全年全月20日の投稿[4件]
2020年12月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する
キスブラ版ワンドロライ第7回でのお題から『食事』『クリスマス』『愛情』を使って書いた話です。
※数年後の時間軸で、既に二人とも研修チームのメンターではない&キスブラが一緒に住んでるというのを想定の下に書いてます。
修正版はこちらです。
※pixivに纏める際に消します。
「お、【クリスマス・リーグ】の結果出たみたいだぜ」
街中にある大型ビジョンでは見慣れた光景と、ノースセクターの研修チームメンバーが映し出されていた。
なるほど、今年の勝者はノースセクターか。
「ああ、もうそんな時間か。……ふむ。もう少ししたら、パトロールを終了しても良さそうだな」
「ま、ここらに限らず、どこの地区も異常なさそうだしな。平和で何よりっと」
クリスマスとなると、研修チームは毎年恒例の【クリスマス・リーグ】に参戦しているから、その間のパトロールは俺たちのように研修チームに所属していないヒーローの仕事となる。
特にメジャーヒーローともなれば、その実力を買われ、通常よりも少ない人数でパトロールすることも多い。
今日、俺とキースが組む形でこの地区のパトロールに当たっているのもそれを考慮してのことだろう。
他に意図があっての人選ではないはずだ。……多分。
「せっかくのクリスマスなのに、仕事ってのも味気ねぇよなぁ」
「俺たちがヒーローになってから、休みだったクリスマスなど一度だってあったか?」
「いや、ねぇけどさ。気分の問題だよ」
――クリスマスなぁ……。一回か二回は祝ったことあったけど、ホントに小せぇ頃だわ。母親が家出て行く前だからなぁ。ああ、でもクリスマスに教会行くと食い物貰えたのは有り難かったから、アカデミー入学前はそれで教会行ったりしてたな。
――だから、クリスマスが楽しかった記憶なんて0とまではいかなくても、ほとんどねぇわ。思い入れもねぇよ。
かつてはそんなことを口にしていた男が、クリスマスに仕事が入っていることをぼやけるようになった境遇の変化を喜ぶべきだろう。
少なくとも、今のキースはクリスマスの楽しみ方を知っている。
「仕事が終わって、家に帰ったら、数時間はクリスマス気分を味わえるだろうに」
「そうだけどさ。あ…………こりゃ、雪降ってきたか?」
「雪だと?」
日が傾いて暗くなり始めた空を見上げたら、ややあって、雪が舞い落ちる様が確認出来た。
勢いは弱く、積もるほどではなさそうだが、このまま深夜まで降り続けば、薄ら白くなるくらいにはなるだろうか。
「ホワイトクリスマスだな」
「雪見酒か。悪くねぇな。例のワイン、帰ったら開けるんだよな?」
「ああ。甘口のようだから、お前の口にはもしかしたら合わないかもしれんが」
「でも、お前は好きだろ。どうしても合わなきゃ、日本酒の方でも開ける」
「一応、そっちは新年用にするつもりだったが……うん? ちょっと待て」
司令からの通信が入って、キースとの会話を一度切る。
何か異常でも発生したかと思ったが、そうではなく、パトロールが終了次第、タワーに寄らずそのまま帰宅して構わないとの連絡だった。
「……キース。パトロールの報告書を提出するのは明日でいいそうだ。今日はこのまま帰宅して構わんと」
「マジか。司令いいとこあんな。じゃ、いつもの時間に家で飯が食えるってことか」
「そうなる。真っ直ぐ帰るが構わんな?」
「おう。どうせ、大体の店もう閉まってんだし。ローストビーフ、どんな風に出来てるか楽しみだな」
「ああ」
日本の調味料を使ってローストビーフを作りたいと言ったのは俺だ。
評判の良さそうなレシピだったし、手順通りに昨夜仕込んだから問題はないと思うが。
ここからなら、俺たちの住んでいる家までは歩いて数分。
何となく足早になりながら、キースと並んで家への道を歩いていると、不意にキースが口を開いた。
「今日のパトロールさ、この組み合わせでこの場所って、配慮されたってやつなのかな」
「…………かもしれんな」
俺たちが一緒に暮らしているのは、知っている者も多い。
司令は当然知っている。
もしかしたら、キースの言うように配慮してくれたのかもしれない。
後日、少しばかり礼の品でも贈っておくかと思いながら、キースと肩が触れ合いそうになる距離まで近付き、家への道を歩いて行った。
Close
#キスブラ #ワンライ
※数年後の時間軸で、既に二人とも研修チームのメンターではない&キスブラが一緒に住んでるというのを想定の下に書いてます。
修正版はこちらです。
※pixivに纏める際に消します。
「お、【クリスマス・リーグ】の結果出たみたいだぜ」
街中にある大型ビジョンでは見慣れた光景と、ノースセクターの研修チームメンバーが映し出されていた。
なるほど、今年の勝者はノースセクターか。
「ああ、もうそんな時間か。……ふむ。もう少ししたら、パトロールを終了しても良さそうだな」
「ま、ここらに限らず、どこの地区も異常なさそうだしな。平和で何よりっと」
クリスマスとなると、研修チームは毎年恒例の【クリスマス・リーグ】に参戦しているから、その間のパトロールは俺たちのように研修チームに所属していないヒーローの仕事となる。
特にメジャーヒーローともなれば、その実力を買われ、通常よりも少ない人数でパトロールすることも多い。
今日、俺とキースが組む形でこの地区のパトロールに当たっているのもそれを考慮してのことだろう。
他に意図があっての人選ではないはずだ。……多分。
