな、諦めてくれ」
「…………そうか」
残念だが、本人にその気がないのに押し通すことも出来ない。
和食でなくともキースの料理は美味いし、作ってくれる機会があるだけいいかと納得した。
だが、キースの方はそれをずっと気にしていたようだ。
第10期生ルーキーとして、タワーで共同生活を送るようになったある日。
ジェイもディノも不在だったことで箍が外れ、昼間からキースとセックスして――眠ってしまい、目が覚めたら夕食の時間だった。
今日の夕食を作るのは俺だったと慌てて起きたら、キースが部屋まで何かを持ってきた。
「お、目ぇ覚めたか。体大丈夫か? 食えそうなら夕飯にしようぜ。簡単なもんにしちまったけど」
「すまない。今日は俺が作るはずだったのに――これは、おにぎりか?」
キースがトレイに乗せていたのは、おにぎりと味噌汁と卵焼き、それにお茶。
確かに米や味噌、他日本の調味料は俺がキッチンに持ち込んでいた分があるとはいえ、炊飯器が少し前に壊れて、新たに買い直さねばと思っていたところだったから、米を炊く発想はなかった。
「そ。まぁ、簡単なものならって思ってな。お前、和食で使うような調味料色々持ち込んでいたし」
「……炊飯器は壊れていたはずだが」
「んなの、鍋がありゃ炊けるっての。まぁ、炊飯器で炊くみたいに均等にはならなくて、ちょっと焦げ付いた部分とかあるけどな。これはこれでいいだろ」
キースの言うように確かにおにぎりに少し焦げた部分があったが、その焦げが逆に香ばしく食欲をそそってくる。
手を合わせてから、まずは味噌汁、そしておにぎりと手をつける。
味噌汁は揚げた茄子に長ネギ。少し濃いめの味付けだが、今の体にはちょうどいい。
そして、おにぎりも塩加減が絶妙だった。
これなら、卵焼きもと期待をして箸を伸ばせば、やはり美味い。
綺麗に巻かれたそれは色や形だけでなく、だしの味が生かされていて、おにぎりによく合っていた。
「美味い。……やはりお前の作る料理には外れがないな」
キースは簡単なものにしたと言ったが、鍋で米を炊くには火加減に気を配る必要があるし、味噌汁に入っていた茄子も揚げてあった。
何より、味噌汁や卵焼きのだしの味から察するに、インスタントは使っていない。
どれもそれなりに手がかかるはずだ。簡単だったとは言えない。
だからこそ、かつて面倒だと言われたのだが、結局は数年越しでも作ってくれた。
それを思うと、さらに美味しく感じ、あっという間に平らげてしまった。
キースよりも早く食い終わった俺を見て、キースが表情を綻ばせたのを覚えている。
「だったら良かったけどさ」
「……出来れば、また作って欲しい」
「まー、気が向いたらな」
――そんなやりとりをしたのが少し懐かしい。
あれから数年。
ルーキーとしての研修チーム部屋での共同生活を終え、キースの自宅に少しずつ、炊飯器等の調理器具や、日本の調味料を持ちこんだのもあってか、時折キースは和食の類も作ってくれるようになった。
日本酒を持ち込んだときにも、つまみと称して作ってくれるし、あの時のように朝食におにぎりを作ってくれることもある。
「……おい、ブラッド。何か棚ん中に見たことない調味料増えてんだけど」
「グリーンイーストの店に入荷されていたから、試しに買ってみた」
「お前、自分のセクター部屋に持っていく前にここで試すなよなー。……で、これでどんなの作れるんだ?」
「作ってくれるのか?」
「そのために持ってきといてよく言うぜ。ほら、レシピ寄越せ。失敗しても文句言うなよ。あと、お前も手伝え」
「……感謝する」
そうは言いながらも、キースが失敗することはほとんどない。
タブレットであらかじめ開いておいたレシピを端末ごとキースに手渡しながら、俺も手渡されたエプロンを身に着けた。
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#キスブラ #ワンライ