全年全月14日の投稿[4件]
2021年3月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する
キスブラ版ワンドロライ第19回でのお題から『花見酒』『温泉』を使って書いた話です。
※数年後の時間軸で、既に二人とも研修チームのメンターではない&キスブラが一緒に住んでるというのを想定の下に書いてます。
オレとブラッド、二人が同時に取れた長期休暇は少し桜の時期には早く、花見酒を楽しむのはちょっとばかり難しいと予想していたが、ここ数日で急に暖かくなったとかで、いざ目的地に訪れてみれば、ちょうど満開のタイミングだったのは運が良かった。
今回泊まる宿は客室に温泉を引いた露天風呂がついていて、しかも一杯だけなら風呂で酒を飲んでもいいとくれば、飲まない手はねぇ。
まだ外は明るいが、日が沈んじまう前にまず一回風呂に入って飲もうって提案はブラッドも断らなかったから、宿に着いて早々に二人で風呂に浸かっている。
露天風呂からは大きめの桜の木が見えて、単純にその桜を眺めるのもいいが、風向きのせいで時折桜の花片がこっちまで飛んできて、湯船に浮かぶのもいい。
こういうのを『風流』とか言うんだっけか?
ブラッドも景色をちゃんと見たいのか、コンタクトは外してるが風呂用の眼鏡を持ち込んで来ている。
「あー……酒は美味いし、風呂からの眺めもいいし最高だなぁ。これで酒がもう一杯飲めりゃ言うことねぇんだけど」
「温泉に浸かりながら飲むのは一度に一杯まで、がこの旅館のルールだ」
「わあってるって。一杯だけだから、こうしてちびちび飲んでんじゃねぇか」
そうは言っても個室だから、こっそり飲めばわかんねぇだろうけど、まぁそういうのをブラッドが許すはずねぇんだよな。
せっかくの旅行でお小言を聞きたくはねぇし、ここは大人しくしとくに限る。
今回みたいに二人揃っての長期休暇なんて、今度いつ取れるかわかんねぇし、ブラッドにしてみりゃ念願の日本旅行だ。
空港降りた時から、どことなく楽しげにしているブラッドの機嫌を損ねるようなことをするのも気が咎める。
「…………ただ、一度に一杯ということは、夜にまた温泉に浸かるのであれば、その時にもう一杯飲む分には構わないということだろう。お前が夕食後にやたらに飲み過ぎなければの話だが」
「お、いいねぇ。夜桜を肴に一杯! せっかくだし、次は何か違う銘柄の酒持ってきて貰って、温泉に入った後は部屋でそのまま飲み明か……」
そこまで言って、ふと気付いた。
日本を旅行するなら、訪れる場所はブラッドの好きにしていいが、美味い日本酒を楽しみたいと言ったのはオレだ。
結果、訪れる場所や宿を決めたのはほぼブラッドだが――。
「……もしかして、お前さ。温泉に入りながら飲める宿、わざわざ探してくれたの?」
普段は家で風呂に入りながら酒を飲むのは極力やめておけとブラッドに言われている。
ブラッドと一緒に住むようになったとき、ブラッドの希望で浴室は日本風のものにしたが、入浴しながらの飲酒はどうしても体への負担もかかるから、せめて自分がいるときに少し飲むだけにしろと。
実際、下手に風呂場で酔っ払って寝たとしたら世話になる相手は間違いなくブラッドだし、そうなったらブラッド側としちゃ面倒だよなと、あんまり家で風呂に入りながら飲むことはしてこなかったんだけど。
「美味い日本酒を楽しみたいと言ったのはお前だろう。今回の旅行は場所にしろ、食事にしろ、ほとんど俺の希望を通したのだし、そのくらいはと思ってな」
「おお……マジか。嬉しいことしてくれるねぇ」
ブラッドの頬が紅く染まってるのは風呂で上気してるだけとも取れるが、微かにオレから視線を逸らしたあたり、多分照れてる。
オレが飲んでいる一方、ブラッドがほとんど酒に手をつけてないのも、恐らくオレの様子を気にしてのことだ。
ホントは旅行先で酔い潰れられるのなんざごめんだろうに。
「サンキュ、ブラッド」
「……そう思うのなら、酒は適度にしておけ。夜は長い」
「へいへい」
その長い夜は夜桜だけを楽しむなってことだろう。適度、ってのはその後に動ける余力を残せって意味だ。