「せっかくのクリスマスなのに、仕事ってのも味気ねぇよなぁ」
「俺たちがヒーローになってから、休みだったクリスマスなど一度だってあったか?」
「いや、ねぇけどさ。気分の問題だよ」
――クリスマスなぁ……。一回か二回は祝ったことあったけど、ホントに小せぇ頃だわ。母親が家出て行く前だからなぁ。ああ、でもクリスマスに教会行くと食い物貰えたのは有り難かったから、アカデミー入学前はそれで教会行ったりしてたな。
――だから、クリスマスが楽しかった記憶なんて0とまではいかなくても、ほとんどねぇわ。思い入れもねぇよ。
かつてはそんなことを口にしていた男が、クリスマスに仕事が入っていることをぼやけるようになった境遇の変化を喜ぶべきだろう。
少なくとも、今のキースはクリスマスの楽しみ方を知っている。
「仕事が終わって、家に帰ったら、数時間はクリスマス気分を味わえるだろうに」
「そうだけどさ。あ…………こりゃ、雪降ってきたか?」
「雪だと?」
日が傾いて暗くなり始めた空を見上げたら、ややあって、雪が舞い落ちる様が確認出来た。
勢いは弱く、積もるほどではなさそうだが、このまま深夜まで降り続けば、薄ら白くなるくらいにはなるだろうか。
「ホワイトクリスマスだな」
「雪見酒か。悪くねぇな。例のワイン、帰ったら開けるんだよな?」
「ああ。甘口のようだから、お前の口にはもしかしたら合わないかもしれんが」
「でも、お前は好きだろ。どうしても合わなきゃ、日本酒の方でも開ける」
「一応、そっちは新年用にするつもりだったが……うん? ちょっと待て」
司令からの通信が入って、キースとの会話を一度切る。
何か異常でも発生したかと思ったが、そうではなく、パトロールが終了次第、タワーに寄らずそのまま帰宅して構わないとの連絡だった。
「……キース。パトロールの報告書を提出するのは明日でいいそうだ。今日はこのまま帰宅して構わんと」
「マジか。司令いいとこあんな。じゃ、いつもの時間に家で飯が食えるってことか」
「そうなる。真っ直ぐ帰るが構わんな?」
「おう。どうせ、大体の店もう閉まってんだし。ローストビーフ、どんな風に出来てるか楽しみだな」
「ああ」
日本の調味料を使ってローストビーフを作りたいと言ったのは俺だ。
評判の良さそうなレシピだったし、手順通りに昨夜仕込んだから問題はないと思うが。
ここからなら、俺たちの住んでいる家までは歩いて数分。
何となく足早になりながら、キースと並んで家への道を歩いていると、不意にキースが口を開いた。
「今日のパトロールさ、この組み合わせでこの場所って、配慮されたってやつなのかな」
「…………かもしれんな」
俺たちが一緒に暮らしているのは、知っている者も多い。
司令は当然知っている。
もしかしたら、キースの言うように配慮してくれたのかもしれない。
後日、少しばかり礼の品でも贈っておくかと思いながら、キースと肩が触れ合いそうになる距離まで近付き、家への道を歩いて行った。
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#キスブラ #ワンライ
2020年11月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する
オスカーと出会った時のキスブラ。
ビームス家に奉公人として約8年ってことは、出会いはルーキー時代→その場にキースも一緒にいてもおかしくないな、というとこから出来たネタ。
そのうちちゃんと仕上げたい。というかネタはいくつも浮かんでるけど書くのが追いついてない……。
俺たちに少年がぶつかった直後、キースがサイコキネシスを使って、走り去ろうとした少年を瞬時に抑え込んだ。
「なっ、離せっ!」
「……お前、ここら辺根城にしてるなら、警察とヒーローには手ぇ出すなって誰かに言われなかったか? それともこっちがルーキーだからと侮ったか。残念だったな」
「キース! 貴様、一般人相手に……っ」
「これ。お前のだろ?」
「っ!?」
キースが能力で俺のところに寄越した財布は見覚えがある、なんてものではなかった。
とっさに財布を入れていたはずのポケットを探ったが、あるべきものはそこにない。
「俺の、財布……?」
「一応、中確認してみろ。すぐ捕まえたから大丈夫だと思うけど」
「盗られた、のか」
全く気付かなかった。
「中は無事だ。だが――」
窃盗の現行犯だ。このまま見過ごすわけにはいかない。
キースと少年に近寄ろうとしたが、キースがこっちに来るなと手で指し示す。
「いいか。十番街のはずれにCieloって赤い看板出してるバーがある。夕方、店が開いたらそこのマスターにキース・マックスに聞いてきたって言えば、今晩の飯と寝床くらいはどうにかしてくれるはずだ。――行け。もうヒーローに手ぇ出すのはやめとくんだな」
「なっ、おい!」
キースが少年から手を離すと、少年が俺たちをちらっと見た後、直ぐに走り出した。
慌てて、後を追おうとしたが、そこでキースに腕を掴まれる。
「見逃してやれ、ブラッド」
「そうもいかん。俺の財布が無事でも、他の者に対して同じことをしないとは限らない」
「だろうな。手慣れてる様子だったから、まぁさっきのが初めてじゃねぇだろうさ」
「ならば、なおのこと――」
「けど、アイツらはそうしなきゃ生きていけねぇんだよ」
「っ……」
キースが俺の腕を掴んでいる手に力を籠めた。
俺の方を見ない目が宿している暗さに二の句が告げられない。
「ここにいるガキはみんな家がないか、あってもまともに帰れねぇヤツばかりだ。親の庇護なんてもんはねぇ。自分で生きていくための金をどうにかしねぇ限り、野垂れ死ぬしかねぇんだよ」
