避難所 短編・書きかけ置き場

No.80

仕上げる予定のない堀鹿:その1

Twitterの『リプが来たカップリングごとに今思いついたor書く予定なんてひとつもない小説の一シーンを晒す』タグで書いたもの。
『それは秘めたる演目の』 で話の中に使った劇の練習風景。

「私が生きているのは貴方の為。貴方の全てを私に下さるのなら……」

舞台の練習で台本を読んでいたら、パシッと丸めた台本を机に叩きつける音がした。
先輩が苦い顔をして、私を見てる。

「ストップ! そうじゃない、鹿島。もうちょっと、切羽詰まった苦しい感じを出せ」
「苦しい、ですね。もう一度お願いします」
「おう」

深呼吸して、姿勢を正し、もう一度同じ台詞を繰り返す。

「私が生きているのは貴方の為。……貴方の全てを私に下さるのなら、他には何も……」
「違う!」

再び、制止の声が飛んできたので、台詞を中断させた。
本当に、こういう演技指導での先輩は容赦がない。
相手役のお姫様にいたっては、顔が引き攣って怯えてしまっている。
私としては、先輩の妥協を許さない真摯な姿勢も、凄く好きな部分ではあるんだけども。

「……仕方ねぇ。一度俺がやってやるから、ニュアンス読み取れ」
「えっ!? 先輩がやってくれるんですか!? わー!」
「おまえが姫役な。相手役で感じた方がいいだろ」
「はい! お願いします!!」

先輩直々に演技してくれるなんて久しぶりだ。
しかも、相手役を私がやっていいなんてテンションが上がる。
立ち位置を姫役の方にして、先輩と向かい合うと、先輩が一瞬だけ口元に笑みを浮かべたあと――役者の顔になった。

「私が生きているのは貴方の為」

低く凜とした声に、一瞬で辺りが静まりかえる。
その場にいた全員が、瞬時に先輩の演技に引きずり込まれた。

「……貴方の全てを私に下さるのなら」

切ない表情が胸を焦がす。真っ直ぐに見つめられて、目が離せない。

「他には何も望みません。……貴方だけが欲しいのです」

先輩は私に全く触れていないのに、その言葉に引き込まれて、全身が熱くなるのを感じた。
あくまでも、演技のはずなのに。
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#堀鹿 #ネタメモ

■Information

@yukiha_hrksの書きかけ&pixivUP前の短編置き場。ジャンルもカプも雑多。
しばらくはエリオス(キスブラ他)が多くなりそう。
完成するかもしれないし、しないかもしれない。
らくがきは適度な頃に消し。
各ワンドロライで書いた分については後日サイト等にも置きます。
※こちらはポイピクが重いときの避難所です。
置いているものは大体一緒です。
Junkや未整頓だったサイトのEntryからも移行作業中。
タイムスタンプはサイトに置いている分はサイトの記録から、置いてない分は元ファイルの作成日。
https://whitealice.xyz/

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