ブラッドは表情がわかりにくいことも多いが、いい加減長い付き合いだ。そんくらいは察する。
わかってると言う代わりに、酒を一度盆の上に置き、ブラッドの眼鏡を外してキスを交わした。
Close
#キスブラ #ワンライ
※数年後の時間軸で、既に二人とも研修チームのメンターではない&キスブラが一緒に住んでるというのを想定の下に書いてます。
オレとブラッド、二人が同時に取れた長期休暇は少し桜の時期には早く、花見酒を楽しむのはちょっとばかり難しいと予想していたが、ここ数日で急に暖かくなったとかで、いざ目的地に訪れてみれば、ちょうど満開のタイミングだったのは運が良かった。
今回泊まる宿は客室に温泉を引いた露天風呂がついていて、しかも一杯だけなら風呂で酒を飲んでもいいとくれば、飲まない手はねぇ。
まだ外は明るいが、日が沈んじまう前にまず一回風呂に入って飲もうって提案はブラッドも断らなかったから、宿に着いて早々に二人で風呂に浸かっている。
露天風呂からは大きめの桜の木が見えて、単純にその桜を眺めるのもいいが、風向きのせいで時折桜の花片がこっちまで飛んできて、湯船に浮かぶのもいい。
こういうのを『風流』とか言うんだっけか?
ブラッドも景色をちゃんと見たいのか、コンタクトは外してるが風呂用の眼鏡を持ち込んで来ている。
「あー……酒は美味いし、風呂からの眺めもいいし最高だなぁ。これで酒がもう一杯飲めりゃ言うことねぇんだけど」
「温泉に浸かりながら飲むのは一度に一杯まで、がこの旅館のルールだ」
「わあってるって。一杯だけだから、こうしてちびちび飲んでんじゃねぇか」
そうは言っても個室だから、こっそり飲めばわかんねぇだろうけど、まぁそういうのをブラッドが許すはずねぇんだよな。
せっかくの旅行でお小言を聞きたくはねぇし、ここは大人しくしとくに限る。
今回みたいに二人揃っての長期休暇なんて、今度いつ取れるかわかんねぇし、ブラッドにしてみりゃ念願の日本旅行だ。
空港降りた時から、どことなく楽しげにしているブラッドの機嫌を損ねるようなことをするのも気が咎める。
「…………ただ、一度に一杯ということは、夜にまた温泉に浸かるのであれば、その時にもう一杯飲む分には構わないということだろう。お前が夕食後にやたらに飲み過ぎなければの話だが」
「お、いいねぇ。夜桜を肴に一杯! せっかくだし、次は何か違う銘柄の酒持ってきて貰って、温泉に入った後は部屋でそのまま飲み明か……」
そこまで言って、ふと気付いた。
日本を旅行するなら、訪れる場所はブラッドの好きにしていいが、美味い日本酒を楽しみたいと言ったのはオレだ。
結果、訪れる場所や宿を決めたのはほぼブラッドだが――。
「……もしかして、お前さ。温泉に入りながら飲める宿、わざわざ探してくれたの?」
普段は家で風呂に入りながら酒を飲むのは極力やめておけとブラッドに言われている。
ブラッドと一緒に住むようになったとき、ブラッドの希望で浴室は日本風のものにしたが、入浴しながらの飲酒はどうしても体への負担もかかるから、せめて自分がいるときに少し飲むだけにしろと。
実際、下手に風呂場で酔っ払って寝たとしたら世話になる相手は間違いなくブラッドだし、そうなったらブラッド側としちゃ面倒だよなと、あんまり家で風呂に入りながら飲むことはしてこなかったんだけど。
「美味い日本酒を楽しみたいと言ったのはお前だろう。今回の旅行は場所にしろ、食事にしろ、ほとんど俺の希望を通したのだし、そのくらいはと思ってな」
「おお……マジか。嬉しいことしてくれるねぇ」
ブラッドの頬が紅く染まってるのは風呂で上気してるだけとも取れるが、微かにオレから視線を逸らしたあたり、多分照れてる。
オレが飲んでいる一方、ブラッドがほとんど酒に手をつけてないのも、恐らくオレの様子を気にしてのことだ。
ホントは旅行先で酔い潰れられるのなんざごめんだろうに。
「サンキュ、ブラッド」
「……そう思うのなら、酒は適度にしておけ。夜は長い」
「へいへい」
その長い夜は夜桜だけを楽しむなってことだろう。適度、ってのはその後に動ける余力を残せって意味だ。
ブラッドは表情がわかりにくいことも多いが、いい加減長い付き合いだ。そんくらいは察する。