「…………キース」
「警察が保護して、収容施設にいれられたところで、結局一時的なもんだ。ま、ある程度金稼いで、喧嘩も強いってなりゃ、ヒーローを目指して、環境を変えるってことは出来るけどな。そうするまでに生き延びてなけりゃどうにもなんねぇ」
「…………それはお前の体験談か」
キースの育ってきた環境が、俺とは全く違うことは知っていた。
アカデミーに入る前は、人には堂々と言えないようなこともしたというのも聞いた。
詳細まではしらないが、恐らく今の少年のように窃盗などの経験があったということだろう。
キースが自嘲するような笑みを浮かべた。
「お前みたいな坊ちゃん育ちにゃ想像しにくいだろうけどさ」
その言葉に微かに胸の奥が痛んだ。
物心ついた頃から両親は忙しく、ゆっくり話も出来ず、一抹の寂しさこそあったが、与えられた生活そのものは恵まれた方だっただろうという自覚はある。
少なくとも衣食住の面において、不安を抱いたことは一度もない。
――走り去った少年の腕の細さと傷みが酷かった服を思い出す。
かつてのキースもそうだったのだろうか。
頼れるもののない中で、必死に生き延びてヒーローを目指し、今を手に入れて――。
「……先程の少年一人なら、家に事情を話せば、面倒をみてくれると思う」
「おい、ブラッド?」
俺の言った意味を理解し切れていないのか、キースが首を傾げる。
「ヒーローを目指せるだけの素質もありそうだしな。……お前があの少年に能力を使ったのは、そうでなければ逃げられると判断したからだろう?」
「ブラッド」
「――俺だって、誰も彼もを助けられるなどとは思っていない。だが、助けた一人がヒーローとなることで、いずれ他の誰かを助け、守っていくことなら出来るはずだ。先程の少年と似たような環境で過ごしただろうお前が、今はヒーローとしてそうであるように」
キースはアカデミーの頃から体術に長けている。生半可な相手なら抑えるのに能力を使うことなどしなかったはずだ。
そのキースに能力を使わせたという点で、素質は十分にあると判断出来る。
「……さっきのガキがヒーローを目指すとは限んねぇぞ。そもそも、オレが教えたバーに行くかどうかもわからねぇ」
「そうだな。だが、目指さないとも限らないだろう。今日の仕事が終わったら、Cieloとやらに行ってみる」
「――好きにしろよ。オレはもう知らねぇぞ」
「ああ」
「あー……お前も妙なとこで頑固だよな……。マスターが警戒しそうなら、オレの名前出しとけ。一応、伝えておいてはやる」
「感謝する」
Close
#キスブラ #書きかけ
ビームス家に奉公人として約8年ってことは、出会いはルーキー時代→その場にキースも一緒にいてもおかしくないな、というとこから出来たネタ。
そのうちちゃんと仕上げたい。というかネタはいくつも浮かんでるけど書くのが追いついてない……。
俺たちに少年がぶつかった直後、キースがサイコキネシスを使って、走り去ろうとした少年を瞬時に抑え込んだ。
「なっ、離せっ!」
「……お前、ここら辺根城にしてるなら、警察とヒーローには手ぇ出すなって誰かに言われなかったか? それともこっちがルーキーだからと侮ったか。残念だったな」
「キース! 貴様、一般人相手に……っ」
「これ。お前のだろ?」
「っ!?」
キースが能力で俺のところに寄越した財布は見覚えがある、なんてものではなかった。
とっさに財布を入れていたはずのポケットを探ったが、あるべきものはそこにない。
「俺の、財布……?」
「一応、中確認してみろ。すぐ捕まえたから大丈夫だと思うけど」
「盗られた、のか」
全く気付かなかった。
「中は無事だ。だが――」
窃盗の現行犯だ。このまま見過ごすわけにはいかない。
キースと少年に近寄ろうとしたが、キースがこっちに来るなと手で指し示す。
「いいか。十番街のはずれにCieloって赤い看板出してるバーがある。夕方、店が開いたらそこのマスターにキース・マックスに聞いてきたって言えば、今晩の飯と寝床くらいはどうにかしてくれるはずだ。――行け。もうヒーローに手ぇ出すのはやめとくんだな」
「なっ、おい!」
キースが少年から手を離すと、少年が俺たちをちらっと見た後、直ぐに走り出した。
慌てて、後を追おうとしたが、そこでキースに腕を掴まれる。
「見逃してやれ、ブラッド」
「そうもいかん。俺の財布が無事でも、他の者に対して同じことをしないとは限らない」
「だろうな。手慣れてる様子だったから、まぁさっきのが初めてじゃねぇだろうさ」
「ならば、なおのこと――」
「けど、アイツらはそうしなきゃ生きていけねぇんだよ」
「っ……」
キースが俺の腕を掴んでいる手に力を籠めた。
俺の方を見ない目が宿している暗さに二の句が告げられない。
「ここにいるガキはみんな家がないか、あってもまともに帰れねぇヤツばかりだ。親の庇護なんてもんはねぇ。自分で生きていくための金をどうにかしねぇ限り、野垂れ死ぬしかねぇんだよ」
「…………キース」
「警察が保護して、収容施設にいれられたところで、結局一時的なもんだ。ま、ある程度金稼いで、喧嘩も強いってなりゃ、ヒーローを目指して、環境を変えるってことは出来るけどな。そうするまでに生き延びてなけりゃどうにもなんねぇ」
「…………それはお前の体験談か」
キースの育ってきた環境が、俺とは全く違うことは知っていた。
アカデミーに入る前は、人には堂々と言えないようなこともしたというのも聞いた。
詳細まではしらないが、恐らく今の少年のように窃盗などの経験があったということだろう。