わかってると言う代わりに、酒を一度盆の上に置き、ブラッドの眼鏡を外してキスを交わした。
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#キスブラ #ワンライ
2021年2月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する
キスブラ版ワンドロライ第15回でのお題から『本音』『バレンタインデー』を使って書いた話です。
バレンタインデー限定のホームボイスネタが含まれます。
「…………何だ、この有様は」
バレンタインデーから数日後。
お互いのオフに合わせる形でキースの家を訪れたら、そこには解かれた包装と酒瓶で山が出来上がっていた。
元々、整理整頓の得意ではないキースの家やタワーの研修チーム部屋が散らかっているのは日常茶飯事だが、今日は特に酷い状態だ。
足の踏み場もないとはこのことだろう。
雑多に散らばっている包装に使われていた箱や包み紙を軽く纏め、どうにか道を作ってキースの元まで行くと、俺が来るのを待っている間に少し飲んでいたらしいキースが、少し赤みがかった顔でニヤリと笑った。
「バレンタインデーに市民から貰ったヤツだよ。オレなんかに贈って寄越すような市民はちゃんと好み覚えててくれてんだよなー。大体が酒かウイスキーボンボンをくれたんだよ。これでしばらくは飲むのに困らねぇ」
「……そういうことか」
キースは積極的にファンサービスを行うタイプではないが、曲がりなりにもメジャーヒーローだ。
特にルーキー研修終了後からはずっとウエストセクターに所属し、ここ数年はウエストセクターのバーを中心に日々飲み歩いていることもあって、他地域はともかくウエストではそれなりに知名度が高い。
キースが甘い物を好まず、酒を好むことは、特にバーでキースを見かけることがある者なら容易にわかるだろう。
よくよく見れば、確認出来る範疇の酒は大体が良いものだとラベルからわかるし、別途分けて置かれていたメッセージカードも結構な量になっている。
どれもキースのことを考えた上で贈られているのが伝わって来た。
ウエストのセクターランキングが順調なのもあってか、例年よりも多いような気がする。
恐らく、タワーの部屋にもまだプレゼントはあるはずだ。
「今年は随分貰ったようだな」
「はぁ? お前がそれ言うのかよ? アカデミー時代から抱えきれない量のプレゼント貰ってたお前が。今回だってどうせ沢山貰ってるんだろうが」
「否定はしない。少なくはないだろうな」
「だよなー。知ってた。ま、それはそれとしてお前もくれるんだろ?」
当たり前のように手を差し出して来た相手に、つい溜め息を吐きながら、持参していた紙袋ごと渡す。
受け取ったキースが直ぐさま袋から中身を取りだし、包装を取り除く。
箱を開けた途端にキースの目の色が変わった。
「おお、日本酒とチョコの組み合わせか」
「ああ。そのチョコは同梱されている日本酒を使って作られたものだそうだ」
日本酒であれば、他の者からのプレゼントとは恐らく被らないだろうと選んだ一品だ。
「いいねぇ。サンキュ。じゃ、早速……っと。お、チョコの方も甘さ控えめでいいな。こりゃ、日本酒の方も期待出来そうだ。なぁブラッド」
「? 何…………っ!」
手招きされて、キースにもう少し近寄ると頭をおさえられ、唇を重ねられる。
酒とチョコの混じった香りを纏った舌が唇をこじ開け、俺の口の中に溶けかけたチョコを押し込んできた。
ふわ、と甘い香りが一際強くなる。
口の中のチョコを転がすのと同時に、舌で歯茎や上顎も擦られて、チョコが溶けきった頃にはすっかり息が上がってしまい、気付いた時にはいつの間にかベッドの上だった。
どうやら、口付けを交わしている間にサイコキネシスで移動させられていたらしい。
油断のならない男だ。
「……酔っ払いとはしたくないが」
「大して酔ってねぇのくらいわかってんだろ。記憶飛ぶほど飲んじゃいねぇし、勿論、勃たなくなるような状態でもねぇ」
「んっ」
俺に覆い被さったキースが腰を押し付けてくる。
布地越しでも既に固さも熱も持っていると伝わるそれに、こっちもつられて反応してしまう。