キースが自嘲するような笑みを浮かべた。
「お前みたいな坊ちゃん育ちにゃ想像しにくいだろうけどさ」
その言葉に微かに胸の奥が痛んだ。
物心ついた頃から両親は忙しく、ゆっくり話も出来ず、一抹の寂しさこそあったが、与えられた生活そのものは恵まれた方だっただろうという自覚はある。
少なくとも衣食住の面において、不安を抱いたことは一度もない。
――走り去った少年の腕の細さと傷みが酷かった服を思い出す。
かつてのキースもそうだったのだろうか。
頼れるもののない中で、必死に生き延びてヒーローを目指し、今を手に入れて――。
「……先程の少年一人なら、家に事情を話せば、面倒をみてくれると思う」
「おい、ブラッド?」
俺の言った意味を理解し切れていないのか、キースが首を傾げる。
「ヒーローを目指せるだけの素質もありそうだしな。……お前があの少年に能力を使ったのは、そうでなければ逃げられると判断したからだろう?」
「ブラッド」
「――俺だって、誰も彼もを助けられるなどとは思っていない。だが、助けた一人がヒーローとなることで、いずれ他の誰かを助け、守っていくことなら出来るはずだ。先程の少年と似たような環境で過ごしただろうお前が、今はヒーローとしてそうであるように」
キースはアカデミーの頃から体術に長けている。生半可な相手なら抑えるのに能力を使うことなどしなかったはずだ。
そのキースに能力を使わせたという点で、素質は十分にあると判断出来る。
「……さっきのガキがヒーローを目指すとは限んねぇぞ。そもそも、オレが教えたバーに行くかどうかもわからねぇ」
「そうだな。だが、目指さないとも限らないだろう。今日の仕事が終わったら、Cieloとやらに行ってみる」
「――好きにしろよ。オレはもう知らねぇぞ」
「ああ」
「あー……お前も妙なとこで頑固だよな……。マスターが警戒しそうなら、オレの名前出しとけ。一応、伝えておいてはやる」
「感謝する」
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#キスブラ #書きかけ
2020年9月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する
Daybreak(仮題)
第10期生として入所する直前のキスブラ。
サブスタンス接種時の副作用が酷いキースの話。
まだ長くなりそうなので冒頭部分だけ。
体の関係はアカデミー時代からある状態。
サブスタンス接種で体調不良のキースを看病するブラッド→復活後模擬戦でヒーロー能力を試す二人→時間切れで模擬戦中断。燻っている衝動からセックス
って感じになる予定。
[Keith's Side]
気付いた時にはフローリングの床の上。
頭を起こそうとしたが、途端に割れるような痛みが走って、結局少しだけ頭の位置をずらして終わった。
床から伝わる冷たさは火照った顔には心地良いが、固さのせいで体の節々が痛い。
いや、痛いのは熱のせいもあるか。
意識をなくす前の部屋は暗かったが、今はカーテンの隙間から零れた日光から察するに、夜が明けてからそれなりの時間が経っているんだろう。
「うえ……今何時、だ」
手探りで周囲を探ってみるも、触れる範囲にスマホらしきものはない。
腕時計も確かテーブルの上だ。
時間を確認しようにも、頭を上げるしんどさを思うと踏み切れない。
寝る前から酷かった頭痛は、さらに悪化しているように思えた。
「くそ……風邪と大差ねぇって話じゃ……なかったのかよ」
元々、体が頑丈なのが取り柄で、風邪もほとんど引いた覚えはないが、それでもこれは――いや、だからこそか。
体調を崩すなんてことが滅多にねぇからこそ、今の状態がかなりこたえているのかも知れねぇ。
第十期ルーキーの入所式まであと数日。
配属される前にヒーロー能力を得るために、つい先日サブスタンスを接種した。
サブスタンスの接種に伴う副作用からくる体調不良は、大抵は一日か二日、長くても三、四日程で収まると聞いていた。
稀に一週間ほどかかるケースもあるようだが、滅多にあるもんじゃないらしい。
だから、その日数ならどうにか一人で乗り切れるだろうって思っていた。
オレの日にちの感覚が間違っていなきゃ、今日で接種してから四日目。
昨日だか一昨日だかに測った時の熱は39℃を超えていた。
今日はまだ測っちゃいねぇが、この感覚じゃ大して下がってねぇだろう。
初日の夕方までは余裕だった。多少の体の怠さはあっても、体温も微熱程度だったから高を括っていた。
一転したのは夕食にデリバリーで頼んだピザを受け取ったときだ。
デリバリーが到着する前から胃が少しムカムカするとは思っていたが、チーズの匂いで吐くとは思わなかった。
当然、ピザは食ってねぇから、不調はサブスタンスの投与によるものだとはすぐ分かったが、そこからがヤバかった。
坂道を転がり落ちるように体調が悪化して、ベッドとトイレを往復するので精一杯。
挙げ句、冷蔵庫のスポーツドリンクを取ろうとしたはいいものの、スポーツドリンクを取りだし、ベッドに戻ろうとしたところで――力尽きて床に頽れ、今に至る。
スポーツドリンクのペットボトルは手が届く位置にある。
せめて、水分だけでも摂らないとマズいと分かっていても、酷い頭痛で頭を上げる気にならねぇ。
喉は渇いているんだが、その為に動くのがまずしんどい。
せめて、ベッドには戻りたいが、体起こすって段階がまずキツい。
「参ったな……こりゃ」
仮に最長の一週間でこの症状が収まるとしたら、あと三日。
ようやく折り返しを過ぎたとこだとすれば先はまだ長い。
くそ……体力落ちそうだな。