「キー、ス」
「プレゼントは有り難いけど、どうしてもこの時期はカロリーオーバーが気になるよなー。ってことで、早速運動して消費するとしようぜ。俺からお前にやる分のチョコはもうちょっと冷蔵庫で冷やしときたいしさ」
「……何か作ってくれたの、か」
早くも体を這い始めた指に翻弄される前に確認したくて問いかけたら、キースが目を細めた。
バレンタインデーに何かを贈りあうことはしても、それが手作りだったことはまだない。
イベントごとは面倒がる傾向もあるし、何かをくれるだけでも十分だと思っていたのだが、どうやら今年は少し勝手が違うようだ。
「まぁな。何かは後のお楽しみってやつだけど。――楽しみだろ?」
「ああ。楽しみ、だ」
キースの作るものに外れはない。
冷蔵庫にあるというチョコが楽しみというのは紛う方ない本音だ。
だが、それ以上にわざわざ手をかけて作ってくれたことが嬉しい。
きっと、俺が他の者とのプレゼントとは被らないようにと選んだのと同じように、キースも他者とは被らないようにとそれを作ってくれたのだろうから。
癖のあるアッシュブロンドを撫でながら、俺からもキスを仕掛け、部屋の惨状には一先ず目を瞑り、束の間の行為に没頭しようと決めた。
Close
#キスブラ #ワンライ
バレンタインデー限定のホームボイスネタが含まれます。
「…………何だ、この有様は」
バレンタインデーから数日後。
お互いのオフに合わせる形でキースの家を訪れたら、そこには解かれた包装と酒瓶で山が出来上がっていた。
元々、整理整頓の得意ではないキースの家やタワーの研修チーム部屋が散らかっているのは日常茶飯事だが、今日は特に酷い状態だ。
足の踏み場もないとはこのことだろう。
雑多に散らばっている包装に使われていた箱や包み紙を軽く纏め、どうにか道を作ってキースの元まで行くと、俺が来るのを待っている間に少し飲んでいたらしいキースが、少し赤みがかった顔でニヤリと笑った。
「バレンタインデーに市民から貰ったヤツだよ。オレなんかに贈って寄越すような市民はちゃんと好み覚えててくれてんだよなー。大体が酒かウイスキーボンボンをくれたんだよ。これでしばらくは飲むのに困らねぇ」
「……そういうことか」
キースは積極的にファンサービスを行うタイプではないが、曲がりなりにもメジャーヒーローだ。
特にルーキー研修終了後からはずっとウエストセクターに所属し、ここ数年はウエストセクターのバーを中心に日々飲み歩いていることもあって、他地域はともかくウエストではそれなりに知名度が高い。
キースが甘い物を好まず、酒を好むことは、特にバーでキースを見かけることがある者なら容易にわかるだろう。
よくよく見れば、確認出来る範疇の酒は大体が良いものだとラベルからわかるし、別途分けて置かれていたメッセージカードも結構な量になっている。
どれもキースのことを考えた上で贈られているのが伝わって来た。
ウエストのセクターランキングが順調なのもあってか、例年よりも多いような気がする。
恐らく、タワーの部屋にもまだプレゼントはあるはずだ。
「今年は随分貰ったようだな」
「はぁ? お前がそれ言うのかよ? アカデミー時代から抱えきれない量のプレゼント貰ってたお前が。今回だってどうせ沢山貰ってるんだろうが」
「否定はしない。少なくはないだろうな」
「だよなー。知ってた。ま、それはそれとしてお前もくれるんだろ?」
当たり前のように手を差し出して来た相手に、つい溜め息を吐きながら、持参していた紙袋ごと渡す。
受け取ったキースが直ぐさま袋から中身を取りだし、包装を取り除く。
箱を開けた途端にキースの目の色が変わった。
「おお、日本酒とチョコの組み合わせか」
「ああ。そのチョコは同梱されている日本酒を使って作られたものだそうだ」
日本酒であれば、他の者からのプレゼントとは恐らく被らないだろうと選んだ一品だ。
「いいねぇ。サンキュ。じゃ、早速……っと。お、チョコの方も甘さ控えめでいいな。こりゃ、日本酒の方も期待出来そうだ。なぁブラッド」
「? 何…………っ!」
手招きされて、キースにもう少し近寄ると頭をおさえられ、唇を重ねられる。
酒とチョコの混じった香りを纏った舌が唇をこじ開け、俺の口の中に溶けかけたチョコを押し込んできた。
ふわ、と甘い香りが一際強くなる。
口の中のチョコを転がすのと同時に、舌で歯茎や上顎も擦られて、チョコが溶けきった頃にはすっかり息が上がってしまい、気付いた時にはいつの間にかベッドの上だった。
どうやら、口付けを交わしている間にサイコキネシスで移動させられていたらしい。
油断のならない男だ。
「……酔っ払いとはしたくないが」
「大して酔ってねぇのくらいわかってんだろ。記憶飛ぶほど飲んじゃいねぇし、勿論、勃たなくなるような状態でもねぇ」
「んっ」
俺に覆い被さったキースが腰を押し付けてくる。
布地越しでも既に固さも熱も持っていると伝わるそれに、こっちもつられて反応してしまう。
「キー、ス」
「プレゼントは有り難いけど、どうしてもこの時期はカロリーオーバーが気になるよなー。ってことで、早速運動して消費するとしようぜ。俺からお前にやる分のチョコはもうちょっと冷蔵庫で冷やしときたいしさ」
「……何か作ってくれたの、か」
早くも体を這い始めた指に翻弄される前に確認したくて問いかけたら、キースが目を細めた。
バレンタインデーに何かを贈りあうことはしても、それが手作りだったことはまだない。
イベントごとは面倒がる傾向もあるし、何かをくれるだけでも十分だと思っていたのだが、どうやら今年は少し勝手が違うようだ。
「まぁな。何かは後のお楽しみってやつだけど。――楽しみだろ?」
「ああ。楽しみ、だ」
キースの作るものに外れはない。
冷蔵庫にあるというチョコが楽しみというのは紛う方ない本音だ。
だが、それ以上にわざわざ手をかけて作ってくれたことが嬉しい。
きっと、俺が他の者とのプレゼントとは被らないようにと選んだのと同じように、キースも他者とは被らないようにとそれを作ってくれたのだろうから。
癖のあるアッシュブロンドを撫でながら、俺からもキスを仕掛け、部屋の惨状には一先ず目を瞑り、束の間の行為に没頭しようと決めた。
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#キスブラ #ワンライ
2020年10月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する
共闘するキスブラ
怪我で一時的に見えなくなってるキースとサポートする形のブラッドで共闘するキスブラ。
※キースの能力が目で捉えたものなら何でも動かせる、なのが発覚したので、このパターン難しいかもしれん。
「げっ! しまった」
蜂型イクリプスを撃破したものの、その際に砕けた羽がこっちに飛んできたのを避け損ねた。
僅かに薄皮一枚で済んだとはいえ場所が悪く、額を切った際に流れ落ちてきた血が視界を塞ぐ。
くそ、見えねぇとサイコキネシスの力加減が上手く出来ねぇんだよな。
ここが郊外なら周囲丸ごと吹っ飛ばすってやり方でも構わねぇが、生憎ここは市街地だ。
市民の避難が済んでいるとはいえ、近くで対処しているヒーローは他にもいるし、下手に家や店を吹っ飛ばすわけにもいかねぇ。
かといって、近くに寄ってきた気配を狙って攻撃するにも、タイミングが遅れりゃこっちがヤバい。
どうしたもんかと思っていたところに声が掛かった。
「キース。何をして……、目をやられたのか?」
「ブラッド」
さすがにブラッドの声と気配なら見えなくともわかる。
すぐ近くにきたのが分かって少しほっとした。
コイツが傍にいるなら必要以上に気を張る必要はなくなる。
「目そのものはやられてねぇ。が、血が目に入っちまって見えてねぇんだ」
「なるほど。手当……といきたいところだが、先にここのヤツらを掃討してからだな。指示を出せば能力を使うのは可能か?」
「力加減は難しいが、場所さえ教えてくれりゃ多分いける」
「では、右に15度、20ヤード先」
「こう、かっ!?」
およその勘で言われた場所目掛けて、上から押しつぶすようなイメージで圧をかけると断末魔の声が上がる。
「ふむ。いけそうだな。ならば、俺が鎖である程度の数を纏めて位置を知らせるから、そこに全力でいけ」