サブスタンスが体に馴染んじまえば、今度は回復が通常よりも早くなるって話だから、回復した後にトレーニング増やして、体力を取り戻すしかねぇだろう。
「…………?」
ふと、玄関の方から何か物音が聞こえた気がした。
続いて、人の気配と足音がこっちに近付いてくる。
おいおい、強盗とか勘弁してくれよ。
普段ならともかく、今の調子じゃまともにやり合えそうにねぇってのに――。
「キース!」
「ん…………」
聞き覚えのある声が近いと思ったところで、うつ伏せだった体をひっくり返されて支えられた。
ぐらりと視界が揺れたのに続いて、額に手が当てられる。
手が避けられ間近にあった顔は、この数年アカデミーで嫌というほど日常的に見ていたそれで。
「っ……ブラッ……ド…………?」
「ああ」
「おま……なん、で、ここ……に」
「お前がメッセージも読まず、電話にも出なかったから、何かあったのかと思って来てみた。玄関の鍵は開いていたからそのまま入らせて貰った」
「あ……あー……デリバリーでピザ、頼んだ、とき……閉め損ねた、か」
ピザを受け取ったものの、漂ってくるチーズの匂いに吐き気がして、デリバリーの配達員が玄関の扉を閉めた途端、トイレに直行して吐いたのを思い出す。
そうだ、あの時は玄関の鍵まで閉める余裕がなかったんだったっけ。
「サブスタンス接種の影響がまだ抜けていないのか。熱は測ったか?」
「昨日……いや、一昨日、か? 測ったけど、その後はわかんねぇ……」
「なぜ、タワーに行かなかった。サブスタンスの投与による副作用が酷い場合は、タワーの医務室に行けと指示があったはずだ」
「……めんど……くさかったんだよ……。どうせ、薬使えねぇし、長くて三、四日で収まるって話、だったろ……」
サブスタンスを接種した直後は、体にヒーロー能力が馴染むまで原則として薬の類を使えない。
状態が安定するまでは、医務室に行ったところで精々栄養剤を点滴して貰う位しか出来ねぇ。
今の状況を考えると、まだその方がマシだっただろうが、正直吐いた時にはタワーまで行こうという気になれなかった。
この家からタワーまではタクシーを使っても二、三十分はかかる。
移動中にまた吐くかもしれねぇと思うと躊躇われた。
「最長で一週間の可能性があるとも聞いてるだろう。……いや、今言っても仕方ないな。食事は」
「……吐いちまってから……食ってねぇ……」
「水分……は、これを摂ろうとしていたのか」
オレの近くに転がってたスポーツドリンクを見つけて、ブラッドが手にしたのが見えた。
「そ……。冷蔵庫から取り出したとこで……しんどくて床に突っ伏しちまったけど、な…………んぐ……」
ブラッドがオレの頭を支えていた腕を少し上げようとしたところで、また頭に激しい痛みが走る。
表情に出ちまったのか、ブラッドがそこからオレの頭の位置を上げるのをやめた。
「開封……はしていないな。なら、常温の方がいいか。キース。口を開けろ」
「ん…………んっ!?」
ブラッドが片腕でオレの頭を支えたまま、空いている方の腕と歯を使って、スポーツドリンクのペットボトルの蓋をこじ開ける。
そのまま飲ませてくれるのかと思ったら、ブラッドがスポーツドリンクを口に含み……それをオレに口移ししてきた。
ブラッドの口内の温度も移した、生温いスポーツドリンクが喉を滑り落ちていく。
流石にブラッドが二口目をオレに飲ませようとしたところで、一旦止める。
「ちょ……お……前、俺、風呂……どころか、歯さえ、まともに磨いて、な……」
吐いた直後に水とお茶で口を濯いだがそれで精一杯だったし、それからも日にちが経っている。
いくら、ブラッドとキスやセックスをするような関係とは言っても、今の状態で口移しなんてのは気が引ける。
ブラッドは結構綺麗好きなのも知っているから尚更だ。
「そのぐらいは察している。……今は頭を上げるのも辛いのだろう。構わんから、これでまずは水分を取れ。ほら」
「…………」
反論したかったが、結局それもしんどくてブラッドに言われるがままに、幾度か口移しでスポーツドリンクを飲ませて貰う。
ある程度の量を飲むと、全身の熱っぽさが少し和らぎ、意識もさっきまでに比べてハッキリしてきた。
恐る恐る上半身を起こすと、ブラッドが支えてくれていたのもあってか、動いてもさっきほどの頭痛はなかったことにほっとする。
「……ちょっとマシに……なった。サンキュ……」
「肩を貸そう。ベッドまで動けるか」
「ああ……っと」
「足元に気をつけろ」
「ん……」
ブラッドの肩を借りて、重い足を引きずり、どうにかベッドまで歩く。
十数歩しかないはずの距離がやけに遠く感じ、自分の不調っぷりを嫌でも自覚させられた。
寝かせて貰ったところで、枕元に置いてあった体温計を渡され、脇に突っ込んで測る。
数秒で計測が終わった事を知らせる音が鳴り、取り出そうとしたがブラッドが引き抜く方が早かった。
「……38.8℃」
ブラッドが曇った表情で体温計に表示された温度を読み上げる。
「あー……まだそんなあんの……かよ。どうりで熱い、わけだ……」
「『まだ』? これより熱が高かったのか」
「前測った時は……39℃……超えて、た」
それを考えれば少しは熱が下がったとはいえ、とても改善したとは言い難い。
「……悪いが、勝手に色々使わせて貰うぞ」
「ん? ああ……」
ブラッドがベッドから離れて、冷蔵庫から氷を取り出し、キッチンで何やらごそごそとやり始めた。
かと思えば、そうしないうちに氷の入ったポリ袋いくつかとタオルを抱えて戻ってくる。
ああ、そういや、アカデミーの寮からここに引っ越す時、コイツにも手伝って貰ってたんだった。