ブラッドが俺の左側に回って、肩に手を置く。
「へぇへぇ。怪我人なのに休ませてくれないわけね」
「大した怪我でもないし、動けるのもわかっているのに休ませると思うか? いくぞ。…………左に60度、32ヤード先だ」
「ほらよ……っと!」
ブラッドの能力による鎖の音が止んだ直後に言われた場所に向けて、サイコキネシスを使った。
ブラッドが肩に触れてるからか、コイツが能力を使うときの感覚が何となく伝わる。
「出来れば、もう少し能力が影響する範囲を狭くしろ。建築物を破壊しかねん」
「あー……そうしたいけど、それやるとこの周囲にまで気が回らねぇよ」
「それは俺の方でやる。お前は指示した場所に攻撃することだけに集中してくれればいい。……不安か?」
ブラッドで不安になるなら、誰だってダメに決まってる。
隣にいるのが心強く思えるのは、ブラッドだからこそだ。
「いーや。そういうことなら任せるぜ」
「ああ。右に5度、15ヤード先の上空来るぞ」
「あいよ」
Close
#キスブラ #書きかけ
怪我で一時的に見えなくなってるキースとサポートする形のブラッドで共闘するキスブラ。
※キースの能力が目で捉えたものなら何でも動かせる、なのが発覚したので、このパターン難しいかもしれん。
「げっ! しまった」
蜂型イクリプスを撃破したものの、その際に砕けた羽がこっちに飛んできたのを避け損ねた。
僅かに薄皮一枚で済んだとはいえ場所が悪く、額を切った際に流れ落ちてきた血が視界を塞ぐ。
くそ、見えねぇとサイコキネシスの力加減が上手く出来ねぇんだよな。
ここが郊外なら周囲丸ごと吹っ飛ばすってやり方でも構わねぇが、生憎ここは市街地だ。
市民の避難が済んでいるとはいえ、近くで対処しているヒーローは他にもいるし、下手に家や店を吹っ飛ばすわけにもいかねぇ。
かといって、近くに寄ってきた気配を狙って攻撃するにも、タイミングが遅れりゃこっちがヤバい。
どうしたもんかと思っていたところに声が掛かった。
「キース。何をして……、目をやられたのか?」
「ブラッド」
さすがにブラッドの声と気配なら見えなくともわかる。
すぐ近くにきたのが分かって少しほっとした。
コイツが傍にいるなら必要以上に気を張る必要はなくなる。
「目そのものはやられてねぇ。が、血が目に入っちまって見えてねぇんだ」
「なるほど。手当……といきたいところだが、先にここのヤツらを掃討してからだな。指示を出せば能力を使うのは可能か?」
「力加減は難しいが、場所さえ教えてくれりゃ多分いける」
「では、右に15度、20ヤード先」
「こう、かっ!?」
およその勘で言われた場所目掛けて、上から押しつぶすようなイメージで圧をかけると断末魔の声が上がる。
「ふむ。いけそうだな。ならば、俺が鎖である程度の数を纏めて位置を知らせるから、そこに全力でいけ」
ブラッドが俺の左側に回って、肩に手を置く。
「へぇへぇ。怪我人なのに休ませてくれないわけね」
「大した怪我でもないし、動けるのもわかっているのに休ませると思うか? いくぞ。…………左に60度、32ヤード先だ」
「ほらよ……っと!」
ブラッドの能力による鎖の音が止んだ直後に言われた場所に向けて、サイコキネシスを使った。
ブラッドが肩に触れてるからか、コイツが能力を使うときの感覚が何となく伝わる。
「出来れば、もう少し能力が影響する範囲を狭くしろ。建築物を破壊しかねん」
「あー……そうしたいけど、それやるとこの周囲にまで気が回らねぇよ」
「それは俺の方でやる。お前は指示した場所に攻撃することだけに集中してくれればいい。……不安か?」
ブラッドで不安になるなら、誰だってダメに決まってる。
隣にいるのが心強く思えるのは、ブラッドだからこそだ。
「いーや。そういうことなら任せるぜ」
「ああ。右に5度、15ヤード先の上空来るぞ」
「あいよ」
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#キスブラ #書きかけ
2014年11月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する
仕上げる予定のない堀鹿:その1
Twitterの『リプが来たカップリングごとに今思いついたor書く予定なんてひとつもない小説の一シーンを晒す』タグで書いたもの。
『それは秘めたる演目の』 で話の中に使った劇の練習風景。
「私が生きているのは貴方の為。貴方の全てを私に下さるのなら……」
舞台の練習で台本を読んでいたら、パシッと丸めた台本を机に叩きつける音がした。
先輩が苦い顔をして、私を見てる。
「ストップ! そうじゃない、鹿島。もうちょっと、切羽詰まった苦しい感じを出せ」
「苦しい、ですね。もう一度お願いします」
「おう」
深呼吸して、姿勢を正し、もう一度同じ台詞を繰り返す。
「私が生きているのは貴方の為。……貴方の全てを私に下さるのなら、他には何も……」
「違う!」
再び、制止の声が飛んできたので、台詞を中断させた。
本当に、こういう演技指導での先輩は容赦がない。
相手役のお姫様にいたっては、顔が引き攣って怯えてしまっている。
私としては、先輩の妥協を許さない真摯な姿勢も、凄く好きな部分ではあるんだけども。
「……仕方ねぇ。一度俺がやってやるから、ニュアンス読み取れ」
「えっ!? 先輩がやってくれるんですか!? わー!」
「おまえが姫役な。相手役で感じた方がいいだろ」
「はい! お願いします!!」
先輩直々に演技してくれるなんて久しぶりだ。
しかも、相手役を私がやっていいなんてテンションが上がる。
立ち位置を姫役の方にして、先輩と向かい合うと、先輩が一瞬だけ口元に笑みを浮かべたあと――役者の顔になった。
「私が生きているのは貴方の為」
低く凜とした声に、一瞬で辺りが静まりかえる。
その場にいた全員が、瞬時に先輩の演技に引きずり込まれた。
「……貴方の全てを私に下さるのなら」
切ない表情が胸を焦がす。真っ直ぐに見つめられて、目が離せない。
「他には何も望みません。……貴方だけが欲しいのです」
先輩は私に全く触れていないのに、その言葉に引き込まれて、全身が熱くなるのを感じた。
あくまでも、演技のはずなのに。
Close
#堀鹿 #ネタメモ
Twitterの『リプが来たカップリングごとに今思いついたor書く予定なんてひとつもない小説の一シーンを晒す』タグで書いたもの。
『それは秘めたる演目の』 で話の中に使った劇の練習風景。
「私が生きているのは貴方の為。貴方の全てを私に下さるのなら……」
舞台の練習で台本を読んでいたら、パシッと丸めた台本を机に叩きつける音がした。
先輩が苦い顔をして、私を見てる。
「ストップ! そうじゃない、鹿島。もうちょっと、切羽詰まった苦しい感じを出せ」
「苦しい、ですね。もう一度お願いします」
「おう」
深呼吸して、姿勢を正し、もう一度同じ台詞を繰り返す。
「私が生きているのは貴方の為。……貴方の全てを私に下さるのなら、他には何も……」
「違う!」
再び、制止の声が飛んできたので、台詞を中断させた。
本当に、こういう演技指導での先輩は容赦がない。
相手役のお姫様にいたっては、顔が引き攣って怯えてしまっている。
私としては、先輩の妥協を許さない真摯な姿勢も、凄く好きな部分ではあるんだけども。
「……仕方ねぇ。一度俺がやってやるから、ニュアンス読み取れ」
「えっ!? 先輩がやってくれるんですか!? わー!」
「おまえが姫役な。相手役で感じた方がいいだろ」
「はい! お願いします!!」
先輩直々に演技してくれるなんて久しぶりだ。
しかも、相手役を私がやっていいなんてテンションが上がる。
立ち位置を姫役の方にして、先輩と向かい合うと、先輩が一瞬だけ口元に笑みを浮かべたあと――役者の顔になった。
「私が生きているのは貴方の為」
低く凜とした声に、一瞬で辺りが静まりかえる。
その場にいた全員が、瞬時に先輩の演技に引きずり込まれた。
「……貴方の全てを私に下さるのなら」
切ない表情が胸を焦がす。真っ直ぐに見つめられて、目が離せない。
「他には何も望みません。……貴方だけが欲しいのです」
先輩は私に全く触れていないのに、その言葉に引き込まれて、全身が熱くなるのを感じた。
あくまでも、演技のはずなのに。
Close
#堀鹿 #ネタメモ