多分、その時に物の置き場所を何となく覚えてたりしてたんだろう、妙に記憶力良いよなコイツとぼんやり思っていたら、布団を剥がされる。
「首と脇と鼠蹊部を冷やす。少しは楽になるはずだ」
「あー……頼む」
首の両側、両脇、続いて鼠蹊部へと氷の入ったポリ袋にタオルを巻いたものが置かれていく。
冷やされたそれぞれの場所から、じわじわと冷えた血が流れていくのが分かった。
布団が再び掛けられ、一旦、ブラッドがまた台所に行ったかと思えば、直ぐ戻ってきて、今度は額に濡れたタオルが置かれる。
「うお……気持ち……い……」
「そのまま少し寝てろ。今、食えそうなものを用意する」
「悪ぃ……」
冷やすことで体の灼熱感が和らいだからなのか、急に眠気が襲ってきた。
台所から聞こえてきた物音も不快なものではなく、むしろ安心感さえある。
多分、ブラッドが良いタイミングで起こしてくれるだろうと、眠気に任せて目を閉じた。
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#キスブラ #書きかけ
第10期生として入所する直前のキスブラ。
サブスタンス接種時の副作用が酷いキースの話。
まだ長くなりそうなので冒頭部分だけ。
体の関係はアカデミー時代からある状態。
サブスタンス接種で体調不良のキースを看病するブラッド→復活後模擬戦でヒーロー能力を試す二人→時間切れで模擬戦中断。燻っている衝動からセックス
って感じになる予定。
[Keith's Side]
気付いた時にはフローリングの床の上。
頭を起こそうとしたが、途端に割れるような痛みが走って、結局少しだけ頭の位置をずらして終わった。
床から伝わる冷たさは火照った顔には心地良いが、固さのせいで体の節々が痛い。
いや、痛いのは熱のせいもあるか。
意識をなくす前の部屋は暗かったが、今はカーテンの隙間から零れた日光から察するに、夜が明けてからそれなりの時間が経っているんだろう。
「うえ……今何時、だ」
手探りで周囲を探ってみるも、触れる範囲にスマホらしきものはない。
腕時計も確かテーブルの上だ。
時間を確認しようにも、頭を上げるしんどさを思うと踏み切れない。
寝る前から酷かった頭痛は、さらに悪化しているように思えた。
「くそ……風邪と大差ねぇって話じゃ……なかったのかよ」
元々、体が頑丈なのが取り柄で、風邪もほとんど引いた覚えはないが、それでもこれは――いや、だからこそか。
体調を崩すなんてことが滅多にねぇからこそ、今の状態がかなりこたえているのかも知れねぇ。
第十期ルーキーの入所式まであと数日。
配属される前にヒーロー能力を得るために、つい先日サブスタンスを接種した。
サブスタンスの接種に伴う副作用からくる体調不良は、大抵は一日か二日、長くても三、四日程で収まると聞いていた。
稀に一週間ほどかかるケースもあるようだが、滅多にあるもんじゃないらしい。
だから、その日数ならどうにか一人で乗り切れるだろうって思っていた。
オレの日にちの感覚が間違っていなきゃ、今日で接種してから四日目。
昨日だか一昨日だかに測った時の熱は39℃を超えていた。
今日はまだ測っちゃいねぇが、この感覚じゃ大して下がってねぇだろう。
初日の夕方までは余裕だった。多少の体の怠さはあっても、体温も微熱程度だったから高を括っていた。
一転したのは夕食にデリバリーで頼んだピザを受け取ったときだ。
デリバリーが到着する前から胃が少しムカムカするとは思っていたが、チーズの匂いで吐くとは思わなかった。
当然、ピザは食ってねぇから、不調はサブスタンスの投与によるものだとはすぐ分かったが、そこからがヤバかった。
坂道を転がり落ちるように体調が悪化して、ベッドとトイレを往復するので精一杯。
挙げ句、冷蔵庫のスポーツドリンクを取ろうとしたはいいものの、スポーツドリンクを取りだし、ベッドに戻ろうとしたところで――力尽きて床に頽れ、今に至る。
スポーツドリンクのペットボトルは手が届く位置にある。
せめて、水分だけでも摂らないとマズいと分かっていても、酷い頭痛で頭を上げる気にならねぇ。
喉は渇いているんだが、その為に動くのがまずしんどい。
せめて、ベッドには戻りたいが、体起こすって段階がまずキツい。
「参ったな……こりゃ」
仮に最長の一週間でこの症状が収まるとしたら、あと三日。
ようやく折り返しを過ぎたとこだとすれば先はまだ長い。
くそ……体力落ちそうだな。
サブスタンスが体に馴染んじまえば、今度は回復が通常よりも早くなるって話だから、回復した後にトレーニング増やして、体力を取り戻すしかねぇだろう。
「…………?」
ふと、玄関の方から何か物音が聞こえた気がした。
続いて、人の気配と足音がこっちに近付いてくる。
おいおい、強盗とか勘弁してくれよ。
普段ならともかく、今の調子じゃまともにやり合えそうにねぇってのに――。
「キース!」
「ん…………」
聞き覚えのある声が近いと思ったところで、うつ伏せだった体をひっくり返されて支えられた。
ぐらりと視界が揺れたのに続いて、額に手が当てられる。
手が避けられ間近にあった顔は、この数年アカデミーで嫌というほど日常的に見ていたそれで。
「っ……ブラッ……ド…………?」
「ああ」
「おま……なん、で、ここ……に」
「お前がメッセージも読まず、電話にも出なかったから、何かあったのかと思って来てみた。玄関の鍵は開いていたからそのまま入らせて貰った」
「あ……あー……デリバリーでピザ、頼んだ、とき……閉め損ねた、か」
ピザを受け取ったものの、漂ってくるチーズの匂いに吐き気がして、デリバリーの配達員が玄関の扉を閉めた途端、トイレに直行して吐いたのを思い出す。
そうだ、あの時は玄関の鍵まで閉める余裕がなかったんだったっけ。
「サブスタンス接種の影響がまだ抜けていないのか。熱は測ったか?」
「昨日……いや、一昨日、か? 測ったけど、その後はわかんねぇ……」
「なぜ、タワーに行かなかった。サブスタンスの投与による副作用が酷い場合は、タワーの医務室に行けと指示があったはずだ」
「……めんど……くさかったんだよ……。どうせ、薬使えねぇし、長くて三、四日で収まるって話、だったろ……」
サブスタンスを接種した直後は、体にヒーロー能力が馴染むまで原則として薬の類を使えない。
状態が安定するまでは、医務室に行ったところで精々栄養剤を点滴して貰う位しか出来ねぇ。
今の状況を考えると、まだその方がマシだっただろうが、正直吐いた時にはタワーまで行こうという気になれなかった。
この家からタワーまではタクシーを使っても二、三十分はかかる。
移動中にまた吐くかもしれねぇと思うと躊躇われた。
「最長で一週間の可能性があるとも聞いてるだろう。……いや、今言っても仕方ないな。食事は」
「……吐いちまってから……食ってねぇ……」
「水分……は、これを摂ろうとしていたのか」
オレの近くに転がってたスポーツドリンクを見つけて、ブラッドが手にしたのが見えた。
「そ……。冷蔵庫から取り出したとこで……しんどくて床に突っ伏しちまったけど、な…………んぐ……」
ブラッドがオレの頭を支えていた腕を少し上げようとしたところで、また頭に激しい痛みが走る。
表情に出ちまったのか、ブラッドがそこからオレの頭の位置を上げるのをやめた。
「開封……はしていないな。なら、常温の方がいいか。キース。口を開けろ」
「ん…………んっ!?」
ブラッドが片腕でオレの頭を支えたまま、空いている方の腕と歯を使って、スポーツドリンクのペットボトルの蓋をこじ開ける。
そのまま飲ませてくれるのかと思ったら、ブラッドがスポーツドリンクを口に含み……それをオレに口移ししてきた。
ブラッドの口内の温度も移した、生温いスポーツドリンクが喉を滑り落ちていく。
流石にブラッドが二口目をオレに飲ませようとしたところで、一旦止める。
「ちょ……お……前、俺、風呂……どころか、歯さえ、まともに磨いて、な……」
吐いた直後に水とお茶で口を濯いだがそれで精一杯だったし、それからも日にちが経っている。
いくら、ブラッドとキスやセックスをするような関係とは言っても、今の状態で口移しなんてのは気が引ける。
ブラッドは結構綺麗好きなのも知っているから尚更だ。
「そのぐらいは察している。……今は頭を上げるのも辛いのだろう。構わんから、これでまずは水分を取れ。ほら」
「…………」
反論したかったが、結局それもしんどくてブラッドに言われるがままに、幾度か口移しでスポーツドリンクを飲ませて貰う。
ある程度の量を飲むと、全身の熱っぽさが少し和らぎ、意識もさっきまでに比べてハッキリしてきた。
恐る恐る上半身を起こすと、ブラッドが支えてくれていたのもあってか、動いてもさっきほどの頭痛はなかったことにほっとする。
「……ちょっとマシに……なった。サンキュ……」
「肩を貸そう。ベッドまで動けるか」
「ああ……っと」
「足元に気をつけろ」
「ん……」
ブラッドの肩を借りて、重い足を引きずり、どうにかベッドまで歩く。
十数歩しかないはずの距離がやけに遠く感じ、自分の不調っぷりを嫌でも自覚させられた。
寝かせて貰ったところで、枕元に置いてあった体温計を渡され、脇に突っ込んで測る。
数秒で計測が終わった事を知らせる音が鳴り、取り出そうとしたがブラッドが引き抜く方が早かった。
「……38.8℃」
ブラッドが曇った表情で体温計に表示された温度を読み上げる。
「あー……まだそんなあんの……かよ。どうりで熱い、わけだ……」
「『まだ』? これより熱が高かったのか」
「前測った時は……39℃……超えて、た」
それを考えれば少しは熱が下がったとはいえ、とても改善したとは言い難い。
「……悪いが、勝手に色々使わせて貰うぞ」
「ん? ああ……」
ブラッドがベッドから離れて、冷蔵庫から氷を取り出し、キッチンで何やらごそごそとやり始めた。
かと思えば、そうしないうちに氷の入ったポリ袋いくつかとタオルを抱えて戻ってくる。
ああ、そういや、アカデミーの寮からここに引っ越す時、コイツにも手伝って貰ってたんだった。
多分、その時に物の置き場所を何となく覚えてたりしてたんだろう、妙に記憶力良いよなコイツとぼんやり思っていたら、布団を剥がされる。
「首と脇と鼠蹊部を冷やす。少しは楽になるはずだ」
「あー……頼む」
首の両側、両脇、続いて鼠蹊部へと氷の入ったポリ袋にタオルを巻いたものが置かれていく。
冷やされたそれぞれの場所から、じわじわと冷えた血が流れていくのが分かった。
布団が再び掛けられ、一旦、ブラッドがまた台所に行ったかと思えば、直ぐ戻ってきて、今度は額に濡れたタオルが置かれる。
「うお……気持ち……い……」
「そのまま少し寝てろ。今、食えそうなものを用意する」
「悪ぃ……」
冷やすことで体の灼熱感が和らいだからなのか、急に眠気が襲ってきた。
台所から聞こえてきた物音も不快なものではなく、むしろ安心感さえある。
多分、ブラッドが良いタイミングで起こしてくれるだろうと、眠気に任せて目を閉じた。
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#キスブラ #書きかけ
キスブラで模擬戦
ヒーロー能力を無効にされた場合も考えて、体術面も鍛えておこうという流れになり、南&西での合同演習で、キスブラが模擬戦する話。
バトルシーン難しいので、いつになるのか……。
あと、人数そこそこいるので、三人称で書きたい話。
(ヒーロー能力を無効化された場合のことを考え、トレーニングルームを一時能力を使えないように施した後、体術の手本を見せるという流れ)
「キース」
「ん?」
「出ろ。俺とお前とで模擬戦をやるぞ」
「ええ……お前相手だと手ぇ抜けねぇからめんどくさ……」
「貴様、先程俺が説明した内容を聞いていたか。たまには真っ当にルーキーたちの手本になるんだな」
「オスカーとやりゃいいじゃねぇか」
「何の為の合同演習だと思っている。……お前がそういうつもりなら」
(他の人には聞こえないようにブラッドがキースに耳打ちすると、キースの顔色が変わる)
「やっ、やめろ、それだけは! わかった、やる。やるから勘弁してくれ!」
「わかればいい」
「……ったく、この暴君が。つか、やっぱりフェイスとお前兄弟だな。そっくりだ」
「「は?」」
(ブラッドとフェイスが揃って首を傾げる)
(ダイナーイベでフェイスがキースに伏せ字で何やら言ったあの流れをキースは示しているという想定)
「で? 時間はどうすんだ?」
「そうだな、二十分で行こう。オスカー。時間の計測、あと開始と終了の合図を頼む」
「イエッサー」
(いざ、模擬戦開始。当初はジュニアが五分はもてよ、クソメンター!などと囃していたが途中で状況に無言になる)
「ブラッドが……少し押されてる……?」
「凄ぇ……何だあれ」
「……ねぇ、オスカー。もしかしてヒーロー能力なくてもキースって強いの」
「かなり。体術に関して言えば、現役のヒーローでは一番かもしれません」
「はぁ!? マジかよ」
「アカデミーの頃から右に出るものがいないくらいだったとか。俺は体術でキースさんにまだ勝てたことがありませんし、ブラッドさまも五回に一回勝てるかどうかだと」
「うっそだろ……」
「伊達にメジャーヒーローじゃないってことか……」
(模擬戦終了。結果は引き分け)
「くっそ、結局引き分けかよ」
「……あと、五分長ければ恐らく俺が負けた」
「たらればなんて意味がねぇよ……って、ジュニア? どうし……」
(ジュニアがキースの胸ぐら掴みながら文句を言い始める)
「こ…………っの、クソメンター! お前、あんだけ動けるんならなんで普段からやんねーんだよ!! まともに指導しろっての!!」
「あああ、だからやりたくなかったんだっての……」
※多分、キースは能力ありでもなしでも、本気なら滅茶苦茶強いと思ってる。
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#キスブラ #書きかけ
ヒーロー能力を無効にされた場合も考えて、体術面も鍛えておこうという流れになり、南&西での合同演習で、キスブラが模擬戦する話。
バトルシーン難しいので、いつになるのか……。
あと、人数そこそこいるので、三人称で書きたい話。
(ヒーロー能力を無効化された場合のことを考え、トレーニングルームを一時能力を使えないように施した後、体術の手本を見せるという流れ)
「キース」
「ん?」
「出ろ。俺とお前とで模擬戦をやるぞ」
「ええ……お前相手だと手ぇ抜けねぇからめんどくさ……」
「貴様、先程俺が説明した内容を聞いていたか。たまには真っ当にルーキーたちの手本になるんだな」
「オスカーとやりゃいいじゃねぇか」
「何の為の合同演習だと思っている。……お前がそういうつもりなら」
(他の人には聞こえないようにブラッドがキースに耳打ちすると、キースの顔色が変わる)
「やっ、やめろ、それだけは! わかった、やる。やるから勘弁してくれ!」
「わかればいい」
「……ったく、この暴君が。つか、やっぱりフェイスとお前兄弟だな。そっくりだ」
「「は?」」
(ブラッドとフェイスが揃って首を傾げる)
(ダイナーイベでフェイスがキースに伏せ字で何やら言ったあの流れをキースは示しているという想定)
「で? 時間はどうすんだ?」
「そうだな、二十分で行こう。オスカー。時間の計測、あと開始と終了の合図を頼む」
「イエッサー」
(いざ、模擬戦開始。当初はジュニアが五分はもてよ、クソメンター!などと囃していたが途中で状況に無言になる)
「ブラッドが……少し押されてる……?」
「凄ぇ……何だあれ」
「……ねぇ、オスカー。もしかしてヒーロー能力なくてもキースって強いの」
「かなり。体術に関して言えば、現役のヒーローでは一番かもしれません」
「はぁ!? マジかよ」
「アカデミーの頃から右に出るものがいないくらいだったとか。俺は体術でキースさんにまだ勝てたことがありませんし、ブラッドさまも五回に一回勝てるかどうかだと」
「うっそだろ……」
「伊達にメジャーヒーローじゃないってことか……」
(模擬戦終了。結果は引き分け)
「くっそ、結局引き分けかよ」
「……あと、五分長ければ恐らく俺が負けた」
「たらればなんて意味がねぇよ……って、ジュニア? どうし……」
(ジュニアがキースの胸ぐら掴みながら文句を言い始める)
「こ…………っの、クソメンター! お前、あんだけ動けるんならなんで普段からやんねーんだよ!! まともに指導しろっての!!」
「あああ、だからやりたくなかったんだっての……」
※多分、キースは能力ありでもなしでも、本気なら滅茶苦茶強いと思ってる。
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